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■春夢(3)

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「今、三陸一帯は迷ってる霊だらけですから。ちょっとたちの悪いの拾ってしまったみたいですね」
「そちらはどうすれば」
「電話受けた時にリモートで防御入れてそれ以上侵食されないようにして。この家に来て、患者さん見たのと同時に切り離しましたよ。そちらは然るべき所に預けました」
 
「良かった。それでなんですね。佐竹さんがお電話なさって『大先生』とやりとりしただけで症状が緩和したので。それでその大先生が来てくださるというから、それを待とうと思ったんです。でも大先生がお若いのでびっくり」
「ええ、それで信用してもらえないことがあるので、いつも佐竹さんに前面に出て頂いています」と青葉は言った。
 
「かなり体力を取られて衰弱していますが、原因はもう取り除いているから、霊で乱れた気の流れを復旧して、あとは体力を回復できたら大丈夫です。そこまで私が処理します」
「お願いします」
 
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そのヒーリングを1時間もしたころ、青葉はそばで待機している慶子に言った。
「慶子さん。お腹すいた。コンビニで何か買ってきてくれない?」
「はい。でも珍しいですね。ヒーリング中に敢えて食べるなんて」
「霊的な力を高めるには食べないほうがいい。でもこのヒーリングは無茶苦茶パワーを消費する。私、何か食べないともたない。お肉がたべたい」
 
「安い牛肉でもよければ、冷凍室にありますが」と家の人が言う。
「それください。焼いただけでもいいですから」
家の人が冷凍室の牛肉とありあわせの野菜を炒めてくれた。青葉は左手でヒーリングしながら右手でそれをいただいた。
 
「食べながらヒーリングするの凄く失礼ですが、ヒーリングを停めたくないので並行でさせていただきます」
「はい、お願いします」
 
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慶子もコンビニでフライドチキン、トンカツ弁当に、別途患者用にと青葉に言われたスポーツドリンク2Lボトルを2本買ってきた。青葉が家の人に作ってもらった野菜炒めを食べているのを見て佐竹は言った。
 
「あれ?青葉さん、右手でも箸使えたのね?」
「私、ヒーリングは利き手の左手でないとできないけど、字を書いたり箸を使ったりはどちらの手でもできるの」
「器用ですね」
「左利きの人って、みんな右手を鍛えさせられた経験があるから結果的にどちらの手でも行けるって人、多いですよ。私は幼稚園の時の先生が左利き矯正主義者で。幼稚園のお弁当は右手で食べさせられていたし、ひらがなの練習とかも右手でやらされた」
「ああ」
 
「だから私、一時期梵字は左手でしか書けなくて、ひらがなは右手でないと書けなかった」
「それはまた。でも・・・・左手のヒーリングと右手のお箸と、動きが全然違うのを同時にできるのも凄いです」
すると青葉はニコリと笑い
「私、両手で同時に別の絵を描いたり、ピアノで左右別の曲を同時に弾いたりできますよ」と言った。
 
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そんなことを言っている内に青葉はフライドチキンもトンカツ弁当もぺろりと食べてしまっていた。
 
「ふだん凄い少食なのに。青葉さんがこんなに食べるの初めて見た」
「私が食べてるんじゃなくて、柚女さんが食べてるの」
「え?」
「私が食べたエネルギーをこのヒーリングで柚女さんに注入しているから。今、私のヒーリングは気の流れを強めているのと同時に、点滴みたいなこともしているんです」
「ああ」
「ただ、水分までは移転できないから、そうね」と青葉は時計を見る。
「30分後。3時頃にさっき買ってきてもらったスポーツドリンクを飲ませましょう。その頃にはそれを飲める程度まで回復しているはずです」
「はい」
 
実際青葉のヒーリングで体温は40度を超えていたのが39度近くまで落ちてきた。自分で目を覚まして喉が渇いたというのでスポーツドリンクを飲ませる。
「よかった。しゃべられる状態まで回復したのね」
「うん。さっきまでよりは楽」
「スポーツドリンクは飲めると思うだけ飲んでいいですからね」
と青葉が言う。
 
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「はい。あれ?看護婦さん・・・じゃないですよね」
「私は気休めの拝み屋さん。ヒーリングしてますから、柚女さんは気にせず寝てて」
「はい」といって彼女は目を閉じる。
 
青葉はその後もずっとヒーリングを続けた。柚女の母が見ていても、柚女の表情がほんとに苦しそうだったのが少しずつ楽な感じの表情になっていくのが目に見えて分かった。これ救急車呼んで入院させていても、こうはならなかったろうと母は思った。
 
「ずっと手を動かしていますが、疲れませんか?」
「疲れます。でも頑張ります。あ、すみません。コーヒーあったら下さい。熱いのがいいです。砂糖抜きで」
「はいはい。ミルクは?」
「ふだんはブラックなんだけど・・・今はミルクあったほうが嬉しいかな」
「はい」
 
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柚女の体温を測る。38度2分まで下がってきている。柚女は寝ていたが、30分に1度くらいストロー付きのコップにスポーツドリンクを入れて、柚女の口にストローの先を差し込んであげた。すると無意識に柚女は少しそれを飲むようであった。「水分の補給が大事なんです。どうしても脱水症状になりやすいから」と青葉は言った。
 
「37度前後になるくらいまでヒーリング続けます。そこまで行けばあとは自力回復できるだろうし。そしたら祈祷しますね」
「祈祷はおまけみたい」
「ええ。祈祷は飾りです。どちらかというとその場にいる人たちの気持ちを整える効果があります。周囲の人がみんな回復を願う方向に心がまとまれば、それが本人の回復の力になるんです」
「ああ、祈祷ってそういう効果なんですか」
 
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「お母さん、少し寝てくださいね。ぜんぜん寝てないでしょう」
「そうしようかな。でもあなたは?」
「来る途中の新幹線の中でずっと寝てましたから」
 
母は4時頃から5時半頃まで仮眠を取った。起きてみても青葉がずっとヒーリングしているのを見る。体温を測る。37度4分。かなり下がってきている!数字を聞くと青葉は「あとひといきですね。たぶん7時か8時くらいまで続ければいいかなと思って始めたんだけど、7時くらいで終了できそう」
 
「でも2頃に来ていただいて、それからもう4時間ほど。よく体力持ちますね」
「もうクタクタといいたいところだけど、本当に私自身がくたくたになるとそのマイナスの波動が柚女さんに入っちゃうから、私自身はハイテンションにして、疲れていない身体状況にしています。こういうことができるように普段から身体を鍛えていますから。毎朝10km走っていますし、休日には山道を縦走しています」
「すごい」
「過去に24時間耐久コースでヒーリングやったこともありますよ」
「ひゃー」
「さすがにそれやったあとは丸2日寝てましたけど」
 
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青葉はふと幼い頃に曾祖母が自分をハニーポットにして重症患者を1日かけたヒーリングで治療した時のことを思い出した。今柚女のお母さんに言ったのは小学6年生の時の体験なのだが、あの幼い頃に体験した治療が今までで最大級だったかも知れない。とにかくあれは凄いエネルギーを消費した。まだ当時は曾祖母も結構なパワーを持っていたはずなのに、それでも足りず自分のパワーまで使った。物凄くお腹が空いて、出してもらったおやつを大量に食べて「よく食べる子だねえ」なんて言われた記憶が残っている。まだ物心ついて間もない頃で、あれは自分が持っている最も古い時代の記憶だ。あの子も中学生だった(と自分が小1の頃に聞いた)。今頃は結婚でもしているだろうか・・・・・もしまだこの近辺に住んでいたなら震災で無事であればいいけど。
 
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柚女は7時頃に目を覚ました。体温は36度8分になっていた。もうほとんど平熱といっていい温度である。ただ柚女のふだんの平熱は35度4分くらいなので36度8分はまだ微熱状態だと母は言った。
 
「あれ?あなた○○中にいた川上さんですよね?」
と柚女がいう。
「ええ。ここは△△中の校区?今○○中と臨時合併でしたよね」
「私、コーラス部でソプラノ歌ってて一応昨年はソロやってたんだけど、あなたのソプラノソロ聞いて負けたぁと思ったの」
「△△中は昨年は『蔵王の森』だったっけ?ソロパート・・・あ、1ヶ所あった。ああ、あれが柚女さんだったのか」
「ええ」
 
「じゃ、今は椿妃たちと一緒に今練習してるのね」
「ええ。椿妃ちゃんとも仲良くしてますよ。で、合同になったから、川上さんいたらソロは取れないよな、と思ったら県外に転校していったというし。ほっとしたようながっかりしたような。で結局ソプラノソロ、私と○○中校区の新1年生の立花さんとで競ってるんです。立花さん、私立に行くつもりだったのが、川上さんのソプラノ聞いて、公立への進学を決めたという人で」
「あらぁ、それは申し訳なかった」
「彼女も凄いんです。私達、本番ではどちらになっても恨みっこ無しということで一緒に練習してるんですよ」
「わあ。頑張ってね」
 
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「ね。『夜明け』」のあのソロパート『巫女の歌』のところ、聴かせてくれません?でもホンモノの巫女さんが巫女の歌を歌ってたなんて思わなかった」
「あれ聴いて体調悪くならない?子供とかおびえるんだよね」
「大丈夫です。気分悪くなったらヒーリングしてくださる人がそばにいるし」
「あはは」
 
「お母さん、録音して」というので柚女の母がICレコーダーを準備する。青葉は柚女の部屋のピアノのふたを開けると、最初の音だけ取ってソロパートの少し前の付近からアカペラで歌い始めた。ソロパートになったところで、慶子がびっくりして目を見開いている。
「凄いです。でもこれ生で聴けて幸せ。でも楽譜と微妙に音程違いません?」
「青葉さん、ずるい。今の歌、ホンモノの『叫び』の音程使ってる」と慶子。
 
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「幸福を呼ぶ『招福の叫び』だから、いいでしょ?」と言って青葉はニコリと笑った。
「そんな秘密があったんだ!私も真似させてもらおう」
「作曲者がどこかでホンモノの『叫び』を聴いて譜面に記録しておいたのをモチーフに使ったんでしょうね。でも無意識に西洋音楽の音程に直しちゃった。譜面通りだと招福の効果は出ない」
 
どうせなら椿妃を呼びましょうという話になり10時頃、椿妃に電話する。青葉が来ていると聞いて「御見舞いに行く」と言って椿妃がやってきた。
「早紀にも連絡したんだけどさ。早紀は今日は仙台に行ってるのよ。明日の夕方帰るらしい」「わあ、すれ違いか」「うん。悔しがってた。今度からは来る時、前もって連絡してって」「今回は緊急事態だったんだよ。昨日の夕方4時に急遽来ることにしたから」
 
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「夕方に向こう出てこちらに何時に着くの?」「高岡を17:41の特急に乗ると、22:42に仙台に着く。ちょうど5時間」「意外に近いんだね」「日本一速い特急と新幹線の乗り継ぎだから。元々はくたかは北陸新幹線用に開発された車両を使っているんだよ」
 
柚女が青葉さんから「巫女の歌」のホンモノ、聞きましたというと椿妃が私にも聞かせてというので、青葉はもう一度今度は自分でピアノ伴奏しながら披露した。今度は椿妃が携帯で録音する。
 
「向こうでもソプラノソロだよね。何歌うの?」
「『島の歌』という合唱組曲の中のどれか。2番『春の声』と5番『フィナーレ・幸い』にソプラノソロがあるから、どちらかになると思う」
「あ、その曲のフィナーレなら私アルトパート歌えるよ」と椿妃が言うので「じゃ一緒に歌おうか」と言って歌い出す。青葉がピアノ伴奏をしながらである。柚女がまた母に頼んでICレコーダで録音した。
 
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