広告:メイプル戦記 (第2巻) (白泉社文庫)
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■続・受験生に****は不要!!・夏(2)

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結局4人でおしゃべりしながら朝ご飯を食べた。向こうも令次君が主として運転してきて、免許取り立ての初海君は少しだけ練習で運転したらしい。
 
「そちら、籍入れてるの?」
「入れてるよ。だからふたりとも亀井。そちらは?」
「僕らも入れてる。だから僕たちもふたりとも柴田」
「へー。養子縁組か何かで?」
「そのあたりは企業秘密ということで。そちらは?」
「こちらも企業秘密で」
 
亀井同士、柴田同士なので、以後お互い名前で呼び合おうということで同意する。同性カップルならではの苦労話で結構盛り上がった。
 
「じゃ、初海君はとりあえず司法試験の一次試験に合格して次は二次なんだ?」
などと美夏が言うので、春紀が訂正する。
 
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「一次じゃなくて二次試験の短答式だよ。大学2年までの課程を修了していれば一次試験は免除」
「あ、そうなんだ?」
「二次試験が、5月の短答式、7月の論文式、10月の口述試験と続く」
「大変だね!」
「短答式の合格率が20%くらい、論文式の合格率は15%くらい。両者合わせると筆記試験の合格率は3%で30人に1人」
「厳しいね。そんなに落ちるんだ?」
「いや、合格率だけで言うなら、司法書士の方がもっと合格率は低い」
「受験者のレベルが違うからね。合格率だけで難しい試験かどうかは語れない」
「なるほど、そうか。口述式は?」
「論文式に合格した人はほとんど口述試験にも合格する」
「へー!」
 
「まあ、あれは不適格者のふるい落としだよね」
と初海君も言う。
 
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「早い話が面接だから、ジーパンとか茶髪で行った奴は当然落とされるし、高い年齢でやっと合格した人にありがちな、パッとしないタイプは不利。あと聞かれたことに即答できなかったりしたらアウト」
 
「会社の面接と同じだね」
「そうそう」
 
「一応論文式まで合格した人は翌年は口述試験だけを受ければいいけど、それで通るのは1年目によほど変な勘違いでもした人じゃないかなあ」
と春紀は言う。
 
ご飯を食べた後、そろそろ帰ろうかという話になり、まずはトイレに行く。当然、春紀と美夏は女子トイレ、令次君と初海君は男子トイレである。
 
「パートナーと一緒にトイレに行けるのって便利だよね」
「同感、同感」
などという話になる。
 
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「女の子同士だと一緒に列に並べるから、待ちながらおしゃべりできるんですよ」
と春紀。
「ああ、女子トイレは行列が大変だもんね」
と初海。
 
「まあ今の時間帯ならすぐ入れますけど」
 
「男同士だと並んでしながら話せるんだよ」
と令次。
「わあ、連れションってやってみたーい」
と美夏。
 
「じゃふたりそろって性転換したら、やってみて」
「春紀、性転換しない?」
「私はいい。美夏、性転換するんなら、応援してあげるけど」
 

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早朝なので女子トイレはいくらでも空室がある。美夏と手を振って各々個室に入る。ショーツを下げ、スカートを少しあげて便器に座る。おしっこをしながら春紀は、ここに昔は棒が付いてたんだよなあと思うと不思議な気持ちになった。こんな所に棒が付いてたら、おしっこするのに邪魔じゃなかろうかと思ってから、あれ?もしかして、おしっこって、あの棒の先から出てたっけ?と考えたが、自信が無かった。
 
個室の外に出ると美夏は手洗いの所にいる。春紀が手を洗った後エアータオルで手を乾かしていたら、美夏が後ろから抱きしめる。美夏の腕の中で身体を回転させてキスをした。
 
春紀たちがトイレから出てくると、令次君たちが待っていてくれた。
 
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「コーヒーおごり〜」
と言って缶コーヒーを1本ずつ渡してくれるので、素直に
「ありがとう」
と言って受け取った。
 
駐車場の方に行く。
「君たちの車は?」
「そちらのスカイラインです」
「すげー!GT-Rじゃん。さすが東大生」
「レンタカーですけどね」
「なるほどー」
「令次君たちのは?」
「僕らのはこれ」
「かっこいいー。NS-Xか〜!さすが慶応ボーイ」
「先輩からの借り物だけどね」
「いや、こんな車を貸してくれるのが凄い」
 
お互いの目的地を確認すると、令次君たちはこのまま名古屋まで走って行くということで、安曇野に行く予定の美夏たちとは、途中まで一緒に行き岡谷JCTで別れることにした。
 
「じゃ、また」
 
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NS-XとGT-Rで連続して走って行ったら、前方に制限速度より少し遅い速度で走っているポルシェが居た。先行している令次君の車がハザードを2回付けた。
 
「何かの合図?」
「たぶん。前の車は覆面パトカー」
「へー!」
 
それでNS-XとGT-Rはそのポルシェを制限速度+10km/hくらいの速度でゆっくりと追い越した後、走行車線でジャスト制限速度で走った。ポルシェはしばらく追随していたが、次のPAで中に入ってしまった。
 
「こちらが飛ばすのではと思ってしばらくついてきたみたいね」
「でもよく覆面って分かったね」
「無線のアンテナつけてたし、決定的なのは補助ミラーが付いてたよ。たぶん令次君たちもそれで気づいたんじゃないかな」
 
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7月の下旬、春紀たちのアパートに突然の訪問者がある。
 
「桜木先生!」
「あんたたち全然帰省してこないからさ、私の方から出てきたよ」
「すみませーん。お金が無いし、バイトも忙しかったので」
「まあ、法学部も薬学部もめっちゃ忙しいだろうね。診察するよ」
 
と言って、春紀は裸にされてしまう。
 
桜木医師は最初に立ったままの春紀の様子を眺めて
 
「もう完璧に女の子のボディラインになったね。おっぱいも大きいし」
と言った。
 
「この子、今Dカップのブラつけてるんですよ。私はまだCなのに」
と美夏が言う。
 
「じゃ、ちょって寝てみて」
と桜木は言って、春紀を布団の上に寝せて、主として女性器のチェックをする。
 
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「傷が痛んだりすることはない?」
「全くないです」
「完全に定着してるんだろうね。ドナーさんと凄く相性がよかったんだよ」
 
春紀の体の中に埋め込まれている女性器は一酸化炭素中毒で亡くなった少女から移植されたものである。
 
「クスコ入れるよ」
「はい」
桜木医師は鞄から(使い捨てタイプの)プラスチックの透明な膣鏡を取り出し、グリスを塗ってから春紀のヴァギナの中にゆっくりと挿入した。中を観察する。その挿入されている様子を見ていて美夏は、自分も入れられたい気分になってしまった。せっかく買ったのに、春紀ったら、あれ全然使わないんだもん!
 
「全然問題ないね」
と桜木医師は言う。
 
「なんかずっと前から自分のものだったような気がするんです、最近」
「うん、そういう気持ちを持つのが、実は移植を成功させるための基本なんだよ。移植には実は精神的な部分も大きいのさ」
「へー!」
 
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桜木医師は他に血液と尿を検査するからと言い、カップを渡してトイレで尿を取ってこさせてから、注射器で採血をした。
 
「あとレントゲンと心電図がほしいから、これは地元の病院で取ってきて。これ書類を書いておいたから」
と言って渡されるので、春紀は素直に行ってきますと言った。
 
「春紀の性器ってふつうの女性と全く同じなんですか?」
と美夏が質問する。
「ほぼ同じだね。ただ前立腺が存在しているのと、膣が微妙に違う」
「違うんだ!?」
「膣って元々直腸がふたつに分かれてできたものだから、膣壁の向こう側は直腸なんだよ。でも春紀ちゃんの膣は後で埋め込んだものだから、直腸の壁とは別なんだよね」
「なるほど!」
「だから女性の場合、便秘の時に力みすぎると、中身が膣と腸の間の壁を押して膣側にまで広がってくる。でも春紀ちゃんの場合はそういう現象は起きないんだよ」
「それって女よりもできがいいのでは?」
「かもね〜」
 
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「でも触った感じ、春紀ちゃんの骨格は完全に女性型に発達してるね」
と桜木医師。
 
「春紀って触った感じも女の子の感じしかしないのよね」
と美夏。
「これ、骨盤も女性型だと思う。正確にはレントゲン見ないと分からないけど」
「春紀、赤ちゃん産めますよね?」
「産めると思う」
 
「私が赤ちゃん産むの!?」
と春紀は驚いたように言う。
 
「女の子はいづれ母になるんだよ」
と桜木医師は優しく春紀に言った。
 

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「春紀ちゃん、もう男の子に戻る気は無いよね。保存しているおちんちんとたまたまはもう廃棄しようか?」
 
「すみません。もしよかったら、冷蔵庫の片隅にでもまだ置いていてくださるとうれしいです」
「男の子に戻りたい?」
「今はそのつもりないですけど、もしかしたらその内戻りたくなるかもしれないし」
 
「男なんかになったら即離婚だな」
と美夏。
「美夏、こないだは、私が男に戻らないなら離婚だって言った」
「あの時はあの時よ」
 
「まあいいよ。とりあえずはまだ取っておいてあげるよ」
と桜木医師は笑顔で言った。
 

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8月の上旬、春紀が弁護士事務所に出ていて、ちょっと隙間時間ができたので空いている面談室に入って、判例集を読んでいたら、初海君が来た。
 
「お、いたいた。春紀ちゃん、ちょっと相談事なんだけど」
「はい?」
「春紀ちゃん、キューブスとか興味ある?」
「好きです」
 
キューブスは最近特に若い人の間で注目されている音楽ユニットだ。長年作曲家として活躍してきていたアーク子門さんが自らキーボードを弾き、それにベース、女性ボーカル、男性ダンサーをフィーチャーした4人組である。
 
「来月さ、キューブスの限定ライブがあるんだよ。場所は中野サンプラザ」
「えーー!?知らなかった」
「昨日の夜9時のラジオ番組で発表されて、番組の終了した夜10時から発売。即売り切れたみたい」
「売り切れるでしょう!」
 
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「それでさ、僕と令次がふたりで電話したら、ふたりとも取れちゃったんだよ」
「凄ーい!」
「ふたりとも取れたから、どちらかキャンセルしようかとも思ったんだけどね。ひとつ問題があって」
「ええ」
「このライブ、カップル限定なんだよね」
「へー!」
「僕たち、男同士のカップルですと主張して押し切ろうとも思ったんだけど、以前それやって言い負かされたこともあって」
「あはは」
「いっそ、僕が女装していこうかとも思ったんだけど」
「初海さん、女装しても男にしか見えないと思う」
「実はそうなんだよ。高校時代の同級生にもよくからかわれてたんだけどね」
「へー、女装とかしてたんだすか?」
「うん。学校の女子制服も持ってたから」
「凄い」
 
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初海さんって男性同性愛みたいだけど、実は少しMTFも混ざっているのかなと春紀は思った。でも令次さんとの関係は、どちらかというと令次さんの方が女役っぽい気がするのに(直接訊いたことはない)。初海さんはがっちりした体格だが、令次さんは優男だし内向的な感じである。
 
「それで考えてたんだけど、僕たちと春紀ちゃんたちとでペアを組まない?」
 
春紀はへ?と思って一瞬考える。なるほど〜〜!
 
「つまり、初海さんと私がペアになって、令次さんと美夏がペアになって入場すればいいんですね?」
「そそ。せっかくペアチケット2つ取れたから。席では本来のペアに戻って座ればいい」
「美夏も行きたいと言うと思います」
「よし、話は決まった」
 
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「だけど、今ペアリング考えた時に、僕と春紀ちゃん、令次と美夏ちゃんって言ったね」
「あれ?違うほうがいいですか?」
「いや、実は令次もそういう組み合わせかなあ、なんて言ったからさ」
 
春紀は少し考える。
「令次さんと私、初海さんと美夏だとなんか違和感があります」
「うん、そんな気がする。令次と春紀ちゃんだと、令次が女の男装ではと疑われて、僕と美夏ちゃんだと、美夏ちゃんが男の女装ではと言われたりして」
「ありそう、ありそう」
 
ああ、こんな会話聞いたら美夏怒るだろうなと春紀は思う。
 

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「ところで、司法試験の感触はどうでした?」
「たぶん落ちてる」
「ありゃ〜」
「全然きちんと書けなかったもん。来年またチャレンジだな」
「来年は私も受けます。一緒にがんばりましょう」
「うん、がんばろう」
 

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ところで、この夏、春紀と美夏はとうとう携帯電話を買うことにした。これまで、持っていなかったので、結構お互いの連絡に苦労していたのである。ふたりともずっとバイトをしていたので、少しだけ貯金ができていたこと、それに春紀や美夏の経済的な苦境を知って、卒業する先輩から結構なテキストや資料集などを譲ってもらって、書籍代が浮いたのもあった。
 
同じキャリアの方が、相互の通話が安くて済むということだったので、ふたりともセルラー(後のau)にすることにした。デジタルツーカー(後のJフォンでこの会社はその後ボーダフォンに買収され、更にソフトバンクに買収された)とどちらにするか迷ったのだが、ツーカーがなんだか地域ごとにばらばらで動いている感じなのに対して、セルラーは一応地域別の会社になっていても、全国的に違和感なく通用する感じだったので、そちらに決めたのである。
 
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新しい携帯で母に連絡すると
「あら、いいわね」
などと言った。
 
「ごめんねー。お金無いのに、こういうのに使ったりして」
「いや、たぶん今からは携帯電話は必需品になってくると思うよ。今は家にある電話を単に電話と言って、携帯電話を長い言い方してるけど、その内、電話と言えば携帯電話になって、家にある電話は家庭電話とか言われるようになるかも」
 
ああ、そうかもしれないと春紀は思った。この母の予言は割と当たったが、その後携帯電話は「電話」と略されるのではなく「携帯」と略されるようになるわけだが、さすがの母もその後携帯電話に多様な機能が追加されていくことまでは予想できなかったろう。
 
携帯電話の番号を母に伝えると
「これ、こちらから掛ける時は頭の030を040に変えればいいんだっけ?」
などと言われる。
 
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「え?何それ?」
「確か携帯電話って、近くにある時は030を頭につけて、遠くにある時は040に変えるようになってたはずだよ」
「え?知らなかった」
 
それで春紀は慌てて購入したショップに問い合わせてみたところ、1996年夏まではそういう方式だったが、現在は同じ番号で全国どこでも使えるということが判明し、その旨母に伝えたら「技術が日々進歩してるんだね!」と驚いていた。(実は技術上の問題というより距離別課金が廃止されたためなのだが、その背景には携帯電話に割り当てる番号が足りなくなってきたこともあった)
 

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