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■夏の日の想い出・高2の秋(2)

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女子トイレなら、政子に散々連れていかれていつも入っているが、女湯は女子トイレとは訳が違う。服を脱いで裸にならないといけない。えー!?どうしよう?ボクはマジで困ってしまった。
 
脱衣場で、みんなどんどん脱ぎ出す。きゃー、これってどうすればいいの??「あれ?脱がないの?」と言われて、ボクは心の中で焦りながらも、笑顔を作りおしゃべりしながら、とりあえず上に着ていたポロシャツを脱ぐ。ブラが顕わになるが、中にはシリコンパッドを入れて一応の膨らみはあるから、ここまでは何とかなる。でもこのプラを外してしまうと、パッドも一緒に外れて、何も無い胸が見えてしまう。更に下半身は凄まじい問題がある。ほんとに困ってしまって万事休すと思いながらスカートのホックを外した時のことだった。
 
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「ケイ、いる〜?」
と政子の声。
「マリ、どうしたの?」
「ちょっと急用なんだけど」
「分かった。行く。ごめんねー、みんな」
と言うと、ボクはスカートのホックを填め、ポロシャツを着て、政子と一緒に女湯を出て行った。
 
「冬、女湯なんかに行ってどうするつもりだったのよ?」
と政子は少し咎めるような口調で言う。
 
「何とか断って離脱したかったんだけど、うまい理由が思いつかなくて」
「まあ、マジで急用なんだけどさ。控え室に行ってみたら誰もいなくて、聞いたらリュークガールズの女の子たちと一緒に温泉に行ったというから、冬って何考えてんのよ!?と思って呼びに来た」
「でもホントに助かった」
 
本館の方まで戻ると須藤さんが待っていた。
「撤去作業は他の人に任せて帰るよ」と言い、ボクたちは須藤さんの運転する車で、都内に向かった。
 
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「実は新しいCDを作ることになったのよ。今日戻ってからすぐ準備作業を進めて、来週の日曜日くらいに録音作業をするから」
「はい。でもこないだ作ったばかりなのに」
「今度は★★レコードからの発売になるから」
「えー?まさかメジャーデビュー?」
「ま、そうもいえるね。今までもインディーズで売ってるにしてはFM局とかにとりあげてもらったりして、まずまずの売れ行きだったしね」
「なんかすごーい」
 
「撤去作業の増援というか交替で来てくれた森下君が、これ持ってきてくれた」
と言って、須藤さんは運転しながら片手で助手席に置いてあるバッグから1枚の譜面を取り出すと、後部座席に座っているボクたちの方に渡してくれた。『その時』と書かれたタイトルのそばにプリントされた名前を見て驚愕する。
 
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「上島雷太って、あのAYAとか百瀬みゆきとかプロデュースしてる上島雷太ですか?」
「もちろんそうだけど」
「あの上島先生が、私達に曲を提供してくれたんですか!?」
「そうなのよ。何かの気まぐれだとは思うけど、私もびっくりしたわ」と須藤さん。
「曲をもらったからには、すぐCD出さなきゃって社長からも言われてさ。で、上島先生の作品ならうちで扱いますよと★★レコードからも言われて。今月中の発売にしてくれるって」
「すごーい」
 
当時、須藤さんは独立前で津田社長の△△社の社員としてボクたちのマネージメントをしていた。
 
「それで、1曲だけじゃCDの体裁をなさないから、カップリング曲をふたりで1曲作ってくれない?」
「へ?ボクたちが作曲するんですか?」
「政子ちゃんは譜面読めないなんて言ってるし、作詞担当かな。何か詩を書いてもらって、冬子ちゃんが作曲する」
「いいんですか?」
「商業的に売る水準に達してないと思ったら没にして私が書くから、取り敢えず自由に書いてみて」
「はい」
 
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後から考えてみると、この時、須藤さんはほとんど自分で書くつもりでいたんじゃないかと思う。しかしボクらが書いた曲(『遙かな夢』)は「センスいい!」
と褒められた。
 
「女子高生らしい甘酸っぱい歌詞だけど構成はしっかりしてる。曲がまたメランコリックで詩の世界にピッタリ。それに『その時』とテーマが共通だしね。どちらも片思いを歌ったものだもん」
「あ、そこまでは考えなかった」
 
「これなら編曲きちんとすれば、商品として売れるよ。上島先生の作品のカップリング曲としても充分な品質がある。ね、政子ちゃん、冬子ちゃん、これからも自分たちで何か思いついたら、どんどん詩や曲を書いておいて」
「はい、そうします」
「うん、よろしく」
 
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最初のCD『明るい水』は3時間で制作したのだが、『その時/遙かな夢』は9月21日の日曜日に1日掛けて録音をした。『明るい水』の伴奏は全部MIDIの打ち込みだったのだが今回はギター、ベース、ドラムス、キーボード、と4人のスタジオミュージシャンの人と一緒に作った。
 
CDはその週の土曜日、27日に発売されることになったが、その発売キャンペーンを埼玉県の屋内レジャープールでする、と言われた。とにかく慌ただしい発売でそう言われたのも火曜日の放課後であった。
 
「4組ほど出演して歌謡ショーをするのだけど、それに出るついでに新曲をアピールしていいと言われたのよ。これ正直、上島先生の曲だから、こういう話をもらえた。シーズンオフではあるけど今年は猛暑だからね。1000人くらいプールにお客さんいると思うから、それが全部観客だと思って歌おう」
 
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「衣装は?」と政子が訊く。
「プールだから水着だよ。あ、なんか可愛い水着を買っておいてくれない?冬子ちゃんはよく分からないだろうから、政子ちゃんが見立ててあげて」
と言って、須藤さんは2人分といって3万円を政子に渡した。
「領収書もらってね。△△社の宛名で」
 
「はい。でも水着ってボディラインがきれいに出ますよね」
「うーん。そのあたりいろいろ工作が必要なら、それは適当に。あ、念のためあと2万円渡しておく」
「ちょっと、話が今頭の上を走り抜けていったんだけど、ボク女の子の水着を着るの?」
「男の子の水着着たい?」
「それは問題がありすぎです」
「じゃ、女の子の水着よね。何なら性転換手術しちゃってもいいけど。手術代は費用で落とせるように社長に交渉するよ」
「ひぇー」
 
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政子は女装する人で女の子水着を着てプールに行く人絶対いる筈だからネットで少し調べてみようよと言って、その日のラジオ出演が終わってからボクを自宅に誘った。水着、女装、などといったキーワードでネットを検索する。
 
「すごいね、この人。女装とは思えない」
「きれいなボディラインだね。よくビキニでここまで行けるよね。この人、豊胸も去勢もしてないんでしょ」
「匠(たくみ)の技だね」
 
そういう達人たちのワザはさすがに数日ではモノにできないだろうということで、もっと初心者でもできそうなものを探していく。ふたりで2時間ほどネットを検索して、胸はブレストフォームというものを使い、おまたの所はタックというワザで隠すのがいいという結論に達した。
 
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「ブレストフォームは明日にでも買いに行こうよ。学校ちょっと休ませてもらって」
「それがいいね。今週末だから時間が無い」
「おまたのところのタックというワザ、これ接着剤方式をマスターできたら凄そうだけど、とりあえず、このテープ方式でやってみるのがよさそうね」
「うん。水着でいるのって、たぶん1〜2時間だろうから、その間なんとか誤魔化せればいいだろうから」
 
その日は帰りが9時半くらいになってしまったので、ボクは親から文句を言われた。更に明日学校を休むというと、お説教に近いものをくらったが、ちゃんとその分頑張って勉強するからということで、なんとか納得してもらった。
 
翌日、ボクは朝から政子の家に行き(そこで当然女の子の服に着替えて)まずブレストフォームを売っているお店に一緒に行った。
 
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「通販もしているのですが、やはり来店していただいた方が肌の色のマッチングができていいんですよ」
とお店の人は言っていた。ボクの肌の色にいちばん近い色合いで、装着したらCカップになる製品を選んだ。お店の人にお願いしてその場で胸に貼り付けてもらった。
 
「これ、週末までこのままにしておくの?」
とボクは少し情けないような声で政子に言った。
「当然。数日間、おっぱいのある生活をしてみよう」
「家や学校でバレないかなあ」
「バレないように頑張ろう。眉だって、ふだんうまくやってるでしょ」
 
ボクは毎日放課後になると女の子の格好をするために眉は細くしている。しかしその眉では学校で注意されてしまうので、男の子の格好をしている間はファイバー入りの眉マスカラで、あたかも太いように見せている。学校で同級生の女子にはバレていたし、女の先生で笑顔でボクの眉を指パッチンした先生もいたが、担任の先生や生活指導の先生には気付かれていない感じだった。同級生の女子はボクが眉を細くしている理由については特に詮索しなかったが、どうもツッパリなどとは違うようだなとは思われている感じだった。姉も「ふーん。眉を細くしてるのね」
とひとこと言っただけで、それ以上追求しなかった。
 
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ブレストフォームのお店の後、ボクらはドラッグストアに行き、テープタックに必要な用具を買いそろえた。また電器店に行って、あの付近の毛を剃りやすそうな櫛歯付きのシェーバーを買った。
 
政子の家に戻ると「手伝ってあげようか」などと政子は言ったが、それはさすがに勘弁してもらうことにして、政子の部屋を借りて1人にしてもらい、下に新聞紙など敷いてから、毛を全部剃り、ネットで見た解説通りにやってみた。
 
うまく行かない・・・・
 
1時間ほど奮戦した。基本的にはおちんちんを後ろに思いっきり引っ張って仮押さえした上で、陰嚢の皮で両側から包んでいきテープで固定するのであるが(両側から引っ張ってきてくっつけた中央の線が割れ目ちゃんに見える)、どうしても途中で仮押さえしていたものが外れたり、袋の皮をひっぱって、おちんちんを包み込み中央で固定していくところで、うまく固定できずに剥がれてしまったりする。少し行き詰まりを感じていた所で政子が「できた?」
などといって顔を出した。
 
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「実は全然うまくいかない」とボクはその付近を手で隠しながら答えた。
 
「やっぱり手伝ってあげるよ」
「えー?」
「だって、それができないと私も須藤さんも困るんだよ」
「分かった」
 
「これ写真で作業経過を見てたけどさ、たぶん2人でやった方がうまく行くよ」
 
ところが政子に触られるとさすがに大きくなってしまう。
 
「大きくしないでよ。勃っちゃったらできないじゃん」
「そんなこと言っても条件反射なんだから」
「私、後ろ向いてるから1発抜いちゃったら?」
「それはしたくない」
「なんで?男の子って毎日してるんでしょ?」
「実は、ローズ+リリーを始めて以来、1度も自分でしてない」
「ふーん。。。。」
と政子は少し興味深そうな顔でボクを見た。
 
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「じゃ、お風呂場で冷水を当ててこない?冷たくなるとしばらく大きくならないんじゃない?」
「そっか。それもネットに書いてあったね。やってくる」
 
ボクはお風呂場でその付近に2-3分冷水を当てた。冷たーい。少し気分が悪くなりそう。でも我慢。過激な政子のことだからタックがうまくできなかったらもう手術して切っちゃおうなんて言い出しかねない気もした。おちんちんが切られてしまった自分を一瞬想像してドキっとした。
 
タオルで拭いてから部屋に戻る。今度は政子に触られても大きくならない!自分で皮を引っ張って中央に持ってきたところで政子がテープで仮留めしてくれる。数ヶ所仮留めしてから本留めする。
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夏の日の想い出・高2の秋(2)

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