【みずほのくにのものがたり】泣く須佐之男


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伊邪那岐命(いざなぎのみこと)から手分けして世界を治めるように言われた三貴子ですが、その中で海を治めるように言われた須佐之男命(すさのおのみこと)は何故か泣いてばかりいました。すると心配したお父さんの伊邪那岐命がやってきて「どうしたのだ」と問われます。すると須佐之男命は「私はお母さんが恋しいのです。できたらお母さんのいる根の国に行きたいと思って泣いているのです」と答えました。すると伊邪那岐命は自分の息子がこんなに情けない子だったとはとお怒りになり「お前のような者は追放だ。どこにでも好きな所に行くがいい」とおっしゃいました。
 
須佐之男命はそれでは伊邪那美命(いざなみのみこと)のいる根の国に行こうとなさいましたが、その前に高天原(たかまがはら)をお治めになっている姉の天照大神(あまてらすおおみかみ)にご挨拶をしようと、高天原に向かいました。
 
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■天の安河での誓約(うけい)
 
須佐之男命が高天原に近づいて来ますと、かなり遠くからその鳴動が聞こえてきました。何事かと思った高天原の神様たちが様子を見ますと、天照大神の弟君の須佐之男命がやってくるところ。しかしその勢いがあまりにすごいので、神様達は「これはきっと須佐之男様がこの高天原を乗っ取りにいらっしゃったに違いありません」と申し上げました。
 
すると天照大神は自分がくい止めるとおっしゃって男装して弓矢を持ち、須佐之男命を天安河でお待ち受けになりました。そして須佐之男命がやってくると「待ちなさい。何しに来たのです」と厳しい声で問われました。
 
すると須佐之男命は自分は母のいる根の国に行くことにしたので、その前に姉上に挨拶をしに来ただけだと言います。しかし天照大神はそう簡単には弟を信じません。そこで双方子供を作って、心に偽りがないことを確かめましょうということになりました。
 
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ここでまず須佐之男命が持っていた剣を天照大神が取り、細かく折って天安河の水に付けて霧吹きしますと、そこに多紀理毘売命、市寸島比売命、多岐都比売命という三人の女神が生りました(宗像の三女神:俗に言う弁天様)。次に天照大神が持っていた曲玉を須佐之男命が取り、細かくかみ砕いて天安河の水に付けて霧吹きしますと、そこに天之忍穂耳命・天之菩卑能命・天津日子根命・活津日子根命・熊野久須毘命という五人の男神が生りました。
 
美しい女の子が生まれるというのは邪心が無い証拠ですので、これで須佐之男命の言葉は確かめられ、須佐之男命は高天原に短期間の滞在を許されます。
 
■暴れる須佐之男
 
ところが須佐之男命は元々が荒っぽい神様ですので、この短期間の滞在中に色々とんでもないことをします。
 
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神田のあぜ道を壊したり、水路を埋めてしまったり、神殿の中でウンコをしたり。その度に姉の天照大神は他の神様たちに、弟をかばって色々苦しい弁明をなさいました。しかしそのようなことをしていても咎められない須佐之男命は益々調子に乗り、天照大神の配下の機織娘に可愛い子がいたのを見ると、驚かせてみようとその前に馬を一頭投げ込み、びっくりした娘は機織の道具をうっかり、女陰に刺してしまい、その傷がもとで亡くなってしまいました。
 
これにはさすがの天照大神も激しい怒りを示し、須佐之男命を睨み付けると、そのまま何も言わずにプイと神殿を出ていき、天岩戸(あまのいわと)という洞窟に籠もって扉を閉めてしまいました。すると、太陽神が隠れてしまったため、世の中は真っ暗の闇になってしまいました。
 
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■天岩戸
 
天照大神が洞窟に籠もって天上も地上も真っ暗闇になってしまいますと、神様たちはこれは何とかしなければということで、すぐさま会議を開きました。議長を務めたのは思金神です。神様達は伊斯許理度売に命じて鏡を作らせ、玉祖命に命じて曲玉を作らせ、それを岩戸の前に置きました。そして岩戸の前で天宇受売命(あめのうずめのみこと)に踊りを踊らせます。宇受売命が踊りに熱中し、どんどん服を脱いでいって、とうとうパンティーまで取った時、見物していた神様たちは「おぉ!」と一斉にどよめきました。
 
するとそれを不審に思ったのは岩戸の中に籠もっている天照大神です。自分が隠れてみんな困っているかと思ったのに、何だか外が妙に騒がしい。そこで岩戸を少しだけ開けて外を見てみました。するとどうも神様たちが宴会をしているようです。そこで天照大神は「お前たち何をしているのだ?」と聞きます。
 
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すると全裸で更にセクシーなダンスを踊っていた宇受売命は「あなた様よりもっと尊い神様がいらっしゃったので、その歓迎会をしているのです」と答えました。天照大神は途端に不機嫌になり、それはどんな奴だと思ってもう少し戸を開けて外を見てみます。するとそこにあったのは鏡。当然大神自身のお姿が映っています。しかし戸を少ししか開けていない大神には、そこに明るく美しい女神の姿が見えました。頭に来た大神はもっと良く見てやろうと、もう少し戸を開けます。その時!
 
岩戸のそばに隠れていた天手力男命(あめのたぢからおのみこと)が天照大神の手をぐいと握って外に引き出すとともに、岩戸の入口にしめ縄を張り「ここより中に戻ってはいけません」と申し渡しました。太陽神が出てきたおかげで、世界には明かりが戻りました。
 
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■追放される須佐之男
 
かくして、この問題の原因となった須佐之男命は高天原を追放されることになりました。追放にあたって、須佐之男命はヒゲを全部抜かれ、身体の体毛も全部きれいに脱毛されてスベスベのお肌になりました。須佐之男命は「こんなの嫌だ!」と抵抗なさいましたが、もちろんそんなこと聞いてはもらえません。かくして須佐之男命はその本来の荒々しい性格とはまるで違う、美男子に変身させられて、天を追放されたのです。
 
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