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■夏の日の想い出・公然の秘密(4)

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そしてこの同じ3月5日。KARIONのライブDVD第2弾『KARION 2009 空』が発売された。
 
これは2009年3月1日の横浜公演、2009年5月2日那覇公演、2009年7月29日神戸公演の様子を収録している。そして、これにそれぞれ「リハーサル版」が付いている。
 
リハーサル版では、らんこは全ての曲で、いづみたちと並んで歌っていた。そして、公演本体の映像でも、らんこが、どこか狭い場所でキーボードを超絶プレイしている映像や、キーボードを弾きながらヘッドセットマイクで歌っている映像が映っていた。7月29日の公演では他の伴奏者がみなコスプレをしている中で、本番映像ではダークベイダーがキーボードを弾いている位置にらんこが素顔で立ってキーボードを弾いている映像まであった。それで、この2009年の公演では実はらんこが隠れてキーボードを弾いていたことが分かったのである。
 
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「やはりあの超絶プレイは水沢歌月だったのか!」
というのがファンの間で半分納得をもって受け入れられた。
 
そんな中、ゴールデンウィークのKARIONツアー日程が発表され、チケットも発売されたが、これだけ情報を出した以上、今度のツアーには、2008年以来6年ぶりに、蘭子が表で演奏するのではないかという期待が高まり、チケットは全ての会場の分が、ほとんど瞬殺でソールドアウトした。
 
一方でゴールデンウィークにはローズ+リリーもツアーをやることが公表された。しかもKARIONとローズ+リリーの日程がダブっている。こちらも全て瞬殺でソールドアウトしたが、ケイ=水沢歌月は、ほんとうに両方の公演に出るのだろうか、と若干不安がる人も結構あったようである。
 
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さて3月5日には、もうひとつ音楽界に衝撃を与える作品が発売された。
 
ワンティスの『フィドルの妖精』というシングルである。c/w曲として上島先生の作品『青春の日々』と雨宮先生の作品『Sボーダー』が収録されていたが、問題は『フィドルの妖精』のクレジットで、高岡猛獅作詞・FK作曲とクレジットされていた。この件について、上島先生と雨宮先生が発売記者会見の席上で説明した。
 
「実は昨年『恋をしている』を公開したお陰で、FKさんと連絡が取れたのです」
と上島先生は言った。
 
「それは間違いなくFKさんご本人なのでしょうか?」
「実は『恋をしている』の譜面は、高岡の遺品から発見されたものと、CDとして発売したものが微妙に違うのです。私たちが会ったFKさんは、その高岡の遺品から発見されたものと同じ譜面を所有していました」
 
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「おお、それなら間違い無いですね」
 
「それでそのFKさんが、もうひとつ持っていた高岡と一緒に作った曲の譜面がこの『フィドルの妖精』なのです。FKさんによると、『恋をしている』を作ったのが、2002年8月4日、『フィドルの妖精』を作ったのは2002年11月10日だそうです。実はFKさんが高岡と会ったのはこの2回だけで当時はワンティスの高岡とは知らず、詩作の好きな大学生くらいに思っていたそうです」
 
記者席がざわめく。
 
「FKさんは現在何をなさっているのでしょうか? 会社員か何かですか?あるいは主婦でしょうか? 女性ですよね?」
 
「プロフィールの公開は控えさせてくれということです。お元気であることだけはお伝えしてよいかと思います」
 
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「年齢くらいは?」
「それも控えさせてください」
 

なお、この楽曲の制作では亡くなった高岡さんのパートであるリードギターはnakaさんが弾いている。そして歌唱陣がまた衝撃的だった。
 
上島先生(男声)・雨宮先生(女声)はいいとして、ドリームボーイズの蔵田さんが(男声で)加わり、性転換歌手の花村唯香が(女声で)参加している。これに、支香と百瀬みゆきがコーラスを入れている。
 
「ボーカルは、なんか性別の怪しい人ばかりだ」
「上島さんは怪しくないのでは?」
「いや、絶対怪しいと思ってた」
 
なんて噂まで立っていて、上島先生は苦笑いしていた。
 
ドリームボーイズの蔵田さんが加わったのは本当に驚かれた。
 
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「ワンティスとドリームボーイズの友情にもとづいたもの」と説明されたが、どういう経緯でこんな共演が実現したんだろう?とみんな不思議に思った。
 

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そして記者会見の席で最後に行われた質疑応答は翌日のスポーツ紙のトップを飾ることになる。
 
「高岡さんの作品はもうこれで最後なのでしょうか?」
という記者の質問に対して
 
「それが実は大量に見つかりました」
と上島先生が答えた。
 
「それもFKさんが所有していたのですか?」
「いえ。FKさんと話していて、高岡は絶対大量に2002年以降も詩を書いていたはずと言われるので再度徹底的に探したのです。すると思わぬところから詩が見つかりました」
 
「どこでしょう?」
「高岡が使用していたフィドルというかヴァイオリンを私が保管していたのですが、実はそのヴァイオリンの中に入っていたのです」
 
「ヴァイオリンケースの中ですか?」
「いえ。ヴァイオリン本体の中に、共鳴胴の内側に貼り付けてあったのです」
 
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記者席が大いにざわめいた。
 
「それに気付いて現在、ヴァイオリンをいったん解体して、貼り付けてある紙を専門家に依頼して丁寧に剥がしている最中です。重ねて何重にも貼られている上に、糊で貼り付けてから10年以上の時間が経っているし、万が一にも破損はできないということで慎重に作業を進めてもらっています。作業はおそらく数ヶ月かかります」
 
この件は「遺品のバイオリンに籠められた詩」などといったタイトルで大きく報道されることになった。
 

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「高岡さんの詩が見つかったヴァイオリンってさ、冬がヤフオクで150円で落としたヴァイオリンだよね?」
と松原珠妃は私とお茶を飲みながら訊いた。
 
「そうそう。私がローズ+リリーでデビューしてさ、上島先生のお宅を訪問して、居間の棚に見覚えのあるヴァイオリン・ケースがあるのを見て、正直仰天したよ。その記憶があったからさ、ケイちゃん心当たり無い?と訊かれてあのヴァイオリンに何かありませんか?と言って、それで見つかったんだよ。先生も本当に驚いていた」
と私は答える。
 
「10年の月日を経て遺作が見つかるってロマンだね。だけど『フィドルの妖精』
ってさ、私がデビューする直前に、カラオケ屋さんで私が『黒潮』歌ったのに対抗して、冬が歌った曲だよね」
 
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「よく覚えてるね」
「あの時、何か凄い曲だと思った。『黒潮』以上に売れたりして」
 
「それは有り得ない。『黒潮』は歌謡史上に残る名曲だもん」
「私さあ、あれがあまりにも凄すぎたから、結局あれを越える歌を出せない」
 
「そんなことないと思う。セールス的に及ばなくても、静花さんはこれまでたくさん歌謡史上に残る名曲を歌ってきている」
 
「まあ確かに内容的にはあれを越える曲がいくつかあったね。でもセールスでは越えられないから」
 
「テレビの戦隊物ってさ、敵の怪人は1人で出てくるのに、こちらはチームで戦うじゃん」
「うん」
「あれってずるいとか、いじめではなんて意見もあるけどさ。3人・4人で戦っても結局勝てればいい」
「ん?」
 
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「『黒潮』は400万枚売れたかも知れないけど、たった1曲じゃん。静花さんのその後のヒット曲の売り上げを合計すると、軽く1000万枚越えてるでしょ?」
 
「冬って面白いたとえ方するね〜」
 
と言って松原珠妃は笑顔になった。
 

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「だけど冬って、昔から色々秘密を持ってたけど、その中の最大の秘密を暴露しちゃったね」
と珠妃は言う。
 
「KARIONの件は、古いファンの間では、私と柊洋子が同一人物というのは多分間違い無いとそもそも思われていたから。2009年以降にファンになった人たちの間で知られていなかっただけだよ」
 
「いや、冬はその手の公然の秘密が多すぎるからなあ。鈴蘭杏梨がマリ&ケイだということだって、知らない人はけっこう居ると思うよ」
 
「ああ、それはそうかも。シレーナ・ソニカの2人も鈴蘭杏梨の正体は知らなかったみたいだしね」
「そのシレーナ・ソニカが覆面の魔女というのも公然の秘密だね。こういうのってその方面に関心を持ったことのない人は気付かないんだよ」
 
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「そうだね。松田聖子の『赤いスイートピー』の作曲者・呉田軽穂が、実は松任谷由実って知らない人も多いよね」
 
「でもそれは本人も認めているものだから。水沢歌月の正体はどちらかというと、大場つぐみの正体とか、天宮視子の正体などの事情と似ていた」 
 
「ああ。確かに大場つぐみとは少し似てるかも」
 

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「あと世間に知られていない冬の秘密というと、FKさんの件と、冬がヨーコージの一部だということかなあ」
 
「ヨーコージは別に隠してないけど」
「隠してないけど、しやべってないんだよね」
「うふふ」
 
「でさ」
と珠妃は言った。
 
「私にまだ隠していること無い?」
「なんだろ? 隠していることって」
 
「冬が実は上島雷太と同一人物だとか、冬が実はEliseと同一人物だとか」
 
「まさか!! 私おちんちん無いから愛人を孕ませられないし、子宮が無いから妊娠もできないし」
「いや、冬ならきっと何とかする」
「どうやって!?」
 
「そうだ。もしかしたら冬は私と同一人物かも」
「私が静花さんなら、ここにいる静花さんは誰?」
 
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「ところでさ」
と珠妃は言った。
 
「ん?」
「正直に教えてよ」
「何を?」
「冬、本当に性転換したのはいつ?」
「え?大学2年生の時だけど」
 
「それは公式見解って奴でしょ? 私には本当のこと教えてくれたっていいじゃん」
 
「本当のことも何もホントに大学2年の時にタイに行って性転換手術を受けてきたんだけど」
「いや。絶対冬は、私がデビューした頃、既に女の子の身体だったと思う」
 
「そんなことないよー」
 
「多分冬は小学生の内に男の子の性器は全部取ってしまって、割れ目ちゃんだけ作っておいて、大学生になってから、その時冷凍保存していた元男性器を素材に完全な女性器を作ったんだ。あるいは交通事故か何かで亡くなった女性の性器を移植したとか」
 
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「どこからそんな途方も無い話が・・・」
 

「このボールペンは多分元々ケイちゃんのものだよね。返却した方がいいかな?」
 
と上島先生は青い字の出るボールペンを私に見せた。そのボールペンは10年の月日を経ても、しっかり書くことができた。これも多数の詩を書いた紙と共にヴァイオリンの中に隠されていたものである。恐らくは保管されていた上島先生のお宅が温度・湿度ともに良好な環境なので痛まなかったのだろう。
 
「いえ、高岡さんはそのボールペンでたくさん詩を書いたみたいだから、良かったら、高岡さんにいちばん縁のある先生が持っていて頂けませんでしょうか?たぶん、私と高岡さんは年月を経て、青い字の出るボールペンと、青いボディのボールペンを交換したんです」
 
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私がそういうと、上島先生は頷いておられた。
 
ヴァイオリンに封じ込まれていた高岡さんの詩は全て青い字で書かれていた。12年前に私が高岡さんに渡したボールペンで、高岡さんは詩を書いていたのである。
 
「僕もこのボールペンで詩を書いてみようかなあ。僕の詩が最近ちょっと行き詰まっていたの、ケイちゃんなら気付いていたでしょ?」
 
と上島先生はおっしゃったが、私は何も答えなかった。
 
『フィドルの妖精』にカップリングした上島先生の作品『青春の日々』の詩はこの青い字のボールペンで先生が書いたものである。
 
「マリちゃんが、道具で意識が左右されるんだ、と言ってたけど、ほんとにそうだと僕も思う」
「はい、その意見には私も賛成です」
 
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3月11日(火)。震災から3周年を迎え、日本列島全体がまた亡くなった人たちの冥福を祈り、復興への決意を新たにする。
 
昨年、ローズ+リリーは3月11日に福島市で突発ライブをしたのだが、今回はKARION, XANFUS と相乗りで東京都内のホールを使い、復興支援イベントを行った。
 
これは実質「08年組」の再起動イベントにもなった。
 
このイベントでは、入場料を「御厚志」とし、イベント終了後に出口の所に入れる箱を置きそこに投入してもらう形にした。そして集まった金額、およびそれと同額をローズ+リリー、KARION, XANFUSが出し合って、被災地に寄付することにした。
 
実際にはチケット自体は1000円で販売しているが、1800人の入場者が平均7000円ほど入れてくれていて、チケット販売代金と合わせて1500万円ほどの入場料があり、ローズ+リリーの2人、XANFUSの2人、KARIONの「4人」の合計8人で200万円ずつ出し、更に各々の事務所(サマーガールズ出版・&&エージェンシー・∴∴ミュージック)と★★レコードも各々400万円ずつ出して、合計4700万円を寄付した。
 
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