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■春遊(2)
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翌朝、ナブキンは真っ赤になっていた。
「何が起きたの〜?」
「取り敢えずナプキン交換してきなよ」
「そうだね」
それで彼はトイレに行き、ナプキンを交換した。
「生理が来たんだね」
「これが生理なのか。こんなに血が出て大丈夫?」
「鉄分を多く含むものを食べるといいかもね」
「どんなの?」
「レバー、赤身肉、まぐろ、貝類、ほうれん草、ひじき、木綿豆腐とか納豆とかの大豆食品」
「お母さんが納豆とか豆乳とかで女の子らしくなれるよと言ってた」
「一石二鳥だね」
ぼく別に女の子らしくなりたくは無いんだけど。
「ナプキンの捨て方分かる?」
「難しいんだっけ?」
「くるくると巻いて、新しいナプキンのシートで包んで、それをトイレットペーパーで更に包んでから、サニタリーボックスに捨てて」
「サニタリーボックスって男子トイレには無いよね?」
「女子トイレを使うか、あるいは取り敢えずナプキンを入れておくためのビニール袋を持って行くといい」
「そうする」
ぼくが女子トイレに入っても女子たちは何も言わないだろうけど(いつも入ってるし)、男子たちは何か言うかも。先生に見られても何と説明すればいいのか。
「今日水泳やっても大丈夫かな」
「水泳は見学にさせてもらったほうがいい。女子の体育委員に相談するといいよ」
「そうしようかな」
それでその日学校に行くと、女子の体育委員のミズエちゃんに言った。
「ぼく今日生理きちゃったから水泳の授業、見学にさせてもらいたいんだけど」
「OKOK。佐藤先生に言っとくよ」
佐藤先生は女の体育の先生である。こういう話は男の先生には、しにくい。
「でもナプキンの交換どうするの?」
「廃棄用のビニール袋持って来たからそれに入れとくよ」
「女子トイレ使ってもいいからね」
「ありがと。何とかなると思う」
しかしそれでこの日彼は水泳の授業を見学したので、“女子水着デビュー”も持ち越しになった。
なお母には
「こういうものが食べたい」
と言って、ちーちゃんから聞いたものを書いたメモを渡した。母は
「まるで生理の時の食べ物みたい」
と言って、ホウレンソウの和え物、ひじきの煮物、ニラレバ炒め、まぐろの剥き身、しじみの味噌汁、木綿豆腐とか用意してくれた。ほかに
「生理の時はこれ効くのよ」
と言って、おつまみのアーモンドフィッシュを買ってきてくれた。確かに効きそうな気がした。豆乳ももらった。他にお赤飯もあった。
「何かお祝いだっけ?」
「女の子が初めて生理になった時はお赤飯作ってお祝いするんだよ」
「へー」
ん?女の子ってもしかしてぼくのこと??
(サニタリーボックス見て、ひとみに生理が来たことを知ったのだと思う)
礼音は6月24日(月)、熊本県の遊園地や水前寺公園、熊本城・阿蘇などで“立山きらら”写真集の撮影に臨んだが、きっと近いうちにやらされるだろうと思っていたので「とうとうやることになったか」と思っただけで、特に嫌だとは思わなかった。女性衣裳での撮影は最近テレビ番組でもCM制作でも多いし。ゆりこ副社長が選んだ衣装も上品なものが多く、悪い気はしなかった。お姫様ドレスとかもバラエティなどで随分着せられてるし。
ローブデコルテとかもすごーい貴婦人みたいと思ったし、友禅の振袖も「きれーい」と思った。用意されていたのは2000万円ほどする振袖と聞いてぎょっとしたが。ローブデコルテも500万円らしい。
それにしても振付の着付けには30分以上掛かり、大変な服だなと思った。トイレの近い人には着られない服だ!
水着の撮影は少し恥ずかしかったが、女性用水着自体はいつも水泳の授業で着ているから、それと同じような気持ちで撮影された。宮下さんと小木さんだけがいるところで着たが、ふたりともだいたい察していたようだった。
そもそも礼音はいつも温泉とかで、宮下さんと“時間帯をずらして”入りに行っていた。礼音が男湯に入るのなら、何も時間帯をずらす必要は無かったのである!
ひとみ(康太)の生理は6月24日(月)から始まったが、3日目の水曜日にはだいぶ落ち着いた。
彼は木曜日、体育委員のミズエちゃんから訊かれた。
「ひとみちゃん、明日の水泳はどうする?」
「生理もかなり落ち着いたから出るよ」
「水着はどうするのかって佐藤先生が心配してた。まさか男子水着を着たりはしないよね?って」
「実はまだ迷ってる」
母に言われて、いったんは女子水着を着て膨らんだ股間を曝す気になりはしたものの、やはり男子水着を着ようかなと心が揺れている。ゆめタウンかどこかに行って、お小遣いで男子用水着を買おうかというのも考えていた。ただし男子用水着を着れば乳首が立っている生胸を曝すことになる。
(きっと買いに行っても女子水着を渡される!)
「ひとみちゃん、生理来てるってことは割りと胸も膨らんでるんじゃない?ブラ跡も付いた、膨らんだ胸を男子の前に曝したら、軽犯罪法違反でお巡りさんに捕まるよ」
「ブラ跡!」
忘れてたぁ!
「最近野球部の女子マネだいぶやってたでしょ?セーラー服着てる時はブラジャーも着けてない?」
「着けてる」
セーラー服を着てるからというより女子マネしていると走ることも多いので、走る場合にはブラが必要である。ノーブラだと胸が揺れて痛い。
「だったら間違い無くブラ跡ができてるよ」
「ぼくやっぱり男子水着着れない」
「当然だね。女子水着持ってる?佐藤先生が、持ってなかったら買ってあげるよと言ってた」
「実は2着持ってる」
母が買ってくれたスクール水着と、ちーちゃんにもらった少し可愛いワンピース水着だ。ちーちゃんにもらったものも、この程度なら授業で着ても違反にはならないと思う。
「じゃ大丈夫ね。誰も笑ったりしないから堂々と着て来なよ」
ただ、女子水着を着るなら股間をどうするかは大問題だ。
ひとみは、ちーちゃんが甘い物が好きみたいなこと言ってたなと思い、お小遣いで“たけのこの里”を買ってきてから「魔女っ子ちーちゃん」と呼んでみた。
「どうしたの?ひとみちゃん」
と言って彼女が出てくる。
「取り敢えずこれあげるね」
「わっ、たけのこの里しゃん。これも割りと好き」
「良かった」
「きのこの山よりこちらが好きなんだ」
「ちなみに一番好きなのは?」
「そりゃ何たってチョコパイだよ」
「へー。覚えておくよ」
「エンゼルパイとかシルベーヌとかあとコアラのマーチとかチョコボールに、たけのこの里とかも好きだけど、チョコパイがいちばん好き」
「なるほどー」
それでひとみは状況を説明した。
・月曜日の水泳の授業は生理が来たから見学させてもらったこと
・生理はもう落ち着いたので明日の水泳の授業には出たいこと
・男子水着を着るべきか女子水着を着るべきか少し悩んだけど、男子水着はブラ跡とかが分かるから無理と諦めたこと
・女子水着を着る場合、お股をどうすべきか悩んでいること
「そりゃひとみちゃんは女の子なんだから男子水着なんて着けられないよ。胸が少し膨らんでるし」
「ブラ跡があるのも指摘された」
「土日はブラしてたし、平日も家の中では着けてたもん。跡ができて当然」
「それだけどさ、卵巣を停止させて睾丸を再起動してもらえないかなあ。そしたら一週間くらいブラ無しで過ごせばブラ跡も消えないかと思って」
「ブラジャー無しだとその胸では歩いただけでも痛いよ。以前から痛くなかった?」
「痛かった。それであまり走らないように、歩く時もゆっくり歩く癖が付いてた」
「だからひとみちゃんの身体ってぼくが操作する前から女の子的だったんだよ。ちんちんいじりもしてなかったでしょ?」
「ぼく小さい頃、ちんちんいじってたらお母さんから『そんなことしてたら、ちんちん切っちゃうよ』と言われて、あまりいじらなくなった」
「普通の男の子は禁止されても隠れていじるんだよ」
「そうなの〜?」
「ちんちんも小さかったでしょ?」
「うん。ぼくのは小さいような気がしていた」
「測ってみたことある?」
「測ってみる」
と言って、彼はちんちんに定規を当てて長さを測ってみた。
「2.8cmかなあ」
「普通の男の子は中学生なら7-8cmある」
「そんなに!?やはりぼくの小さいのか」
「3cm未満のちんちんは無いのと同じだから戸籍が女に変更されることが男女適正化法という法律で決められている。戸籍が女になれば、ちんちんが付いていてはいけないからちんちんは切除される。代わりに膣が造られる」
「ほんとに〜?」
「冗談だけとね」
「ちーちゃんの話ってマジと冗談の境界線が分からない」
「ぼくは9割がジョークで1割が嘘だよ」
そうかも!
「それで現実問題として女子水着を着るとして、そのお股は膨らんでいるべまか、平らであるべきかで悩んでいたんだよ」
「それどちらにでもしてあげるよ」
「それはちーちゃんに頼もうと思ってた。お母さん、ちんちん切断する手術受けろなんて言うんだもん」
「ひとみちゃんのお母さんも過激だね」
「どちらがいいと思う?」
「ぼくのお勧めは女の子のように平らなラインを出すこと」
「ちーちゃんはそちらを推薦する気がしたよ」
「だって水着のお股が膨らんでいたらさ、ひとみちゃん実は男の子だったのかと思われる」
「それでいい気がする」
「いやよくない。男の子なら男子水着を着けろと言われて結局ブラ跡のある生胸を曝してしまうという最初の問題に戻る」
「うん」
「更に男のくせに女の子水着を着たがる変態と思われるし、これまで何度も女子トイレとかに入ったのは、男のくせに女子トイレに入った大罪人と言われる」
「大罪人!?」
「死刑になるかもね」
「死刑は嫌だ」
「だったらお股は平らであるべき」
「するとどうなる?」
「みんなは、ひとみちゃん実は女の子だったのかと思うだろうね。女子トイレにはいったのも女の子なんだから当然と思われる。それでいつもセーラー服着てなよと言われる」
「そっちがよほどマシな気がする」
「でしょ?でも『ちんちんは付いてるけど隠してるだけ』と主張するんだよ」
「隠せるもん?」
「やり方があるんだよ。やってあげるよ」
と言って、ちーちゃんは彼の睾丸を除去した上で!陰毛を全部剃ってから、ペニスを後ろ向きにし、それを左右から陰嚢の皮で包み、中央を瞬間接着剤で接着してしまった。
「凄い!まるで女の子になっちゃったみたい」
「これをタックと言うんだよ。やり方は何通りかあるんだけど、この方法は接着した部分がちょうど割れ目ちゃんみたいに見えるところが上手いね。しかもちんちんの先が女の子のおしっこが出てくる所の近くに行くから、女の子みたいにおしっこもできるんだよ」
「これどうやって元に戻すの?」
「ちんちんと玉袋をはさみで切り落とせばいい」
「切らずに!」
「接着剤の剥がし液で剥がせばいいよ」
「良かった。だけど睾丸は取らなきゃいけないのか」
「取らずに睾丸は体内に押し込んでもできるよ」
「じゃなんで取ったの?」
「取っちゃったほうが面倒くさくないもん」
「面倒くさがらないでよー」
「水泳の授業の時、この状態にしてあげるよ。だから更衣室は男子更衣室使って」
「分かった」
「あるいは女の子の身体に変えてあげてもいい。その場合は女子更衣室が使える」
「タックで男子更衣室がいい」
「うん。今の段階ではそちらがいいと思う。女子更衣室使うと、本当に女なのか病院で検査受けてとか、戸籍の性別変更して、とかおおごとになるから」
「今はおおごとにしたくない」
それで翌日、ひとみは家で女子水着を着けて、その上にアンダーシャツ、トランクスを穿き、ワイシャツ・ズボンを着て学校に行った。
体育の時間は男子更衣室にはいり、ズボンとワイシャツを脱ぎ、水泳帽をかぶり、トランクスとアンダーシャツを脱ぎ、ゴーグルを持ってプールに進んだ。男子たちが呆気にとられていたが、黙殺する。
「あ、良かった。ひとみちゃん、ちゃんと女子水着を着けてる」
と女子たちが言う。
「男子水着を着たら軽犯罪法違反でお巡りさんに捕まるよと言われたから、これ着てみた」
「男子更衣室で着替えたの?女子更衣室に来れば良かったのに」
「今は遠慮しとく」
その日の授業では、ひとみは一応25mは泳げるので、中級クラスにはいり、主にターンの仕方を教えてもらった。また泳ぐ時の姿勢を少し直してもらった。それで泳ぐ速度がぐっと上昇したので、びっくりした。
授業が終わった後は再度男子更衣室にはいり、着替え用バスタオルで水着を脱ぎ下着を着けてから、ワイシャツとズボンを着た。
クラスメイトたちの会話。
「松山さん、ほんとに女の子だったんだね」
「女の子なんだからセーラー服が似合うはずだよ」
「いつもセーラー服着てればいいのに」
「本人はちんちん付いてるけど隠してるだけと言ってた」
「そんな馬鹿な」
「隠しようが無いと思う」
「胸も少し膨らんでたじゃん」
「月曜日に水泳休んだのも生理が来たからだって」
「松山さん小便器使わないよ。いつも個室使ってる」
「女の子が小便器使える訳無い」
「女子トイレにおいでよと言ってあげよう」
ひとみは夏休み前に数回水泳の授業があったが、同様にして男子更衣室で女子水着に着替えた。
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