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■夏の日の想い出・Xデーと復活(2)
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警察が政子と直接話がしたいというので、本人が強いショックを受けているようなので私が付いていてもいいならというので応じた。
スマホで呼ぶと政子は1人で出て来た。泣き顔だが足取りはしっかりしている。
「あなたは百道大輔さんと交際してましたか」
「いいえ」
「交際してなかったんですか!?」
「一時期は付き合ってましたけど、去年(2021)の夏頃に別れましたよ」
「えっと、でもお子さんを作られたんですよね」
「子供は産みましたけど大輔さんの子供ではないです。血液型を調べてもらったらハッキリしますが、生まれた子供の血液型はAB型です。大輔さんはO型ですから、彼の子供ではありません」
政子は自分で血液型のことも認識していたのかと私は少し驚いた。だったらもしかしてやはり松山君の子供?(←にぶいって)
「それでは誰か別の男性の子供なんですね」
「そうですよ。大輔さんとは別れたから彼とセックスすることもあり得ません。それにしても何度もデートを迫るから適当に返事してましたけど、一度も行ってません」
セックスはしてた気がするけど!?むろん私はそんなことは言わない、
刑事が私を見る。
「確かに中田は何度も大輔さんとデートの約束をしていたようですが、最近は全部すっぽかしていたようです」
「でも今日は一緒にクリスマスパーティーをなさることになってたんですよね」
「他のボーイフレンドを誘ったんですけど、都合が悪いと言ってきたので代わりに呼んだだけです。あくまでボーイフレンドのひとりとして」
刑事さんが私を見る。
「確かに女装パーティーにすると言ってました。大輔さんは女装面白そうと言ったらしいですね」
「それで大輔さんは何で死んだんです?やはり崖から落ちたとか車に轢かれたとかですか?あいつよくお酒飲んで夜遅く出歩いてたから。危ないよと言ってたんですけど」
「薬物中毒の疑いがあるのですが」
「薬物中毒というとやはりタバコの吸い過ぎ?」
「は?」
「あいつ1日にタバコ7-8箱吸ってたんですよ。さすがに吸い過ぎだからやめろと言ってたんですけどね」
「いえ、タバコではなくて違法薬物のようなのですが」
「そんなものに手を出してたんだ。馬鹿だなあ」
「あなたは百道大輔さんが例えばコカインとか例えばLSDとかを使っていたような話は聞いたことはありませんでしたか?」
「いいえ、それって高いのでは」
「確かに結構高い値段で取引されてるようですね」
「あいつタバコ代で月に10万くらい使ってたみたいですよ。その上にそんな高いものを買う余裕なんて無かったと思うのに。何かの間違いではないですか?」
「お兄さんと一緒だったのですが」
「それがおかしいですよ。あの人、兄貴とは一切関わらないようにしてると言ってました。一緒に居たというのも間違いということは?例えば偶然遭遇しただけとか」
刑事たちは顔を見合わせていた。
遺体の引き取り手はお母さんがいいと思うと言って政子はお母さんの住所と電話番号を刑事さんたちに教えてあげた。
「お母さんの住所・電話番号をご存じなんですね」
「ええ。3ヶ月ほど付き合ってましたし」
「なるほどですね」
「それで大輔さんの子供も預かってますし」
刑事たちは驚いたようである。
「それはまたどうして」
「大輔さんは去年コロナに罹って長期入院し、その後も長期間自宅療養していたんですよ。それで娘に移したくないから頼むと言われて預かりました。その子が私にもなつき、私の娘とも仲良くなったのでそのまま置いています。あちらはお母さんも身体が弱くてなかなか孫のお世話が出来ないようだっだし。こちらは子供が既に2人居たから。友だちのよしみですよ」
「そのお子さんのお母さんは亡くなられたか何かですか」
「あの子はお母さんと元々折り合いが悪かったんです。それに彼女再婚してしまったから元夫の子供を置くのははばかれたみたいだし」
「ああ、再婚に伴って前の夫との子供を人に預けるのは割とあることですね」
と刑事さんは理解を示した。
政子があっさり大輔との交際を否定し子供も他の男性とのものであると語ったことから、警察のそれ以降の捜査は簡易なものになったようであった。一応、政子それに私も任意の薬物検査を求められ応じたが、むろん陰性であった。
その後の情報は主としてテレビなどから得られたものである。
結局2人はLSDの大量摂取によるショック死ということであった。2人の発見者でもあった良輔の恋人は大輔はしばらくクスリをやめていたが、今回のアルバム作りで行き詰まり、そこに兄から勧められて再度クスリをやったようだということだった。薬をやめていた理由は、政子との結婚を考えてのことらしく、それを我慢するためたくさんタバコを吸っていたと言った。このあたりが政子の証言と一致した。
また彼女の証言から大輔が今月初めに薬物死したAと政子の二股をしていたのでは思われた。
警察は25日の午後にも良輔のパソコンを調べた。良輔の彼女がパスワードを知っていたのでそれで開いて中を調べる。その結果、良輔がLSDやコカイン、大麻やヘロイン、覚醒剤やMDMA(エクスタシー)などを売った人のリストが見付かった。彼はかなり大物の売人と思われた。
このリストには今月初めに死亡したAも含まれていた。ほかに大量の芸能人・スポーツ選手等の名前が捜査線上に浮かぶ。12月26日、大量の捜査官を動員して、それらの人に任意で薬物検査を求めたところ軒並み陽性になり大量の逮捕者が出て芸能界もスポーツ界もパニックになる。お正月を海外で過ごそうと日本から出る直前を成田などで拘束された人も居た。
スボーツ選手は今年度の成績が全て取り消された。属していたチームの成績まで取り消される騒ぎとなる。
芸能人ではテレビ番組やドラマに出演している人も多く、撮影済みのビデオが使えない事態が多発する。アクアの『少年探偵団』も何本かで撮り直しが発生した。
かなりメインの出演者が抜けてしまい、打切りに追い込まれる番組も多く、テレビ各局は代替番組の確保に追われた。主力選手が逮捕されて戦力がガタガタになった球団などもあった。
良輔・大輔の交友関係、過去の交際相手まで調べられた。大輔の前妻・青島リンナも事情聴取され「政子さんのことを考えて、今、クスリは我慢している」と大輔が言っていたという証言をしたので、政子がクスリのことは知らなかったと言っていたのを警察は信用してくれた。
リンナ自身は大輔が薬を使っていたことを知っていたことで犯人隠匿罪が疑われ任意で取り調べを受けたものの、検察は犯人隠匿罪は成り立たないとして不起訴にした。ただしリンナは社会的な責任を取るといい、向こう半年間の音楽活動自粛を発表した。
私ももし大輔がクスリをしていたことを知っていたなどと言ったら私も半年ほど活動自粛することになり、ほんとに大騒動が起きるところだった。千里・青葉が忠告してくれたお陰でそのような事態は避けられた。心の痛みは残るけど(千里や若葉から「冬はナイーブすぎる」と言われるゆえんか)。
取り敢えず出演者が多い年末・年始の特番(撮影済み)がほぼ使えなくなり(高額の制作費が掛かっていたのに)、若手芸能人を起用した生バラエティや長編映画の放送などに切り替えられた。3年前に放送された§§ミュージック制作の「The源平記」まで再放送された。
(使えなくなった番組の多くは代替出演者で一部を撮り直してゴールデンウィークなどの特番として再利用されたが、メインの出演者が逮捕された結果完全に使えなくなったものもある。テレビ局は大損害である)
コスモスは12月30日夕方!になってNHKの部長さんからの電話を受けた。
「出演者が足りないんです。そちらから男女1名ずつ推薦して頂けませんか」
「それでは紅組は白鳥リズム、白組は立山煌で」
「分かりました!それでお願いします」
コスモスはすぐ本人達を呼んで告げたが昨年に続き2度目の出演となった白鳥リズムは「やります、やります」と張り切っていた。一方デビュー年にいきなり紅白出場を告げられた立山煌は
「え〜〜〜!?」
と驚いていたが
「頑張ります」
と厳しい顔で言った。コスモスは彼のバックダンス&コーラスとして三国舜と沢村明美、鈴原さくらと長浜夢夜を一緒に付けて行かせることにした。男女2人ずつなのでフォークダンス風の踊りを踊ってもらう。
経験豊かなさくら・夢夜がいればだいぶ心強いだろう。女子ばかりでは(2人とも女子のはず)煌と同じ楽屋に居られないので、三国舜と沢村明美を付けることにした。沢村明美は信濃町ガールズ関東のメンバーで今年は『黄金の流星』・『竹取物語』にも出演した。コスモスが直接本人に電話したら「ぜひやらせてください」と言って飛んできた。彼は先日の昇格試験では関東予選の段階で僅差で大館蒔乃に敗れ、関東代表になれなかったのである。それで悔しい思いをしていたところに大抜擢で大喜びしていた。
他の紅白組はこうなる
北里ナナ with 金平糖(セレン・クロム・花園裕紀)
ラピスラズリ with 甲斐姉妹・直江姉妹
常滑舞音 with CAT sisters
薬王みなみ with ATG
白鳥リズム with 北陸組(入瀬姉妹・麻生ルミナ・紺青セイラ)
リズムが紅白の方に出ることからカウントダウンの出場順は少し調整されることになった。0時前のカウントダウンが姫路スピカで、ニューイヤーはアクアで行く。
紺青セイラは12月10日の昇格オーディションに合格したばかりの川本浜菜にコスモスが付けた芸名である。彼女は射水(いみず)市の出身で射水市には初代・海王丸が展示されており、“紺青”とはこの海王丸が付けていたフィギュアヘッドの名前である。
日本丸(横浜)“藍青”祈る女性像
海王丸(射水)“紺青”横笛を吹く女性像
但しこのフィギュアヘッドは現在2代目海王丸に移設されている。
また川本浜菜はフルートが上手いことからこの名前になった。“セイラ”はセイラー(水兵さん)に由来する。また実は彼女のお父さんが海上自衛隊の出身であった(護衛艦に乗っていた)。最終的に1等海曹(他国で言うと一等軍曹)まで行っているがセーラーさん時代の写真もたくさん残っている。
「これが父さんのセーラー服姿だ」
と言って楽しそうに見せてくれるらしい。
合格したばかりでいきなり紅白の舞台というので「すごーい!」と興奮していた。今年の春くらいの段階で、入瀬ホルン・麻生ルミナ・紺青セイラが北陸支部でトップ争いをしていたらしい。またこの4人は次の楽器が得意である。
入瀬コルネ:ヴァイオリン
入瀬ホルン:ホルン、ギター
麻生ルミナ:クラリネット、ピアノ、エレクトーン
紺青セイラ:フルート、ベース
(入瀬姉妹もフルートをわりと吹く。ただセイラが一段高いレベル)
それで何となくこの4人でバンドも組める感じである。音域はルミナだけがアルト、他の3人はソプラノである。
ラピスラズリ主演の『占い女子高生みつる』はいったん12月で終わる予定で12月最後の放送(12/26)では最終回っぽい展開だったのに“玉突き”の結果急遽延長されることになり、バタバタと放送前日!(1/8)に撮影が行われた。2日前の1月6日に発注された台本が完成してなくて、最後の5分くらいを朱美と敵役の木崎望夢演じる“螺旋大魔王”のアドリブで撮影するなどという凄いことになった。でも2人とも即興演技が得意なので何とかなった。
(木崎の役名は最初の台本では“羅切大魔王”だったが田代プロデューサーが「さすがにその名前はやめろ〜」と言って“螺旋”に変更された。衣裳はハイレグ+厚手タイツでちんちんが無いことが一目で分かる。この上半身にDNAみたいな二重螺旋の絵を描いた。この衣裳が着られるのは多分彼だけ)
この番組は結局4月以降も継続されることになった!主人公?の東雲はるこがあまりにも演技力が無いので打ち切りしようという声はあるものの、代わりの番組が作れないのである。
本当は1月から倉田ミチコ主演『有閑女子高生の事件簿』をこの枠でやる予定がそちらは火曜日夕方の枠に入れられた。
百道良輔・大輔の葬儀は結局1月5日になり都内の葬儀場でひっそりと行われた。出席者は下記である。
喪主:百道和子(73)
葬儀委員長:須藤美智子(54)
桜川悠子(31)・美季(4)
青島リンナ(35)
中田政子(31)・夏絵(4)
大輔の事務所の元社長(引責辞任)
大輔のレコード会社の元部長(引責辞任)
私は「関わるな」という複数の人の忠告から欠席させてもらった。
良輔の彼女は自らも薬物所持で捕まって拘置所の中なので出席できない。
須藤は良輔の元恋人で悠子は良輔との娘。美季は悠子の娘。青島リンナは大輔の元妻、夏絵は大輔との子供。中田政子は大輔の元恋人。
悠子は良輔の子、夏絵は大輔の子だから2人は従姉妹。夏絵と美季は同い年だが、従姉妹違いということになる。
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