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■夏の日の想い出・歌を紡ぐ人たち(3)

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政子が「満腹した」と言ってから、お風呂の方に移動する。特選和牛200g入りの皿がたぶん10皿くらい、はけた。
 
「春奈ちゃんは・・・・どっちに入るの?」
「ケイ先生は・・・・どちらですか?」
 
「ケイは私と一緒だよ」
「じゃ、私もそちらに」
「へー」
 
ということでお風呂の受付の方に行く。受付の人はこちらを見て女湯のロッカーの鍵を3つくれた。ごく常識的な反応である。素直に受け取る。
 
「でも私は女湯の鍵しかもらったことないですけど、受付の人が迷うような人も時にはあるんじゃないでしょうか?」と春奈。
 
「そういう場合はやはり素直に性別を聞くのかなあ」
「声聞いたらたいていは分かるんじゃない?」
「声でも判断付かない人っているもんね〜」
 
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「プールとかは自販機だから結果的に自己申告ですよね」
「春奈ちゃん、プールは?」
「水泳の授業は小学1年の時から女子のスクール水着着てました。ケイ先生は?」
 
「小学3年生までは男子の水着着て参加してたけど、4年生以降水泳の授業は全部見学で押し通した」
「ああ」
「春奈ちゃんみたいに、ちゃんと女子の水着で出れば良かったのに」
「いや、その勇気は無くって」
 
「でも男と女に分けるって面倒くさいよね。いっそ脱衣場も浴室も男女一緒にしちゃえばいいのに」と私が言うと
「いや、それは困る」「それは困ります」と政子も春奈も言った。
 
「だけど、水泳の授業サボってたという割には、冬は泳ぎが凄くうまいよね」
「うん。まあ中学の時は水泳部にいたこともあったしね」
「ちょっと待て。それってまさか男子の水着を着たりしてないよね?」
「あっと、またその件はその内ね」
 
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ロビーでサービスのジャスミンティーなどを飲みながら少しおしゃべりした後、脱衣場に移動する。
 
なんとなく政子は春奈の方に視線をやり、春奈は私の方に視線をやる感じで服を脱いだ。
「ケイ先生の胸はシリコンですか?」
「うん。Dカップにしてもらった」
「でも乳首も大きい。ホルモンはいつから?」
 
「高校卒業してからだから、半年ちょっとかな」
「すごーい。それでそこまで乳首が発達するって、物凄くホルモンの効きがいいんですね」
「そうかもね。春奈ちゃんはホルモンだけ?」
「ええ。私は成長遅いみたいで、まだBカップなんですよね〜」
 
などと言いながら、下の方も脱いでしまう。
 
「それはタック?」
「ええ。常時してます。外すのは病院でお医者さんに見てもらう時くらい。ケイ先生はタックじゃないみたい・・・でもまだ手術終わってないんでしたよね?」
 
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「割れ目ちゃんだけ作ってもらったの。中に隠してる」と私は説明する。
「すごーい」
「くすぐったりして、開門させようとするんだけどね。なかなか開かないね」と政子。
 
「マリ先生とケイ先生って、ほんっとに仲が良いみたい」と春奈は笑顔で言った。
 
「でもそこまで手術するんなら、おちんちんも切っちゃえば良かったのに」と春奈。「ね?そう思うでしょ?」と政子。
「友だちみんなから言われてるのよ、ケイは」
「うん。まあ。。。姉ちゃんからも言われたしなあ」
 

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浴室の中ではどちらかというと音楽活動のことで話題が盛り上がった。
 
「堂崎先生、なかなか調子が戻らないみたいですね。気分転換に先日はヨーロッパ旅行に行って来られたようですが」
「創作活動ってどうしても波があるからね。というか、波があるような人でないと、なかなか良い作品は書けない」
 
「上島先生はたぶん例外中の例外だよね」と政子。
「そうそう。上島先生はピカソタイプ。とんでもなく凄い作品からふつうに凄い作品の範囲で波があるんだよ」
「ああ」
「上島先生もピカソ並みに多作だよね。たぶん年間600個か700個書いてない?」
「いや、もっと多いと思うよ」
「ひゃー」
 
「ピカソが生涯に制作した美術品は15万点というから。仮に7歳くらいから92歳くらいまで85年間作り続けたとしても、1年に、はいマリ」
 
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「15万÷85は1764」
「それを365で割ったら?」
「4.8」
「ということで1日に平均5個作ってた計算になる。恐ろしいよ」
 
「ちょっと待ってください、今の計算は?」と春奈。
「マリの頭の中には電卓が内蔵されてるんだよ」と私は言う。
「へー!」
「ケイの喉にはボイスチェンジャーが内蔵されてるよね」と政子。
「ああ!」
 

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「でも春奈ちゃんは、自分で曲を書いたりしないの?」
「何度か書いたことありますけど、彩夏にも千秋にも酷評されました」
「あらら」
「これならソフトで自動メロディ生成でもした方が出来が良いとか」
「わあ、酷い言われよう」
 
「まあ、めちゃくちゃ言われていても、いろいろ習作をしておくといいよ。そのうち良い作品が書けるようになるかも知れないし」
 
「この世界の人って、よく曲を書く人と演奏はうまいのに自分ではほとんど書かない人っているよね」と政子。
 
「作曲というのも、ひとつの楽器パートみたいなものだと私は思うよ。例えばサックス吹く人はふつうにサックス吹くけど、他の楽器パートの人は何かで興味を持ったりしない限りサックスを覚えようとはしないでしょ」
「ああ」
 
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「それにサックス吹いたことない人はどうすればいいか戸惑うし、練習してなきゃいつまでたっても吹けるようにはならない。作曲も同じで、練習しなきゃ、うまくならない」と私は言う。
 
「ああ、面白い見解だね。でも才能による差はあるよね?」と政子。
「誰もが渡辺貞夫や伊東たけしになれる訳じゃないもん」
「そうですよね」
「でも伊東たけしだって、サックスの練習してなかったら、あんなに吹けるようにはならなかったし、最初から巧かったわけじゃない」
「そっかぁ!」
「春奈ちゃんだって、曲を書いてたら、大作曲家になる可能性だってあるよ」
と私は言った。
 
春奈は頷いていた。
 

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「女装も才能による差があるよね」と政子は唐突に言う。
「それって才能なの?」と私は笑って言った。
 
「だって、冬や春奈ちゃんは、女の子にしか見えないけど、女装させても男にしか見えない人が大半だよ」
「確かにそうだね」
「やっぱり、冬にしても春奈ちゃんにしても、女装の才能があったんだと思うよ」
「そうか?」
 
「でもさあ、女装する人の中にけっこう芸術的な才能とか、神秘的な才能のある人がいると思わない?」と政子は唐突に言う。
 
「ああ・・・クロウリーとか出口王仁三郎とか女装の写真を残してるよね。歌手の女装なんて珍しくもないし」
 
「フレディ・マーキュリーも女装してたっけ?」と政子。
「あれは・・・ただのジョークだと思う。そんな特殊な例を出さなくても、ボーイ・ジョージとかもいるし、日本ではピーターとかIZAMとかもいるし」
と私。
 
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「モデルさんなんかにはふつうに女性モデルとして活動してるけど、実はって人、わりといるよね」
「ああ、いるねえ」
 
「そういえばベルリオーズが女装してたとか言ってなかった?」
「あれも日常的なものではないと思うよ。恋人が他の男と結婚すると聞いて一時的に錯乱して女装してその彼女と結婚相手を殺しに行ったらしいから」
「で、殺したの?」
「その前に我に返ったらしい」
 
「なーんだ。面白くない」
「面白さで殺されても・・・」
「去勢されそうになったのはベートーヴェンだっけ?」
 
「そう思ってる人けっこういるけど、ハイドンの間違いだと思う」
「ああ」
「カストラートになることを勧められたんだよ。歌うまかったから」
 
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「カストラートか・・・・私って一種のカストラートなんでしょうね」と春奈。
「今の時代って、わりと女性ホルモン入手しやすくなってるから、けっこう事実上のカストラートが発生しているかもね」
「冬はカストラートじゃないよね?」
「知ってるくせに」
 
「・・・あのぉ、ケイ先生とマリ先生って、ケイ先生がまだ男の子だった頃にも恋人だったんでしょうか?」
「完全な形でのセックスはしてないよね。でも私に男性能力があったことは実地に確認してるよね」
「まあ、そうだね」と政子。
「へー」
 
「春奈ちゃん、オナニーの経験無いの?」と政子は唐突に訊く。
春奈がむせる。
「こらこら。それってセクハラ発言」と私は政子を注意する。
 
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「あ、いいですよ。ホルモン始める前に何度かやりました。でもこれ内緒で」
「冬もオナニーなんて『何度か』のレベルじゃないの?」と政子。
 
「そうだなあ・・・・・全部で30回くらいはしたかも」と私は微笑んで答える。「ああ、じゃ私と大差無いレベルですね」と春奈も微笑んで言った。
 

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スリファーズのメジャーデビューは△△社主導で行われたもので、★★レコード側は必ずしも乗り気ではなかった。
 
そもそもインディーズでは数十枚しか売れていなかったというのもあり「まあ、やるならどうぞ」という感じで、最初は正式な担当も付けてもらっていなかった。発売イベントもレコード会社側は消極的だったので、レコード会社の名前だけ使わせてもらい、△△社が全部費用を出して、私と政子を同席させることで、音楽雑誌や新聞の記者などにも何人か来てもらうことに成功した。
 
ところがふたを開けてみると、この発売イベントを見た観客が即その店にあったCDを買い求め、それでは足りなかったので、その人たちは他のCDショップを回って各店舗に少しずつ置いてあるCDを買った。それで数時間で売り切れたのだが、事実上一瞬で売り切れたに等しい状態だった。レコード会社も慌てて追加プレスをするとともに、一応スリファーズに関する事務的な処理をしていた北川さんにスリファーズの正式な担当になってもらうことを決めたという、泥縄の状態であった。
 
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そしてこのデビュー曲はCD/DLあわせて26万枚を売り、いきなりプラチナディスクを達成した。
 

彼女たちの活躍に刺激を受けたのが、ピューリーズである。受験のために休養していた間に、「ピューリーズの妹分のスリファーズ」だったはずが、いつの間にか「スリファーズのお姉さん格のピューリーズ」などと言われるようになっていた。
 
それでピューリーズの3人は「受験のための休養」というのを利用してそのままフェイドアウトしちゃおうか、などとも言い合っていたらしいのが、俄然やる気を出した。
 
大学に合格すると、すぐに新しい音源製作に入る。その時点でまだ堂崎先生が調子を戻していなかったが、津田社長に楽曲を下さいと直訴。社長が個人的に交友のあった作曲家・関沢鶴人さんという人に、臨時で楽曲を依頼した。関沢さんは元々は演歌系の人なのだがピューリーズのために、『舞い戻ったカモメ』
という曲を書いてくれた。
 
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この曲は悪戯心でわざと演歌的なタイトルを付けてあるが中身は完全なポップスである。しかもわざとピューリーズの3人は振袖を着て発売イベントに登場したので、3人が演歌に転向したのか?と一瞬思った人もあったらしい。しかしそこにギター・ベース・ドラムスのバックバンドが登場して16ビートのリズミカルな伴奏を始めたので、戸惑いの空気は安堵の空気、そして歓声へと変わった。
 
このCDのジャケ写もまるで演歌のような雰囲気で作られており、CDショップではしばしば誤って演歌のコーナーに並べられていた(そもそも作曲家が演歌で有名な人だし)。しかしミスマッチなタイトルにそのようなわざとミスリーディングするような演出が受け、ピューリーズはこの曲を7万枚売って美事に復活した。
 
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そしてどうしてもスリファーズにはセールス的に負けるものの、△△社の看板アーティストのひとつとして、活躍を続けている。
 
関沢さんはこれを機会にポップス系の楽曲も頼まれるようになり、何人かのアイドル歌手にも、定常的に楽曲の提供をするようになった。またピューリーズにも、そのあと1年間、堂崎さんが復活するまで楽曲の提供を続けた。そして数年後には、ポップスライターとして知名度が上がり「あれ?演歌も書くんですか?」
と言われるようになってしまった。
 

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私と政子は作詞作曲する時に何本かのボールペンを使っているのだが、中でもお気に入りなのが2本のセーラーのボールペンである。1本は赤いボールペン、もう1本は青いボールペンで、私たちはこれを「赤い旋風」「青い清流」と呼んでいる。
 
「赤い旋風」は概して積極的な歌を紡ぎ出してくれるし、「青い清流」は静かな歌を紡ぎ出してくれることが多いが、ふたりで同時に詩と曲を書く時は、概して政子が「赤い旋風」を使い、私が「青い清流」を使っていることが多い。
 
「赤い旋風」は私が高校に入学した時、親戚のおじちゃん・おばちゃんから入学祝いにもらったお金で買ったボールペンである。(正確にはお金が足りなかったので、たまたまその場で遭遇した麻央に2000円借りたので、私と麻央が共同で買ったことになる)
 
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それを高校1年夏にキャンプに行った時、政子が気に入り「これ頂戴」などというので、あげたものである。元々麻央から、多分このボールペンは誰か親しい人にあげることになる、と予言されていたので、ああその通りになったなと当時私は思ったものである。
 
元々政子は病的なほどに暗い詩、救いようがないほど読んだら鬱になる詩を書く傾向があったのが、「赤い旋風」を使い始めてから、ぐっと詩の内容が明るくなった。もっとも敢えて暗い詩を書くために普通のボールペンを使うこともあるようである。
 
高校時代から大学2年頃までに作った曲の中で、特によく出来た曲はほとんどこの「赤い旋風」で書いたものである。
 
「青い清流」の方は、実はある人の遺品なのだが、それはこんな経緯で私の元にやってきた。
 
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夏の日の想い出・歌を紡ぐ人たち(3)

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