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■夏の日の想い出・受験生の夏(2)
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体毛の処理は以前からけっこうしていたのではあるが、ローズ+リリーで活動しているとミニスカを良く穿くし、そういう時は原則として生足なので、絶対にスネ毛を見せる訳にはいかなかったし、また接触し、打ち合わせなどする人、また放送局などに行って会う人、番組のナビゲーターさんなどに、ボクが男の子であることは内緒だったので、ヒゲなども絶対に伸びていることがないように気をつけた。
具体的にはヒゲは毎朝30分ほど掛けて、よく見える凹面鏡できちんと見て抜き、また放課後仕事に出かける時もよくよくチェックしていた。また足の毛はソイエで処理していた。これは無茶苦茶痛かったが、頑張った。政子からは
「いっそ足も顔もレーザー脱毛したら?」
とは言われたのだが、当時はレーザー脱毛した後の「引き籠もり期間」が取れないくらい忙しかったのである。
一方ボクはもう長いこと、ふつうの男の子たちがするような形でのオナニーはしていなかった。中学の時に5回ほどしたっきり、高校に入ってからは1度もしていない。自分自身もう立たないかも知れないなあと思っていたのだが、奈緒、若葉、そして政子の前で合計10回くらい立ったことがあり、ああ一応勃起性能は残っているのかと思っていたが、ローズ+リリーの活動停止後に何度か政子とHなことをした時は立たなかったので、とうとう男性能力も消失したか、と自分では思っていた。
(奈緒には「診察」と言われて裸にされ、「性能検査」をされたものである。また若葉の場合は、彼女自身の男性恐怖症の治療に協力して欲しいと言われて戯れたのと、ボクの精子の冷凍保存に協力してもらったもので、このふたりとは恋愛的な要素はお互いに全く無かった)
そんなボクでも、ごくたまにオナニーすることはあった。それはいわゆる脳逝きというもので(この言葉は若葉から習った)、空想でHなことを考えて(だいたい男の人にされている所を想像している)それで気持ち良くなるのだが、これで射精することは無かった。しかし、ローズ+リリーの活動停止後はそのようなドライオナニーもすることはなくなってしまった。実際自分は性欲自体無いのかも知れないなと思うことはあった。
この時期、自分の中にある「男の心」と「女の心」の中で、既に優勢であった「女の心」の方が、完全に主導権を握っていることが多くなった。そして自分の中の「まだ男」である部分を排斥していくようになった。それでボクは高2の3学期から髪を伸ばし始めた。
ボクは高校に入って以来、ローズ+リリーを始める前でも「普通の男の子とは違うようだ」と先生たちから配慮してもらって普通の男子の髪の基準ではなく、女子のショートカットの髪の基準で髪の検査などを受けていたので、だいたい肩につかない程度の髪があり、ローズ+リリーをしていた頃はそれにウィッグを付けて、胸くらいまで髪があるかのように装っていたのだが、ローズ+リリーを中断してからは、ウィッグは使わないようになったものの、代わりに自毛を伸ばし始めたのである。
また女の子の心が大きくなってきたことから、ボクは男の子の服を着ている時でも、男子トイレを使うことに抵抗感を感じるようになってきていた。そもそもボクはずっと以前から、男子トイレでは個室しか使っていなかったのだがこの時期、そもそも男子トイレを使うのが「間違った場所に侵入している」
かのような気持ちになってきた。それで高2の3学期以降は、学校では1階に1つだけある男女共用の多目的トイレを使うことが多くなったのだが、ぼんやりしている時はうっかり女子トイレに入ってしまうこともよくあった。
普通は中に入ってから気付いて「あ、ごめん」と言って出て行っていたのだが、時にはあんまりぼんやりしていて何も考えずにそのまま列に並んでしまうこともあった。それで、前後の子に話しかけられておしゃべりなどしていて、かなりたってから
「あ・・・・ここ女子トイレだった」などと気付いて言う。
「何を今更」
「冬ちゃんは別に女子トイレ使っていいと思うよ」
などと言われて、ボクも、まいっかと思って、そのままおしゃべりを続けていた。
お股のタック(股間整形)については、ローズ+リリーをしていた時期はテープを使ったタックをしていて、最初の内は毎日活動が終わったら外していたのだが、その内、付けたり外したりするのが面倒になり、一週間くらいずっと付けっぱなしということが多くなる。そして春先くらいから時々接着剤タックを試みるようになる。最初の頃はテープタックより持たなくて、1〜2日で外れてしまっていたのだが、だんだんうまくなって、6月は1ヶ月間ずっと接着剤タックしたままということもやってみた。
ただ、タックしていると睾丸がずっと体内にあるので完璧に機能低下してしまう。それでボクはローズ+リリーをしていた10月頃、一時期完全に精液の中に精子が無くなっていたのだが「少しお休みを作った方がいい」という政子のアドバイスに従って、テープタックの時は週に2回くらいタックしない日を作り、接着剤の場合は外してから最低4日くらいは次のタックをしないようにしていたら、夏頃になって、精液の中に精子が復活した。
「良かったぁ。これで私、冬の赤ちゃんを産める」
などと政子は言う。
「何もボクの子供を産まなくても、ふつうの男の人と結婚してから産めば?」
「冬の赤ちゃんを産んだら誰か男の人と結婚するよ」
「それ変だよ」
「ねー。私のヴァージンもらってくれる気になった?」
「誰か男の子の恋人作ってから、ヴァージンあげればいいじゃん」
「冬がヴァージンもらってくれたら彼氏作るよ」
「それ絶対に変だよ」
ボクはだいたい中学3年の頃から、ほとんど女子の下着しか着けないようになっていた。それでも高1の頃は時々男物の下着を着けていることもあったのだが、ローズ+リリーの活動をしていた時はずっし女子下着だったので、活動が中断して以降、久しぶりにちょっと男物も着てみようかなと思って、ブリーフなど穿いてみたのだが・・・・
違和感がありすぎて、すぐに着替えてしまった。
「なんか、すっごく変な感じがした」
とボクは政子と話していた時にその事を言った。
「冬はもう男の子には戻れないよ」と政子。
「だろうね」
「ってか、冬が男の子に戻るなんて言ったら、女の子の友達たちにリンチされて殺されるよ。だってみんな冬が女の子という前提で、ハグしたり、一緒にお風呂入ったり、おっぱいの揉み合いっことか、してるでしょ?」
「うん、確かに」
「それが実は男だったなんて言ったら、超犯罪者だよ」
「そうだよねー」
ボクはそれまでは父が見ている所ではけっこう男物の服を着ていることもあったのだが、バレてしまってからは、学校に学生服を着て出かけるの以外ではいつも女の子の服を着ていた。父がちょっと不満そうだったが「家の中だし、いいじゃん」
などと答えたりしていた。
姉はそれまでもしばしば自分に合わない服をボクに押しつけていたのだが、バレてしまった後は、自分の洋服ダンスの中から「これと、これと、これと、これと、あげるね」などと言って、大量に女物の服をくれたし、押し入れの中の段ボールに入れていた「これ、そのうち冬にあげようと思ってたのよ」という服もどーんとボクの部屋に置いていった。
そしてボクの部屋のタンスは女物の服で満ちてしまい、男物の服はほとんど無くなってしまった。(実際かなり処分した)
しかしそういう生活をしていても学校に行く時は学生服を着ていたのだが、これは半分は父とそういう約束をしたから仕方無くというのもあったが、半分は惰性である。でも、女子の制服着て来ちゃおうかな・・・などと思いながら女子のクラスメイトたちを眺めたりしていた。
ある時同じクラスの仁恵から
「なんか視線を感じるんだけど」
と言われたので正直に
「女子の制服、ボクも着たいな、とか思っちゃって」
と言ったら、
「一度貸してあげようか?」
と言われて、放課後に貸してくれた。仁恵が更衣室でジャージに着替えてきてから「どうぞ」といって渡してくれた。
教室の片隅を女子数名でブロックしてくれたので、ボクはそこで着替えた。
「女の子のパンティ穿いてるんだ」
「なんだ、ブラジャーも付けてるのね」
などとブロックして取り囲んでいる女子たちから言われる。
「でもウェスト、くびれてる−」
「足も細い−」
「足がすべすべ。ムダ毛処理してるの?」
「それはずっとしてるよ。ソイエだよ」
「わー。でもミニスカートとか穿いてたもんね」
「うん。家の中では今でもスカート穿いてるけど、それで外出するなと親から停められてる」
「へー」
「ね、おまたに膨らみがないけど、もしかしてもう手術済み?」
「おまたの付近は企業秘密」
とだけ答えておいた。
女子制服を着たボクを見て、みんな褒めてくれる。
「可愛い〜」
「似合ってる」
「さすがアイドルしてただけのことある」
「私のスカート、W61なのに、ちゃんとファスナーしまるね。というか少し余ってる?59のスカートでも入ったりして」
と仁恵。
「ローズ+リリーを始めた頃は64のスカートだったんだけど、ハードスケジュールで動いてて、けっこう体重減ったかも」
「でもさすが。凄く自然に女の子だよね」
「うんうん。女装してる男の子には見えない」
同じ教室にいて遠巻きに見ていた男子のクラスメイトたちからも
「お前、そちら着てたほうが合ってる感じだ」などと言われた。
鏡に映してみてボクもちょっと嬉しくなる。ボクがクラスメイトの前で女子制服姿をさらしたのは、高校では、この時と卒業式の日だけである。
ボクが「恥ずかしいから写真は勘弁して〜」と言ったので誰も撮らなかったがあれはとてもいい想い出になった。隣のクラスにいてボクの女子制服姿を見逃した政子からは後で「そんな時は私も呼んでよ」と言われた。
自動車学校で女子トイレの使用を認めてもらった時、ボクはここ半年ほどの自分の「女の子ライフ」を思い起こしながら、礼美とおしゃべりを続けていた。
「だけど、ふと思ったんだけど」
「ん?」
「冬と話している時って、ほんと普通に女友達と話している時と同じ感覚」
「ボクってあまり男の子の友達とは話さないんだよね〜。学校に行っても話してるの女の子の友達とばかり。話題もそういう系統になってるし。実際男の子たちの話題について行けないから」
「話題もだけど、発想とか感覚とか、それが女の子なのよね」
「小学校の3年生頃までは友達というと女の子ばっかりだったし、元々の感覚がそうなってるのかもね」
「思春期になると、女の子は女の子、男の子は男の子でまとまろうとするから。でも、じゃ、けっこうその後は孤独な状態だっんじゃない?」
「うん。一時期はそれでほんとに誰も友達がいないなんて時期もあったね。その内だんだん素性がバレて、女の子たちと話をするようになっていくんだけど。マーサの場合は高校入った時に既にボーイフレンドがいたから、よけい恋愛とかを意識せずに話をすることができて楽だったね」
「そうか。やはりマリちゃんとの出会いって運命的だったんだ」
「うん。そんな気もする」
「そういえばこないだから、胸パッド入れてるよね」
「うんうん。シリコンのなんだ。感触が好きなのよね。ほら、触って」
「わあ、本物の胸みたいな感触」
「何となく胸が無いのは寂しい気がして。でも本物のおっぱい欲しいなあ」
「大学生になってから豊胸手術とかすればいいんじゃない?」
「うん。一応お父ちゃんからは高校生の内はあれこれ手術したりするの禁止って言われてるから。ホルモンもダメって言われてるし。ホルモンくらいはこっそり飲んじゃおうかとかも思うんだけど、まだ怖くて踏み切れないのよね」
「慎重にするべきだと思うよ。迷ってる内は飲んじゃだめ」
「うん。よくよく考えてからにする。あーでも小学生の頃からホルモン飲んでたりしたら、声で苦労しなかったのになあ」
「冬の声は女の子の声にしか聞こえないよ」
「うん。学校でも家でも最近はこっちの声ばかり使ってて、男の子の声はもうほとんど使ってない。あと、女の子の声を鍛えるのに、コーラス部にも入れさせてもらっていて、1学期は昼休みの練習に行ってソプラノで歌ってたんだ。夏休みになってからも時々顔出させてもらってる」
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