広告:ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)
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■春五(2)

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朝10時にドローン会社の人が携帯電話会社の人と一緒に来て、ドローンの練習用機体・実機、そしてスマホ20個を納品していった。(このドローンは無線電波では無く携帯電話の回線で制御する)
 
ドローン会社の人は行橋さんと言ったが。水川にこんなことを言った。
「うちの会社で東京のテレビ番組の企画に協力しましてですね、タレントさんの自宅にドローンで朝食をデリバリーするというのをやるんですよ。よかったら見学しませんか」
「それはぜひ見たいです。月ちゃん」
「はい」
「うちの室長代理が行きますから見学させてください」
「それでは今日の夕方予行練習しますから富山15時の新幹線に乗っていただければ」
「分かりました」
 
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11時にはNTTの人が来て光回線を入れていった。お昼頃本社システム部の人が数人来てパソコンの設定と無線LANの設置をしていった。また本社電気部門の人の手で電源コード、照明・空調・ビジネスホンなども設定してもらった。これでだいたい事務所の環境が整った。また家具屋さんが来て、2階の仮眠室に毛布や布団を入れてもらった。
 
お昼はお弁当を買ってきてもらってそれを食べた。
 
 
13時すぎ、ヘリコプターが飛んできて1番ポートに着陸した。
 
千里さんが出ていき
「お疲れ様です」
と言って代理で受け取ってくれた。コックピットを見て、それからヘリのエンジンなどを見て確認していたようである。
「これエンジンが通常のと違いますね」
「普通はライカミングのO360かO320を積んでるんですが、これは互換機のJB-O380に載せ替えてるんですよ。それでベイロードが50kgほど上がって荷物が沢山積めるようになってます」
「でも燃料も使うよね」
「はい。でもタンクも大きくしてますから。一応電話でご了解は頂いたと思うのですが」
「それで本店の了解が取れてるのならいいですよ」
 
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(多分電話受けた人は訳が分かってない)
 
千里がこういう会話している間、水川も月子(彪志)もぽかーんとしている。月子(彪志)は千里さんが居てくれて助かったと思った。R22は2人乗り(パイロット+1名)なので、千里さんは水川と月子(彪志)をひとりずつを乗せて遊覧飛行?してくれた。月子(彪志)の番が終わった時、ちょうど移動店舗車っぽいものが到着した。おりてきたのが木橋さんだろう。
 
「木橋さんですか?。Robinsom R22 代わりに受け取っておきました」
 
「ありがとうございます。えっとあなたは」
」室長代理の知人です。ヘリコプターのライセンスを持っているので、どんな機体を使うのかなと思って興味を持って付いて来たのですが」
「おお、それは助かりました」
「それでこの機体は普通のR22よりエンジンが乗せ替えられていて50kgほど多く荷物が載るそうです。この件に関しては電話で本店の了解済みらしいです」
「分かりました。でも本店の電話受けた人はきっとよく分からずにOK出してるな」
 
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うん。きっとそうだ。
 
移動店舗について、水川がチェックする。
 
車の荷台が小さな薬局になっており。調剤に必要な道具がひととおり揃っている。天井がドローンの着陸用ポートになっているが、黄色いロープで地面にドローンの着地場を設定もできる。太陽光パネルを乗せており、そこから電気を起こせる。ドローンだけで無く、車自体の充電も可能。車はPHVである・電力会社の線でもバッテリーに充電できる。ドローン以外にスマホその他家電関係の充電もできる。色々な状況での運用を考えているようだ。
 
調剤用の薬以外に一般的な市販薬、風邪薬・胃薬・痛み止め・湿布薬・目薬・消毒薬・ガーゼなど衛星用品ももひととおり積んでいる。このあたりは災害時の展開も考えている。
 
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移動店舗のスペックを一通り確認していたら、その車と同様の車がもう一台入ってきて駐まる。そちらからも男性が降りて来る。
「なんだ、君も来たのか」
などと言っている。
「そちらは?」
「横浜支店の木橋と申します」
「え!?」
「いえ、横浜支店には木橋が2名いたのですが」
「どうも2人共こちらに転勤になったようですね」
「ご兄弟か何かですか?」
「いえ、親戚でもないのですが。」
「木橋なんてそう多い苗字でもないのに」
「ぼくたちもうセット扱いになってたりして」
「結婚してもいいよと言われたけど、男と結婚する趣味はないので」
「ゆうちゃんが性転換して女になったら考えてもいい」
「そういう誤解される発言はやめて」
 
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「ヘリの免許を持っているのは?」
「ぼくです」
と先に到着した方の木橋さん。
「ぼくはヘリは飛ばせないけど、大型車・トレーラーはまかせてください。佐川にいたので大抵の車は動かしますから」
「おお、頼もしい」
「あとドローンのライセンスも取りました」
「ますます頼もしい」
「ぼくはそちら落ちたんだよねぇ」
と先に来た方の木橋。
「ヘリの免許持ってる人でも落ちるとは」
「だって問題がいじわるなんだもん」
「ですよねー」
 
先に到着したヘリの免許を持っている人は木橋祐輔さん、あとから到着した佐川急便出身の人は木橋慶太さんといった。私たちは「ゆうちゃん」「けいちゃん」と呼び分けさせてもらうことにした。彼らは高岡市内のマンションからwing liner で通勤してもらう。
 
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移動店舗が2台とも到着した所で
「月ちゃん東京」
と水川が言うので、月子(彪志)は準備班の岩井さんに送ってもらい富山駅に行って東京行き新幹線に飛び乗った。乗ってからAC社の行橋さんから連絡があり、合流する。それで行橋さんと一緒に東京に向かうことになった。
 
行橋さんはあらためて名刺をくれたので月子も再度名刺を渡した。行橋さんの名刺は“北陸支部長”となっている。
 
「北陸支部長さんが東京のテレビ番組で操作するんですか」
「去年1月の社内コンテストで優勝したもので、3月の新潟県阿賀町での配送実験も私が操作したんですよ」
「AC社さんで1位ということは日本一のドローン名人さんじゃないですか」。
「それで給料上げてくれたらいいんですけどね」
「なかなか大変ですね」
「北陸の案件が続きそうだからと言われて北陸支部長に任命されました」
「ほんとに大変だ」
 
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話を聞いていると彼はAC社の創業者グループのひとりのようだ。まさにエースなのだろう。東京までの道すがらたくさんドローン談義をしたが、月子(彪志)としては大いに参考になった。彼はウクライナ戦争でのドローンの使われ方についてもたくさん話してくれた。向こうのオペレーターの指導も何人かしたらしい。
 
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春五(2)

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