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■夏の日の想い出・眠り姫の目覚め(3)

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「ええ。このCDを聴いた人だけが分かる秘密です」
「あはは、面白いですね。DHMOみたいなものですか?」
 
「そうですね。ジ・ハイドロゲン・モノ・オキサイド、なーんて言うと凄い化学物質みたいだけど、化学式書いてみたら実は・・・って奴かな」
 
「ローズ+リリーのクレジットのCDは出さないんですか?」
 
「これまだ非公開なので放送では言わないで欲しいのですが、11月くらいに出す予定です]
「おお、それは楽しみだ!」
 
11月というのは、私たちの名前でのCDをあらためて作る日程として私と町添さんとで決めた期日である。ただし今回そのために用意していた楽曲を使ってしまったので、新たに「ミリオン行きそうな曲を書いて」などと言われていた。
 
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私は今回の『夏の日の想い出』のキャンペーンで全国10ヶ所ほどのFM局に出演したが、どのDJさんもCDを聴くとみんなこのCDが実質ローズ+リリーのCDであることに気付いた。またサイン色紙もローズ+リリーのサイン色紙の方をくださいと言われたが、一応「抱き合わせ商法」でローズクォーツの色紙も押しつけて来た。実際の放送でも
 
「これマリちゃんとケイちゃんで歌ってるから実質ローズ+リリーのCDにも聞こえますね」
 
などと言っちゃったDJさんも複数いた。この情報の拡散が明らかにこのCDの売り上げを押し上げたし、2chやツイッターなどにも「このCDは事実上、ローズ+リリー伴奏クォーツだ」という書き込みが多数見られた。
 
22日は札幌の後、飛行機で青森に移動し、青森市内でキャンペーン。この後新幹線で移動して、他のメンバーは仙台に泊まったのだが、私は盛岡で途中下車。予約していたレンタカーを借りだし、大船渡に入って、青葉の家族の通夜に出席した。予告していなかったので青葉が驚いていた。喪主席からわざわざ離れて寄ってくる。
 
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「お忙しい所、ありがとうございます」
「香典は明日政子がふたり分一緒に持ってくるから」
と言って記帳だけする。
 
「いえいえ、お気を使わないで下さい」
「あ、これ札幌から来たから、白い恋人。青葉、お友だちがたくさん来てるみたいだし、その子たちで分けて」
「わあ、ありがとうございます!」
 
察して近づいてきた同級生っぽい女の子にそちらは渡していた。
 
私は読経しているお坊さんに気付いた。
 
「あの導師の方、何者?」と私は小声で訊いた。
「私のお師匠さんなんです」と青葉。
 
「何なの?あの物凄いオーラは?」
「ああ、冬子さんにも分かりますか?」
「私、ふつうオーラとか見えないけどさ、さすがにあのオーラは分かる」
 
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「ふつうにオーラが見える人にはかえって師匠のオーラは見えないんです。隠してるから」
「隠したって、あれは分かるんじゃないの?」
「かえって、ふつうに感覚の鋭い人には分かる場合があるんですよね」
 
「なるほど。青葉のオーラも凄いけどさ。青葉のオーラがジャンボジェットなら、あの人のオーラは空母だよ」
 
(ジャンボはだいたい全長70m, 米軍の空母ロナルド・レーガンは全長333m)
 
「はい、そのくらいはありますね。私が感じ取れる範囲でも。でも多分、本体はもっと凄いです」
「へー」
 
私はその後、参列者席に座り、読経の声を聴き、焼香した。焼香して読経している僧侶たちに一礼した時、導師をしている青葉のお師匠さんが私を見てニコッと笑ったような気がした。
 
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ドキッとする。
 
私は再度一礼し、その後、喪主に一礼して席に戻った。
 

通夜が終わってから、お食事に一緒にどうぞと言われる。
 
「宿も手配しておきましたから」
「ありがとう。青葉、毎朝4時に起きるよね?」
「はい」
「起きたら私を起こして。たぶん熟睡してると思うから。4時半には出て仙台に向かわないといけないんだ」
「了解です」
 
食事の場所に行くバスが来るまでの間、私はさきほどから書きたくて書きたくてたまらないでいたものをメモ用紙に綴り始めた。さきほど焼香の時に青葉の師匠から、気の塊のようなものをもらった気がした。それを書き留めておきたかったのである。
 
最初あふれ出してくるメロディーをABC譜方式で書き、そのあと、更に浮かんでくる詩も書き留めた。そして最後に私は『Two Hundred Year Dream』と書いた。その作品を発表するのは2年後になる。しばしば大ヒットになる作品は作ってから発表するまでに長期間の時間経過があることを、私と政子はかなり後になって意識するようになる。政子はその期間のことを「熟成期間」と呼んだ。
 
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翌朝、本当に熟睡していた所を青葉が4時過ぎに起こしてくれた。
 
「ありがとう。ごめんね。青葉の方がよほど大変なのに。頭を覚醒させるのにその付近、ジョギングでもしてこようかな」
 
「いえ、それよりヒーリングしましょう」
「えー?大丈夫?」
「はい、OKです」
 
と青葉は笑顔で答えた。
 
がヒーリングを始めるなり、え?という顔をする。
 
「何だか、これ前回見た時より凄くよくなってますが・・・・」
「え? そうなの?」
「もうヴァギナは完全に回復してますよ。更に・・・あ、ヴァギナの奥に小さいんだけどまるで子宮みたいな空間が」
「へ!?」
「これ、誰かヒーラーに見せました?」
「ううん」
 
「私にはどうやったのかが読めない。明らかに私より遥かにパワーのある人の手が入っている」
 
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「青葉より凄い人なんているの?」
「いますよ。高知の菊枝という姉弟子が強烈です。それより凄いのが高野山にいる兄弟子の瞬醒という人で、もちろん瞬嶽師匠はすごいですが・・・あっ」
「ん?」
 
「これ、師匠の手かも」
「あ、そういえば昨日、焼香した時に、青葉のお師匠さんと目が合って、ニコっと微笑まれたような気がして」
 
「師匠、その瞬間にこんなに治療しちゃったんだ!」
「え?あの瞬間で!?」
 
「今かなり楽じゃないですか?」
「うん。実は痛みが無いなと昨夜寝る時から思ってた」
 
「私、ほんとにまだまだ師匠にはかなわないなあ」
「青葉も200年やってたら、きっと追いつけるよ」
「さすがに200年生きる自信無いです!」
 
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「でもですね」と青葉は言った。
「多分この後、冬子さん、月に1回くらい痛みが来ます」
「へ?」
「これ絶対生理が始まるから」
「えーーー!?」
 

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青葉に結局20分ほどヒーリングしてもらってから車に乗り込み仙台に向かった。7時半に仙台に着く。放送局に入り、クォーツの3人が来るのを待った。顔なじみのアナウンサーさんから「早いですね」と声を掛けられる。
 
「ええ。ちょっと友人の家族の葬儀で気仙地方某所に寄ってきたので」
「そちらから車で移動ですか?」
「ええ。向こうを朝4時に出てレンタカーで走ってきました」
「わあ、大変でしたね。葬儀って、もしかして震災絡みですか?」
「ええ。一家全員を失って、中学生の女の子ひとり残ったというケースで」
「ぎゃー」
 
「やっと全員の遺体が見つかったので本葬儀をしたんですよ。でもこれ取材はしないでくださいね。できるだけそっとしておいてあげたいので。私たち友人みんなで少しずつ励ましているんですよ」
 
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「分かりました。でもその手の話も今回はかなりありますね」
「ええ」
 
「ところでケイさん、前回お会いした時と雰囲気が少し変わってる。もしかして性転換しちゃったとか?」
 
「しました。これは別に隠してないですから、人に言ってもいいですよ。でもですね。私の雰囲気が変わったのは、多分、性転換より震災の影響が大きいです。私も地震が起きたときは仙台にいたので。あれで自分の心の中にパラダイムシフトが起きたんですよ」
 
「ああ。あれはホントに生き方も価値観も変わっちゃいますよね」
 

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その日は仙台の後で山形・秋田と足を伸ばし、空路帰京する。そして24日から26日までは関東方面を回り、27日に群馬・長野に行き、その後クォーツのメンバーは金沢に移動したのだが、私は高岡で途中下車して青葉の自宅を訪問した。
 
「狭い所で済みません」
「いや私とか大学に入って当初は2DKのアパートに住んでたから」
「2DKでは楽器を置くのにも困るのでは?」
「うん。それでエレクトーンは政子の家に置いて、他の楽器は実家に置きっ放しだったよ」
 
「冬子さん、ローズクォーツではキーボード、KARIONではキーボードとヴァイオリンを弾いておられますけど、他にも色々楽器なさるんですか」
 
「・・・・KARION?」
「名前クレジットされてないけど、冬子さんの演奏ですよね。波動が同じだもん」
 
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「それ誰かに言った?」
「いえ。私はクライアントに関することは他言しません」
「うん、それは絶対誰にも言わないで」
 
「ああ、非公開なんですか?」
「うん。割とトップシークレット。★★レコード内でも知っているのは3人しかいない。しかし参ったな。波動で分かっちゃうのか」
 
「まあ分かる人は国内に10人もいないと思いますけど。先日FMで新しいアルバムが紹介されているのを聞いて、あら、と思ったんです。過去のKARIONのCDを全部買ってみたら、冬子さんだけですよね。デビューシングル以降、全てのCDの演奏に参加しているのは。声をいろいろ変えてるみたいですけど、メインのボーカルにもしばしば参加してますね」
 
「変えた声まで分かるんだ! 凄いよ、青葉。そうなんだよね。バックバンドの人でTAKAOさんとSHINさんは2枚目のシングルから参加しているけど、最初から参加している人は他にいない」
 
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「コーラスには普通に毎回参加してますよね。デビューシングルの中の『鏡の国』
は、いづみさんと一緒に普通の声でリードボーカルを歌ってますし」
「ほんとによく分かるね」
 
「あと、作曲者の水沢歌月というのも冬子さんですよね?」
「参った、参った。でも誰にも言わないでね」
「はい。私たちは守秘義務がありますから」
 

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ヒーリングの後、そのまま夕食も頂いて泊めてもらったが、青葉のお母さんは芸能人だからと変に騒いだりもせず、ふつうに青葉の友人として私を受け入れてくれた。その自然な雰囲気は、ああこれなら青葉もここには居心地がいいだろうなと思わせるものがあった。食事の後、青葉の部屋でしばらく話していた。
 
「冬子さん、留置き式のダイレーター使っておられるんですね?」
「うん。友人が調達してくれたんだけど、本当に入れっ放しにしておけて楽チン」
 
「他人に触らせるものでないことは承知で、ちょっとだけ貸してください」
「うん」
 
私はそれを取り出すとウェットティッシュで拭いてから青葉に渡した。青葉はそれを手に取ると、何か念でも込めている感じだった。
 
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「これでもっと楽になるはずです」
「へー」
 
実際入れてみると、ホントに楽だった!
 
「これ入れてること忘れてしまいそう!」
「彼氏とデートする時は外し忘れないように」
「あはは、それ怖い!」
 

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「でも、実際私と恋人になってもいいなんて男の人はいないだろうな」
と私が言うと、青葉は一瞬考えていたが
 
「今年中にはきっと彼氏できますよ」
と言った。
「へー!」
 
「それもきっと結婚しちゃうかも知れないくらいの」
「ふーん。。。」
 
「でも政子さんがいるから、別に彼氏は必要無いかな?」
「あのねぇ・・・」
と言ったまま、私は苦笑した。この子には嘘が通じないし隠し事もできない。
 
「でも、私にもこれくらいは分かるな。青葉、彼氏としちゃったでしょ?」
「え?」
「6月末に会った時と空気違うもん」
「えへへ」
と照れ笑いする青葉は可愛かった。
 
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