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■Les amies 振袖は最高!(2)

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翌朝、晃が小夜子の家を辞そうとすると、五十鈴に呼び止められ
朝ご飯をごちそうになった。
「あの子、あまりお友達を連れてきたりしないので、よかったら仲良くしてやってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
いつでも歓迎ということなのだろうけど、これってずっと自分はサーヤの「女友達」扱いということかな?と晃は思った。『ま、いっか』晃は心の中で苦笑しながらも、この上品なお母さんの手作りらしい朝ご飯を頂いた。ちなみに小夜子はまだすやすやと眠っていた。
 
結局晃は毎週水曜と土曜の夜に小夜子の家を訪問し、着付けの練習をさせてもらうことになった。まず晃が小夜子に着付けした後、小夜子が教えられながら晃に着付けする。それが終わったら再度晃が小夜子に着付けするというコース。自分で着付けした後で一度模範演技を見れば確認になるからと小夜子が言い出したのであった。
 
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初日こそ数百万はしそうな加賀友禅を使ったが、さすがに毎回それを使うわけには行かないので、晃が手持ちを持ち込んだ練習用の振袖2着と、小夜子が普段のお出かけに使っているという普及品クラスの振袖3着を練習に使うことにした。
 
「アッキー、おっぱいあるのね」と小夜子が晃に着付けをしながらわざとブラにさわってくる。「ブレストフォーム付けてるから。シリコン製の偽乳だよ」
「でもおっぱい無い方が着物って着やすくない?」
「いやだから、おっぱいある人に着せる練習しなくちゃいけないから。普段の仕事ではそこの部分をやらせてもらえないから自分の体で補充練習している。今Bカップになるフォーム付けてるけど、Dカップになるフォームも持ってるよ」
「そっかあ、補正の練習が不足気味なのね。いっそうちにずっと泊まり込む?毎朝やらせてあげるよ」
「試験の前一週間はそのくらいさせてもらうと助かる。あ、着付け練習用のボディとか、ここに持ち込んで良い?サーヤが休んでいる間もそれで練習できるし」
「いいよ、いいよ、何でも持ち込んで」
小夜子は晃とそういうやりとりをしながら、自分が晃を完全に同性の友人として見ていることに気づいた。
同性の友人・・・・・私たちって男女の恋人としてはうまく行かなかったけど、女友達としてなら、ずっと仲良くできるのかも。アッキー、いっそホントの女の子になってくれないのかな。そんなことも考えたりしていた。
 
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「ねえ、性転換手術の費用無いんだったら、私出してあげるよ」と小夜子は唐突に言った。晃が小夜子の家に来るようになってから半月が過ぎ、もう11月に入っていた。試験まであと1ヶ月である。
「いや、なんでそうなるの。ボクは男だし、女になりたい訳じゃないから」
「性転換手術までしなくても、去勢して女性ホルモン飲むだけでもかなり女らしいボディになれるんじゃない?」
「いや、だからボクは単に女の子の服を着るのが好きなだけだから」
「本物のおっぱいとか自分のものにしたくない?」
「ないない。パッドで充分」
「一服盛っちゃおうかとも思ったんだけど。食事に女性ホルモン混ぜちゃうとか」
「こわいことやめて。一応、ボクも可能なら将来女の人と結婚して子供も作りたいし」
「私、産んであげようか?」
「はあ?」
「アッキーの子供を私が産んで。そうねえ、2人くらい子供作ったら、スパッとおちんちん取っちゃうとか」
「なぜ取る必要がある?」
「でも、何かの事故でおちんちん無くなっちゃったらどうする?」
「まあ、無くなっちゃったら仕方ないけど」
「あ、やはりそこが普通の男の人とは違うと思うな。普通ショックだとか絶対嫌だとか反応するでしょ。アッキーは女の人としても充分適応していけると思うよ」
「そうかなあ。。。。でもさ」
「うん?」
「ボクとサーヤって、子作りというかHしない関係の方がうまく行きそうな気がする」
「うん」
小夜子はまじめな顔に戻って頷いた。
 
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毎週土曜の夜は着付けの練習の後、そのまま泊まっていくのが常になっていた。いつも同じベッドに仲良く寝ていたが、Hどころか抱き合うこともなかった。小夜子は一度裸で先にベッドに入り、いたずらっぽい視線で見つめたりしたが、晃は困ったような顔をして「ちゃんと服着ないと風邪引くよ」と言い、軽く頬にキスしただけで、壁のほうを向いて寝てしまった。自分に魅力がないから何もしなかったというより、自分を大事にしてくれるから何もしなかったというのを、晃の優しいキスで感じ取っていた。
 
「でもさあ、私達が恋人に戻らないとしたら、私が他の男の人と結婚しても平気?」
小夜子はまた別の機会に晃に聞いてみた。
「ショックだけど、受け入れるよ。君が選ぶほどの人なら。それに・・・・ボクはたぶんサーヤの夫としては振る舞いきれない」
「ふーん。やはりショックなんだ」
「そのあたり、あまり突っ込まないで欲しい」
「うふふ」
「何だい?」
「いいの」小夜子は少し楽しい気分で微笑みながら晃の腰に手をやった。晃は腰に触っているくらいなら、振り払わずに受け入れてくれていた。
「ボクたちって、たぶん女友達という関係でいいと思う」
小夜子は心の中で頷きながらも敢えて返事はしなかった。
 
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「アキちゃん」
その日。水曜日なので小夜子の家に行くのに定時で上がり、お店を出ようとしていた時、店長が晃に声を掛けた。
「はい」「検定のモデルをやってくれる人、決まったと言ってたわね」
「はい。古い友人で。今も毎週2回水曜と土曜に練習に付き合ってくれています。今日もこれから行きます」
「良かった、良かった。どうしても見つからないときは私がモデルしてあげないといけないかなとも思ってたし」
「すみません。ご心配頂きまして」
「一度ここに連れていらっしゃいよ。髪のセットでもパーマでもサービスで」
「そうですね。当日もこちらで髪をアップにセットしてから会場に行きます」
「うんうん。でもさ」「はい?」
「ここ1ヶ月ほどで、アキちゃん、ますます女らしくなった気がするわ」
「ええ!?」
「水曜はいつもすぐ帰るし、恋人でもできたのかとも思ったけど、ほんとに練習だったのなら、そういう訳でもないわよね。でももう、うちのホームページのスタッフ紹介の所にあなたを男性として表示してていいのかどうか悩み始めてた所」
「えーっと」
「だって男の人かと思って指名してみたらほとんど女の人だったというのでは詐欺みたいだしねえ」
「一応ボクまだ男ですから」
「ふふ。『まだ』男なのね」「いや、それは」
「うん。好きなように生きていいのよ。うちは腕さえ確かなら性別は気にしないから」
「あ、はい・・・・」
店長は楽しそうな顔をして奥の部屋に戻っていった。
 
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その日は急に冷え込んできた。駅で晃はトイレに行きたくなった。
スカート短すぎたかな・・・・
いつものように多目的トイレに入ろうとしたら、ふさがっていた。
仕方ない待とう・・・・
しかし多目的トイレは、なかなか空かなかった。
う・・・・ちょっと辛いな。仕方ない。
晃は男子トイレに飛び込む。すると中にいたおじさんが晃に言った。
「お姉ちゃん、こっち違う。女子トイレは向こう」
「あ、すみません」反射的に入口に舞い戻った晃は、多目的トイレがまだ空いてないのを見てふっとため息をつくと、意を決して女子トイレに入った。
幸いにも個室がひとつ空いていた。そこに飛び込む。
それが晃が初めて女子トイレを使った日であった。
 
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用を達して個室を出ると、女性が3人、列を作っていた。
晃は軽く列の人に会釈をして手洗い場へ行った。
晃はなぜか男子トイレにいる時より気が落ち着く思いだった。
 
電車を降りて小夜子の家に歩いて行く途中。晃は気になって、携帯で自分の美容室のページをのぞいてみた。晃の紹介で性別が「?」になっていて、晃は苦笑いした。
 
小夜子の家に着き、着付けをしながら、まずは美容室に一度来ないかと誘うと、では今度の土曜日の閉店前に行き、そのまま一緒に帰ろうということになった。
 
そのあと、ホームページの性別問題を笑いながら話すと「ああ、それはむしろ『女?』くらいでいいよ」などと小夜子も笑いながら答えた。
 
その日は小夜子が晃に振袖の着付けをしたあと、自装してみたいというのでところどころ注意しながら、させてみた。最後の帯を180度回すところで少し崩れたが修正可能な範囲だった。
「だいぶうまくなったね」
「そろそろ免許皆伝?」「うーん。もう少しかな」
「私頑張るね。検定までに私も合格ラインに到達しなくちゃ。こないだから何度かアッキーの来ない日に自分でやってみてたんだけど、なかなかうまく行かなかったのよね。今日は今まででいちばんの出来かも」
「わあ、頑張ってるんだ。ボクも頑張るよ」
 
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しかしそういうことまでしていたので、その夜はすっかり遅くなり終電時刻をすぎてしまった。そこで結局、その日は泊まっていくことになった。
 
「土曜だけでなく水曜も泊まっていけばいいのに、といつも思ってたのよ」
仲良くベッドに入ってから、小夜子がそう言った。
「いや週2度も泊まるのは悪いかなと思って」
「遠慮するような間柄じゃないのに」と小夜子が苦笑する。
「うん。そうかな」「そうそう」
 
「サーヤ・・・・」「ん?」
「ボク今日は一線を越えてしまった」「え?誰か男の人とHしちゃったの?」
「いや、そんなんじゃなくて。って、ボクは恋人居ないよ。彼氏も彼女も」
「恋人じゃなくても、やられちゃうことはあるでしょ。ハプニングとか」
「ちょっと待って」「今からハプニング起こさない」
「ボクが絶対しないと知ってて、そんなこと言うし」
「えへへ。で何があったの?」「女子トイレに入っちゃった」
といって晃が状況を語ると、小夜子は笑いをこらえきれない感じだった。
 
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「えー。アッキーはいつも女子トイレ使ってると思ってた」
「だって自分は女という自覚がある人なら女子トイレ使っていいと思うんだけど、ボクは一応性自認は男だし。それが使うのはまずいだろ?」
「でもアッキーの格好で男子トイレに入れば『こっち違うよ』と言われて当然」
「だから男女の別が無い多目的トイレをいつも使ってたんだけど」
「もう諦めて、私女になりますと宣言しちゃえば?きっとそのほうが今より楽だよ」
「うーん」
「だってアッキーの周囲の人は皆アッキー女になりたいんだろうと思ってるって」
 
「ごめんカムアウトする。実は自分の性自認は揺れてる」
「今更カムアウトしなくても私は分かってるよ」
「一応男のつもりなんだけど、しばしば自分は女かもと思う時もある」
「顔つきで分かるよ。男の子の顔してる時と、すごく女っぽい時がある」
「あ、それは自分で鏡見ても思う時ある」
「でさ、その女っぽい顔してる時間が最近増えてきている感じ」
「そう?そういえば店長にもそんなこと言われた気が」
「きっと体内のホルモンバランスが変動してるんじゃないかな」
「サーヤ、ボクに一服盛ったりしてないよね」
「してない、してない。だいたい女性ホルモン剤なんて入手できないし。でもホルモン飲むのならちゃんとお医者さんの診断受けてからのほうがいいよ。自己流で飲んでたら体壊しちゃう。きっと」
「ありがとう。でもボクはまだ自分の体改造する気はないよ」
「ヒゲや臑毛は永久脱毛してたよね」
「フラッシュ脱毛だけどね。毎日処理するのが面倒だからやっちゃった」
「あそこも思い切ってやっちゃえば? どうせ取るなら若い内がいいよ」
「そのつもりない・・・筈だけど、その内その気になっちゃうかもと自分が怖い」
「まあ、無理することもないけどね。気持ちが固まってからでいいだろうけど。でもこれは断言しちゃう。アッキーはもう男の人には戻れないよ」
「うん。。。そうかも」晃は素直に頷いた。
 
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とうとう検定まで一週間となった。検定は火曜日だが、晃は前の週の火曜日に美容室が休みなのを利用して、荷物をまとめ、車で小夜子の家に向かった。これから一週間は小夜子の家に泊まり込んで練習である。
 
小夜子の着付けの腕もかなり上がっていて、晃はその日の練習で小夜子に免許皆伝を告げた。
「私もその着付け検定受けたら2級くらい取れるかなあ」
「サーヤは最初から2級のレベルはあったよ。目指すなら1級と思うけど実務経験が無いと受けられないから。なんならうちの美容室でバイトする?」
「面白そう」
「成人式とか卒業式とか七五三とか、シーズンは忙しいから。もし手伝ってくれるなら店長に言っとく」
「そのくらいなら少し考えてもいいかも」
 
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一週間お世話になりますと五十鈴に言うと、五十鈴はにこにこして
「なんでしたらずっと居てくださってもいいのよ」などと言った。
晩御飯はごく普通の、カレイの煮付けにほうれん草の白和えだった。
変に異様な歓待をしないで、こちらに気を遣わせないようにしてくれるのが嬉しい。一週間もお世話になるので少しお金を入れると言ったのだが
小夜子は気にしないでと言った。その代わり試験が終わったら聞いて欲しいお願いがあると言っていた。何をお願いされるのか怖い気もしたが晃は了承した。
 
朝起きてから1回着付けをして、お互い職場に出かける。
帰宅したら夕食後に1回着付けをしたあと、晃は練習用ボディを使って色々ポイントを確認していく。その間に小夜子は自分で着る練習をしている。そして最後にまた、小夜子がモデルになって着付けをするというパターンで進めた。何度か五十鈴もモデルを志願して、練習台になってくれた。
 
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「補正がさ、やはり最初の頃からすると手際よくなってるよ」と小夜子が言った。
「ありがとう。たくさん練習させてもらったおかげだよ」
「同じモデルだから同じような補正になるのは申し訳ないけど」
「いや、本番もこのモデルだし。それにお母さんにも練習させてもらったから」
 
確かに今まであまりやってなくて不安だった部分をこの2ヶ月近い小夜子との練習で、かなりカバーできたことを晃も感じていた。
 
またこの一週間で、小夜子が持っている振袖をぜんぶ着付けしてみることにした。「普段用」としていつも練習に使っているものも充分良い品だが、その他のものはみなかなりの逸品で晃はさすがに緊張した。しかしその緊張感が、ついついいつも同じモデルでやっていて「慣れ」てしまっていた部分に良い刺激を与え、きちんとした手順を再度体に刻み付けることになった。
 
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前日。
本番で使う加賀友禅『雅の鳥』で着付けをしてみる。ポイントを確認しながら少しゆっくりしたペースでやってみた。着付け終わり、また記念写真を撮ってから脱いで、そのあと衿綴じをやり直しておいた。明日使う道具を今一度確認整理してバッグに詰める。
 
当日。
朝早く家を一緒に出て、誰もいない美容室に鍵を開けて入り、小夜子を椅子に座らせ、髪をアップにセットする。銀色の鈴付きのかんざしで髪をまとめた。
 
ちょうど終わる頃に晃の次の時間帯に受験する美容師さんが2人やってきた。ふたりの内先輩格のトップ・スタイリスト、内村さんに美容室の鍵を渡す。モデルさんたちもじきに到着する筈だが、その前に小夜子と晃は店を出て、会場に向かった。
 
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小夜子は洋装だが、晃は付下げを着ている。試験の後で和服のままそろって記念写真を撮りたいという小夜子の希望でこういうことになってしまった。この付下げは小夜子が着る予定の『雅の鳥』と雰囲気が似ているものを、小夜子が自分の持ち物の中から選んだ。着付けしたのも小夜子である。
 
「アッキーにも振袖着せたかったな。私せっかく練習したのに」
「さすがに振袖では作業がしづらいから、これで勘弁して」
 
会場に着くと朝早いのに物凄い人数が会館に集まっていた。モデルの人は洋装のはずだが、晃と同様に和服の人もいる。受験者かその付き添いであろう。
 
やがて案内されて試験会場に入り、試験の進行について説明があった。見渡す限り女性ばかりである。この中に男の人が混じってたらかなり違和感あるかなと小夜子は感じた。アッキーは女として埋没してるもんね。和服姿の受験生は珍しいので、それを見る視線が来ている。しかし攻撃的な視線ではない。
 
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小夜子が服を脱いでいく間、晃は熱心に道具の再点検をしている。あわせて頭の中で手順を確認しているような感じだ。緊張はしてないわね。試験会場には独特の雰囲気がある。これに飲まれてしまうと、ふだん出来ていることができなくなってしまう。アッキーは大丈夫だ。
 
試験がスタートした。
 
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Les amies 振袖は最高!(2)

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