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■春会(4)

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改めて『Moon Road』を流す。
 
「この曲のサックスも三重奏にする構想があったのだけど、適当な演奏者が思い浮かばなくて見送っていたんだよね。せっかく青葉が来ているから、私とゆまと青葉で三重奏」
 
「ああ、青葉ちゃんならメンツに入れていいね」
と鮎川さん。
 
「私、この春から始めたばっかりなのに!」
「いや、青葉ちゃんはセンスが良い」
 
それでいったん没にしていたというサックス三重奏の譜面をパソコンの中から取り出し、プリントして渡す。
 
「30分練習してから収録」
「OK」
 
それで、鮎川さん、青葉、がそれぞれ別の個室に入って練習する。七星さん本人もまた別の個室で練習する。青葉の個室には、冬子と千里が入って演奏を見てくれた。
 
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なお空帆は鮎川先生の演奏が見たいといってその個室に入り、政子と桃香はおしゃべりをしていた。
 

青葉の演奏に色々冬子がアドバイスしているのを見て、千里が
「あれ?冬子さん、サックス吹くんですか?」
と尋ねる。
 
「私はウィンドシンセを吹くんだよ」
と冬子が答える。
 
「あ?じゃ、もしかして水曜日に出たKARIONの『雪のフーガ』の中の『月に想う』
でサックスの三重奏していたののひとりは冬子さん?」
と千里が訊く。
 
「KARION?」
と冬子は驚いたように言い、青葉の顔を見る。青葉が慌てて首を振る。
 
「え?だって、冬子さん、KARIONの結成以来のメンバーですよね?」
と千里。
「なぜ、それを知っている?」
 
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「なぜって、KARIONのCDを聴けば、歌っている声のひとつとピアノ演奏が冬子さんだと分かりますよ。というか、私はKARIONの方を先に聴いていたから、ローズ+リリーがデビューした時、あれ?柊洋子さん、他の子と組んで別のユニットも掛け持ちするんだ?と思ったんですけど」
 
「歌の声が分かるのはいいとして、なぜピアノ演奏も私だと?」
「だってローズクォーツとかで弾いてるのと波動が同じだったから」
 
「波動で分かったの〜〜?」と冬子。
「え?そんなの誰でも分かりますよね?」と千里。
 
青葉は半分呆気にとられていたが、やがて言う。
「ちー姉、それが波動で分かる人は、日本国内に10人もいないと思うよ」
と笑顔で言った。
 
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だいたい練習が終わった所で、千里は
「この3人だけの秘密ね。桃香には内緒にしといて」
と言って、自分の携帯の中から1枚の画像を呼び出した。
 
「鮎川ゆまさんと会った頃の私だよ」
 
そこにはブレザーの女子制服を着て、お腹の付近まである長い髪をした少女の写真が写っていた。
 
「女子高生してる!」
と青葉が嬉しそうに言う。
 
「多分、冬子さんって、私と似たような女子高生生活をしてたんじゃないかな」
と千里が言うと、冬子は咳き込んでいた。
 
「でも今もう占いができないのは本当。霊感も随分衰えたから、多分今の私なら、KARIONの4人目が冬子さんってことに気付かなかったかもね」
と千里は昔を懐かしむかのように言った。
 
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収録は結局『Moon Road』のみでなく、他にも2曲サックス三重奏を入れることになり、結局夜11時過ぎまでかかってしまった。彪志から何度か青葉の所にメールが入っていたが、作業中で青葉は取らなかったので、結局彪志は諦めて千葉に帰ってしまったようであった。作業が終わった所で「ごめんねー」とメールしておいた。
 
「遅くなったね」
「仕方無いです。明日は学校休みます」
「それはいけない。私が送って行くよ」
と鮎川さん。
 
「へ?」
「君たち富山市だったっけ?」
「その少し先の高岡市です」
「だったら、今から私のポルシェで走れば3時間で着くね。3時前にはお家に帰れるよ」
と鮎川さんは言った。
 
鮎川さんの愛車はポルシェ・パナメーラである。
 
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しかし冬子が言う。
「ゆま、その3時間ってのは明らかにスピード違反」
 
「それ送って行ってあげるというより、深夜のドライブがしたいだけでは?」
と七星さんも言う。
 
「大丈夫だよ。オービスの場所は知ってるし、こんな夜中に警察も居ないって」
「車で行くなら速度制限守って」
と冬子。
 
「うーん。まあ、守っても5時間かな」と鮎川さん。
「それに1人でそんなに長時間走るのは無茶」と冬子。
「誰か交替ドライバーが居た方がいいね」と七星さん。
 
「じゃ、良かったら私が運転しましょうか? MTでも運転できますよ」
と千里が言うので、鮎川さんと千里で交替で運転して高岡に帰ることになった。
 
「じゃ、千里、ゆまがスピード違反しないように監視してて」
と冬子は言っておいた。
 
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千里と青葉の苗字が違う件について、午前中は省略した説明をきちんしたら、
「そんなことがあったんだ! 青葉ちゃん、大変だったね」
と鮎川さんはほんとに同情するように言っていた。
 
「でも今は桃香姉さんにも千里姉さんにも、よくしてもらっているし、新しくお母さんになってくれた、桃香姉さんのお母さんにも、ほんとの母娘のようにしてもらっているから、私ほんとに幸せです。正直、元の家では、家の中で心の安らぎって、得られなかったから」
 
「いろんな家庭があるんだよね。芸能界には、なんかすさんだ家庭で子供時代を過ごした人がけっこういるよ」
と鮎川さん。
 
「だから芸能界に来たんでしょうね」
「だと思う」
 
「でも千里さんと会ったのも、Lucky Blossomが解散した時以来2年ぶり、というか、ゆっくり話せたのはデビュー前の頃から7年ぶりだよ」
と鮎川さん。
 
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「あの頃、音楽のことを熱く語ってましたね、鮎川さん」
「うん。燃えてたよ。当時はドリームボーイズのバックダンサーしつつ本格的な芸能活動を目標にレッスンにも励んで。お金も無かったけど、なんか毎日が楽しかった。Lucky Blossomも充実してたけど、全力疾走して最後体力が尽きて倒れちゃったという感じの解散だったね。しばらくは何もする気力無かったけど最近また何かしたいなという気分になってきた」
 
「またできると思いますよ。たぶん春頃には何か新しいお仕事が入るんじゃないかなあ」
と千里は言った。
 
青葉は、あれ〜?ちー姉たら、占いはもうできないと言いながら、ちゃんと占いしてるじゃん、などと思った。恐らく今のは無筮立卦だ。
 
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「千里ちゃんがそういうなら、そうなるかもね」
「だけど毎年数千万稼いでいたのが、お仕事やめて突然無収入になったら、住民税辛くなかったですか?」
 
「びっくりしたー! こんなん払えないよぉと思ったんだよ。でもドリームボーイズのリーダーの蔵田さんが、代わりに払ったくれたんだよ。その後、2年がかりで返した」
 
「よかったですね」
「ダンサー仲間でいろいろ助け合ってたからね。ダンサーリーダーの葛西さんも蔵田さんに助けてもらったことあると言ってた」
 
「いや、でもその葛西さんが蔵田さんと結婚したのは驚きました」
と千里。
 
「あれは日本全国度肝を抜かれたんじゃないかな。交際してるって知ってたのはたぶん事務所の社長くらいじゃなかろうか。だってそもそも蔵田さん、男の子にしか興味無いと公言していたのに」
 
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「事情は明かせないけど、葛西さんは例外だって言ってましたね」
 
「まあその事情を知っているのも、ダンサー仲間数人だけだと思うよ」
「へー」
 

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千里があまり昔のことに触れられたくなさそうにしているのを鮎川さんが感じ取ったようで、車内での会話は、最近の話題曲の批評や演奏技術の話、芸能界の噂話など、音楽関係の話題に終始した。
 
また、青葉と空帆の2人についても、高崎を過ぎたあたりで
「明日学校があるから寝た方がいい」
と言って寝せた。
 

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2人を高岡の各々の自宅に送り届けた後で、やっと昔話が出る。
 
「でも千里ちゃん、高校時代も可愛かったけど、ずっと可愛さが変わらないよね。今23くらいだっけ?」
 
「22です。私、早生まれなので」
 
「でも青葉ちゃんと姉妹と言われて、ちょっとびっくりしたけど、この2人が姉妹なら納得するとも思ったよ。千里ちゃんに会った当時、この人、全てを見通すような目をしていると思ったから。今でも龍笛吹くの?」
 
「龍笛は吹けますよ。気持ちを統一する時とかに吹くといいんです」
と千里。
 
「ああ。私が考えがまとまらない時、取り敢えずサックス持って思うままに音を出していると頭の中が整理されていくのと似ているかな?」
「楽器弾く人って、みなそうかも知れませんね」
 
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「ヴァイオリンの方は?」
「下手なままです。私、練習嫌いだから上達が遅いんです」
「でも横笛はハマったのかな?」
「そうですね。相性が良かったんだと思います」
「女性であれだけ龍笛吹ける人は少ないもんね。私も龍笛はやってみたけど、なかなかあの龍が鳴くような音が出ないんだよ。今度また千里ちゃんの龍笛、聴かせてくれない?」
「私のでよければいつでも」
 

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高岡に戻った空帆は、『細い糸』の譜面をかなり大々的に改造した。
 
鮎川さんに指導された分もあるが、その後、冬子が青葉の曲を修正するのを見て、更にスターキッズ『Moon Road』の制作現場に立ち会ったことが、空帆の創作意欲を物凄く刺激した。彼女はメロディーの一部まで改変する大改造をおこなった。完成した譜面を鮎川さんにメールし、《編曲:鮎川ゆま・清原空帆》のクレジットを使ってよいかと打診した。すると、鮎川さんは空帆のスコアを更に修正してくれて《編曲:清原空帆・鮎川ゆま》にしようと逆提案。それで行くことにした。
 
新しい譜面を Flying Sober のメンバーに見せた所
 
「すっごく格好よくなってる」
「フルート、これ凄く自然なライン」
「これCDにしたら売れたりして」
 
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などという声も出た。
 
「うん、CD出そうよ、と鮎川先生に言われた。インディーズのレコード会社の人を紹介してあげるよと言われてる」
 
「おお、取り敢えずインディーズか」
「まあいきなりメジャーというのは有り得ない」
 

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女神様は青葉から、祠(ほこら)を設置する場所が決まったと聞き、ちょっとその場所へ行ってみた。今にも崩れ落ちそうな古い家が建っていて、その家の前に、竹ぼうきで掃除をする、白小袖に緋袴を着けた巫女が居た。千葉市内の神社に管理を委託するとか言っていたから、そこの巫女だろうか?
 
「なんか汚い家が建ってるなあ」
とひとりごとを言ったら、
 
「その家は崩してきれいな祠を建てるから大丈夫ですよ」
と巫女が女神様の方を見て言った。
 
「そなた、私が見えるのか?」
「ごめんなさい。私は見えないんです。でも感じることはできます。この感じは女神様ですよね。私も毎日は来られませんが、来られる範囲で来てお掃除くらいはしますので」
 
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「今気がついた。そなた、物凄いパワーを持っている」
「眷属が凄いだけです。ここら辺に居た雑多な霊は、うちの《こうちゃん》が全部処分しちゃいました」
「いや、眷属も凄いが、それだけの眷属を従わせている、そなたのパワーはもっと凄い」
「眷属さんは、私に付いているメリットがあると思うから、付いててくれるだけです。そもそもこの子たちの主人は私ではなく出羽に居ます。私は預かっているだけ。ただのしがない巫女です」
 
「そんなことはない。相応のパワーが無ければ預かることもできない。それにそなた、そのパワーを隠している。軽自動車の中に航空母艦を隠しているんだ。そなたを見て凄いパワーがあることに気付く人は少ない」
「そうでしょうか」
「あの子は気付いてないだろ?」
「取り敢えずパワーが衰えたという話を信じてくれたみたい」
「衰えたんじゃなくて隠し方がうまくなったんだな?」
「ふふふ」
 
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「そなたが《毎日》掃除してくれるのなら、ここに住んでもいいかな」
「私は《時々》しか来られませんけど、それで良かったら」
「ふむ。神様との付き合い方を知ってるな」
 
と楽しそうに言って女神様は
「気に入った。ここに住んでやるから、さっさと祠を建ててくれ」
「多分、春頃までには建ちますよ。来週には解体工事が始まります」
「うん。よろしく」
 
と言って女神様が廃屋を見詰めると、その家は一瞬で崩壊した。
 
「解体の手間を省いてやったぞ」
「まあ、築60-70年だったみたいだから、崩れることもありますよね」
「戦後間もない頃に建てた家だろ? その頃の家って適当な造りなのが多いんだよ」
「解体作業するつもりで来た工務店の人、廃材片付けの作業になっちゃいますね」
「工事費、少し安くなるかな?」
「あの子は同じだけ払うと思います」
「大阪では暮らせん奴だな」
「でも工期は短くなりますよ」
「それはよいことだ」
 
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と女神様は楽しそうに言った。
 
 
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