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【みずほのくにのものがたり】始まり


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初めは何もなかった。
 
しかしそこに揺らぎがあり、ゆらぎはやがて空間と時を作りだした。
 
この何もない状態を天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)といい、空間を高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、時を神御産巣日神(かみむすびのかみ)という。
 
やがて高御産巣日神は空間を天と地に分けられた。この天を天之常立神(あめのとこたちのかみ)といい、地を国常立神(くにのとこたちのかみ)といった。神御産巣日神は時を過去と未来に分けられた。過去を宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこじのかみ)といい、未来を豊雲野神(とよくもぬのかみ)といった。
 
ここで空間にも時にも陰陽が現れたことにより、陰陽の神が産まれた。
 
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はじめに生まれた陰陽の神は男神の宇比地邇神(うひぢにのかみ)と女神の須比智邇神(すひぢにのかみ)である。この神々はまだ世界が陰陽に分かれたもののまだ落ち着かず、やや混沌としている状態を表す神々である。やがて男神の角杙神(つのぐひのかみ)・女神の活杙神(いくぐひのかみ)が生まれた。この神々はその混沌とした中から色々な物が形をなして生まれて来ようとする様を表す神々である。やがて男神の意富斗能地神(おほとのぢのかみ)・女神の大斗乃弁神(おほとのべのかみ)が生まれた。この神々は世界に創成された色々なものの境界がきちんと定まりかけた様を表す神々である。やがて男神の於母陀流神(おもだるのかみ)・女神の阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)が生まれた。これは世界の色々な物事がそれぞれ形が完成したさまを表す神々である。
 
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そしてやがて男神の伊邪那岐神(いざなぎのかみ)・女神の伊邪那美神(いざなみのかみ)が生まれた。
 
二人の神はそれ以前に産まれた神々の指令により、国作りを行うことになり、神々の棲む観念の世界から、この現実の世界へと派遣された。
 
■伊邪那岐・伊邪那美の結婚
 
二人の神は天と地の間に浮かばせた天浮橋(あめのうきはし)の上に立ち、国を作るべき地上に天沼矛(あめのぬまぼこ)をしずかに差し込んで、ゆっくりと回転させた。
 
地は一応天と完全に分離され、その形は定まっているがまだ混沌としている部分もある。天沼矛を差し込まれた地は少しあえぎ声をあげ、回転させるとさらに気持ち良さそうな声をもらした。
 
伊邪那岐・伊邪那美の神は頃合いを見て天沼矛を地から離した。するとその矛の先に付いた滴が地に落ち、そこはひとつの島になった。これを淤能碁呂島(おのごろしま)という。
 
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二人の神はその島に降り立った。そして島の中央に立派な天御柱(あめのみはしら)を立てた。
 
ここで伊邪那岐神は伊邪那美神に問うた。
 
「あなたのからだはどうなっていますか?」
 
 
「どうしたことでしょう。私の体は完全に作ったつもりだったのですが、一箇所きちんとできていなくて、少し隙間が空いているところがあります」
 
「おやおや、実は私も体は完全に作ったつもりだったのですが、一箇所失敗して、少し余ってしまったところがあります。この余った部分をあなたの、隙間の空いたところに差し込んで、国造りをしましょう」
 
 
そういうと、伊邪那岐の神は天御柱を左に回り、伊邪那美の神は天御柱を右に回って向こうで落ち合った。
 
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そして伊邪那美神が言われるよう。「ああ、なんて素敵な男の方なのでしょう」
 
伊邪那岐神が言われるよう。「ああ、なんて素敵な乙女なのでしょう」
 
そして二人はまぐわいをなさった。
 
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【みずほのくにのものがたり】始まり

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