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■夏の日の想い出・まつりの夜(2)

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この旅では私もほんとにたくさん着想を得て、恋路海岸では『恋路の果てに』、その近くの見附島では『ロングシュート』という曲を書いた。弘法大師が中国から帰国する船の中から投げた五鈷杵がこの島で見付かったという伝説があるのである。弘法大師はミサイル発射台並みの投擲能力を持っていたようだ。(一緒に投げた三鈷杵は高野山、独鈷杵は佐渡島で見付かったらしい)
 
最終日はPVも良いのが撮れて、蔵田さんも曲を3曲も書いて、雰囲気が良かったこともあり、道の駅に車を駐めたまま酒盛りが始まってしまう。私も「飲め」と言われたが「未成年です!」と言って断る。
 
「洋子は硬いなあ」
「ほら、レイナを見ろ。飲んでるぞ」
 
などと言われる。レイナは私よりひとつ下の中学2年生である。
 
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「私、お父さんに付き合って小学生の頃からビール飲んでた」
などと本人。
「悪い親だな。まま、もういっぱい」
「いただきまーす」
 
こんな所を週刊誌とかに見付かったら、ドリームボーイズは1年間くらい活動自粛するはめになったりして。
 

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などと考えていた時、道の駅に1台のデミオが入ってくる。しかしどうも様子がおかしい。
 
ゆまさんが窓をノックして「どうかしました?」と訊いたらドライバーの女性は窓を開けて「産まれそう」などと言う!
 
産気づいたものの、近くに誰も家族や友人が居なかったのでやむを得ず自分で運転して病院に行こうとしたのだが、途中で辛くなって、とりあえず目についた道の駅に車を入れて停めたなどという。
 
「救急車呼ぼう」
という話になるが、なんとそこは携帯の圏外であった。公衆電話も見当たらない。それで誰かが運転して町まで行くしかないということになるが、18歳以上のメンバーは全員お酒を飲んでいる。
 
それで蔵田さんが「おまえが運転しろ」と私に言った。
 
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私もここは酔っ払っている人が運転するよりはその方がマシと判断して念のため出産経験者であるアランさんと、何となく頼りになりそうなゆまさんに同乗してもらい、出産施設のある病院のある町まで40分ほど私が車を運転して連れて行った。
 
それで産まれたのが貴京(たかみ)ちゃんという女の子であった。9ヶ月の早産だったが、安産で母子ともに元気であった。実際問題として病院に連れて行っている最中に「もう出てくるぅ!」という状態で、病院に着いて分娩室に運び込むとすぐに「おぎゃー」という声を聞いた。
 
私は「とりあえずあんたは外に出てろ。女だとは思うけど男である疑惑もあるから」などとゆまさんから言われ、アランさんとゆまさんが分娩室に入って妊婦の手を握ってあげていた。
 
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「お母さんか旦那さんに連絡しますよ。電話番号教えてください」
 
と、ゆまさんが言うが、お母さんは先日骨折して別の病院に入院中、お父さんはたまたまバンコクまで出張に行っていると言う。それで取り敢えず東京に住む彼氏(結婚はしていないらしい)に連絡したいというので、ゆまが連絡してあげたのだが、ゆまは電話に出た相手に驚いたような表情をした。ゆまが状況を伝えると相手は自分が行くか、あるいは信頼できる人をこちらにやってサポートさせると言ってくれた。
 
電話を切ってから質問が出る。
 
「どうかしたの?」
「ううん。何でもない」
と、ゆまは言ったが、ゆまが驚いたのは、その電話相手、つまり貴京ちゃんの父親が、実は上島雷太であったためであったことを私が知ったのは、ずっとずっと先のことであった。
 
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それから5年後。
 
私は再び能登半島へ向かった。
 
2011年7月31日。広島に来ていた私は政子から「お腹空いた」という電話を受ける。私が10日ほどキャンペーンで全国を飛び回っていた間に、マンションの食料ストックが尽きてしまい、食べるものがなくなったので、新幹線で私を追いかけてきたのだという。
 
それで私は広島駅で政子を拾って深夜営業しているお好み焼き屋さんに行き、政子のお腹を満足させてやった。
 
その晩は一緒に広島のホテルに泊まり、翌朝ホテルの朝食を食べていたら牡蛎が出ていた。むろんこの時期に生牡蠣は無いので冷凍だったのだが、政子は生の牡蛎を食べたいと言い出す。
 
こんな夏のさなかに生牡蠣なんて無茶だと思ったのだが、私はふとあることを思い出して、石川県金沢市に住む従姉の千鳥に電話してみた。すると能登半島の中島町というところで、ふつうの牡蛎とシーズンがずれている「岩牡蠣」というのが今の時期なら、まだ生で食べられるというのを教えてもらった。岩牡蠣は普通の牡蛎が終わった直後の5月頃から食べられるようになり気候にもよるが、8月上旬頃まで食べられるらしい。
 
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それでそのお店を明日予約してもらい、私たちはその日は富山県高岡市に住む青葉のもとを訪問した。そこにはちょうど東京のメイドカフェでバイトしているMTF女子大生の和実とその恋人の淳のカップルも来ていた。それで予約を追加して5人で岩牡蠣を食べに行くことにしたのである。
 
そしてこの真夏に生牡蠣を食べることができて大満足の政子を、私は金沢で開かれるKARIONのライブに連れて行った。この日私たちはKARIONライブにゲスト出演することにしていた。
 

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ところで和実は、熱烈なゴスロリの信奉者である。メイドカフェでは普通のメイドの服装をしているが、そこに通勤する時も、大学に授業を受けに行く時もだいたいゴスロリを着ている。
 
それで青葉の家で私と政子は「ちょっとこれ着てごらんよ」などと言って和実の持っているゴスロリのドレスを着せられてしまった。
 
そして会場に行った私と政子がゴスロリを着ているのを見た小風は
「いいこと思いついた」
と言って、私たちを
 
「ローズ+リリーのそっくりさんで、ゴスロリを着たゴース+ロリーのおふたりです」
 
と言って紹介し、私たちは『恋座流星群』と『坂道』を歌ったのであった。
 
『恋座流星群』は公的にはマリ&ケイ作詞作曲とされているが実は、ケイ作詞・和泉作曲の歌だったので、それをKARIONライブで歌うことに私は運命の巡り合せを感じた。
 
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また『坂道』は元々富山の八尾町で毎年開かれている「風の盆」で諏訪町の石畳の道の左右に燈籠がともっていて美しい様を見て書いた曲であり、北陸の地で歌うのにふさわしい曲であった。
 

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KARIONライブのゲストに《ゴース+ロリー》が出るというのは、更に8月13日の大阪公演でも行った。(和実はせっかく大阪に行くのならと言って、私たちを大阪のVictorian Maidenに連れて行ってくれて、そこで私たちに合う服を選んでくれた。震災のボランティアで週に2回くらい東北と往復したり忙しいようなのに、本当にご苦労様である)
 
私たちはあくまで「そっくりさん」と称して歌っているのだが、観客の中には私たちが偽物であることに疑念を抱いた人もあったようである。
 
「★★レコード所属歌手の公式のライブに、そっくりさんとか呼ぶか?」
「そもそもゴース+ロリーなんて聞いたことない。ローズ+リリーのそっくりさんなら、ローザ+リリンの方が有名」
「ローザ+リリンは何度かテレビに出たことあるね」
「但し★★レコードとのつながりが深い◇◇テレビは、ローザ+リリンを完全無視」
 
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そしてネットの論客たちは自然と
「あれ、偽物ということにしておいて、実は本物では?」
 
という結論に到達する。
 
「だいたいそっくりさんにしては歌がうますぎた」
「いや、俺は本物ならマリちゃんがあんなにうまいわけないから偽物かと思った」
「でもマリちゃん、かなり歌がうまくなっているという噂もある」
 

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そんな話が盛り上がっていたお盆明け。
 
私たちは富山市内のホテルや郵便局などに
 
《ゴース+ロリーショー 9月3日(土) 14:00》
 
というポスターを貼りだしたのである。
 
実はKARIONのゲストコーナーで歌った『坂道』が、元々富山の八尾で作った曲であるというのを聞いた政子が
 
「だったら富山で歌おうよ」
と言い出して、企画したものである。
 
町添さん、および私たちの営業について委託されている○○プロの丸花さんとの話し合いで、その風の盆が行われる9月3日にぶつけた。
 
(私たちのマネージングはUTPに委託しているが、UTPは更に△△社に委託し、△△社は○○プロに委託しているので、○○プロは事実上ローズ+リリーの窓口である)
 
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チケットは会場として借りたホテル、富山市内の主要プレイガイドに置いてもらったのだが、たまたま郵便物を出しに来た人で、金沢のKARIONライブを見ていた人が気づき、ネットに書いたら噂がさっと広まり、その日の夕方までに用意したチケット400枚が売り切れてしまった。ネットの書き込みを見ていると、東京や九州の人で、富山の知人に頼んで買ってもらった人もあったようであった。
 
料金は1995円(1900円+消費税)にしている。これは会場の使用料が料金2000円までなら安く済むからである。それでセミプロ・アーティストの公演ではよくこういう料金設定が使用されるのである。私たちはこだわる必要もないのだが、ローズ+リリーではなく無名のゴース+ロリーということでこういう価格設定にした。
 
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もっともヤフオクで最高6000円で取引されていた!(期間が短かったのでその程度で済んだようであった)
 
このイベント運用に関しては不測の事態があってはならないので地元のイベンターさんに委託した。餅は餅屋である。会場のキャパは400なので通常ならこの規模の会場のライブは3-4人程度のスタッフで充分なのだが、警備スタッフを大量動員して20人規模にしている。(当然収支としては大赤字であるが、赤字の半分を★★レコードが負担してくれた−残り半分はサマーガールズ出版の負担)
 

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「風の盆」は毎年9月1-3日に行われる。私と政子は大学がまだ夏休み中でもあったので、ライブ前日の9月2日(金)に飛行機で富山に入り、その日は青葉の家に寄ってから高岡市内のホテルに泊まることにしていた。青葉の家では政子が青葉に「心のヒーリング」をするセッションをしてもらったが、また政子は胸のつかえが取れたようで、たくさん涙を流していた。
 
「私ずいぶん泣いちゃった」
「政子さん、たくさん泣くほど心が元気になりますよ」
 
その日は青葉の姉たちである桃香と千里も来ていた。彼女たちも私たちと同様に夏休み中とのことで、友人から借りたというインプレッサ・スポーツワゴンに乗って東京から走ってきたらしい。
 
「ふたりで交代で運転してきたの?」
と政子は訊いたが
 
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「いや、私はMTは運転できないので」
と桃香が言う。
 
「MTって何だっけ?」
と政子。
 
「シフトの切り替え方の違いだよ。クラッチペダルとシフトレバーで切り替えるのがマニュアル車・通称MTで、クラッチペダルが無くてセレクトレバーだけで切り替えるのがオートマティック車・通称AT。免許もATだけしか運転できない免許とどちらも運転できる免許がある。MT車の方が難しいから」
と私は説明したが
 
「なんでわざわざ難しい車を作るの?簡単な方がいいじゃん」
と政子は訊く。
 
うーん。もっともな意見という気もする。
 
「好みの問題だよ。恋愛だって落としやすい人じゃなくてわざわざ落としにくい人を攻めたりするじゃん」
と私が言うと
 
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「ああ。確かにいやがってるのを無理矢理やっちゃうのは楽しいよね」
と政子が言い
「あ、そうそう。今日はだめー、と言ってる所を無理矢理するのが楽しいよね」
と桃香が言う。
 
私も千里も頭を抱えていたが、青葉は笑っているし、青葉のお母さんは顔をしかめている。
 
「じゃ、桃香はATだけの免許?」と政子。
「免許上はどちらも運転できるけど自信が無い」と桃香。
「教習所で習っただけって人多いよ。MT車が少ないから」と私。
「そもそも実は免許取ってから2年間全く運転してなかったから」と桃香。「ああ、ベーパードライバーとか言うんだっけ?」と政子。
「いや、ペーパードライバー。免許の紙があるだけという意味」と私。「ベーパーだと、蒸発して免許消滅?」と青葉。
「更新忘れるとそうなるな」と桃香。
 
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「AT車とMT車って、じゃそのクラ何とかペダルがあるかどうかの違い?」
「うーん。実はクラッチペダルのないMTもある。ブレーキとアクセルだけ」
「但しそれはAT免許でも運転できる」
 
「じゃ、ペダルが2個しかない車はAT免許で運転できて、3個のがMT免許で運転できるの?」
「いや実は、ATやCVTで左側にパーキングブレーキのペダルがあるものもある」
「もちろんAT免許で運転できる」
 
「何だかよく分からん!」
と政子は言うが、ほんとによく分からない!
 

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