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■夏の日の想い出・歌姫(2)

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「でも和泉がグロッケン打ったら、歌えないよ」
「うん。だから、トラベリングベルズはローズ+リリーの伴奏をするのではないかと。そしてスターキッズがXANFUSの伴奏をして、パープルキャッツがKARIONの伴奏をするとか」
「ああ、それは面白いね」
 
「そういう予定無いの?」
「考えてなかった。提案してみてもいいけどね」
「リハとかしてるの?」
「全然。日程的に無理。この3組が同じ日に集まれただけでも奇跡。それもお互いかなり無理して予定をずらして空けたというのに近い。ローズ+リリーもKARIONも今年後半休むから、前半にスケジュールが詰まってるんだよ。だから今回のライブはマジぶっつけ本番」
 
「ね、ね、ゲストにAYAが出てくるという説は?」
とAYAの熱心なファンの小春が訊く。
 
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「さあ、知らないなあ」
 

博美たちにはリハはしていないとは言ったものの、私たちはこのジョイント・ライブに向けて結構な準備を進めていた。
 
とにかく実際の演奏者を本当に集めてリハーサルをすることが困難であるだけに、やれるだけのことをやっておこうと話し合った。マリが出場できることが確定した28日の夜、偶然にも和泉・光帆の「深夜0時から朝6時まで」の時間帯が空いていたので、徹夜で企画会議をすることにした。
 
出席者はこの三人の他に、今回のライブ・プロデューサーを引き受けてくれたスイート・ヴァニラズのEliseとLonda、★★レコードのXANFUS担当・南さん、ローズ+リリー担当・氷川さん、KARION担当・滝口さん、その上司の加藤課長である。Eliseの強い要請によりアルコール入りであったが、飲んでいたのは実際にはElise, Londa の二人だけで、他には光帆が少し眠気覚ましに口に含む程度だった。他に大量に食糧を用意していた。
 
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シナリオの叩き台は私と和泉と光帆がメーリングリストで作っていたので、それをベースにお互い遠慮無く意見を出し合い調整して行く。
 
事前の叩き台があったので、セットリストは最初の1時間ほどでほぼ確定した。その後、そのセットリストに基づき、テーブルの上で KARION人形、XANFUS人形、ローズ+リリー人形、および各々のバックバンドの人形を手で動かして、シミュレーションを行い、問題点を洗い出した。
 
結構ハードな会議で、途中で滝口さん、Eliseが眠ってしまったが、構わず続行して5時頃にだいたいまとまった。光帆は事前に私と和泉に「もし眠ってしまったら起こして」と言っていたので、何度かウトウトとしていた所を起こされた。3組の中ではいちばんアイドル色が強いユニットでスケジュールもハードなので疲れがたまっていたのだろう。
 
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この打ち合わせの結果を基に「代理リハーサル」もやはり深夜時間帯を使って実際のホールに見立てた別の会場で2度実施した(実は深夜に使えるホールは少ない)。「仮想XANFUS」「仮想KARION」「仮想ローズ+リリー」の役をしてもらう人たちに実際に歌ってもらったし、バンドも3組の代理バンドに出演してもらい伴奏をしてもらった。
 
1回目はElise,私,和泉,音羽にSKの近藤さん,TBのSHINJIさん,PCのkijiさん、2回目はLonda,私,和泉,光帆にSKの七星さん,TBのTAKAOさん,PCのmikeさんが立ち会った。★★レコードの加藤さんと南さんはずっと付き合ってくれたが、滝口さんと氷川さんは敢えて休ませた。畠山さんや須藤さん、XANFUS事務所の斉藤さんから、事務所からも誰か出しますという話があったものの、むしろ私や和泉、音羽たちに決定権を委ねてくださいということにして、事務所からは敢えて人を出さなかった。それでも「純粋な雑用係」としてUTPの悠子がボランティアしてくれたので、遠慮無くコーヒーを入れたりするのに使わせてもらった。
 
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「しかし、和泉ちゃんもケイちゃんもよく身体がもつね」
ともう半分ダウン仕掛けの南さんから言われた。
 
「なんかこの手のハードさには耐性が出来てるよね」と私。
「徹夜で楽曲作成とか、他のアーティストと徹夜で飲むとか、結構あるし」
と和泉。
「ああ、それをしばしば仕掛けてるのは Eliseだな。本人は高確率で眠ってしまうが」とLondaさんも笑って言っていた。
 
「企画会議でも前回の代理リハでもEliseさん、途中で寝てましたね」
と南さん。
「あの子は3時になると自動的に眠ってしまう体質なのさ」とLonda。
「健康的で良いかも。私、その手のリミッターが無いから」と和泉。
 
「でも徹夜するとどうしてもホルモンバランスが崩れる感じだ」とLonda。「ああ、それは私も感じます」と和泉。
「右に同じ」と私。
 
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「ケイってこういう時はホルモン剤の量とか調整してバランス回復させるの?」
とLondaが訊く。
 
「あ、私もう3年近くホルモン剤は摂取してないです。体内で女性ホルモンが生産されているので」
「へ?」
 
「ケイって生理もあるんですよ、信じがたいことに」
と和泉。
 
「あんたの身体、どうなってんの?」
「いや、それが私にもよく分かりません」
と言って私は照れ笑いをした。
 
「ところで、いづみもケイも卒論は大丈夫か?」とLondaに訊かれた。
 
私と和泉は顔を見合わせて「どうしようか?」と言った。
 

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2度目の代理リハーサルが終わった翌朝、6月15日。ライブ前日である。私は午前中ひたすら寝たのち10時頃に町添さんからの電話で起こされた。
「はい。お伺いします」
 
疲れてはいても町添さんからの呼び出しでは行かなければならない。私は指定された品川駅近くの喫茶店まで出かけて行った。個室に入って話をする。
 
「忙しいのにごめんね」と町添さん。
「忙しいですー」と正直に言う。
「疲れたまってない?」
「もうクタクタです」
 
「そうそう。槇原愛の新しい音源聴いたよ。今度はのはちょっと面白いね」
「あちこちから猛反対されました。でもマリの発案なんですよ」
「何度もは使えない手だけど、これは絶対インパクトある」
「そうでしょうね」
「いや、こないだ何気なく槇原愛が売れてないなんて言っちゃって済まなかったと思って」
と町添さん。
 
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「いえ事実ですから。今回のも試みとしては面白いですが成功するかどうかは賭です。そのままお祓い箱になっちまえ、と言われてしまったら沈んでしまいます。休養前最後のCDだから訂正が効かないし」
と私は注意を促す。
 
「そのあたりは微妙なファン心理だよね」
と町添さんも言う。
 
「それから、ついこないだまでは★★レコードの七大アーティストなんて言ってたんだけど、八大アーティストという感じになってきたね」
と町添さん。
「はい?」
 
「KARIONの最近の伸びが凄い。昨年末の『雪うさぎたち』で待望のミリオンを到達したし、3月の『春風の告白』もトリプルプラチナ。もうスリファーズやXANFUSとセールス的に肩を並べてきた。人気ではとっくに肩を並べてたんだけどね」
 
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「KARIONのファン層は10代20代の若いアイドル好きの世代と、30代40代のファミリー層から構成されてるんで、後者がなかなか購入行動に出ないんですよね。だからどうしても人気の割にセールスが上がらないんです」
 
「でもそれは悪いことではないよ。幅広い層に支持されるというのは大きな財産だから」
 
「ええ。私、和泉たちからローズ+リリーで何枚もミリオン出してるのにKARIONでミリオン出してないのはなぜだ?と責められてましたから。2012年中にミリオン出せなかったらKARIONのサブリーダーを辞任する、と言ってたんですけどね。辞任にならなくて良かったのやら悪かったのやら」
 
「サブリーダー? 君、KARIONのサブリーダーなの?」
「そうなんですよ。私が居ない時に、3人で勝手に決めちゃったんです」
 
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「あはは、それは面白い。あ、そうそう。それでね。忙しくて疲れているのにほんとに申し訳ないんだけど、ちょっと静岡県某所まで行って来てくれない?」
「今からですか?」
「うん。ちょっと急ぎの用事で」
 
「私、部長のことを鬼と呼んでいいですか?」
「あはは。まあ、そう言わずに。運転手は用意しておいたから」
「あ、車ですか?」
「うん。新幹線とかのルートから大きく離れてるんだよ」
「分かりました。で、用事は何なんですか?」
「まあ、行けば分かるから」
「はい?」
 
そんなことを言いながらお店を出る。町添さんは携帯でどこかに掛けている。その「運転手」を呼び出しているのだろう。やれやれ。運転手というのは氷川さんかな?
 
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と思ったら、ビルを出た私たちの前に見慣れたアクセラが走ってきて停まる。
 
へ?
 
私は町添部長の顔を見た。
 
「いや、マリちゃんから頼まれたんだよ。僕としても、君がここで失恋でもして、精神的に不安定になられたりしたら、★★レコードの屋台骨に関わるからさ。明日の午前中水戸のFM局の仕事はマリちゃんがひとりで行くことになったと連絡しておいたから」
 
「あ。えっと・・・・・」
「まあ、楽しんできてね」
 
と言って部長は手を振って楽しそうに駅構内に消えて行った。
 
私はふっと息をつくと、正望の車の助手席に乗り込んだ。
 
「運転手さん、行き先はどこですか?」と私。
「僕が初めて女の子の姿のフーコを見た所」
と正望は言って、私にキスした。
 
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「恋人岬?」
「うん」
「私、寝てていい?」
「いいよ。着いたら起こすから」
 
私たちは再度キスした。
 

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そして6月16日がやってきた。午後2時開演。定員4000人の会場は満員である。
 
客電が落ちる。勢いよくドラムスのフィルインが打たれ、ベースとギターの音も鳴り出す。キーボードがコラボCDの曲『仲間の唄』の前奏を演奏する。割れるような拍手が起きて幕が開く。が同時に戸惑うような空気が流れる。
 
ステージの前面に立っているのは、小風・マリ・光帆、3人のみである。3人がユニゾンで歌い出す。そしてキーボードを弾いているのは和泉、ギターを弾いているのは音羽、ベースを弾いてるのが美空で、ドラムスを打っているのは私であった。
 
その状況が認識されはじめた所で再度割れるような拍手と歓声が起きた。
 
演奏が終わった所で、楽器を演奏していた4人もステージ前面に出ていき、
「こんにちは!」
と一緒に叫ぶ。
 
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7人を代表して和泉が今日来てくれたことへの御礼を言い、そのまましばらくトークをする。
 
「私たち《08年組》は、2008年の1月2日にKARION, 9月27日にローズ+リリー, そのちょうど一週間後の10月4日にXANFUSがデビューしています。それで最初にデビューしたユニットのリーダーだから、あんたが最初のMCしなさいと言われて、この役を仰せつかりました」
 
「他に4月29日がAYA, 11月13日がスリーピーマイスですね」
と私が隣から補足する。
「CDの発売日って普通は統計的に有利になるように水曜日に設定するんですけど、08年組の5つのユニットの中で水曜日にデビューCDが出たのはKARIONだけなんだよね」
と反対側の隣から光帆が補足する。
 
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「ローズ+リリーとXANFUSの場合は、デビューイベントを土曜にやりたいというので、そちらが優先された感じで、AYAの場合はデビュー直前にトラブルがあってずれ込んでしまって、スリーピーマイスの場合は本人たちによると適当に決められたんだそうです」
と更に私が言う。
 
「でもデビューが決まってから実際にデビューするまでの期間がいちばん長いのはAYAなんだよね。オーディションから始まって途中プロデューサーが2度も変わって結局1年近く掛けてる。KARIONは2ヶ月、XANFUSも2ヶ月、スリーピーマイスは3ヶ月、ローズ+リリーも3ヶ月くらいだよね?」
と和泉。
 
「そそ。ローズ+リリーは話が決まってから半月でデビューしたと思われているけど、実は私たちのメジャーデビューはCD発売の3ヶ月前、6月には決まっていた。まだ当時は名前も決まってなかったけど」
と私。
 
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この情報はあまり知る人がいなかったようで「へー!」という声が場内であがっていた。
 
「当時のレコード会社内部での仮の名前はイチゴ・シスターズだったらしい」
と和泉。
「うん。でも、その名前はさすがに勘弁して欲しいって感じだ」
と私。
 
これには客席から笑い声が起きる。
 
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