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■桃で生まれた桃(4)

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30分ほどで猿太郎はうまく鬼ヶ島に船を着けることができました。
 
4人は物音を立てないように密かに船を下ります。島の様子は以前一度討伐隊に参加して、上陸に成功した人が書いてくれた図面で、とにかく門までは分かります。見張りの鬼がひとり居ましたが、桃は後ろからそっと忍び寄り武術師範から習った急所を鋭く突いて気絶させ、力のある猿太郎が用意していたロープで縛り上げ、猿ぐつわも噛ませました。
 
身軽な鳥助が門によじのぼって向こう側に侵入。閂(かんぬき)を開けます。そっと門を開き、他の3人も侵入しました。
 
門の中には小屋のような家が多数建っていましたが、4人はおそらく大将はいちばん奥の小屋に居るのではないかと考え、そちらに向かって進みました。
 
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ところがその小屋の入口に手を掛けようとした時
 
「フー?」
みたいな声が聞こえます。見ると1人の鬼がこちらに気付いたようで、剣を抜いて向かってくる所でした。桃は自分も剣を抜くと、相手に峰打ちを当て、倒しました。
 
しかし声をあげられたことから、あちこちで物音がし、多数の鬼たちが出てきました。
 
桃は掛かってくる鬼たちをひとりずつ峰打ちで倒していきます。また桃の背後から襲おうとした鬼を、猿太郎と鳥助が1人ずつ木刀で倒しました。
 

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その内「ウェ!」のような声がして、一番奥の小屋から特に大きな体格の鬼が出てきました。
 
「アズ」
みたいな言葉を発して刀を抜きます。
 
その鬼と桃が睨み合います。
 
勝負は一瞬で付きました。
 
鬼が鋭く剣を突いてきたのに対して、桃はさっと身をかわすとカウンターで相手の腹をやはり峰打ちしました。
 
「アルー!」
みたいな声をその鬼はあげました。どうも自分の負けを認めているようです。
 

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やっと灯りが灯されます。桃に倒された“鬼”たちがあちこちで倒れて肩や腹あるいは腕などを押さえていました。
 
「あれ?」
と鳥助が声をあげます。
 
「あんたたち、もしかして鬼じゃなくて南蛮人さん?」
 
そこで犬蔵が声を掛けます。
「スプレーク・エー・ネーデルランド?(オランダ語が話せますか?)」
 
すると鬼たちのひとりが手を上げて
「イク・スプレーク(話せるよ)」
と言いました。
 
それで桃と“鬼の大将”は、日本語(犬蔵)オランダ語(ジャック)英語、というリレー通訳で会話することになったのです。
 

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犬蔵が鬼の大将ほか、倒された鬼たちの様子を診ましたが、大きな怪我をしているものは居ないようです。打ち身の部分に湿布薬を貼ってあげました。門の外側で気絶させられていた鬼も、解放して気付けしてあげました。
 
「乱暴なことをして申し訳ありませんでした。でも私たちはあなたたちと話し合いたいと思って来たのです。あなたたちは、もしかして船が難破したのですか?」
と桃は言います。
 
「実はそうです。5年ほど前にこの付近を航行している内、暗礁にぶつかってしまって、凄い速度で沈みました。船には50人ほど乗っていたのですが、この島に泳ぎ着いたのは22人だけです」
と“鬼の大将”マイケルは言いました。
 
「こちらの殿様を通じて、将軍様に連絡を取りましょうか?そうしたらきっとオランダ船に同乗して、ジャガタラあたりまで送ってもらえると思いますよ」
 
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「おお、それは嬉しい!ぜひお願いしたい。もう故郷には帰られないのだろうか、と嘆いている仲間も多いのです」
 
「ただ、帰る前にここ数年、この付近の村を荒らしたつぐないはしてほしいです。村ではこちらの島に財宝とかを溜め込んでいるという噂もありましたが」
 
「そんなものありませんよ。武器とかは村で拾ったりした物を使っていますが。それに私たちは生きて行くために日々の食糧が欲しかっただけです」
 
「それを取られた人たちも、日々生きて行くための貴重な食糧を取られたんですよ」
 
「・・・すまなかった」
 

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桃とマイケルとの話し合いは、3時間以上におよび、船員たちの大半を幕府に救済を訴え、オランダ船でジャガタラまで送ってもらえるように努力すること、そしてその前提条件を作るために、荒らした村に対する補償を労働力で返すという方向で話がまとまります。
 
「でもあれが塩田だとは思わなかった。浜からあんな遠く離れた所にあるから。私たちは塩が欲しかった。土手を壊してしまったことは謝る」
 
「あなたたちの国の塩田は違うの?」
「私たちはもっと海のそばに塩田を作る」
 
桃は犬蔵と顔を見合わせます。
 
「あなたたちの国の塩田の作り方を教えてくれない?」
「いいですよ!」
 

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夜が明けた所でマイケルがややアクセントのおかしな“日本語で”言いました。
 
「モモ、あなたオナノヒト(女の人)だったですか?」
 
今まで暗くて相手の性別もよく分からなかったのでしょう。
 
どうも彼は仲間達に会話をちゃんと聞かせるために通訳してもらっていただけで、彼本人は実は日本語がある程度できたようです。
 
桃は額に手をやると、犬蔵とジャックにこれは翻訳しないで欲しいと言った上で、マイケルに言いました。
 
「私は実は男なんですが、魔除けのために女の姿で暮らしているのです。来年13歳になるまではこのままです」
 
「あなた12歳!?嘘!??」
 
どうも彼は桃を18-19歳と思っていたようです。
 
この後、しばらく桃とマイケルはふたりだけで小声で日本語で話しました。
 
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「モモ、君はすごくビジ(美人)だ。このままオナ(女)になったら?」
「私は他の男の子に比べて、男としての発達が遅いみたいで、声変わりもまだ来ていない。でもその内、声変わりもして、ヒゲも生えて来たら、もう女としては暮らしていくことはできない」
 
と桃は少し悲しそうに言いました。
 

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「それを停めればいい」
「どうやって?」
 
マイケルは更に小さな声で桃に聞きました。
「モモ、あなた玉は付いてる?」
「・・・あるけど」
「それを取っちゃえば男にはならない」
「え!?そうなの?」
「知らなかったのか・・・」
「知らなかった!」
「私が切り落としてやろうか?」
「え〜〜!?」
 
そこに犬蔵が割って入りました。
 
「それを切り落としていいのだったら、私が切ってあげるよ。私は医者だ」
 
「おお、だったら、あなたが切り落としてあげるといい」
とマイケルが嬉しそうに言います。
 

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犬蔵は桃に言います。
 
「桃ちゃん、確かに今睾丸を取ってしまえば、君は声変わりもしないし、ヒゲとかスネ毛も生えてこない。でも、男に戻ることもできなくなる。もしそれでもいいなら、取ってしまうけど」
 
桃は少し考えましたが、言いました。
「じゃ、犬蔵さん、それ取って」
「マイケルさん、ちょっと部屋を貸してくれ」
「いいよ」
 
それでマイケルは全員にいったん各々の小屋に戻って待機するように言うと、桃と犬蔵の3人だけで奥の小屋に入りました。
 
着物の裾をめくり、湯文字を解きます。そこには紛う事なき男の印がありました。
 
「しじられない。こな美少女にこなものが付いているなって」
とマイケルが言っています。
 
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犬蔵は、マイケルから少しお酒をもらってその付近に吹きかけます。そしてメスで陰嚢を少し切り裂くと、中の玉を取り出して血管を結索した上で玉を切り離しました。もうひとつの玉も取り出して切り離します。そして切開した所を糸で縫い合わせました。
 
「声をあげなかったね。痛かったろうに」
「我慢しました」
「我慢できる所が凄い」
 
「モモ、君は凄い女性だ」
とマイケルが言いました。
 
「こんなものを見ても、私を女と思ってくれるの?」
「君は心がオナの子だ。だから君はオナの子だ」
「そうなのかな・・・」
 
「モモ、私とケッコ(結婚)して欲しいくらいだ」
「え〜〜〜!?」
「いや、本当にそうしたくなった。ぜひ私とケッコして欲しい」
「うっそー!?」
「私がきらい?」
 
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そう問われて桃は答えました。
 
「だったら、その塩田の作り方を教えてくれて、被害に遭った村に全部補償したら、結婚してもいい」
「私はニホ(日本)に残るよ。他の仲間たちはみなジャガタラに帰す。でも私はニホに残ってモモと一緒に暮らしながら償いをする」
 
ふたりは見つめ合い、やがて微笑みました。
 

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日が高くなってから“鬼たち”は一斉に船に乗って、音古村の岸に着けました。大勢の鬼がやってきたので村はパニックになります。しかし桃は
 
「みなさん、逃げなくてもいいです。鬼さんたちが謝りに来たのです」
と言いました。
 
それで最初に音古村の庄屋さんと、桃たちに付き添ってきていた桃たちの村の組頭さんが前に出ます。マイケルは言いました。
 
「これまで、みなさの村から物を盗だりしてごめなさい。船がナッパ(難破)して食べる物が無くなり、困ったあげく盗ってしまったのです。お詫びにみなさに新しいエデ(塩田)の作り方教えします」
 
庄屋さんたちは顔を見合わせますが、桃たちの口添えもあり、その新しい塩田の作り方というのを見てみることにしました。
 
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その頃まで日本で行われていた塩田は《揚浜式塩田》と言い、ひしゃくなどで掬った海水を塩田に振りかけ、天日で水分が蒸発し、濃度の高い海水(鹹水)を作り、最終的にそれを煮詰めて塩を得るものでした。
 
ところがマイケルたちが作ってみせたのは、浜辺近くに堤防付きの塩田を作り、潮の満ち引きを利用して堤防の下に通したパイプから自動的に海水を導入して毛細管現象で海水を塩田に吸い上げるという画期的なものだったのです。揚浜式塩田で海水を撒く作業は重労働だったのですが、この新しい方法《入浜式塩田》ではその労力が無くなり、遙かに楽に塩田を運用することができたのでした。
 
「このやり方で塩田を作ったら、多分今までの5倍の塩が生産できる」
と音古村の庄屋の息子が言いました。
 
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「マイケルさん、桃さん、あなたたちは村に財宝を持って来てくれた」
と庄屋さんが言いました。
 

マイケルほか3名が桃たちと一緒に城下まで行くことになりました。その間、難破船員たちはジャックが統率して、決して乱暴を働かないようにさせることにします。その代わり、音古村の村人たちが彼らに食糧を分けてあげることにしました。船員たちは農作業や塩田の作業を手伝いました。
 
桃がマイケルたちと一緒に城下に行き、殿様に面会を願うと、殿様たちはびっくりしました。
 
「殿様、鬼たちを屈服させました。鬼の大将が、殿様に謝りたいと申しましたので連れて参りました(*7)」
と桃は言いました。
 

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(*7)桃太郎のバリエーションの中には桃太郎たちが鬼の大将を捕虜にして連れて帰るというものがある。
 

「殿様ですか?私、マイケルと申します。実は船がナッパ(難破)してそのあと食べ物に困って村々から盗でいました。お詫びに、たくさ塩作れる塩田の造り方教えします」
とマイケルが言いました。
 
「鬼というのは南蛮人であったのか!」
と殿様は驚きました。
 
実際にマイケルたちが音古村に作った入浜式塩田を殿様たちにも見てもらいます。桃がマイケルたちから聞いた新しい塩田の仕組みを説明すると殿様も
 
「これは凄い」
と言ってくれました。
 
「これぞ鬼の財宝ですな」
と家老様も言います。
 
「これをこの海岸沿いで塩田を作っている全ての村に作らせましょう。それはこの国に大きな富をもたらします」
と桃は言いましたた。
 
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「うむ。さっそくやろう」
 
それで殿様はマイケルたちに他にも新方式の塩田を作らせるとともに、その様子を全ての海岸沿いの村の者に見学させました。
 
藩内の塩田全ての改造には3年以上の時間を要しましたが、新方式の塩田は少ない人手で運用できるため、これまでの3倍から5倍の塩田を作ることができ、塩の生産量が飛躍的に上がって、この藩の名産となっていくのでした。
 
またマイケルは村々がしばしば水不足に悩んでいると聞くと
「目の前に海があるのに!」
 
と言って、海水を真水に変える仕掛けも作ってみせました。まずガラスの板を多数製造します。実はガラスの材料というのは、割とその付近にたくさんあるのです。主材料の珪砂は砂浜から取り放題でした。マイケルはその板ガラスを絶妙な傾斜で塩田の上に並べました。そして傾斜の下端になる数ヶ所にジョウゴを置き、そこから管で大きな樽に蒸留水が溜まるように導きました。
 
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この工夫をした塩田は、製造コストは掛かるものの、雨が降っても鹹水が薄まらず、塩の生産能力も上がりました。
 

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新しい塩田作りが進む中、マイケルは殿様に言いました。
 
「この塩田作りが落ち着いたら、将軍様にお願いして、船員たちをジャガタラあたりに帰して頂けないでしょうか?」
 
殿様は考えてから言いました。
 
「そなたたちは充分盗みの償いをしてくれた。だから単純な遭難者として処遇すれば、上様もきっとそなたたちを帰すのは許してくれるだろう。次に江戸に参る時に、余に同行せよ」
 
「ありがとうございます」
 
「全員帰るのか?」
「私は日本に残りたいと思います。殿様、私にあなたの国の民としての人別を頂けませんか?」
「よい。余の国の民としよう。武士に取り立てるから塩作りの指導をしてくれ」
「ありがとうございます。それともうひとつお願いがあるのですが」
 
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「何じゃ?」
「桃殿を、私に下さいませんでしょうか?」
「何だと?」
 
殿様が明らかに怒ったような顔をしたので、桃はこれはまずかったかなと思ったのですが、やがて殿様は言いました。
 
「桃殿を女侍として、余の用人にする。それでもよければ、そなたの妻にせよ」
「ありがとうございます」
とマイケルが言い、桃もしずかに殿様に頭を下げました。
 
「ところで桃よ、お前この南蛮人ともう寝たのか?」
「殿様、男女のことは詮索無しですよ」
「しかし気になるではないか。お前は一度は余の妻にしたいと思った女だ」
「恥ずかしい所は見せてしまいましたよ」
 
「そうか。それは残念だ」
と殿様は本当に残念そうに言いました。マイケルも桃もそれを見て微笑みました。
 
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マイケルはその年の参勤交代で殿様と一緒に江戸に赴き、将軍様直々に船員を送還する許可を得ました。それでマイケル以外の船員たちは翌年長崎に移動し、そこからジャガタラに送り届けられました。
 
そして・・・マイケルが国→江戸→国→長崎→国と移動している間に、桃は本当の女の身体に変わっていました。
 
実は13年前にシンとクマが若返るとともに性別が逆転した時の桃の《種》をシンは取っていたのですが、お殿様から度々桃にお輿入れの要求がなされるようになり、ふと思いついて桃が8歳の時にあの種を庭に植えてみたのでした。桃は2本無いと受粉できないので、もう1本は普通の桃の種を植えました。普通の桃は3年も経つと立派な木になりましたが、例の桃は昨年やっと普通のサイズまで成長し、今年初めて実を付けました。その実を15歳になった桃に食べさせた所、女の身体に変わってしまったのです。
 
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「うっそー。おちんちんが無くなって、女みたいな形になっちゃった」
「女みたいな形じゃなくて、お前、本当に女になったんだよ」
「おっぱいも大きくなったし」
「女だから」
 
この桃のことをシンはクマにも秘密にしました。それにこの桃の木には実が年に1つしか実らないようでした。シンは毎年その木に実がなると、誰かが誤って食べないように、すぐに廃棄するようにしました。
 

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全てが一段落した所で、マイケルは黍津真池の名前で日本国籍を与えられ、塩担当の侍頭となりました。そして既に女侍に取り立てられ殿様の傍に仕える用人として務めていた桃と結婚式をあげ、一緒に殿様に仕えたのです。ふたりがいつも仲良くしているので、殿様は嫉妬を感じながらも、桃の知恵と霊感を藩政に役立てていったのでした。
 
桃は結婚して1年後、17歳の年に可愛い男の子を産みました。桃はその子に自分の元々の名前であった桃太郎という名前を付けました。桃はこの子を産んだ時、産む前日まで仕事をしていて、産んだ1週間後には仕事に復帰して、周囲を驚かせました。
 
桃の両親が桃太郎の顔を見るために村から城下に出てきた時、桃は言いました。
 
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「まあ私は女だてらに侍になってしまったけど、男の侍並みに頑張るつもり。だからお産の前後もほとんど休まなかった」
 
「男並みにって、お前元々は男だったのに」
「そういえばそうだったかな」
と言って桃はさも可笑しそうに笑っていました。
 
 
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■桃で生まれた桃(4)

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