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■夏の日の想い出・花と眠る牛(8)

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「ああ。覚えてます。女の子14-15人居ましたよね。大正琴とか龍笛とか随分いろんな楽器が入ってた。あれは∞∞プロからの依頼だったんですよ。雨宮三森先生が楽曲を提供なさって。ですからあの時の制作の指揮をしたのは実質雨宮先生だったのですが」
 
「何て突然出てくる大物!」
「それでか。さすがだね。数千枚売れるわけだ」
 
「それで美空ちゃんの歌がすごく上手いんでスカウトしちゃったんですよね」
と三島さん。
 
「でもてっきり、あの時だけで終わったものと思ってた。あの後も制作を続けたんだ?」
 
「ええ。あの後、私が入った状態で1年、私が抜けてから更に1年続いたんです。雨宮先生が関わったのも最初の時だけで、後は自主制作作品を演奏していました。メンバーの大半が私より1年上の人たちだったから、高校卒業とともに解散したんですよね」
 
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「ああ、なるほど」
「しかしそれだけの枚数を売ってたユニットの解散は惜しいくらいだね」
 
「進学した大学もあちこちの都市で、事実上、再結集は困難でした。でも何人か、また別途集まってユニット作った人もいたみたいですが、その後は私もよくは知りません」
「へー」
 
その後は、なごやかな雰囲気になり、ちょうどケーキとコーヒーを持って会議室に入って来た花恋にも「ちょっとここ座って」と言って捕まえ、一緒に今回のツアーでの出来事やお客さんの反応などについて、色々話した。
 

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その週末。5月10日はKARIONは仙台、ローズ+リリーは郡山で公演を行った。(ローズクォーツは仙台)。
 
そして翌日5月11日(日)。この日のライブのことは、福島や宮城の新聞地方面でも報道され、後から雑誌にも取り上げられて結構話題になった。
 
その日、私は政子とともに、郡山市内のホテルに泊まっていた。スターキッズも同じホテルである。KARIONの残り3人とトラベリングベルズ、ローズクォーツのメンバーは仙台市内のホテルに泊まっている。
 
この日の公演予定はこうなっていた(グランドオーケストラのツアーは先週で終了している)。
 
13:00-15:00 KARION福島文化ホール (1800) 但しサイン会が-15:30
16:30-18:30 ローズクォーツ 南相馬市民ホール(1100)
19:00-21:00 ローズ+リリー 仙台スタープラザ(2300)
 
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ローズクォーツのツアーはこの日で打ち上げである。
 
朝政子を部屋に残して(部屋の鍵は窓香に渡して)郡山から福島へ新幹線で移動する。仙台から移動してきた和泉たち3人およびトラベリングベルズと会場で合流。軽くリハーサルをする。
 
そしていつものようにKARIONのライブをする。道成寺の鐘の横に、小風・和泉・美空の3人が並び、点呼を取って1人足りないという話になり、小風が鐘を撞いて私を鐘の中から出す。そして4人で一緒に挨拶して、歌い始める。
 
この日、ツアー全部に付き合ってくれているゲストAPAKの他に、やはり福島ということで、田村市出身の櫛紀香さんにもゲスト出演してもらう。櫛紀香さんは「紀香という名前で女の子と思った人ごめんなさい」と毎度のギャグを飛ばしてから、アコスティックギターの弾き語りで、3年前に出した曲『川の流れ』
を歌ってくれた。
 
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(男性が歌うとまた雰囲気違うんですねという声が多数寄せられた)
 
そして後半に入り、『Earth, Wind, Water and Fire』から『雪うさぎたち』
までを歌い、いったん幕が降りる。
 
そしてアンコールの拍手で呼び戻され、『鏡の国』『Crystal Tunes』を歌う。いつもはここで終了なのだが、この日はサードアンコールをおこなった。
 
『Crystal Tunes』の最後の音が、美野里のグランドピアノと敏のグロッケンシュピールで奏でられ、静かに音が消え、4人が客席に向かってお辞儀をする。そして大きな拍手と歓声が起きた所で、櫛紀香さんがアコスティックギターを持って出てくる。更にトラベリングベルズにAPAKにカンパーナ・ダルキのメンバーも出てくる。
 
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櫛紀香さんが
「それでは最後の最後の曲、『I love you & I need you ふくしま』」と告げると会場が騒がしくなる。
「みんなも一緒に歌ってね!」
 
と言って伴奏を始める。KARIONの4人が歌い出すが、4人ともマイクを客席に向ける。客席も一緒に歌う。KARIONもトラベリングベルズもAPAKもカンパーナ・ダルキも歌う。美野里も夢美も敏も風花も七美花も歌う。
 
会場がひとつになって、この素敵な郷土愛の歌を歌い、KARION福島ライブは感動の中、終了した。
 

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公演終了後、例によって抽選に当たった人にサイン会をする。今日も25分の1の確率で、当選者は72人である。これが20分ほどで終わり、時計を見たら15:50であった。今日は櫛紀香さんのパフォーマンスが幕間とラストに入ったので公演が15:00で終わる予定が15:15くらいまでかかり、エンドが遅くなってしまった。
 

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一方の南相馬市。
 
16:30。ローズクォーツの公演が始まる。南相馬市民ホールは満員の客が入っている。交通の便の問題もあり、ここのチケットが売り切れたのはかなり遅かったので、逆に地元の人で来てみようかなと思った人はほぼ全員買えたはずである。チケット代もローズ+リリーの8400円、KARIONの7350円に比べると割安感のある5250円である。(4月1日以降に購入した人は5400円。なおローズ+リリーとKARIONはいづれも3月中に売り切れている)
 
2ベルが鳴って照明が落ちる。幕は開くもののステージは真っ暗なままである。レーザービームが飛び交う。新曲『Back Flight』の前奏に続いて、暗闇の中にケイの姿が浮かび上がるまではいつもと同じなのだが、この日はケイとマリ、2人の姿が浮かび上がった。
 
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予想と違っていたので会場が少しざわめく。
 
私たちは歌い始める。
 
「疲れたきった顔を、ふと上げて前を見た時」
 
とにかくも拍手に続いて手拍子が打たれる。1番を歌い終わった所でOzma Dreamのジュリアとミキが左右の袖から出てきて、2番は4人で一緒に歌う形になった。暗闇の中でこの4人だけがスポットライトで照らされていたが、タカ・サト・ヤス・マキの所にも、ほんのりと弱いスポットライトで照らされる。
 
歌い終わったところで、私とマリがそれぞれ隣にいるジュリアとミキを見る。それで2人が頷き、ジュリアとミキで声を揃えて「こんばんは!ローズクォーツOMです」と名乗りを上げた。
 

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ここからいつものやりとりをする。
 
「ところでケイちゃん、マリちゃん、ローズ+リリーの公演には行かなくて良いの?向こうは19時開演でしょ? ここから車で2時間はかかるし仙台市内は夕方渋滞するから、余裕持ってないと危ないよ」
とジュリア。
 
「大丈夫だよ。私たちはもう仙台に居るから」
と私は答える。
 
「え? だってここに居るのに?」
 
「ここには居ないよ。これってホログラフィーだもん」
 
と私が言うと「えー!?」という声。これはファンの人たちがお約束で掛けてくれている感じだ。
 
「ジュリア、ミキ、ちょっと私たちの傍に寄って」
と私が言うので、ふたりが寄ってくる。
 
「ほら、並んでみると分かる。私とマリの身体、彼女たちより薄いでしょ?」
 
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客席はざわめいた。それは私とマリの姿が全然薄くなくて、ジュリアとミキとほとんど変わらない濃さだったからである。
 
「ホログラフィーの技術も年々良くなっているんだけどね。今の技術ではこのくらいが限界。来年はもっと色が濃くなっているかもね」
 
などといつものやりとりを続けるが客席はざわめいている。隣同士で話しているのがあちこちで見られる。しかし私たちはいつものように会話を続ける。
 
「じゃ、私たちは消えるから、ジュリア、ミキ、後はよろしくー」
「うん。任せて」
とふたりが言ったので、私とマリはステージを降りて客席の中央通路を通り、最後部にあるドアを目指す。いつもの演出ならホログラフィの私がフェイドアウトするところである。
 
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ステージの照明が灯る。クォーツのメンバーが学生服を着ている。タカだけはセーラー服を着ている。ジュリアとミキもセーラー服を着る。会場には明るい声が響く。しかし私とマリが歩いて通路を通っていると、両側の観客が握手を求めてくる。私たちは快くそれに応じて、握手しながら会場のいちばん後ろまで行く。私たちが握手しているのを見て、多くの客がこれがホログラフィではなく実体であるということを理解した。
 
客席の最後部で、振り返って見ている観客と、ステージ上のローズクォーツ・Ozma Dreamに手を振り、私たちはホールの外に出た。
 

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私は政子にキスをしてから、花枝に
「じゃ、マリをよろしく」
と言って託した。
 
「うん。じゃ、マリちゃん行こう」
と言って花枝とマリが会場から出て行く。そして花枝の愛車NSXが政子を乗せて出発したのを見て、私は楽屋に戻った。時刻は16:45であった。
 

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少し時計を戻そう。
 
KARIONの公演後のサイン会が終わった後の15:50。私はロビーにいるファンたちに手を振って、和泉たちと一緒に楽屋に下がった。そして3人とハグすると、すぐに衣装を脱いでポロシャツとジーンズに着替え、ライダースーツを着て、ヘルメットを持ち、会場裏口に行く。そこに染宮さんが愛車ハーレーとともにスタンバイしている。挨拶して後ろにまたがり、しっかりと染宮さんに抱きつく。ハーレーが発車する。
 
福島市内某所まで行くと、そこにヘリコプターが待機している。私が乗り込むと離陸する。福島市から南相馬市までは直線距離で50km弱である。時速200kmのヘリで飛ぶと、15分で到着する計算である。実際に、ヘリが南相馬市某所に到着したのは、16:20であった。そこからスタンバイしてくれている花枝のNSXでローズクォーツの会場に入る。到着したのが16:25。公演の始まる5分前である。
 
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全く綱渡りだった!
 

私は南相馬市民ホールの楽屋モニターでローズクォーツのライブをずっと見ていた。
 
17:10。氷川さんの運転する車で和泉・美空・小風の3人がこの会場に到着した。彼女たち3人は、私が福島文化ホールを出た直後に氷川さんの車に乗り、県道12号・矢木沢峠越えの道でここまで来てくれたのである。
 
「どうだった?」
「目が回った」と小風。
「私に運転させてーと思わず言っちゃった」と和泉。
 
「ああ、ああいう道は乗っているより運転している方が楽だもんね」
と私。
「そう言われるかも知れないけど、絶対にハンドルを譲ってはいけないと町添に厳命されていました」
と氷川さん。
 
「美空は?」
「寝てたー」
「ああ、それがいちばん」
 
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やがて17:25になる。ローズクォーツ前半のステージが終了する。ジュリアがマイクに向かって話す。
 
「ここで私たち、ローズクォーツOMは少しだけお休みを頂きます。その間に歌ってくれる素敵なゲストをお迎えしています。KARIONの4人です」
 
と言うと、会場が「えーーー!?」という声に変わる。今日は冒頭にリアルのローズ+リリーが登場し、幕間はKARIONと、ゲストが豪華なのである。
 
そこに私たち4人がお揃いの衣装で登場する。当然私は冒頭でマリと一緒に歌った時とは違う衣装である。
 
「こんにちはー」とジュリアとミキが一緒に言うので
「こんにちはー」と私たち4人も言う。
 

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「今日はKARIONの公演が福島であったんですよね。何時に出たんですか?」
とジュリアが訊く。
 
「サイン会まで終わったのが16時近くで、その後、汗掻いた服を着替えて、車でこちらに来ました。着いたのは17時15分くらいですね」
と和泉。
 
「4人で来られたんですか?」
「はい。★★レコードの人の運転で、ジャンケンで負けた蘭子が助手席に乗って、次に負けた小風が真ん中、私と美空が窓側です」
 
「ああ。蘭子ちゃんって、ジャンケン弱いですよね。私も蘭子ちゃんにジャンケンで負けたことないです」
「ええ。あれだけ弱いのは、もう才能ですね」
 
ローズ+リリーのケイがジャンケンに弱いのは割とファンの間では知られている。ここで《ジャンケンに弱い蘭子》というのを提示しておくのは、一種のファンサービスである。
 
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「それでは歌、お願いします」
 
ということで、ローズクォーツとOzma Dreamが下がって、私たち4人が前面に並ぶ。マイナスワン音源がスタートし、私たちは最新CDから『四つの鐘』、大ヒット曲『雪うさぎたち』、そして昨年話題になったアルバムの冒頭曲『アメノウズメ』と歌った。
 
着替えが終わったローズクォーツとOzma Dreamが出てくる。私たちはOzma Dreamの2人とハグしてから退場した。
 

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氷川さんと悠子が待機している。
 
「氷川さん、休めましたか?」
と私は尋ねる。
 
「悠子ちゃんからもらったおにぎりを食べてから寝てたよ」
と氷川さん。
 
現在17:50。氷川さんが寝ていた時間は30分弱だろう。
 
「御飯食べてすぐ寝ると牛になりますよ」
と美空。
 
「だったら美空は既に牛だな」
と小風。
 
「今日は寝るのも氷川さんのお仕事だからね」
と和泉は言う。
 
私は和泉・小風・美空とハグし、私は悠子の車に、3人は氷川さんの車に乗り込む。私を乗せた悠子の車は5分ほどでヘリコプターを駐めている場所に到着する。私が乗ると離陸する。次の目的地は仙台だ!
 
 
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