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■夏の日の想い出・高2の春(3)

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お昼は遊園地内のスナックコーナーで、唐揚げ、フライドポテト、たこ焼き、などを適当に取って分け合って食べた。
 
「でもさ、見てると、冬って、女の子の服を着て出歩くことを全然恥ずかしがってないよね」と貞子。
「ああ、それは私も思った。ごくふつうに着こなしてるし」と絵里花。「ねね、実はいつも女装外出してたりしないの?」と美枝。
 
「えー?してないよ。女装外出は、去年の夏休みにうちの高校の書道部のキャンプで余興でやらされて以来だし、その前は中学の卒業式の翌日、中学の制服で町に出た時かな。ほんとに年1〜2回って感じだよ」
 
「それにしてはね。。。。」と美枝。
「どうもこの手の問題については、冬は正直に話してない気がしてならないね」
と絵里花。
「やはりどこかに拉致して、拷問して白状させてみたいね」と貞子。
 
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「でもホント、こんなにふつうに着こなして出歩けるなら、高校にも女の子の服持ってって放課後にそれに着換えるとかさ、そんなことしたっていいのに」
「そうそう。女装してるところをどんどん友だちに見せて、理解者や協力者を増やして行ったほうがいいよ」
「うーん。。。。そうだなあ。。。」
 
そんなことを言っていた時、近くの席にカップルが来て座った。そのカップルを見て、ボクは心の中で『ぎゃっ』と思い、思わず彼らに背を向けた。
 
が、遅かった。
 
カップルの女性の方がこちらに寄ってきて
「あの・・・すみません」と声を掛ける。
「どうしました?」と貞子。
「いや、何か知ってる人のような気がして」
 
ボクは覚悟を決めて振り返った。
「こんにちは、村沢先輩」
「やっぱり唐本ちゃんだ!」
カップルの男性の方も近づいてくる。
「こんにちは、谷繁先輩」
 
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「可愛い!唐本ちゃん、やっぱりこういう格好するのね?」と静香。
「それに、そんな女の子みたいな声が出るんだ」
 
仕方ないのでボクは相互を紹介する。
「こちら、ボクの中学の時の先輩の絵里花、同じ学年の貞子と美枝」
「こちら、ボクの高校の書道部の先輩で、谷繁さんと、静香さん」
 
「いや、去年うちの部でキャンプに行った時、女装させたら、凄く可愛くなったから、きっとふだんも女装してるんだよね、なんて陰で噂してたんだけどね」
と静香。
 
「こちらもその件は聞いてたんですが、本人は今日の女装はその時以来の女装だと主張してるのよね」
と絵里花。
 
「それって・・・・・」と静香と絵里花は顔を見合わせて言う。
「絶対嘘だよね」
 
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「あはは・・・・」
 
「冬はやはり普段から女装で外を出歩いていると思うなあ」と貞子。
「ほんとにそんなことしてないんだけどなあ」とボクは頭を掻く。
「やはり、一度どこかに拉致監禁して、拷問して吐かせましょう」と美枝。
 
「あ、でも谷繁先輩と村沢先輩のこと、少し気になってたからホッとしました」
とボクは言う。
「うまく行っているみたいですね」
「うん。まあまあ、やってるよ。あ、部活全然出てかなくてごめんね」
「今度の地区大会、政子が出場手続きしておきました」
「わあ。じゃ、作品だけでも書いておくね」
「よろしくです。政子は部長代行だね、って理桜が言ってた」
 
「あ・・・・唐本君って、女の子たちと呼び捨てなのね?」
「あ、えっと・・・こちらも冬と呼ばれてます。いつも出てきてるメンバーの中に男子部員がいないね、今年は、とか言われちゃってるし」
「んじゃ、私も『冬』と呼んじゃおう。私のことも名前で呼んでよ」
「了解です。静香先輩」
 
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「こちらも冬とは名前呼び捨てですよ。中学の時から冬のことは、ほぼ女の子と思ってたから、お互い女友達感覚」と貞子。
「やっぱり冬って中学の時から女の子だったんだ」
 
「私の家でけっこう女装させて着せ替え人形にして遊んでたんですけどね。でも確かに私も冬が女装外出したのって、3回しか見てないことは確かなのよね。今日で4回目か」
「実際、今日も含めて4回しかしてないんだけどなあ」とボク。
 
「そんなの信じられない」と絵里花と静香。
 
「だいたい男の子に無理矢理女の子の服を着せたりしたら、凄く恥ずかしがったりしそうじゃん。冬って、それ全く無かったもんね。最初から」
「あ、えっと・・・・」
「初めてスカート穿いて歩いたら転んだりしそうなのに普通に歩いてたし」
「それどころか、うちで初めて女装させた時、冬は後ろ手でブラのホックを留めたのよね。あり得ないでしょ?」と絵里花。
「おお、それは絶対女装慣れしてる」と静香。
 
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「やはり、冬はかなり前からこっそり女装していて、かなり頻繁に外も出歩いているとしか思えないね」と貞子。
 
「結論としては、唐本は連休明けから、女子制服で学校に出てくるべし、だね」
と谷繁先輩も悪のりして言っている。
 
ボクはその場でけっこう追求されたものの、ボクが過去の女装外出歴をあくまで否定するので、この件はまたあらためて追求してみましょう、などという話になる。そして静香先輩たちのデートのお邪魔してはいけないから、また今度、などといって別れ、ボクたちはまたあちこちのアトラクションをしに行った。
 

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昼食後はあまり長い列ができているところは避けて、比較的すぐに乗れるものを中心に乗るようにした。それでもかなり楽しむことが出来た。たっぷり遊んだ感で2時頃遊園地を出る。近くの飲食店が集まっているミニモールの中にあるドーナツ屋さんで少し休んだ。
 
ボクはとりあえず普通の服に着替えさせてもらった後、適当に頼んだドーナツを摘みながら、コーヒーを飲みながら、ガールズトークで盛り上がっていた時、お店に静香先輩と谷繁先輩が入ってきた。こちらと視線が合ったので、軽く会釈する。向こうも手を振って、ボクたちと少し離れた席に座った。
 
そしてまたしばらくこちらはこちらでおしゃべりに夢中になっていた時のことであった。ドーナツ屋さんのドアを荒々しく開ける音があった。見ると政子だ!服が乱れている!?靴も履いてない。ボクは思わず「政子!」と呼びかけた。政子はその声にこちらを見ると、凄い勢いで走ってくる。ボクも立ち上がって駆け寄る。政子は勢いよくボクの胸に飛び込み、抱きついて「助けて」と言った。その時、ドアを開けて入ってくる花見先輩の姿を見た。
 
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あとで自宅まで送っていってからゆっくり政子から聞いたのではこういう話だった。
 
花見さんは2月中に入る大学が決まったので3月に卒業式のあと自動車学校の合宿に行き、4月初旬に免許を取得。さっそくローンで車を買い、しばらく練習も兼ねて慣らし運転をしていたが、その日は連休でもあり、政子をドライブに誘ったらしい。
 
花見さんはどこか静かな所までドライブしないかと言ったらしいが、政子はあまりふたりきりになりたくない気分だったので、某大型アウトレットモールに行きたいと言い、一応そこまで行って、ショッピングを楽しみ、お昼も食べて楽しく会話などもした。花見さんからホテルに行かないかと誘われたらしいが、例によって高校を卒業するまでそういうことするつもりはないからと断ったという。
 
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それで、海でも見に行こうかと行ってそこを出てドライブしている途中で花見さんが少し疲れたから仮眠したいというので、ちょうど見かけたミニモールの駐車場に駐めて花見さんは仮眠をしはじめた。それで政子も少し眠くなってきたので、うとうととしていた時、身体に触られる感触で目を覚ました。
 
下着が少し下げられていて、指で触られている。「やめてよ」と言ったが、やめてくれない。「ね。こういうことしないって言ったでしょ」と言うが、「いいじゃないか。少し楽しもうよ」などと言う。政子は少し怒って「私が嫌だと言っているんだから、やめてくれない?」と言うが、向こうは全くやめる気配を見せず、上の服まで脱がされそうになる。
 
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政子は本格的に抵抗したが、花見さんは強引に押さえつけてくる。政子は完璧に気持ちが覚めて、全力で抵抗する。花見さんの顔を平手打ちしたが逆に殴られた。一瞬くらくらときたが、ひるまずに暴れて、顔を引っ掻いたりもしたが、腕力でかなわない。政子は(自分を押し倒すために)シートベルトが外されているのに気付き、とっさの作戦を思いついた。ドアロックの位置を目で確認する。
 
政子は「分かった。自分で服を脱ぐから。乱暴なことしないで」と言った。
 
それで花見さんが手をゆるめた瞬間、片手でドアのロックを解除するのと同時に、思いっきり股間をキックした。
 
さすがに向こうがキックされた所を手で押さえてうめき声をあげたので、政子は急いで助手席のドアを開け、転げ落ちるように車から飛び出した。そしてそのまま全力で走って、手近に見たお店に飛び込んだのであった。
 
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唐突に名前を呼ばれて、見たらボクがいたので、地獄に天使を見た思いだったなどと政子は言っていた。
 

花見さんは、政子がボクに抱きつくようにしているのを見ると、少し驚いたようであったが近づいてくると
 
「あ、いや。唐本。ちょっと行き違いがあってさ。政子、何もしないから行こうよ」
などと妙に優しい声で言う。ボクは
「何があったのか知りませんが、政子さん嫌がってます。今日はお帰りになりませんか?」
と言った。
「いや、ちょっとふざけてただけなんだよ。な、政子。今のは謝るからさ。ね、洋服か何かでも買ってあげるから、行こうよ」
などというが政子は無言でボクにしがみついている。
「な、唐本。政子を渡してくれないか?ちょっとした男女のあやって奴でさ」
 
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「今日は政子さんをお渡しできません。日をあらためて出直されませんか?政子。今日はボクがずっと付いてるから」
「ありがとう」と政子は初めて言葉を出した。貞子が寄ってきて政子の服の乱れを直してあげた。
 
「あのなあ、唐本。こういうのに首を突っ込むのは野暮ってやつなんだぜ」
などと花見さんは開き直ったことを言い始めた。
「花見さん。何なら警察を呼んでもいいんですけど」
とボクはキッとして言った。
「警察?ふざけんなよ。さっさと政子を返せ」
などと怒ったような声で言いにらみつけるが、こちらもしっかり見返す。ボクは本気で警察を呼ぼうかとも思った。
 
その時、離れた席にいた谷繁先輩が寄ってきて言った。
「おい、花見、そのあたりでやめとけよ」
と声を掛ける。花見さんは谷繁先輩には気付いていなかったようで
「あ・・・」
と声を上げると、
「分かった」
と言って不満そうに店を出て行こうとする。
 
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「あ、谷繁先輩。私の荷物が車の中に」
と政子が言うので、ボクと貞子、谷繁先輩・静香先輩の4人で政子に付き添い、車のところまで行き、確認しながら、中にある政子の荷物を取り出して渡した。靴も履いた。花見さんは、無言で車で去って行った。
 
谷繁先輩が自分の車で政子を自宅まで送っていくというので、ボクは絵里花たちに別れを告げて、政子に付き添い、一緒に政子の自宅まで行くことにした。静香先輩も政子をハグしてあげた。そのあと後部座席に座ってくれて、ふたりで政子をはさむようにした。
 

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