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■夏の日の想い出・公然の秘密(3)
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この篠田その歌の結婚式の少し前、1月20日から、ローズクォーツのコンセプトアルバム『Rose Quarts Plays Sakura』の制作が始まっていた。大宮副社長の方針で、月火の休みが無くなったので、敢えて月曜日から制作を始めるというショック療法である。
実際問題として月火がローズクォーツ休みというのは、私が多忙でなかなか時間がとれないこととあいまって、音源制作上で結構ネックにはなっていたのである。
今回の音源制作では大宮さんが陣頭指揮を執り、20日から27日に掛けて楽器演奏部分を収録。28日から31日に掛けて、私と政子がスタジオに入ってボーカル部分を別録りしている。実際の音作りに関してはタカとサトによく意見を出させ、ふたりの感性に沿った形で制作をした。あまり色々な楽器を使わずに、シンプルに、ギター・ベース・ドラムス・キーボードの音中心。せいぜい幾つかの曲にサトのフルートをフィーチャーしたくらいでまとめている。また、タカとサトは28日から31日に掛けてのボーカル収録にも同席した。
このアルバムのジャケ写には、政子の中学入学式の時のセーラー服写真と、政子から提供された!私の中学入学式の時のセーラー服写真が使用される。背景をPhotoshopで専門家がうまく処理して、ふたりが並んでいるかのような画像にまとめた。マキ・タカ・サト・ヤスに関しては、現在の彼らに学生服を着せて撮影した。
「タカさん、学生服で良かったの? セーラー服を着ても良かったのに」
などと政子が言っていたが、タカは
「遠慮する!」
と応じていた。
でも「10万枚」のプレスが終わった後で、サンプルとしてもらったCDのジャケ写では、タカがしっかりセーラー服姿になっていてタカは「なぜだ〜〜〜〜!!?」
と叫んでいた。(当然プレスし直しは有り得ない)
『Rose Quarts Plays Sakura』の音源制作が終わった翌日、2月1日から3日は、KARIONの4月に出すシングルの音源制作をした。メンバーの卒論制作のための休暇をはさんで5ヶ月ぶりの始動である。
KARIONのいつものシングルはだいたい3曲構成なのだが、今回は特別に5曲構成とした(6月までの特別価格1280円)。
泉月の『NEWS』、福孝の『ビートルズのように』、広花の『時空を越える恋』
という、KARIONの代表的な作曲ペアの作品をひとつずつ並べた上で、昨年のアルバムのタイトル曲になる予定だったのを外した『愛の三角錐(Love Tetrahedron)』
(泉月)および、ゆきみすず作詞・すずくりこ作曲『四つの鐘』という2曲が加わっている。
ゆき先生はKARIONの初期のプロデューサーである。先生が病気で入院してプロデュースを降りた後、和泉と私がKARIONの楽曲制作の指揮を引き継ぎ、その後5年間やってきた。今回はKARIONの新たなスタートということで、特別に楽曲を頂いたのである。
今回の伴奏は、TAKAO:Gt HARU:B DAI:Dr SHIN:Sax MINO:Tp に加えて、和泉のグロッケン、私のキーボード、それに数年ぶりに夢美がヴァイオリンで加わり、多重録音無しで行っている。
今回のシングルのジャケ写は、四人でミニスカを穿いた構図である。
小風が黄色、和泉が赤、私がピンク、美空が青の衣装を着て並ぶが、それぞれ巨大な洋鐘に抱きつくようにしている図になっている。
そしてKARIONの音源制作が終わると次は4日から6日まで、ローズ+リリーの音源制作である。
曲はマリ&ケイの『幻の少女』『時間の狭間』『女神の丘』『花の国』および上島先生の『愛のデュエット』である。
伴奏はもちろんスターキッズで、全曲リズム楽器・電気楽器を入れずに演奏している。曲によって担当は微妙に変わるが、だいたいの担当は
近藤:Ac.Gt 七星:Fl/Sax 月丘:Mar/Pf 鷹野:Vn 香月:Vla 宮本:Vc 酒向:Wood-Base/Perc
という所で、これに私と政子もヴァイオリンで加わっているのでヴァイオリンは鷹野さんも加えて3人での演奏になっている。
こちらもKARION同様多重録音は今回行っていない。
「ケイちゃん、最近アコスティックの音にハマってるね」
と近藤さんから言われる。
「打ち込み・電子の音の全盛時代ですからね。だから、こういう音があっていいんじゃないかと思うんですよ」
と私は言う。
「スターキッズの12月のアルバムも全部アコスティックだったね」
と政子が言う。
「あれは七星の趣味だな。でも売れてるんで、ちょっとびっくりした」
「前作は22万枚で、あとちょっとでプラチナに届かなかったけど、きっと今回は25万枚越えますよ」
「行けるといいね」
2014年2月5日(水)。『Rose+Lily 2008&2009』なるDVDが発売された。ローズ+リリーの2008年および2009年のライブ映像を収めたものである。
ここで2008年は分かるが2009年のライブ映像が存在していたことに多くのファンが驚いた。
収録された映像は、2008年11月30日のローズ+リリーの東京公演の映像と、2009年5月15日のプライベートライブの映像が中心である。11月30日の公演はローズ+リリーが活動停止になる前の最後の公式ライブの映像だが、2009年5月15日の映像は、このようなライブが存在していたことを知っていた人はほとんどいなかったため、本当に驚きを持って受けとめられた。(実はAYAが自分の番組でそれっぽいことに言及したことはあった)
更に「おまけ」と称して幾つかの単発的なライブ映像が入っていたのもファンの心を刺激した。
2008.7.29 ストリートライブをしている映像
2008.8.30 富士急ハイランドで歌った映像
2008.9.27 デビュー日に埼玉のプールで水着姿でマリとケイが歌う映像。
2008.12.13 ロシアフェアで歌った映像。
2009.8.01 千葉のフェスで《ロリータ・スプラウト》として歌った映像。
2009.8.14 伊豆のポップフェスティバルで歌った映像。
2009.11.22 沖縄のXANFUSライブで覆面をして歌った映像。
2009.12.25 アイドルクリスマスで歌った映像。
ストリートライブの日付が「ローズ+リリーが生まれた日」とされる8月3日より前なのも驚かれた。
伊豆のフェスやクリスマスイベントなどは
「やはりあれローズ+リリーだよな?これで俺が嘘つきでなかったことが証明された。あの時はローズ+リリーが出てたの見たと言っても誰も信じてくれなかった」
などと言っていたファンも居た一方で
「これ見てる。そうか、あれローズ+リリーだったのか!」
という声も多数寄せられた。当時はその正体に気付いていなかった人も多かったのである。沖縄のXANFUSライブの映像については
「とうとう『謎の女子高生ふたり組』の正体をバラしてしまったのか」
「仮面をとうとう脱いだんだな」
と言った声が寄せられた。
またデビューイベントの画像や、デビュー前の映像などは、画質・音質は悪いものの、貴重なデータとして喜ばれたようであった。
政子はこの古い映像を再生しながら
「ぐふふ。女子高生の冬ちゃん、可愛いなあ。ねえ、そろそろカムアウトしなよ。冬って、男の子だった時代が存在しない。生まれた時からずっと女の子だったんだって」
とか
「水着姿の冬ちゃん、どう見ても女の子のボディラインだよ。ね、ね、本当はもうあの頃は性転換済みだったんじゃないの?」
などと言っていた。
「だってデビューイベントの時の私のタック、マーサが私のおちんちんに触りながら、テープを貼り付けて処理してくれたじゃん」
「あれはおちんちんに見せかけたディルドーだったんだよ」
「あの時、勃起したよ?」
「勃起させられるディルドーもあるよ。冬のおちんちんは既に中学の頃には立たなくなってたという証言もある。だから立ったのが逆に怪しい」
ローズ+リリーのDVDが発売されて、その衝撃の余韻がまださめやらぬ内、2014年2月12日(水)、『KARION 2008 鐘』なるライブDVDが発売された。
KARIONのライブDVDについてはこれまでずっと発売して欲しいという声が寄せられていたのに、∴∴ミュージックはライブCDは毎年出していたもののDVDについては、ずっと保留していた。デビューから6年たってやっと発売したのだが、その中身を見たファンが驚愕する。
そしてなぜ今までこの映像が発売されなかったのかがよく分かったのである。
『KARION 2008 鐘』は2008年7月20日東京公演と、2008年11月1日札幌公演を収録したものである。そして「初版限定特典」として、幾つかの映像がおまけで付いていた。
・デビューCDに含まれる『幸せな鐘の調べ』『鏡の国』のPV。
・3rdCDに含まれる『Diamond Dust』のPV
・4thCDに含まれる『水色のラブレター』『秋風のサイクリング』のPV
・2007年とだけ日付が記された、KARIONがCDショップらしき所で歌っている映像。
そしてこれらの映像全て、歌唱者は4人であった。
7月の公演では柊洋子はずっとキーボードを弾きながらヘッドセットマイクを使って一緒に歌っている所が映されている。そして鏡の国ではキーボードから離れて前面に出ていき、4人で並んで左右対称の衣装になり、いづみ・ようこ、こかぜ・みそらが鏡になって歌っていた。
11月の公演では柊洋子は歌唱には参加していない。柊洋子のパートはコーラス隊のリーダーの子が代理歌唱している(つまり結局4声で歌っている)が、柊洋子はずっとキーボードを弾いている。
しかしこの11月公演については「リハーサル版」が添付されていて11月3日の金沢公演前のリハーサルが収録されているのだが、このリハーサル版では、柊洋子はキーボードを弾かずに、いづみ・みそら・こかぜと並んで前面で歌っているのである。
このライブDVDの「歌」を過去に発売されたKARIONのライブCDの歌と比較してみると、全く同じであることが分かる。つまり、毎年発売されていたライブCDは実際問題として、らんこが歌唱参加したバージョンだったのである。
「だけど冬って、たくさん名前があるんだね」
と、仁恵は言った。
★★レコードの一室で、私と政子は仁恵・琴絵と一緒にお茶を飲みながら話していた。仁恵と琴絵は4月から★★チャンネルに就職することになっており、現在既にバイトとして働き、実質正社員並みの仕事をしており、お給料も正社員並みにもらっている。
「柊洋子、水沢歌月、蘭子、ケイ、鈴蘭杏梨。それに唐本冬子」
と仁恵はリストアップした。
「民謡の名取りさんで、若山冬鶴というのもあるよ」
と政子は言うが
「それは4月になったらもらうことになっている」
と私はコメントする。
「冬って5人くらい居るんじゃないかというのは良く言われたけど、多分、柊洋子、水沢歌月、天野蘭子、ケイ、杏梨、唐本冬子が各々別人格として実際に存在して、バラバラに動いてるんだよ」
と政子。
「なるほどー!」
「だからきっと、水沢歌月ピアノ、柊洋子ヴァイオリン、天野蘭子ギター、杏梨ベース、唐本冬子ドラムス、若山冬鶴胡弓で、ケイが歌える」
などと政子は言う。
「お、それはそういうライブを是非」
「無茶な!」
「高校時代はこれに加えて唐本冬彦が学生服を着て男子高校生の振りをしていたんだよね」
と政子は言うが、私は
「性転換したから、もう唐本冬彦は消滅」
と言う。
「ああ、でもあれはやはり男子高校生の振りというか、男子高校生のコスプレしていただけだよね」
「そうそう。冬って最初から女子高校生だったよね」
と仁恵・琴絵は言った。
2014年3月5日(水)。ローズクォーツの久々のコンセプトアルバム『Rose Quarts Plays Sakura』が発売された。基本的には春らしく桜をテーマにした曲を集めて作ったものであるが、ここで思わぬ反響が起きる。
「このアルバムはケイちゃんがローズクォーツを卒業する記念アルバムですか?」
という問合せが殺到したのである。
確かに桜を歌った曲というのは別れの歌が多い。実際このアルバムの中の曲でもさよならとか、新しい道とか、そんな歌詞がたくさん出てくる。
元々ケイがオーバーフローしているのでは?というのは、昨年頭(正確には2012年12月17日)にマリがローズクォーツから離れることを発表して以来ファンの間でも音楽関係者の間でも言われていたことである。
マリの負荷が大きすぎるので、ローズクォーツの通常の活動からマリが離れるというのを発表した訳だが、どう考えてもケイの方がもっと負荷が掛かっているというのが多くの意見だった。
おりしも今年1月、ケイが実はKARIONの蘭子=水沢歌月として2008年以来ずっと活動していたことが明らかになり、そこまでやっていたらとてもじゃないけどローズクォーツまでやるのは無理と多くの人が考えていた。
これに関しても私や事務所、レコード会社では取り敢えずコメントは差し控えた。
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