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■春出会い(4)

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4月18日(火).
 
彪志は職場の“健康診断”のため、朝から車で南砺市内の病院に向かった。病院の駐車場に駐め、車を降りようとした時、唐突に美鳳が現れる。
「ああ、彪志。健康診断受ける間は完全な女にしておくね」
「え〜!?」
「終わったら元に戻すから」
 
それで彪志が受付をして紙コップをもらい、トイレの個室に入っておしっこを取ろうとしたらペニスが消失している。仕方無いのでおしっこの出てくる付近に見当を付け何とかキャッチして採尿をする。
「女子は大変だなあ」
と思う。
 
それを提出して検査室に行く。カルテは“鈴江月子”になっていた。身長・体重を計られ、TB/UB/W/Hを測られる。血圧測定後採血される。そのあと、レントゲンと心電図に行くが、どちらも女性の順番で検査された。男性患者数人がはけてから、月子を含む女性数人が続けて呼ばれた。服の着脱が前後の女性と交錯した。なお問診票では、“生理は乱れてない”“妊娠している可能性はない”としておいた。また前回の生理は4/15と書いておいた。
 
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心電図の後は、乳癌健診、そして婦人科検診をされる。彪志は今年の11月で30歳に到達するので今年から婦人科検診の対象になるようである。内診台に乗って恥ずかしい格好で内診をされた。何て恥ずかしい検査なんだと思った。クスコを入れられた時はペニスを入れられた夢を見たときのことを思いだした。
 
「生理が終わったばかり?」
「15日が生理でした。4日目です」
「なるほど。了解」
 
彼の身体は健康診断が終わった後、車に乗ったところで男に戻った。
 

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4月23日(日)富山県水泳記録会が富山市の富山県総合体育センターで行われた。これにH南高校水泳愛好会のメンツも参加した。目標は“完泳”だったのだが、800m女子自由形で、山本未來は530m付近で棄権、山口一恵は700mで棄権(運営の人から「もう危険だからやめなさい」と言われて棄権を勧められた)、1年生の川井華も450mで棄権して残念ながら全員完泳できなかった。
 
「長水路に慣れてないのもあるかも知れんなあ」
と春貴は言った。3人は普段練習している25mプールでは800m泳げていた。しかし25mプールでは25mおきに壁をキックできるのに対して50mプールでは自力で50m維持しなければならない。その分、大変なのである。
 
(壁キックができるので一般に短水路のほうが長水路より良いタイムが出る)
 
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H南高校女子バスケット部、
 
春の大会は4月22日(土)から始まった。但しH南高校はシードされているので、22-23日は試合が無く、29日の3回戦からである。この試合に春貴は1年生の5人や日和も出した。日和は今回はシュートこそしなかったものの4アシストと充分戦力の一環になってくれる動きをした。取り組んでいるリハビリの効果でかなり走り回れるようになったのが大きかった。ドリブルもかなりできるようになっていた。まだ、相手選手の進行を止めたりは出来ないが、まだそこまでは期待しない。百合はたくさんリバウンドを拾って期待通りの働きをした。高岡C高校の控え部員がビデオを撮っていたようである。試合は20点差で勝利して午後の準々決勝に進出した。
 
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準々決勝では2-3年生中心のオーダーで黒部市のチームに勝った。
 
そして30日、午前中の準決勝では射水市のチームに10点差で勝ち、決勝に進出する。
 
午後の決勝の相手は、準決勝で高岡C高校を破った富山B高校であった。H南高校は美奈子と夏生のスリーで得点を重ね、河世と百合がよく守って5点差で勝利。優勝することができた。
 

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今回、29日の試合の後はケンタッキーをたくさん食べた。そして決勝の後ではフラミンゴに戻ってから焼肉をした。
 
「美味しいお肉ですね」
「教頭先生が買ってくださったとやま和牛だよ」
「富山県産の牛ですか」
「そうそう。富山県内で12ヶ月以上育てた牛で最長飼育場所が富山県内であること。そういう和牛。つまり肉牛だね」
「和牛って肉牛なんですか」
「そそ。乳牛は別途乳牛というから」
「へー」
「和牛以外の富山県産の牛は“とやま牛”といって少しランクが落ちる」
「外国種の牛とかですか」
「それもあるし。乳牛のオスとか交雑牛とか」
 
(交雑牛とは乳牛の雌と肉牛の雄の間にできた子。肉用乳牛より美味しい。消費者側からは安いわりに美味しい牛である)
 
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「乳牛のオス!」
「そうか。乳牛のオスってお肉になるしかないんですね」
「お乳出せないからね」
「女に産まれたかったかもね」
「まあ男の印はすぐ取られるけどね」
「取られちゃうんですか」
「オス牛の肉はメスより不味い。去勢してれば少しはマシ。だから即去勢する」
「メスのほうが美味しいのか」
「だから松阪牛(まつさかうし)とかはメスしかブランド認定されない」
「でも確かに女のほうが男よりお肉柔らかそうだもん」
「男の娘のお肉も普通の男より柔らかそう」
「蟹とかはオスのほうが美味しいのに面白いですね」
「鮭とかもオスが美味しいですね」
「色々だね」
 

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蟹はオス・メスで大きく味が違うので、北陸ではズワイガニのメスは“香箱蟹”(こうばこがに)と呼ばれてスーパー等で安く売られている。
 
「まあメスの牛が美味しいと言ってもまだお産をしてないメスに限る。鮭だってまだ卵を抱えてない鮭は“鮭児”(けいじ)と言って物凄く美味しい」
「そうか。バージンに価値があるのか」
 
また月曜日には校長先生がケーキをおごってくれた。
 
「美味しいものがたくさん食べれて嬉しい」
と1年生たちが感動していた。
「勝てばいいものにありつけるから頑張ろう」
と2-3年生は言っていた。
 

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2023年5月5日の能登半島の地震でレストラン・フレグランスは怪我人こそ出なかったものの、お店が完璧に潰れた。建物を再建しようとすると数百万掛かり、また今後も地震が続くことが予想されるので、フレグランスは結局人形美術館内に移転することにした。美術館のサロンに“フレグランス”の看板を掲げた(「料理を頼まなくても座って休憩できます」と書いた)。それで結果的に美術館のサロンで本格的な料理が食べられることになった(サロンは静かにしてほしいし禁酒なので声を出してもよいしお酒も飲める“パーラー”も設置した:外の景色が見れる:調理室に隣接する)。またこれまで例外的な対応としていた出前を積極的に行うことにして、フロアスタッフさんたちのほとんどを配達要員として再雇用した。車社会の田舎でほぼ全員自家用車通勤だったし、そうでない人も大抵車を運転するので、これは歓迎された。車を運転しない人は近隣に歩いて配達する。食品トレイは朱雀製紙製の紙のトレイを採用した。琥珀が使用しているのと同等品である。燃やしても有毒ガスが出ないのがいいところである。田舎ではゴミは市の回収に出さずに庭で焼く人も多い。
 
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またパンの酵母がダメになったのだが、つい先月ムーランベーカリーに分けてあげていたのをもらうことによりパン作りも再開できた。でも設備破損で1月ほどはムーランベーカリーからパン自体を買った。フレグランスのケーキは遙佳がほとんど作ったものがガトームーラン高岡工房から送られてくるが、パンは夜22時頃から七尾店の山坂さんが作り始めたものが朝4時頃仕上がり、七尾小島4:30のウィングライナーに乗せてくれるので昇太は朝6時に飯田駅で受け取り、お店に持ち込む。
 
(ちなみにこのウィングライナーの帰り朝6時飯田発の便に桜坂奈那が乗って七尾に出てくる:奈那の母は6時に挫折して最近は朝8時の便に乗っている:そもそも7時半に七尾に着いてもまだお店が開いてない:奈那と一緒に6時の便に乗っていた時は学校の女子職員更衣室で仮眠させてもらっていた−ここでは、子供を車で送って来た母親とかも仮眠していた(*5))
 
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フレグランスの前の店でいつもモーニングを食べに来ていたお客さんがこちらにも朝から来てくれて感動した。
「済みませんね。店が遠くなったのに」
「車通勤だから平気です」
と御本人は言っていた。
 
パンをしばらく早朝から作ってくれた山坂さんは大変だったと思うのだが「地震たいへんでしたね。頑張って下さい」というメモが添えてあり、こちらも感動した。
 
 
(千里はパン作り経験者の 前橋虹彩・歌愛の姉妹(アイリス・シレーヌ。前橋善枝の娘たち)を七尾店の工房に入れて山坂さんの手伝いをさせた:凄く助かりましたとお礼を言われた:お陰でかなり仮眠できたようである)
 

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(*5) 日登美をはねた生徒の母は「仮眠していきなさい」と言われたのを「パートに行かなきゃ」と言ってそのまま帰ろうとして校門前で事故を起こした。生徒が責任を感じて退学すると言っていたのを日登美の母が慰留した。でも生徒はJR通学に切り換え、駅まで“父親が”送迎するようになり、母は免許を返上した。生徒は吹奏楽部でフルートを吹いていたが退部し、その後釜として奈那が勧誘されて入った。JRCと兼部になる(*6)。奈那は父から「最近番組作りにも協力してもらっているし」と言われて(霊界探訪にもよく出ているし、そのほか“金沢カレー戦争”とかコンビニチキン食べ比べとかもレポートした)総銀フルートを買ってもらった。ギャラ代わり?(『時計』の印税で自分でも買えた気もする)
 
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(*6) 朝ムーランベーカリーにパンを買いに行くのには参加しているが、体育館での販売には参加せず吹奏楽部に行っている。販売は他の部員がしている。この販売が縁で和枝ちゃんは卓球部の男子・西君とラブラブになった。
 

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一方、お弁当の琥珀に関しては千里が九重たちに瓦礫を片付けさせた上で地面をならしてアスファルト舗装し、播磨工務店がユニット型の料理屋さんユニット(ムーランの店舗とほぼ同等のもの)を“置き”、水道・電気・ガス・下水道をつなぎ、そこで営業再開した。
 
なお昨年春の段階で新琥珀の2階に住んでいた井原さんは既に娘さんの家に引っ越し済みである(そもそも井原さんの家の1階を琥珀にした)。娘さんの家は軽量鉄骨構造で3ヶ月で建てたものではあるが、鉄骨構造は木造より地震に強いし、新しくもあり、今回の地震では建物には全く損傷は無かったらしい(物は結構落ちて片付けが大変だと言っていた)。
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