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■夏の日の想い出・グリーングリーン(4)

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それでアクアたちを客席に乗せる。アクアたちが前向きの席で、千里と竜崎がそれと向かい合う後ろ向きの席である。操縦席にはエリッサと山花さんが座っている。
 
そしてホンダジェットは数百メートル滑走してから飛び立った。
 
「どこまで行くんですか?」
「最初は熊本」
「最初は・・・」
 
機内で衣裳に着替えてもらう。
「ふじえちゃん(アクアF)はこれね」
と言ってブラウスとネクタイに茶色の紳士物スーツを渡す。シルクハットも渡す。
「みちおちゃん(アクアM)はこれ」
と言って、ライトグリーンのドレスを渡す。
「これも着けてね」
といって更に緑色の宝石が2つ並んだネックレスも渡す。
「エメラルドですか?」
「グリーンサファイアだよ。ただし合成」
「へー。合成にしてはきれいですね」
「チェーンは18金ね」
 
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実は同じ色合いの天然石を2つ揃えるのが難しいので合成サファイアを作ったのである。天然石と見紛う品質の良い石を作れるフラックス法を使っているので製造に3ヶ月掛かった。(安価なものはベルヌーイ法で作る)実は先週できたばかりである。
 
フラックス法というのは天然石ができるのと同等の高温高圧を何ヶ月も維持して結晶をゆっくり成長させるもの。少年探偵団“ロマノフの小枝”で使った大粒の石など半年掛けた。同じ成分配合で作ればほぼ同じ色合いのものができる。今回は10粒作った中から美高さんの目で2個選んでネックレスに仕立てた。
 

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それでMはFに手伝ってもらって、そのネックレスを着けた。(ひとりでは着脱できない)
 
「千里さんはぼくたちを正確に見分けますよね。間違えたことがない」
「間違うほうがおかしい」
「ごめんなさい。私には見分けが付かない」
と竜崎。
「彩佳や理史も間違うのに」
「それに乗じてスワッピングしてない?」
「そんな悪いことしませんよー」
 
怪しい気がする。
 

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「ケイ先生とかには全く見分けが付かないみたい」
「ケイは特に騙されやすいんだよ」
「コスモス社長は8割くらい当てるけどたまに間違う」
「あの人は勘が良いね」
「時々わざと間違ってる」
「策士だからね」
 

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千里は2人のアクアに譜面を4枚と伴奏音源・仮歌(入瀬ホルン)のはいったMP3プレイヤーを渡して
「向こうに着くまでに覚えて」
と言った。ふたりは2曲ずつ手分けして覚えていた。ふたりは長期記憶を共有するので片方が覚えたことはもう片方も覚えている。それでドラマ等の脚本も台本を2つに分けて半分ずつ覚えている。
 
アクアたちは30分ほとで曲を覚え、残りの時間は機内で眠っていた。ジェット機は2時間ほどのフライトで熊本空港に到着した。
 
熊本空港では、熊本の知人に用意してもらっていたランドクルーザーに乗りこむ。ふたりが乗るところを熊本空港で待機していた美高鏡子さんが撮影する。
 
但しこの場面は後日、昨年の映画でも使用したプジョー・タイプ91で撮り直した。
 
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紳士スーツを着たFが運転席、ドレスを着たMが助手席に乗ったのだが、いったんふたりに後部座席に移ってもらい千里が運転席に就いた。
 
車を出す。千里たちの車の後ろから別の車(ジムニー)でコリンと美高さんに竜崎マネージャーが続く。
 
1時間ほど山の中に入り込んだ地点で千里は車を停めた。後続のジムニーも停まる。
「さて、これを登るよ」
「え〜!?」
 
長い石段がある。そこをふたりは登り始めた。それを美高さんが撮影する。千里と竜崎も続いて登って行く。
 
「次はボートだよ」
「ちょっと休ませて」
 

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休憩用に丸太小屋を建てていたので、その中で休む。3月は九州といえどもまだ寒い。特にこの付近は雪も残っている。
 
小屋の中で椅子に座って暖かい紅茶を飲む。竜崎マネージャーがハンバーガーも渡すので食べる。
 
充分休んでから森の小径を歩いて湖に行く。美高さんがその過程も撮している。緑の湖面の畔(ほとり)にモーターボートが置いてあるので、FとMで乗り込む。原作では手漕ぎボートなのだが、アクアはボートを漕げるようにならなかったので、モーターボートの登場となった(*5)。それでアクアには小形船舶操縦士免許を取ってもらった。ふたりのアクアのボートが進む様子を千里が操作する別のボート上から美高さんが撮影している。
 
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また頭上にはドローンも飛んでいる。この様子を空撮しているが、もちろん空撮映像からは編集で千里たちのボートは消す予定である。
 
ふたつのボートは入江に入る。入江の奥には崖にはさまれた狭い水道があり、そこを通過すると別の湖がある。その湖を横切り、ボートは浜に就ける。
 
「ふじえちゃん、次はその崖の梯子(はしご)を昇って」
「はい」
 

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(*5) 原作『緑の目の令嬢』の舞台は1909年であり、モーターボートは1886年に発明されたから既に存在する。だから使っても時代考証無視にはならない。
 

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崖に鉄の梯子が設置されている。そこをFが昇るところをまた美高が撮影した。原作では崖を直接登るがさすがに厳しいので、管理者の国土交通省に許可を取って鉄の梯子を設置した。但し映画の製作が終わったら撤去することになっている。残しておくのは危険だからである。この場所がどこか公開する予定は無いが、嗅ぎつけた人がここに来て梯子を下りて散策していて湖に転落したりするとまずい。
 
「しかし面白い場所があったもんですね」
とFが梯子を昇るところを見ていたMが言った。
 
「たまたま双子の湖があるところを知ってたんだよ。それでこの映画のクライマックス・シーンを撮るのにピッタリだと思ってね」
「へー」
 
梯子を往復してきたFが
「ああ、しんどかった。落ちたらどうしようと思った」
と言うと千里は言った。
「大丈夫だよ。片方が死んだら生き残ったほうのコピーを作って、彩佳ちゃんと理史君にひとりずつあげるから」
「それ全然大丈夫じゃないです」
「性転換手術くらい受けさせてあげるから」
「嫌だ」
 
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その後今度は、Mにネックレスを外した上で、ブラウスにトランクスという格好で梯子を登り降りしてもらった。ここは男役の演じる場面だが、バストのあるFにはできないのでMがFの代役で撮影されるのである。
 
Mも
「これ結構しんどい。ぼくも落ちたらどうしようと思った」
と言うので千里が
「大丈夫だよ。片方が死んだら・・・」
(以下同文)
 

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竜崎マネージャーがふたりに暖かいコーヒーとローストビーフ・サンドイッチを渡すのでふたりは食べていた。
「コーヒーが暖かくてホッとする。保温してたんですか?」
「企業秘密」
 
むろん入れ立てを転送したものである。
 
そのあと一行は階段下まで戻り、千里はふたりをランクルに乗せ、熊本市内のファッションビル“アエリア”に行く。Fには竜崎と一緒に10分後に来るように言って千里はMだけを連れ、8Fに行く。ここにミニホールがあり、ライブをするのである。用意されている控室に入る。信濃町ガールズ新人(2022冬昇格)の紺青セイラと広橋窓佳マネージャーがいて、セイラが
「おはようございます。次お願いします」
と挨拶した。アクアは
「おはよう、セイラちゃん。前座ありがと。頑張ってね」
と言って送り出した。セイラは広橋と一緒に出ていった。少ししてFが竜崎と一緒に楽屋に来た。
 
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シレーヌ(彼女はアクアのマネージャーにしている)がお昼御飯を持ってくるので、アクアたち2人は、馬刺し・辛子蓮根・太平燕(たいぴーえん)、そしてデザートにいきなりだんごを食べた。
 
「それでこれMCの台本ね」
と言って原稿を渡した。
「MCは適当に変更してもいいから」
「はい」
「歌うのは飛行機の中で覚えてもらった4曲ね」
「分かりました」
 
「台本に馬刺しといきなり団子食べましたと書いてある」
「さっき食べてたね」
 
「伴奏は録音ですか?」
「エレメントガードが来てる」
「エレメントガードなら、とちっても何とかなるな」
「とちるとそれが映画のビデオに残り何百万人もの人が何十年もその場面を再生することになる」
「ああ怖い」
「怖いから寝る」
と言ってFは寝てしまった。竜崎が毛布を掛けてあげた。
 
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ひと息ついてからステージに出て行く。エレメントガードたちに一礼してから、アクア(M)は4曲歌った。
『グリーングリーン』
『砂の城』
『グリーンレイク』
『緑の首飾り』
 
『グリーングリーン』はよく知られたフォークソングだが、未来居住(常滑真音のペンネーム)が新たに書いた歌詞を載せたもの、『砂の城』は1970年代にフランスでヒットした曲だが、大宮万葉(青葉L)が新たに書いた歌詞を載せたものである。『グリーンレイク』は琴沢幸穂(≒千里3)の新作、『緑の首飾り』は桜蘭有好(おうらん・あるす≒青葉R)の新作である。
 
アクアの歌唱の様子は矢本かえで・田崎潤也がステージ・客席の双方を撮している。ちなみに今回のショーは一切の予告無しでやったものである。アクアが生で歌うなんて言ったら、何万人も列が出来て大騒動になる。福岡はおろか東京や大阪からも大挙押し寄せる。前座の紺青セイラが歌った時も次の出演歌手が誰かは言ってない。観客の多くは、薬王みなみか川泉パフェあたりを想像していたようで、アクアが出てきてびっくりしたようである。
 
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映画にヒロインが劇場で歌を歌う場面があるので(原作ではオペレッタ)、このコロナの中、どうやって撮影するかが問題になり、地方都市の熊本で、しかも予告無しでやることにした。なお観客には声を出すことを禁止し、その代わりのサイリウムを配布した。むろんマスクは必須である。警備員も30人立てている。このホールの定員は200人で、一席おき(千鳥式)にマネキンを置いて座れないようにしている。マネキンもサイリウムは振る!
 

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アクアMが半分まで歌った所で千里はFを起こし、竜崎と一緒に車に戻らせた。少しして青葉が来る。ここに来たのはふだんスペインのグラナダに居る“青葉R”(桜蘭有好)の方である。千里は手を振って迎えた。
「ちー姉お疲れ」
「青葉もお疲れ。Lはどうしてる?」
「暇だぁと言ってるけど、朋子母ちゃんから外出も演奏も運動も禁止されてるからね」
「出産したら1ヶ月はおとなしくしとかなくちゃね」
 
Lというのが普段高岡に居る青葉で、先日9日に紗織を出産してまだ産褥軌間である。朋子からは1ヶ月経つまでは寝ているように言われており、それで暇を持てあましているらしい。
 
「しかし大歌手の役で、しかもアクアの後で歌うなんてやりにくい」
「みんなそう言って尻込みしたからね」
 
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最初、高崎ひろかに頼んでいたら結婚してしまった。品川ありさは
「アクアのファンに殺されます」
などと言うし、ケイは
「マリ抜きのソロでは歌わない」
と言うし、ゆりこは妊娠中。松浦紗雪さんにも松原珠妃さんにも春風アルトさんにも断られ、一時は千里に歌ってくれないかという話もあったが、青葉に押しつけたのである。
 

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やがてアクアがステージを終えて戻って来る。
「大宮万葉先生、お早うございます」
「おはよう。熊本まで日帰りお疲れさん」
「いつものことです」
「こないだは薬王みなみちゃんが沖縄日帰りやらされたらしいね」
「ああ、可哀想に」
 
青葉の友人、杉本美滝は薬王みなみのバックバンドに加入した初日にこれに付き合わされたのである。その日にバックバンドの名前がサファイアズと決められた。
 
(それまでは仮に“浄瑠璃バンド”と呼ばれていた:“薬王”が薬師如来の別名で薬師如来は東方浄瑠璃世界の盟主だから:ちなみに演芸の浄瑠璃は初期の人気演目が浄瑠璃姫の物語だったため、そういう劇自体が浄瑠璃と呼ばれるようになった。なお瑠璃とはラピスラズリのこと:薬王みなみの出身地近くに薬師如来をご本尊とする薬王寺というお寺がある)
 
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アクアの後で出ていった青葉は
「作曲家の大宮万葉です」
と自己紹介したあとで
「みんなが『アクアの後で歌ったらアクアファンに殺される』と言って尻込みするので押しつけられました」
と言って笑いを取った上で、自分でピアノを弾きながら、『夜の女王のアリア』をドイツ語で、『あらのの果てに』をフランス語(一部ラテン語)で歌ってから、今の季節にと言って『花』、熊本ゆかりの歌として『この道』を(日本語で)歌ってステージを終えた。最後に“余興”と言って『荒城の月』のメロディで『どんぐりころころ』を歌ったら、大いに受けていた。
 
また青葉は、混乱防止のため何も告知しなかったが、今日のステージの映像は今度のアクア映画に使用したいので、顔が映ったら困るという人は映像から消去するので、申し出てほしいと述べた。それで「仕事さぼっているのがバレる」と言った男性が申し出て、本人に確認してもらって消去した。
 
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