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■夏の日の想い出・眠り姫の目覚め(2)

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須藤さんはこの短時間でのCD制作を進める中で
「ローズクォーツのCDには民謡も入れなくちゃ」
と言い、仙台の民謡酒場で斎太郎節を収録するなどと言い出す。
 
私やタカは「は?」と言ったのだが、自分で先方に電話を入れて話を決めてしまう。
 
「斎太郎節はケイちゃんだけのボーカルでいいよね。マリちゃんは休ませておこうかな」
と須藤さんは言ったが
 
「私もタカ・マキ・サトも演奏をしていたら、全体を見る人がいなくなるので、その役目をマリにさせましょうか」
と私は提案した。
「あ、じゃ、連絡係を兼ねて行ってもらうか」
 
結局21日の朝10時までにマスター音源を提出することになっている中、20日の夕方から、私とマリ、タカ・サト・マキの5人で仙台に行くことになった。私は後事を山鹿さんに託した。
 
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「山鹿さん、大変だと思うのですが、須藤さんのおかしな注文にまどわされずに山鹿さんのセンスでしっかりまとめてください」
「うん。分かった。任せといて。そういう発注主は多いから、僕も慣れてるよ」
 
と山鹿さんは笑っていた。
 
結局、私たちが仙台に行っている間に小栗さんを中心に、須藤さんと山鹿さんがそばに付いてミックス結果を聴いてチェックするという形でミクシング・マスタリング作業は進められた。
 

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一方民謡酒場に着く前に、私はタカたちに相談した。
 
「時間が無いからさ、タカたちは『演奏した』ことにしてくれない?伴奏は専門の人たちにさせようよ」
 
「うん、俺たちもその方がいい。俺の三味線使うなら、猫に弾かせた方がマシ」
とタカ。
「いや、俺も俺の素人太鼓でいいのか?と思った」とマキ。
「俺の尺八はまともに音が出る時の方が少ないから」とサト。
 
「打ち上げの宴会だけお願い」と私。
「あ、それは任せといて」
 
酒場のオーナーと話し合い、三味線・太鼓・尺八を演奏してくれる人を決める。オーナーさんとそのお母さんが「エンヤトット」を入れてくれることになった。
 
「マリ、一緒に唄おう。民謡音律になるけど私とユニゾンなら行けるよね?」
「同じ音で唄うんなら大丈夫」
 
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「よし」
 
それで酒場の常連さんたちの演奏で、私と政子のふたりで唄を吹き込んだ。マリはしっかり私の小節(こぶし)にも付いてきてくれた。元々私の声のピッチに合わせるのがとてもうまいので、結果的に小節にもきちんと合わせてくれる。
 
録音システムの操作をサトにお願いした。高価な録音機器とプロ用のDTMソフトを持って行っているので、最初ビビっていたが、とにかく「これを押して録音スタート」「これで録音終了」というのを教えると、それでちゃんとやってくれた。
 
取り敢えず1テイク録り、東京の須藤さんに電話して聴かせる。
 
「あれ? マリちゃんも一緒に唄ったの?」
「ええ。女性の声1本では伴奏に負けてしまうので。ここ防音性が無いから音量レベルを上げて録音しないと、CDにできる音質にならないんですよ」
「ああ、なるほど。りょーかーい」
 
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須藤さんがいくつか要望を出したので、それに添って全員で話し合い、演奏方法を調整する。再度テイク。録音したものを須藤さんに聴かせる。
 
「ああ、いい感じになったね。じゃ、そんな感じで何テイクが録って、いちばんできのいいのを採用して、マリちゃんに持たせてこちらに寄越して。後は酒場のみなさんと打ち上げしておいて。でも念のためケイは明日の朝、こちらに戻ってきてくれる?」
「分かりました」
 
それでさっきと同じ要領で3回録音し、全員で聴いて検討して採用するテイクを決めた。
 
「じゃ、タカ、サト、マキ、打ち上げよろしく」
 
「あれ?ケイも帰るの?」
「帰りの新幹線の中でデータ調整とミキシングをする」
「お疲れ〜」
「でも私は打ち上げに出たことにしといて」
 
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「何か今回は色々裏工作してるね」
とタカ。
「後で説明するから」
「了解」
 
「じゃ、マリ、帰ろう」
「うん」
 

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そういう訳で、私は政子と一緒に民謡酒場を出ると新幹線に飛び乗った。そして新幹線の車内でパソコン上のDTMソフトで余分な空白の除去と目立つノイズの除去をした上で、ミックスダウン作業をする。音量レベルも予め山鹿さんたちと話し合って決めていたレベルにまとめる。
 
政子にも聴いてもらって少し調整をし、東京に着く頃に音源を完成させた。静電体質の政子に持たせるのでCD-Rにデータを焼いてから渡す。USBメモリだと政子の静電気でデータが飛びかねない(過去に何度も事故が起きている)。
 
「じゃ、マーサ、これをスタジオに持って行って、山鹿さんか小栗さんに直接渡して。須藤さんには触れさせないこと」
「うん」
 
「私は仙台に残ったことにしといてね。夜中にレンタカーで東京に戻ると言ってたと言っといて」
「りょうかーい」
 
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それで私はいったんマンションに帰り寝た。深夜過ぎに政子が戻って来たので愛し合った。それで目が覚めたので夜の2時ではあったがタカに電話する。タカは寝ていたようであったが4回目の呼出音で出てくれた。
 
「寝てた?ごめんねー」
「あ、全然問題無い」
「それでさ、今回のCD制作なんだけど」
 
私は町添さんと話し合ったことをタカだけに打ち明けた。
 
・上島先生の気まぐれで、マリがローズクォーツに特別参加することになってしまったが、折しもマリが今ひじょうに意欲が高まっていて、実はローズ+リリーの新譜を作るつもりでいた。今回の『聖少女』『不思議なパラソル』はその新譜に入れるつもりで用意していた曲である。
 
・今回の企画は、そういう意欲が高まっているものの、まだ表に出ることにためらいがあるマリのリハビリにとても良い企画だと思うので、ローズクォーツのCDではあるが、ローズ+リリーのCDを作るつもりで制作する。だから制作費用もサマーガールズ出版から出してローズクォーツのCDの10倍くらいの予算を使う。
 
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・そのため一流の録音スタジオの△△スタジオを使うことにした。技術者もワガママな発注者との交渉にも慣れている人たちなので、多分須藤さんの言葉に惑わされずに最高のミクシング・マスタリングをしてくれるだろう。
 
・キャンペーンの予算もローズ+リリーの予算枠から出す。ただせっかくローズクォーツに協力してもらったので、今回はローズクォーツの知名度を上げることを目的に、全員、全国キャンペーンで走り回ってもらいたい。
 
タカは笑っていた。
「いや、俺も1日目の夕方にはそのことに気付いたよ。今回のCDって実はマリちゃんを中心にした企画なんじゃないかってね」
「済みません。私たちの個人的な活動のために、無理をしてもらって」
 
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「でもさ、このCD、ケイとマリちゃんが歌ってるんだからさ、ローズ+リリーのCDを作るつもりでじゃなくて、本当にローズ+リリーのCDなんじゃない?」
「へ?」
 
「だって、ケイとマリちゃんが一緒に歌うのがローズ+リリーでしょ?」
「あ・・・・そう言われてみれば」
 
「俺もそう思ったし、多分サトもそう感じたと思う。これってローズ+リリーの伴奏を俺たちがしてるんだとね。まあ、マキや須藤さんは気付いてないだろうけど。あの人たち鈍いから」
 
「いや、私も今気付きました。ホントですね!」
「あはは、ケイも意外に鈍いね。★★レコードのお偉いさんも実はそう思って大量資金投入してきたんだと思うよ」
「う・・・・そうかも。町添さん、そんなこと何も言ってなかったのに」
 
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「いや、ケイは当然そう認識してると思ったから何も言わなかったんだと思うな」
「ううう・・・・」
 
「あ、そうそう。それでさ、よかったら今回のは歌唱印税は、マリちゃんまで入れて5人で山分けってのにしない? 須藤さん、マリちゃんに演奏料いくら払えばいいんだろうと悩んでた。俺がマリちゃんの歌唱は凄まじく貴重だから最低400万だと思いますよと言ったら、更に悩んでいた」
 
「あはは。確かに歌唱印税の山分けの方がスッキリするよね」
「クレジットも、須藤さんはローズクォーツ、協力ローズ+リリーと言ってたけど、むしろローズクォーツ ft ローズ+リリーだな」
 
「フィーチャリングだと偉そうだから with にしよう」
「うん、まあそのあたりはどちらでも」
 
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21日いっぱいは休みにして、22日に札幌からキャンペーンがスタートすることになった。それでとりあえず21日は休んでいたのだが、午後、和実から電話が入った。
 
「忙しい所ごめん」と和実。
「あ、今日は休みだったからOK。何かあったの?」
 
「実はね。青葉のお母さんの遺体が見つかったんだよ」
「ああ、お母さんの遺体だけまだ見つかってないと言ってたね」
「そそ。それでこれで全員の遺体が見つかったから本葬儀をするんだって。これまでは仮葬儀の形にしてたんだよね」
 
「なるほど。日程は?」
「今日はもう人が集まれないから、明日22日に通夜をして、23日に葬儀」
「場所は?」
「大船渡」
 
私はキャンペーンのスケジュール表をチェックした。
 
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「確約できないけど、通夜には行けるかも」
「ホント? でも無理しないで」
「ちょうどね、22日に青森に行って、23日は朝から仙台なんだよ。だからその移動の途中で大船渡に寄る」
「なるほど」
「でもスケジュールに変動があったら寄れなくなるから、青葉には言わないで」
「うん」
 

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取り敢えず政子と連名で弔電を打ち、またお花を手配した。
 
「冬は移動の途中で通夜に寄れたら寄るということか。私は暇だからお葬式に行くよ」
「よろしく。じゃさ、香典は連名にしてマーサがまとめて渡してくれない?」
「うん。いいよ。幾ら包めばいいんだっけ?」
 
「えっと、青葉は芸能人じゃないし、普通に20万くらい包めばいいんじゃない?」
 
5月に上島先生のお祖父さんの葬儀があった時は、私たちは連名で300万包んでいる。
 
「・・・冬、それ感覚が既におかしくなってる。20万は絶対普通じゃない」
「えっと・・・、普通の香典の相場っていくらくらいだったっけ?」
 
と私はマジで訊いた。
 

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他のメンバーは22日朝からの移動だったのだが、私は21日の最終便で新千歳に飛び、札幌市内のホテルに泊まった。翌日早朝の地元のFMの番組に出演するのである。
 
「ども〜、ご無沙汰してまして」と私は放送前の打ち合わせで挨拶する。
 
「震災後は初めてですね。前回は半年くらい前でしたっけ」とDJのNさん。
「ええ。12月にこちらにお邪魔しました」
 
「震災の時は東京におられたんですか?」
「それが仙台の放送局に来てたんですよ」
「わあ、大丈夫でした?」
「放送局自体は物がしっちゃかめっちゃかになっただけでしたが、津波にやられた地区に挟まれて、数時間身動きが取れなかったです」
 
「大変でしたね! そうそう。性転換なさったという噂を聞いたのですが」
「ええ。4月に手術を受けました」
 
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「もう大丈夫なんですか?」
「まだ痛いです。でも我慢できる範囲です」
「きゃー、やはり大変なんですね〜」
 
「ローズ+リリーのサイン色紙、ローズクォーツのサイン色紙持って来ました。もしリスナーへのプレゼントとかに使われるようでしたら何枚か置いていきますが」
「ローズ+リリーのサイン色紙5枚くらい頂けます?」
「はい」
 
と言って私は日付を書いて渡す。
「宛名はNさんが書いていただけますか?」
「分かりました」
 
《献納》のマークをラベル上に一緒に印刷しているCDを渡し聴いてもらう。
 
「あのぉ、質問です」とNさん。
「はい?」
 
「これ、クレジットはローズクォーツのCDになってますけど、歌ってるのケイさんだけじゃなくて、ケイさんとマリさんですよね?」
 
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「そうです。民謡の斎太郎節まで含めて、私とマリの2人で歌ってます」
「ということは、これって実質ローズ+リリーのCDなのでは?」
 
「ご慧眼ですね。でもそれはトップシークレットなんです」
「シークレットなんですか?」
 
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■夏の日の想い出・眠り姫の目覚め(2)

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