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■夏の日の想い出・花と眠る牛(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-04-12
 
名古屋市民ホールの楽屋口に付けてもらう。染宮さんに御礼を言い、バックステージパスを警備の人に見せて中に入る。ライダースーツを脱ぎ、ステージ袖に直行する。
 
ステージではライブ本編最後の曲の『地上の星』が演奏されていた。お世話係として付いている○○プロの秋田さん、★★レコードの加藤課長・三神さんと握手した。そして急いでKARION公演で着ていた服を脱ぎ、こちらのステージ用の青いドレスを身につける。男性の目があっても平気で下着姿になる。ライブのステージ袖ではよくあることで、加藤さん・三神さんも視線を外すだけで、平然としている。秋田さんが背中のファスナーを締めてくれた。
 
やがて終曲。大きな拍手と歓声が起きる。指揮者が客席に向かって礼をし、演奏者が左右に分かれて退場する。幕が下りる。
 
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私は指揮者の渡部さんや、コンマスの桑村さんたちと握手する。やがて拍手がアンコールを求める拍手に変わる。束の間の休憩にペットボトルを飲んでいる演奏者もいる。ストレッチしている人もいる。
 
渡部さんと桑村さんが、三神さんとうなずき合う。幕が上がる。演奏者が出ていく。そして指揮者も出ていく。そして私も出て行くと、歓声が更にヒートアップする。「わぁ」という声が上がる。「ケイちゃーん!」という声が掛かる。快感!!
 

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私は指揮者・コンマスとうなずき合い、自分のヴァイオリンAngelaを構える。
 
そして森下乃江さんのピアノ前奏に続いて私はポールモーリアの『恋はみずいろ』
のメロディーを弾き始める。他のヴァイオリニストがそれに彩りを添えてくれる。やがて、管楽器の演奏も始まるが、この曲では私のヴァイオリンがひたすらメロディーを弾く。
 
何か歌うという案もあったのだが、インストゥルメンタルの世界に酔っている客に歌入りの曲は無粋でしょうということで、私も楽器を弾くことにしたのである。ヴァイオリンは昨日の内に★★レコードの加藤課長に預けておき(超高額の楽器なので万一のことがあってはいけないと加藤さんが直接対応してくれた)今日は直前に今回のツアーに付いていてくれるチューナーさんに調弦してもらっている。
 
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最後はトランペットやトロンボーンなど金管セクションと一緒にメロディーを弾いて終曲した。
 
「ヴァイオリン・ソロ、唐本冬子!」
と渡部さんが私を紹介してくれる。聴衆に向かってお辞儀をする。
 

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私はヴァイオリンを袖から出て来た加藤課長に渡す。代わりに愛用のフルートを受け取る。ステージ右側の木管セクションの所からクラリネット担当の詩津紅が出てくる。
 
最後の曲ローズ+リリーの『影たちの夜』を演奏する。ナディアルのドラマー奈保の華麗なドラムスワークに続いて、同じナディアルの亜矢(Anna)のギター、須美のベースと真知のキーボードも鳴り出し、つづいて弦楽器セクションが音を出して、私のフルートと詩津紅のクラリネットがデュエットで歌の部分を演奏しはじめる。やがて他の管楽器も美しい音を添えてくれる。
 
この曲のCD音源版では、鮎川ゆまと七星さんのサックス・デュエットで歌部分を演奏している。今回はそのスコアをそのまま、フルート・クラリネットで代替演奏している。
 
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5月5日の名古屋公演に私が顔を出すことを決めた時、最初は私のウィンドシンセとゆまのアルトサックス(あるいは彼女もウィンドシンセ)でデュエットする話にしていたのだが、その後、急遽決まった南藤由梨奈の全国キャンペーンにゆまは南藤のプロデューサーとして付いて回ることになって、グランドオーケストラのツアーには参加できなくなったので、詩津紅と木管デュエットをすることにしたのである。
 
私と詩津紅のデュエットは高校1年の時の《綿帽子》の再現だ。あの頃私と詩津紅はよく体育館に置かれているピアノを弾きながらデュエットしたし、何度か街頭ライブをしたこともある。その後、詩津紅はコーラス部、私はKARIONが忙しくなって自然消滅してしまったのであるが。
 
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リズミックな曲であり、公演の本当に最後の曲なので、聴衆も手拍子を打ちながら聴いてくれている。私はクラシックの公演も随分やったが、このように聴衆と一体になって演奏できる楽しみはポップスのライブの良さだなと思う。
 
音楽はやはり参加しなくちゃ!
 
フルート・クラリネットのデュエットが終わった後で、オーケストラがコーダを演奏する。そして、最後の和音を奏でるとともに、ドラムスの奈保が激しくシンバルとバスドラを叩く。
 
最後はオーケストラヒットで終わる。
 
割れるような歓声と拍手の中、私と詩津紅は聴衆に、それからオーケストラに向かってお辞儀をする。指揮者の渡部さんとコンマスの桑村さんが聴衆にお辞儀をする。オーケストラのメンバーが全員立ち上がる。
 
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そして拍手と歓声の中、幕は下りた。
 
その幕の後ろで私は詩津紅とハグし、
「それじゃ、またよろしく」
と言うと、ポロシャツ・ジーンズにセーターといった服に着替えて、染宮さんと一緒に会場裏に行く。ふたりでハーレーに跨がり、道に走り出す。次はローズ+リリーの公演会場・名古屋リリープラザだ!
 

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「そういや、ケイさんが高校生の時に、名古屋から金沢まで1時間で移動したことがあったとかで、その時、ハーレーで東海北陸道を200km/hでぶっ飛ばしたんでは、なんて噂が出てましたね」
などと染宮さんが言う。
 
「あれ、その噂があんまり広がったので、私と当時の責任者の○○プロ社長・丸花さんとで、検察庁に自主的に出頭して説明したんですよ。それで検事さんは私たちの説明に納得して、違法性は無いと判断してくれました」
 
「へー。どうやったんですか?」
「協力してくれた人に迷惑がかかるので公開は出来ませんが、まあハーレーでぶっ飛ばした訳ではないですね」
「だったら、ゴールドウィング?BMW?」
「いや、内容については勘弁してください」
 
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「そういえば変なこと言ってる人たちがいましたよ」
「へー、何ですか?」
「ケイさんが男だっていうんですよね」
「へ、へー」
「こんな美人が男のわけないですよね」
「そ、そうですね」
「そもそも男と女では触った感触が全然違いますから。オカマさんとか見た目は女でも触れば分かりますもん。ケイさんの感触は間違い無く女の子ですからね」
 
「あはは、一応ちんちんは付いてないかな」
「ですよねー。どっからそんな変な話出て来たんでしょうね」
 
あはは、あの騒動で、自分の性別は日本中に知られたと思ってたけど、こういう人もいるんだな、と私は何だかホッとした気分だった。
 

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ローズ+リリーの公演会場裏口に到着する。染宮さんのお仕事は今日はここまでなのでよく御礼を言って別れた。
 
中に入っていくと、政子がひつまぶしを食べていた。
 
「おつかれー。それ遅いお昼ごはん?」
「ううん。朝ごはん」
「は? 何時まで寝てたの?」
「15時くらいかな?」
「そんなに遅くチェックアウトできるんだっけ?」
 
窓香が説明する。
「レイトチェックアウトでも12時までなんですが、なかなか起きて来られないので花枝さんにも相談して11時半に鍵を開けて中に入ってマリさんを起こそうとしたのですが、どうしても起きてくれないんですよ。それであの部屋は次の予約が入っているということで、別途シングルを取ってそちらに移ってもらって、15時すぎまで寝ておられました」
 
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「なるほど」
「でもぐっすり寝て爽快。お腹空いたから、出前してもらった」
「まあ26日に始まって10日ほどやってきたから疲れは溜まってるよね」
 
「冬はお昼は何食べたの?」
「KARIONが13時開演だったから。直前の食事で蛋白質系は避けようということであんパンを1個食べたかな」
 
「みーちゃんもそれで足りてた?」
「ああ。美空はあんパンとクリームパンを合わせて10個食べたよ」
「さすが我が盟友」
「盟友になったんだ!」
 

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最初にまだローズクォーツの会場にお客さんが入っていないうちにホログラフィと一緒にOzma Dreamとローズクォーツが演奏する練習をしておく。毎日やっていることであっても、会場が違うと回線事情も異なる。思わぬことがあったりするので、この事前確認は重要である。
 
少し休憩(私は仮眠した)の後で、18時前にローズクォーツの会場の方にいる技術スタッフと連絡を取り、ホログラフィの最終確認をする。その確認が取れてから、ローズクォーツの会場を開ける。KARIONやローズ+リリーは身分証明書を確認しながら、荷物の中のカメラ・録音機チェックをしながら入場させるので時間がかかるが、ローズクォーツではそんなことはしない。人数の確認だけなので速い。ベテランのイベントスタッフの勘に引っかかった人だけ、カメラチェック、時にはボディチェックまでさせてもらい、中に入れていく。
 
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ローズクォーツの開場と同時刻にローズ+リリーの方も開場する。こちらはしっかりとチェックしながら5000人を入れるのでどうしても時間がかかる。その入場してきた人たちが次第に名古屋リリープラザに設置した5000個の座席を埋めていく。
 

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政子が「ちょっと食べ過ぎたかも。少し寝る」などと言っていたので、私はゴールデンシックスの2人を誘って、映写室に行き、そこの窓から会場内を見た。こちらの照明を落としているので会場からこちらは見えない。
 
「凄いですね。私たちもいつか、こんな人数を前にコンサートしたい」
「毎日歌ってるじゃん」
「ええ。お陰で凄い体験させてもらってます。その内自分たちの名前でやりたいですよ」
「きっとできるよ。私も中学生の頃、他の歌手やバンドのバックで歌ったりコーラスしたりしてて、そんなこと思ってたよ」
 
「その頃は私たちはライブはしてなかったから」
「大学に入ってからですからね。ゴールデンシックス作って街頭ライブとかもやり始めたのは」
「じゃ、キャリアとしては5年くらいかな?」
「ええ。そんなものです。もっともそれ以前、高校生時代にDRKというバンドを組んでいて、それが解散した後、その元メンバーを中心にあらためてゴールデンシックスを作ったから、DRKからは8年になりますけどね」
 
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「それは凄いキャリアだよ」
 
と言いながら、私はあれ?DRKってどこかで聞かなかったっけ?と自分の記憶を辿ってみたが分からなかった。
 
「でもずっとインディーズですから」
「ライブハウスに出るようになったのも1年くらい前からですし」
「大学を出た後だもんね」
 
「学生時代はお金無いからライブハウスなんて出られなかった」
「私たちの場合は、そんなに入場者取れないから、だいたいこちらがお金を払って歌わせてもらうパターンが多いので」
 
「まあ、そういうバンドやユニットは多いよね」
 
「今回氷川さんからお話頂いた時はびっくりしましたよ。いきなり、こんな超大物アーティストのライブに出してもらえるなんて」
 
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「実力はあるのに知名度が無いインディーズの女性ポップスデュオ、というのが今回の企画での絶対条件だったんだよ。君たち上手いもん」
 
「カラオケ対決では勝てないですけど」
「負けたら、さすがに全部譲る訳にはいかないけど、コンサートの冒頭でも歌わせてあげるよ」
 
「加藤課長からは絶対勝つなと言われたんですけど、ケイさんからマジで勝負しろと言われたから、私たちマジで歌ってます」
「うん。それでいい。私もマリも真剣勝負。お互い手抜きとかしたらお客さんがしらけるから」
 
「でもお陰で凄く売れているんですよ。今CDとかダウンロードが」
「この10日間だけで2000枚売れてます」
「それは凄い」
 
APAKはこの10日で300枚ほど売れたと言っていた。こちらが1桁多いのは個性の問題だろうか。この子たちの歌は個性が強い。曲自体も友人が書いているらしいがよくできている。プロ作曲家としてやっていけるレベルだと思った。そして2人のキャラもユニークだ。だから年齢が高くても氷川さんは出してみようと思ったのだろう。
 
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「氷川さんからも、もし6月までに5000枚まで行ったらメジャーデビューしようよ、なんて言われてるんですよ」
「でもメジャーデビューするなら、今のお仕事はどうするの?」
 
「辞めてもいいかなと思ってます。メジャーデビューして売れるかどうかは分からないけど、今の年齢がこういうことに挑戦するには最後のチャンスだと思うし」
と花野子(カノン)。
 
「たまにお仕事しながらメジャー歌手として頑張る人もいるみたいだけど、それって多分歌手も仕事も中途半端になると思うんですよね。だからやるならどちらかだよね、と花野子とは話してるんですけどね」
と梨乃(リノン)。
 
今回のローズ+リリーのツアーは土日を使って6月15日までなので、会社勤めしている彼女たちも参加可能だったのである。平日にやった4月28日だけ休暇を取っているが、そもそも連休中の4月28日なんて休暇を取る人が多いから、問題無く休ませてもらったらしい。
 
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「ふたりとも大きな企業に勤めてるみたいだからもったいない気もするけどね」
「ええ。でも大きい企業だから、女には大事な仕事させてくれないんですよ」
「ああ」
「大学の同級生で社員50人のソフトハウスに入った子は今年もう主任の肩書きもらってバリバリ男性の部下を動かして仕事してるから」
 
「小さい企業だと女の子をお茶汲みだけには使ってる余裕無いからね。但し仕事はさせてもらえるけど、給料は安い」
「ええ。そういう話を聞いてて、人生って、色々選択肢があるんだな、と思いました」
「だったら23歳にもなって歌手デビューも悪くない挑戦かなと思うんですよね」
 
「問題無いと思うよ。演歌なんかになると28-29歳で新人なんてざらにいるしね」
「ですよねー」
 
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