【神様のお陰・愛育て】(1)
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(c)Eriko Kawaguchi 2012-07-15
理彩と命(めい)が高校3年生の6月初旬。昼休みに命(めい)が図書館に行って来ようとしていたら、春代に拉致された。
「命(めい)、はっきりさせておきたいことがあるんだけどね」と春代は言った。「うん?何?」と命(めい)。
「先月さ、私が命(めい)と理彩はHしてるかと訊いた時に命(めい)は否定したでしょ? でも理彩はそれに異論があるみたいだった。それにこないだもふたりでお泊まりしてたじゃん。ふたりは実際Hしてるの?してないの?本当のことを聞かせて欲しい。返事次第では、命(めい)には理彩と別れてもらう」
と春代は厳しい顔で言った。
「それなんだけどさぁ」と命(めい)は困ったような顔で言う。
「僕たち、きちんとした形でしてないんだよ」
「ああ」
「だから僕としては少なくとも理彩の前では、したことがないと言うしかない」
「どういうこと?」
「春代だから正直に言う。信じてくれないかも知れないけど」
「取り敢えず話してみてよ」
「結論から言うと僕と理彩は今までに2回セックスしてる」
「正直じゃん」
「でも正常な形じゃないんだよ。2回とも」
「へー」
「いろいろ考えたんだけど、僕は夏くらいまでには、理彩と1度きちんとした形でセックスしたいと思ってる。たぶん理彩の方もそうしないとスッキリしないんじゃないかと思って」
「まあ、それまでに命(めい)が理彩に愛想尽かされなかったらね」
「そうだね」
「でも正常じゃないって、どんな形なの?」
「最初は中学2年の時だった」
「うん」
「でも。そのセックスは理彩が男の子になってて、女の子になってた僕に入れられたんだ」
「はあ?」
「異常な事態だったから、理彩はそれを夢の中の出来事だと思ってる」
「そういえば、そんなこと言ってたね!」
「でもあれ、夢じゃなくてリアルなんだよ。僕は排卵期だったからあやうく妊娠するところだった」
「えー!?」
「緊急避妊薬を飲んだ。ちょっと副作用がきつくて。吐いちゃったからもう1度薬もらって飲み直した。だから、直後と、吐いた時と12時間後の3回飲んだんだよ。あれって女性ホルモン剤だから、おちんちんも1月くらい立たなくなったし」
「わあ。。。。でも、それ妊娠してたら、どうなってたの?」
「男の子の身体ではホルモンの関係で妊娠維持できないから、結果的には1月もしない内に流れてたろうって。でも下手するとお腹の中で受精卵が成長できないまま死んで中絶手術みたいなのをして出す必要が出てきてたかも、とも言われた」
「きゃー」
「でも、そういう事態だから、理彩には言わずにいる。付けずにしたことを責めるみたいにしたくないから」
「いや。それってちゃんと付けさせるべきだった」
「うん。あの時は僕も性別逆転して焦っちゃったから、そこまで頭が回らなかったんだよね。でも、こないだは理彩、する時は付けるって言ってたからね」
「ああ、言ってたね!」
「だから今度もし逆転した時はちゃんと付けてもらう」
「それがいいね。でも、こんな話、普通は誰も信じないね」と春代。
「そうだろうね」
「ふつうの男の子が言ったら信じないけど、命(めい)ならあり得る気がする」
「ありがとう」
「もう1回はたぶん今年の2月。理彩の家に行ってて、ふと気付いたら僕は裸で寝てたんだよね」
「ほお」
「僕は記憶が残ってないんだけど、その時、たぶん理彩とセックスしたんだと思う。これ理彩は何も言わなかったんだけど、ある人が教えてくれた」
「命(めい)が寝てる間に理彩が勝手に結合したわけ?」
「ううん。僕と理彩が合意の上でしたセックスだと思う。でも何かの事情だか都合だかで僕には記憶が残らなかったんだよ。そしてこのこと自体、それを理彩に言ってはいけないみたいなんだ」
「なんで?」
「そのセックスで、僕は理彩に降りかかるはずだった何かを引き受けたみたいなの。それで僕には記憶が残ってない。でも、このことを理彩に言ってしまうと、それが理彩に戻ってしまう気がする。だから、このことは春代も理彩には言わないで欲しい」
「わかった」と春代。
「何だか奇妙な話だけど他言しないよ。正直に話してくれてるみたいだから。命(めい)の周りって、昔から時々不思議なこと起きてたもんね」
「うん。僕って霊媒体質だから、どうも神様同士の思惑に巻き込まれてるような気もするんだけどね。もうこの先何が起きても驚かないや。その内ほんとに赤ちゃん産んじゃうかも」
「実際、一度は妊娠の可能性があった訳なんでしょ?」
「そうなんだよね−。そういう訳で2回セックスしていることはしているけど、僕としては理彩とはまだしてないというのが公式見解」
「でも、そういうおかしな状況じゃない状況で、1度しておきたい訳ね」
「うん」
「まあ、他の男の子に横取りされないうちに、ちゃんと捕まえておきなよ」
「そうだね」
「こないだお泊まりした時もしなかったわけ?」
「Hなことはしたけど、セックスはしてない」
「ふーん」
「僕たちは『女の子同士の悪ふざけ』と言ってるんだけどね。服は脱がない。相手の服の中にも手は入れない。相手のお股にも触らないというのを守って気持ちいいことだけする」
「そりゃまた、清純なって、それでどうやって気持ち良くなるの?」
「だいたい僕が理彩の乳首を刺激して、あとは理彩がセルフサービスで自分のをいじって逝ってしまう」
「命(めい)はどうやって逝くの? 命(めい)もひとりでする訳? 理彩が見ているところで」
「僕は何もしないよ」
「えー? でもそれだと理彩は気持ちよくなれても、命(めい)はなれないじゃん」
「僕は理彩が満足してればそれで満足するから。これは快楽よりふたりの愛の確認のためにしているの」
「でも出しちゃわなくて平気なの?」
「僕出すのあまり好きじゃないんだよねー。理彩と結婚したいから男の子でいる必要はあるけど、男の機能を使うこと自体はあまり好きじゃない。オナニーも月に1回はしてるけど、出しても気持ち良くない」
「月に1回〜! あり得ない。男の子って毎日するんじゃないの?」
「そうなの?」
と命(めい)が驚いたように言うので春代が呆れる。
「日に数回やる子もいるみたいだよ」
「嘘みたい・・・・そんなに楽しいのかな」
「楽しいというよりせざるを得ない衝動に動かされるんじゃない?」
「やっぱり・・・・僕って男の子の機能、弱いのかな」
「まあ、男性ホルモンあまり強くない気はするよね。いっそ性転換してレスビアン婚を目指さない? 理彩ってバイだから命(めい)が女の子になっても結婚してくれるよ、たぶん」
「そうかもね。でも、僕理彩との子どもが欲しいから性転換はできないよ」
「子どもが欲しいんじゃ、男の子の機能を維持する必要があるね」
「うん」
その月の下旬。命(めい)は隣町のショッピングセンターに行っていて突然倒れ救急車で病院に運び込まれてしまった。
救急処置室に運び込まれ、「患者は推定15-16歳、女性、意識レベル1の3」などと言われている。
命(めい)は掠れる意識の中で『私、17歳の男性なのに・・・』などと思っていたが、スカートも穿いてるし、下着も女物を着けているし、髪も2月に切って以来ずっと伸ばしていたので、その格好を見て男と思えという方が無理である。
インフルエンザと判断され、タミフルを飲まされる。命(めい)は何とかこれを飲み、その後CT室に運ばれる途中で完全に意識を失ってしまった。
「これは導尿した方がいいかな」という医師の判断で尿道カテーテルを挿入する。女性看護師が命(めい)のショーツを下げ、陰唇を左手の指で開き、右手で尿道口付近を消毒した上でカテーテルを挿入した。
その処置が終わった所で医師が再度命(めい)の身体を診察する。
「でもこの患者さん、ほんとに胸が無いね」
「中学生くらいでしょ? そんな子も時々いますよ」
「まさか・・・・男の子ってことないよね?」突然その可能性に気付いた医師が言ったが
「女の子でしたよ」と今、尿道カテーテルを入れた看護師が言うので
「あ。よかった。間違ってなかった」と医師は安堵した。
そういう訳で命(めい)は女性用の病室に運び込まれた。
やがて命(めい)が倒れた時に開いていた電話番号からの連絡で、ちょうど大阪に行っている両親の代わりに理彩の母が病院まで駆けつけてくれた。理彩も行くと言ったのだが、インフルエンザということだったので、移る可能性を考えて、理彩の母がひとりで来たのである。
理彩の母が病院に到着してまもなく命(めい)は意識を回復した。それをナースコールで聞いた病棟看護師は、意識回復したら導尿は終了していいですね、と言って、命(めい)のショーツを下げ、陰唇を開き、バルーンをしぼめて尿道口からカテーテルを外した。そして代わりに(女性用の)尿器をベッドそばに置いて行った。カテーテルを外す作業をされている間、命(めい)はまだぼーっとしていたので、自分の身体がどういう状況なのか、よく分かっておらず、自分が女体化していることにも気付かないままであった。
命(めい)はそのあとしばらく理彩の母と会話していたが、会話しながら少しずつ意識も明確になっていった。そんなことをしている内に命(めい)は尿意を催したので、尿器を使っておしっこをしようとした。最初尿器が女性用であったことに驚くが、命(めい)は小さい頃に入院した時、男性用の尿器でどうしてもうまくおしっこができず、女性用の尿器でなら漏らさずにできたことを思いだし、たぶんこの方がうまくいくはず・・・と言って、尿器を布団の中に入れパンティーを下げる。尿器をお股に当てるのに、おちんちんの位置を確認しようとして、おちんちんが無いことにやっと気付いた。
命(めい)は意識を失っていた間におちんちんを切られてしまう夢を見ていたので、あの夢は本当だったのだろうか? と思ったものの、いや、これはタックされているからだと考えた。
そしてそういう意識を持った瞬間、命(めい)のお股の形状が本物の女性の形から、タックされている男性の形に戻った。命(めい)はタックの中に指を入れてちゃんとおちんちんがあることを確認して安堵する。それから女性用尿器をしっかりお股に当てておしっこを無事することができた。
結局命(めい)はその日自分が一時的に女体化していたことに全く気付かないままであった。命(めい)の身体は時々こんな感じで偶発的に半ば無意味に女体化することもあったようである。まどかはこれを「女体化癖」と呼んでいたが、命(めい)自身がどちらの性別でいたいかという気持ちの影響が大きいのだとも言っていた。
夏休みに入ってから、命(めい)と理彩、春代と香川君は4人で出身中学に集まり空いてる教室を借りて勉強会を毎日していた。高校まで行くには4人とも30分ほど掛かるが、中学までなら車で10分ほどなので、その程度なら親に送ってもらえるのだ。4人の家を回っても20分ほどなので、4人の親で交替でこの運び役を引き受けてくれていた。
4人に勉強の場を提供してくれた先生は、春代・理彩・香川君は即認識したが命(めい)のことが最初分からないようであった。「えっと、君誰だったっけ?」
などと言われるので命(めい)が「あ、済みません。斎藤です」と言ってもすぐには分からない。
「斎藤命(めい)ですよ」と春代が言うと
「えーーー? 君、いつの間に女の子になっちゃったの?」と先生。
「命(めい)は中学の頃からけっこう女装してたじゃないですか」と理彩。
「そういえば、そうかな。文化祭の英語劇で『オズの魔法使い』の北の魔女だったかをしてたね」
「あ、西の魔女です。基本的に悪女役、いつも引き受けてたんで」
「そうかー。でも凄く女らしくなってる。もう去勢くらいしちゃったの?」
「してないです」と命(めい)は笑顔で言った。
夏で冷房も無いが、けっこうな山の上だしそばに川があるので何とか過ごすことができる。命(めい)たちは朝8時に集まってまだ暑くならない午前中に交替でセミナー方式で各教科の勉強をして、少し集中力の途切れる午後には数学や物理の問題集をやり、少し涼しくなった夕方には、英語や古典などの読解問題をやるようにしていた。英語の問題ではOC(英会話)の訓練も兼ねて、日本語を使わずに全員英語でやりとりをしていた。
時々のぞきに来る先生が「君たち・・・なんか凄いね」などと言う。
「大学受験だから」
「どこ受けるの??」
「はい、香川は神戸大学、後の3人は奈良女子大とか同志社女子大あたりを」
「斎藤君も?」
「ええ。受験前に私が切っちゃいますから大丈夫です」と理彩。
帰りは4人の父が全員勤め人である関係で、どうしても19時すぎになる。学校を使えるのが18時までなので、4人は最後に帰る先生の車で中学校から1kmほど離れた村役場まで送ってもらい、役場のロビーで迎えにきてくれるのを待っていた。待っている間も4人は
「因数分解. x
2-x-2 」
「足して -1 掛けて-2 になる数の組合せがあればいいから・・・ 1と-2。答えは (x+1)(x-2)」
「I leave Tokyo today. She」
「She leaves Tokyo today. Yesterday」
「She left Tokyo yesterday. Tomorrow, Question」
「Will she leave Tokyo tomorrow?」
などという感じで、計算問題を暗算でやったり、英語の文の変形練習を口頭でしたりしていた。このロビーは照明があまり明るくないので、目をあまり使わずにできる問題をというのでやっていたのだが、これがまた結構ハードで脳みそを鍛えられていた。
5日目の送り当番は命(めい)の父だった。役場から近い順に、香川君を降ろし、春代を降ろして理彩と命(めい)の集落に向かおうとしていた時、理彩が「あ、このポーチ、春代のだ」と忘れ物に気付いた。
「僕が走って渡してくるよ。お父ちゃん、さっきの登り口に戻って」
「OK」
ということで春代を降ろした所まで戻り、命(めい)が忘れ物のポーチを持って細い坂道を駆け上がる。ここは細くて車が入れないのである。
2分ほど走った時、懐中電灯の光が人影を2つ捉えた。「?」 春代が地面に倒れるように座りこんでいて、春代の懐中電灯が数m先に転がっている。そしてそのそばに男の姿がある。男は命(めい)の懐中電灯の光をまぶしそうに腕で遮った。「春代!」と命(めい)がわざと男声で呼びかける。男は慌てたように水田の中を走って逃げた。
「春代、大丈夫?」といつもの女声に戻して声を掛ける。
「うん。大丈夫。まだ何もされていない」
命(めい)が手を貸すと、何とか春代は立ち上がった。
「あいつ・・・・多分この所出没してる痴漢だよ。こないだユウちゃんも襲われそうになって、たまたまお兄さんがそろそろ帰る頃だろうと家から出てきてくれたんで助かったんだ。その前にサッちゃんは穿いてたパンツ取られたらしいし、カズちゃんはブラを取られたって」
「放っとくと下着だけじゃ済まないね」
「うん」
翌日。夜20時頃。乗用車からひとりの女の子が降りて懐中電灯を付け細い道を歩き始めた。軽ならひょっとしたらギリギリ通れるかもという細い道だが、この300mほど先に5軒ほどの家があるのである。
その女の子の姿を見て、脇道の陰に隠れるように駐まっていたなにわナンバーの赤い高級車から男がひとり降りて、女の子の後を歩き始めた。1分ほど歩いた所で男は少し歩みを速め、先行する女の子に接近して行った。
すると女の子はぴたりと立ち止まる。一瞬男も立ち止まったが、気を取り直したように女の子に近づいて行き、肩に手を掛けようとした。
その瞬間、女の子は振り返ったが、その顔はライオンの顔であった。大きく口を開け「ガオー」と吼える。「ぎゃー」と男は叫び失神した。
「あああ。失禁してる」と近くの石に腰掛けていた命(めい)が立ち上がり、男に懐中電灯を当てて確認する。
「ふん。こんな奴の小便でも少しは畑の栄養になるかね?」とまどかが言う。
「少しはね」
「さて、地獄谷にでも放り込んでおくかな」
「あんな所に放り込んだら死んじゃうよ」
「大丈夫だよ。あそこに放り込んだら死体は上がらないから」
やれやれと思う。きっとこれまでも何人か放り込んでるんだろうな・・・・
「殺すまでないよ。こいつもうこんなことしないから、都会の道ばたにでも放り出してやって」
「女を襲うような奴は死刑でいいんだよ」
「じゃ、タマを潰して放置ってのでどう?」
「優しいんだね。まあ、いいや。それでも。じゃタマを潰して」
と、まどかが言った時、一瞬男が「うっ」という声をあげたが、ふたたぴ気を失う。
「わざと痛いつぶし方をしたね」
「当然。じゃ、大阪のドヤ街に転送〜♪」
とまどかが言うと、男の姿は消えた。
「ついでに車も近くに転送しておいてあげよう」
「親切だね」
「あそこにあると邪魔なだけ。ちなみにロックは外しておく」
ロックされてない高級車がドヤ街に路駐していたらどうなるかは想像に難くない。
「ふふふ。でも、ありがとう。これで女の子が安心して帰れるよ」
「ほんとは女の子は明るい内に帰った方がいいんだけどね」
「現代ではなかなかそうも行かないんだよ」
「まあ、うちの母ちゃんなんて毎日夕方から出勤してたしなあ」
「でも68歳で死ぬまで、あの世界で現役だったってのは、ある意味凄い」
「そうかも知れないね。金はいつも無かったみたいだけど」
「まあ、お金のないのはしょうがないよ」
「じゃ、命(めい)も家まで転送してあげるね」
「ありがとう。じゃ」
といって命(めい)が手を振ると、次の瞬間、自宅前にいた。
命(めい)は再度左上前方に向けて笑顔で手を振ると、玄関のドアを開けて中に入り「ただいま」と言った。
8月1日から12日まで、命(めい)と理彩は大阪の予備校に行き、夏期講習を受けた。同じ時期、春代と香川君は奈良市内の学習塾の講座を受けに行った。
7月31日朝から大阪に出て行き、12日の晩まで大阪市内のホテルに宿泊し13日に帰ってくるコースである。ホテルの部屋はツインである。どうもふたりの親は理彩と命(めい)が「できちゃって」欲しいような雰囲気。実際命(めい)は出かける時に母から「コンドームあげるから」と言われたものの「勉強しに行くんだから、そんなことしないよ」と言って断って出てきたが、荷物の中に『初めてのSEX』という文庫本がブックカバーを付けて入れられていた。理彩に見せたら喜んでいた。理彩は電車の中でそれを読んではキャッキャ言っていた。
ふたりは初日こそつい暴走して裸で抱き合って寝たものの、その後はちゃんとホテルの浴衣を着て、各々のベッドで別々に寝た。おやすみのキスとおはようのキスはしたものの(命(めい)的には)特にHなことはしていなかった。
そして12日間の講習が終わった。その日は受講中に仲良くなった女の子8人でサイゼリヤに行き、夏期講習前半の打ち上げをした。それが終わった後理彩、命(めい)、千草の3人でお茶を飲み、10時頃別れてホテルに戻った。ホテルの近くのコンビニで、おやつなどを買ってきた。
「密度の濃い2週間だったね」
「凄かった。親にお金は使わせちゃったけど、かなり実力付いた」
「奈良市でやってた春代たちも、かなり充実してたみたい。神戸行くぞ!って叫んでたから」
「頑張ってるね。あの2人が頑張ってるなら僕たちも頑張らなきゃ」
しばらくおやつを食べながらおしゃべりしていて、そろそろシャワー浴びて寝ようかという話になる。
「じゃ、理彩シャワーしておいでよ」
「あ、私ちょっとメールしたいから、先にシャワーしてくれる?」
「うん。じゃ、お先に」
命(めい)は下着の替えを持ってバスルームに入り、ゆっくりと全身にシャワーを当てて、凝っている所を揉みほぐす。足の毛を剃り、髪と身体をボディソープで洗い、身体をしっかり拭いてから、洗濯済みのブラとショーツを着けた。
鏡に映してみる。我ながら「可愛い女の子」になってると思う。こういう格好、けっこう自分としては好きだよなあ・・・・僕って最近、男物の下着つけてる日と女物の下着つけてる日と、どちらが多いんだろう?
そんなことも少し考えながら、ホテルの浴衣を着てバスルームを出る。理彩とタッチして交替。理彩がバスルームに消えて、命(めい)はベッドの上で窓際に座り、夜の町を何気なく眺めていた。
すると唐突に窓の外に、まどかの顔が浮かんだ。
「・・・あのさ、あまり人間離れしたことしない方がいいよ」
「そうだね。基本的には命(めい)と理彩以外に見えないようにしているつもりだけど、霊感の強い人には見えることもあるからね」
「それと今夜は僕たちを邪魔しないで欲しいんだけど」
「ふふふ。そんなこと言われると邪魔したくなるんだけど」
「まどかの好物って何?」
「おお、私を買収に掛かるか。随分大人になったね」
「果物とか好き?」
「そうだね・・・・今の時期ならメロンとか桃とか梨とかかな」
「じゃメロンでも持って行こうか?」
「桃がいいな。『まどか』を持って来てよ」
「しゃれだね。いいよ。奉納する」
「じゃ、今夜は邪魔せずに見学しておくか」
「のぞき?」
「こっそりのぞくんじゃなくて堂々と見るよ。あんたたちにも見えないようにしてね」
「邪魔しないんなら、別に見てもいいよ」
「命(めい)もおとなになったね」
やがて理彩がバスルームから出てくる。
「誰かと電話してた?」
「ああ。古い友だち」
「女の子?」
「うん。女の子だよ」
「どういう関係なの?」と理彩は少しきつい顔をして命(めい)のそばに寄る。
「ほんとに友だちだよ。でも年齢は50代だけど」
と言った途端、窓のカーテンが外れて命(めい)の上に落ちてくる。
「大丈夫?」と理彩。
「あ、平気、平気。いつものことだから」
「危ないなあ・・・・やはり安ホテルだからかなあ」
「ただの偶然でしょ」
「でも50代でも『女の子』って言うんだ?」
「うん。あの人は『女の子』って言った方がいい。とっても精神的に若いから」
「へー。そういう年の取り方っていいなあ。私も40代になっても50代になっても『女の子』でいたい」
「理彩はきっとそうなるよ」
「命(めい)も40,50になっても『女の子』かもね」
「うん、僕もそうありたいと思ってる。僕50過ぎてもミニスカ穿きたい」
「命(めい)なら穿けそう。でも今日の命(めい)って何だか素直」
「卵胞期(月経から排卵までの間)だからかな」
「ふーん。。。。」
「理彩も今、卵胞期でしょ?」
「そういう質問を女の子にすると、枕が飛んでくるよ」
と理彩が言った途端、本当に枕が飛んできて命(めい)の頭を直撃した。
「大丈夫?」と理彩。
「今の私じゃない」
「うん。分かってる。大丈夫、大丈夫」
「何で飛んできたんだろう?」
「ああ、気にすることないよ。いつものことだから」
「確かに命(めい)の周りって色々不思議なこと起きるけど」
「それでね」と命(めい)は言う。
「うん」
「今日は理彩に頼みがあるんだけど」
「なんだろ?」
「セックスさせて」
「・・・・・・・」
「バージンもらう予約の有効期限ちょっと過ぎちゃったけど。1回だけでいい。って、僕もこれ1枚だけしか持って来てないから」
と言って、命(めい)は部屋の棚の所にここにチェックインした時『非常食』と言って置いておいたカロリーメイトの箱の中から、コンドームを1個取り出した。
「えー!? そんな所に隠してたのか!」
「だって、ポーチとかに入れてたら、理彩に見つかる」
「財布、ポーチ、そしてなぜか持ってる生理用品入れの中にも入ってなかった」
「ふふ。理彩が探してみるだろうってのは予測してたから」
「ほんとに持って来てないのかと思った」
「僕はいつも持ってるよ。最低1枚は」
「へー」
「もし、理彩が男の子になって僕が女の子になってたりしたら、理彩が付けてね」
「そういう面白いことになったら、付けるよ」
「ふふ」
「で、今日は命(めい)は男の子なの? 女の子なの?」
「僕はいつでも男の子だよ」
「ほんとかなぁ・・・・けっこう女の子になってることあると思うけど」
「取り敢えず今僕は今男の子」
と言って命(めい)は浴衣を脱ぎ、ブラとショーツを外した。
平らな胸、そしてお股にはアレがぶらさがっている。理彩は「へー」と思いながら自分も服を脱ぎ始めた。こういうシチュエーションでここにこれがぶらさがってるの見たのって久しぶり。。。。。いや、ひょっとして初めて??だって・・・命(めい)って、いつもお股に何も無いんだもん!
「理彩は今女の子? 男の子?」
「ふふふ・・・女の子だよ」
「じゃ、僕の男の子の器官を、理彩の女の子の器官に入れてセックスしたい」
「いいよ」
ふたりは裸のまま抱き合うと、唇にキスをした。
抱き合ったままベッドに入る。理彩はもう我慢出来ない気分で命(めい)の身体をむさぼった。命(めい)の乳首を舐める。背中を撫でる。そして腰を命(めい)の腰の付近に密着させる。命(めい)のおちんちんが熱く大きくなってる。
「私が付けてあげる」
と言って理彩はコンちゃんを開封すると、表裏を見定めて取りだし、命(めい)のおちんちんにかぶせて、くるくるっと伸ばした。根元まで辿り着いても少し余る。まあ、小さいのは仕方ないよな。。。。
命(めい)が理彩のクリちゃんを指で揉む。理彩はその優しいのに速度がある指の動きに思わず声を出してしまった。えーん。命(めい)、どうしていつもそんなに上手いの!? 自分でやっててもこんなに気持ち良くなれないよー。
「ちょっと待って。このままだと私、入れられる前に逝っちゃう」
「それは困るな」
と言って命(めい)は揉む指を離して、窪みの中をまさぐる。
「濡れてるね」
「うん」
「入れていい?」
「うん」
命(めい)が理彩の上に身体をのせる。そしてあれがあそこに押しつけられる。こちらは充分緩んでる。来た! わぁ・・・入ってくる。きゃー、こんなに入れられても大丈夫だっけ? 2月にしたときより深く入ってきてない?あ、そうか。あの時は命(めい)はすぐ外すつもりだったから、入れられる最低限の長さで入れて来たんだ。この長さが本気の長さなんだ。。。きゃー子宮に当たりそう。
「大丈夫?」と命(めい)が訊いた。
「うん」と理彩は嬉しそうに答えた。
唇にキスされる。舌を絡める。命(めい)が腰を動かし始めた。ああ。凄く気持ちいいよぉ。2月の時は少し不純な気持ちでセックスしたせいかな。。。こんなに気持ち良くなかった。あのセックス、どうせ命(めい)は忘れてるし、今日こそが、私と命(めい)が結ばれた日ってことで、いいよね?
命(めい)は腰大丈夫?と思うほど、凄い勢いで腰を動かしている。出し入れされる度に物理的な快感があって、そしてこんなことしているというだけで脳内が快楽物質で満たされてとても幸せな気分。セックスってほんと気持ちいい! あーん、命(めい)、好きだよぉ。
でも・・・・もう私逝っちゃうよ、先にごめん、と思った時、命(めい)の身体の反応が明らかに変化した。あ・・・命(めい)、発射した? ふふ、私たち、一緒に逝けたね。嬉しい。。。。理彩は命(めい)をギュッと強く抱きしめた。
そのまま放心状態のようになる。
命(めい)は次第に腰を動かす速度を落とし、やがて入れたまま身体をピタリと理彩の身体にくっつけ、しっかり抱擁する。理彩も命(めい)を再度強く抱擁する。えへへ。。。やっと、私たち、ひとつになれたね。理彩はとても幸せな気分だった。
命(めい)はしばらく入れたまま理彩を抱きしめていたが、やがて身体を外し、理彩の唇にキスをした。枕元のティッシュを取って、コンちゃんを処分している感じ。「使う?」と言って、ティッシュを1枚くれる。もう・・・親切すぎるよ。理彩はそれを受け取るとあそこを軽く拭いた。
「僕ちょっと眠くなった。少し寝るね」と言って、またキスをする。
「うん、おやすみ」と言った理彩も眠くなる。私も寝ちゃお。。。。
ふたりが眠ったのを見て、まどかはさっき落としたカーテンを元に戻した。そしてそっと命(めい)の生理用品入れの中に新しいコンドームを1枚入れてあげてから、小さくバイバイするように手を振ってから、ドアを開けて立ち去った。
その月の下旬。8月22日から31日まで理彩たちの高校で特進クラスの補習が行われた。初日に集まった生徒たちで「熱いね〜」「もうプールに飛び込みたい」などと言っていたら「明日からならプール使えるって」という話だったので、じゃ、明日は水着持って来て昼休みに泳ごうなどという話になる。
その日の夜。夕食後に命(めい)が理彩の家に行って一緒に勉強していたら、理彩が唐突にこんなことを言い出した。
「明日みんなプールに入るって言ってるけど、命(めい)は水着持ってたっけ?」
「えっと・・・・水泳パンツなら」
「えー? だって命(めい)は女の子でしょ。胸は露出できないよ」
「だからって女子用水着を着るには問題があるし」
「問題無いような気がするよ。今タックしてないの?」
「今はしてない」
「じゃ、しちゃおう。私がしてあげるよ」
「ひとりでできるよ」
「これ、結構楽しみなんだもん」
「もう・・・・」
理彩に言われて命(めい)は座ってスカートをめくり、ショーツを脱いで足を広げた。理彩は楽しそうに命(めい)のお股を工作していく。
「できた〜。水着も貸してあげるね」
というと、理彩は楽しそうな顔で押し入れの奥に入っていた段ボール箱を出す。しばらくその中をあさっていたが、やがて1枚スクール水着を取り出した。
「ほらほら、着てみて」
「今?」
「もちろん」
「やれやれ」
命(めい)は服を全部脱いで裸になる。胸は無いものの、タックしているからお股の所も何も無いので、渡された水着を身につけると女の子の股間にしか見えない。
「うん。ふつうに女の子の水着姿に見えるよ」
「そうかな?」
と言って命(めい)は鏡に自分の姿を映してみているが、けっこう自己陶酔している雰囲気だ。
「胸はそのままでも行ける気がする」
「いや、ここまで胸が無いのはさすがに問題だから、ヌーブラでも入れてくるよ」
「じゃ。明日はその水着を着てね」
「でも・・・・着替える時に他の男子にこのヌード晒すのは・・・」
「ああ、下着も女物だしね。じゃ、女子更衣室に来れば?」
「えー? それはまずくない? 痴漢だって言われて捕まりそう」
「そんなことないと思うけどなあ。みんな命(めい)のことは分かってるもん。だいたい命(めい)、最近頻繁に女子トイレにいるじゃん。女子トイレも女子更衣室も似たものよ」
「違うよ〜。更衣室だと、他の女子も服を着替えてるから、僕に見られたくないんじゃない?」
「みんな気にしないと思うけどなあ・・・・あ、分かった。朝からその水着を服の下に付けて来なよ」
「あ、そうか。それならヌード晒さずに水着になれるね。でも泳いだ後水着を脱ぐ時はどうしよう・・・」
「着替え用のバスタオル使えばいいよ。何枚かあるから1つ命(めい)に貸してあげる」
と言って、理彩は衣装ケースの中から筒状にして上にゴムの入ったバスタオルを渡した。
いつものように23時まで一緒に勉強してから、命(めい)は自宅に戻った。まだ起きていた両親に「ただいま」を言ってから自分の部屋に行き、更に勉強を続ける。1時頃ちょうど区切りが付いたので、寝ようかと思ったが、その前にもう一度、水着を着けてみたくなった。
服を全部脱いで、水着を着けて鏡に映してみる。
こんなの着るの初めて。僕って、女の子水着もけっこう行けるな。自分でも可愛い水着とか買っちゃおうかなぁ・・・・でもやはり胸の所を何とかしないとね、と思い、衣装ケースの奥に入れている水着用ヌーブラを取り出す。粘着性なので他のにくっつかないようにビニール袋に入れている。
それを袋から取り出そうとした時、突然自分の身体が変化した。
「あっ」
と小さく声をあげてから、あたりを見回す。
「まどかさん??」
「明日の夕方までその形にしといてあげるよ。折角だから本物女体でプールは楽しんでおいで」と声だけする。
「えー!?」
「桃が美味しかったから、ささやかなお礼」
「うーん。。。でも、美味しかったのは何より」
「果物とかおやつは、いつでも歓迎だよ。じゃね」
と言って、まどかは去って行ったようである。
「もう・・・・」
命(めい)はやれやれと思ったが、女体に変えられてしまったらしょうがないので、ヌーブラをしまい、女体化した自分の水着姿をあらためて鏡に映してみた。 あ、可愛い。。。。自分で自分に惚れちゃいそう。。。
命(めい)は自分がナルシシストだという自覚があまり無い。
でも、これ・・・・お股の所、割れ目ちゃんが見えちゃう。アンダーショーツ穿かなきゃいけないなあ、などと考えてから、水着を脱ぎ、普通の下着(当然女の子用)を付けてパジャマを着て布団に入った。
翌日、朝から水着を下に来て命(めい)は補習に出かけて行った。水着の上に普通のショーツと1枚だけ持っているDカップのブラを付けた。(理彩にうまく乗せられてつい買ってしまったもの。普段使っているブラはBカップ)また、水着の下にはアンダーショーツを着けていて、胸にはバストカップを入れ、乳首がポチッとならないようにした。
なぜ水着用アンダーショーツやバストカップを持っているかというのはあまり追求されたくない問題である。
アウターはターコイスブルーのTシャツに、ジーンズのホットパンツである。出がけに母が「おお、ギャルだね」と言ってくれたので、気分がいい。
3時限目まで補習を受けてトイレに行きたくなり、当然のように女子トイレに行き個室の中に入ったところで、あっ・・と思う。これどうやっておしっこすればいいんだ??
命(めい)はたっぷり70秒ほど考えた。おちんちんが付いているとそれを水着からひっぱり出せばできそうな気もする。でも今日はおちんちんは付いてない。お股の付近をずらせば何とかできそうな気もするけど、水着をけっこう濡らしてしまいそう。実際のプールや海水浴場ならそのままシャワーを浴びたら問題なさそうだが、水着の上にふつうの服を着ている今はまずい。
ということは・・・・・
全部脱ぐしかない!
ふっと溜息を付き、Tシャツとホットパンツを脱ぎ、ブラとショーツを外し、全部水洗タンクの上に置く。そして水着を脱ぎ、アンダーショーツを脱いでやっと、おしっこすることができた。何て面倒くさいんだ!
終わってからあの付近を拭き、アンダーショーツを着けてから水着を着る。ショーツとブラを付け、Tシャツとホットパンツを穿いた。おしっこするだけでこんなに大変だなんて!
命(めい)が個室から出ると、外に小枝がいた。
「時間掛かったね。大?」
「水着を着込んで来てたから」
「なるほど!」
といって笑って小枝は個室に入っていった。
お昼休みになって、みんなで泳ぎに行こうということになる。命(めい)は着替え用バスタオル、濡れた水着を入れるビーチバッグなどを持ち、他の女子とおしゃべりしながらプールの方へ行った。更衣室の前で男女が別れるところで、他の女子に「じゃね」と言って男子更衣室の方に行こうとしたら、春代に身柄確保される。
「ちょっと待て。なぜそちらに行く?」
「あ、えっと、僕、戸籍上は男だから」
「ホットパンツなんか穿いてきて、胸もなんだか今日はいつもより大きいし、その身体で男子更衣室に行くというのは許さん」と春代。
「そんなの痴漢行為だよね〜」と近くに居た紀子まで言う。
「命(めい)はちゃんと女子更衣室に来なさい」
「ねぇ、理彩助けて〜」
と命(めい)は少し離れた所にいた理彩に助けを求めるが、理彩は
「ああ。女子更衣室に取り敢えず連行して、脱がせて、もし変な物が付いてたら、私が切り落としてあげるから大丈夫」
などという。
「よし、命(めい)は女子更衣室で決まり」と楽しそうに春代は言って、紀子とふたりで手を引っ張って、そちらに連れて行かれた。そして数人の女子に取り囲まれて「さあ、命(めい)ちゃん、脱いじゃおうか」などと言われる。
「もう」などと言いながら命(めい)は服は脱ぐが、こういうシチュエーションは好きなので、少し楽しい気分だ。
最初に靴下を脱ぎ、ホットパンツを脱ぎ、Tシャツを脱ぎ、ブラとショーツを脱いで、水着だけになる。ちょっと可愛い感じで小首をかしげてみせた。
「完璧女の子体型じゃん」と須美。
「ウェストくびれてる」とあおい。
「この身体で男子更衣室に行こうとしてたのは犯罪だね」と紀子。
「とりあえず、お股によけいなものは付いてないみたいね。せっかく医療用のメス持って来たのに」と理彩。
「そんな危険物持ち歩いてると、銃刀法違反で捕まるよ」と命(めい)は言った。
「でも胸が凄くリアル。バストパッドだけじゃ、そこまでいかないよね。谷間がありそう。ひょっとして豊胸しちゃったとか?」と綾。
「してない、してない」と命(めい)は笑って言う。
「そのあたりは企業秘密で」と理彩が言ってくれた。
「まあ、いいや、泳ぎに行こう」
と春代が言ったので、みんなシャワーを浴びてプールへ移動する。
女体のボディラインは女の子に見られるのは平気で、むしろ見せたいくらいの気分だったが、男の子に見られるのはちょっと恥ずかしい気がしていたが、そんな様子に気付いた理彩が命(めい)の手を引いて連れて行った。
「ブレストフォームでも付けてきたの?」と理彩が小声で言う。
「でも、これでもう命(めい)は男の子には戻れなくなったね。このボディラインを見せておいて、男だなんて主張できないもん」
「確かに最近、ボーダーラインを越えちゃってる気はする」
と命(めい)もそれを認める。
「でもね。夏休みはたっぷり女の子の服を着て、9月からは女装はやめようかなと思ってるんだけどね」などと言うと
「それ絶対無理!」と言われた。
女体で泳ぐのは初めてだったので、うまく泳げるかな? と最初心配したものの、特に問題無く身体が動いた。いわゆる「身体が覚えてる」ってのは実際には小脳の記憶だろうから、身体のパーツが入れ替わっていても大丈夫なんだろうな、と命(めい)は思った。胸があるので、その付近の水流の感覚は違うものの、大きな問題では無かった。普通に息継ぎしながらクロールできたし、ターンも普通通りすることができた。
泳いでいて1度愛花とぶつかりそうになった。泳ぎを停めて立ち上がって衝突を回避したものの、少し身体が接触する。ちょうどこちらの胸に接触したが、愛花が「え?」という顔をしている。あはは、これリアルバストだからなあ。変に思われたかも知れない。まあ、あとで解剖されないことを祈るのみだ。
命(めい)は男性体に戻されてしまうと自分が女性体であった時のことを忘れてしまうのだが、女体でいる間は過去に女体であった時のことも覚えている。それで女性体の状態でも焦らずに行動することができる。命(めい)はだいたい年に数回くらい女性体に変えられているのだが、たいてい数時間で、今回のようにほぼ1日女性体のままというのは初めてであった。
泳ぎ終わって、更衣室に戻る。命(めい)もかなり女子水着姿をみんなに見せるのに慣れてきたので、リラックスして普通におしゃべりしながらシャワーを浴びて女子更衣室に入った。着替え用のバスタオルを肩から掛けて、その中で水着とアンダーショーツを脱ぐ。そのバスタオルで身体を拭く。そして普通のショーツを穿き、ブラを付けて、次にTシャツを着ようと肩の部分のひもを緩めたら・・・・
うっかり、そのままバスタオルを落としてしまった。「あっ」と小さな声を出してしまうが、構わずそのままTシャツを着た。
が、愛花がこちらを驚いたように見つめている。あぁ。生バストを見られたっぽいなと思う。まあいいや。見間違いと思ってくれることに期待しよう、と命(めい)は思った。
「万一女子更衣室内で立ったりしたら私が去勢するから」
などと理彩が言っていたので、愛花は
「実はもう去勢済みってことはないの?」と訊いてみた。
「昨夜(ゆうべ)の段階では付いてたよ」と理彩が言うので
「昨夜(ゆうべ)、見たの〜!?」と周囲の女子から突っ込みが入っていた。
あはは、昨夜Hしたと思われたろうな、と命(めい)は思った。
一方、愛花は、理彩は端っからグルで、あたかも命(めい)がまだ男の子であるということにしているだけで、実はもう性転換済みである、という可能性もあるのではという気がして、命(めい)を見つめていた。
補習組がプールで息抜きをしたのはこの日だけであったが、命(めい)は補習の間ずっと女の子の服で出てきていた。しかし2学期が始まるとふつうに男子の制服(9月の間はワイシャツに学生ズボン、10月からは学生服)で出てきた。6月にはけっこう、ズボンは穿いていてもブラウスにリボンタイなどと上半身は女子の格好をしていた時もあったのだが、9月にはそういうこともしていなかったし、9月初旬に髪も男子の基準の長さで一度切ってしまっていた。但しブラジャーは常時付けていたし見た目にはCカップ程度の胸があるように見えていたので、愛花は「性転換済疑惑」をずっと抱いたままであった。
命(めい)本人はしばしば「僕もう女装やめたから」などと言っていたが、みんな「無理無理」と言って、誰もその言葉を信用していなかった。
2学期の間、特進組は月曜から土曜まで、毎日0時限目から7時限目+その後の勉強会、というスケジュールで鍛えられ、日曜日には各自の自宅でやる方式で実力テストをしていた(日曜日の夕方にH先生と教頭先生が分担して回収)。
理彩と命(めい)は相変わらずスクールバスで帰宅した後、夕食を食べてから命(めい)が理彩の家に行って、23時頃まで一緒に勉強するというのを続けていた。春代と香川君も同じ方式で、毎日ではないものの、週に2回くらいは香川君が春代の家に行ってやはり23時くらいまで一緒に勉強していたようである。もっとも向こうは、命(めい)と理彩のように不純な?ことはせず、親もいる居間で勉強していたらしい。
命(めい)と理彩の方は、相変わらず勉強中も理彩の部屋でしばしば相手のお股を触ったりしながら、イチャイチャしつつ勉強していたが、一応気合いが入っているので、セックスはもちろん「女の子同士の悪ふざけ」のようなこともしなかったし、1学期頃までは結構していた「命(めい)の着せ替えショー」のようなこともせず、命(めい)もだいたい男装であった。
8月にセックスしたことがお互いの気持ちをとても安定させた感じで、ふたりは「友だち」という建前は守っていても、雰囲気的には完璧に恋人っぽい状態になっていた。毎晩別れ際にはキスをしていたが、ふたりはキスも唇にするのはまだ特別な時だけという認識で、だいたい頬にキスをしあっていた。
「最近、命(めい)ちゃん、あまり女の子の服着てないね」
などと部屋にお茶とお菓子を持ってきてくれた理彩の母が言う。
「あ、僕も少し男の子の自覚が出てきたんで、もう女装はやめようかと」
「あら、それはちょっと寂しいわね」
なんかこちらのお母さんも自分の母も僕を女の子にしたがるのはなぜなんだ?と命(めい)は思う。
理彩は笑って
「無理無理。きっとそのうち女の子の自覚も出てきて、完全女装生活になっちゃうよ。まあ、今は時間が惜しいから、私も強制着せ替えタイムはしないけどね」
と言っている。
2学期に入ってから、ふたりともそれまで1時くらいに勉強を切り上げて寝ていたのを2時近くまで勉強するようになっていた。6:45までにスクールバスの停まる集会所前に行かなければならないので6時には起きる必要がある。ふたりともこの時期は勉強が終わると即寝る態勢であった。この頑張りでふたりとも10月には阪大の合格ラインを突破していた。
10月には村の二大祭りのひとつ燈籠祭が行われたが、この時、命(めい)は8年ぶりに行われた「火納式」の使者に選ばれ、巫女さんの服を着て宮司の娘さんの梅花さんと理彩と3人で「火」を那智まで納めに行ってきた。
「納める」とは言っても実際には「何か」を迎える儀式だと命(めい)は思った。深夜の那智の聖域で村から持っていった祭りの火を納め、理彩が舞を奉納する。その厳かな式典の中で、命(めい)はとても大きな瑞々しいものに包まれている感覚になった。使者はその場で神と一体化し、そこで燃えていた火を新しいカンテラに移して村に持ち帰る。そして3人の使者は神社の拝殿の中で燈籠祭りのクライマックスである木遣歌の奉納を見守った。
祭りが終わり、宮司さんの家で焼肉を御馳走になってから深夜帰宅する。理彩を自宅まで送っていってから、命(めい)は自分の家に戻った。もう午前3時だ。どんなに遅くなっても朝は6時に起きて学校へ行かなければならない。寝るぞ!と命(めい)は思ったが、目を瞑ったところで、目の前にまどかが出現した。
「僕、目を瞑ってるんだけど・・・・」
「目を瞑っても見えるものは見えるんだよ。物を見ているのは脳だから、まぶたは関係無い」
「確かに」
「昨日はありがとう」
「やはり、僕たちが昨日迎え入れたのは、まどかさんなんだね?」
「うん。この村の守り神は60年ごと、壬辰(みずのえたつ)の年に交替するんだよ。来年からは私の担当。そのために火納式(ひおさめしき)をしてもらった。まあ最初の1年は引き継ぎで共同管理になるけどね」
「荒っぽい守り神になりそうだ」
「今の神様はいい人だからね。たぶん、命(めい)も近いうちに会うことになると思うけど。でも私は好き勝手にやるよ」
「使者が3人なのは、神社の神様が3柱だから?」
「そうそう。私は命(めい)に乗った。今の神様は梅花さんに乗った」
「理彩は?」
「まだ産まれていない次の神様」
「へー。神様だと産まれる前にも行動出来るんだ」
「多少はね」
「僕、神様にお願いをしてはいけないことは知ってる。でも、僕の命(いのち)をまどかさんの自由にしていいから、その代わりにお願い。まどかさん事情は分からないけど村に恨み持ってるみたいだけど村を潰さないで欲しい。できれば発展させて欲しい。恨みなんか発生しないような村になるように」
「ふーん。命(いのち)を自由にしていいの? じゃ、今すぐ奪おうか?」
「まどかさんがそうしたいのなら、そうしてもいい」
「でもまあ、私に会ってなかったら命(めい)は多分5-6歳で死んでたろうからね」
「うん。だから僕の命(いのち)はそもそも、まどかさんのものなのかも」
「まあいいや。奪おうと思えばいつでも奪えるけど、自分が育てて来た花を安易には手折りたくない気分だよ。それにあんたの命(いのち)もらっても、私には何のメリットも無い」
「まどかさん、実は優しいよね」
「私の本性知ってるくせに。まあ、村を発展させたければ、命(めい)、あんたが自分でやんな。私は気が向いたら協力してやるよ」
「ありがとう」
「実際問題として復讐はもうほぼ完結してるんだけどね」
「そう・・・」
「それと来年、あんたはとんでもない体験をするだろうけど、頑張りな」
「どんな体験だろ?」
「まあ、その時になれば分かる。でも苦労のしがいのある苦労だよ」
「ふーん。。。。」
「凄く辛い気持ちになるかも知れないから、いいこと1つだけ教えてあげる」
「ん?」
「理彩と来年中に結婚できるよ」
「・・・・・・」
「心が折れそうになったら、私がそう言ってたことを思いだしな」
「うん。ありがとう」
「ああ。もうすぐ4時だね。今日は学校休み?」
「まさか。6時には起きて御飯食べて出かけなきゃ」
「ひぇー。学生さんって大変だね」
「受験生だから」
「じゃ2時間で8時間分寝せてあげるよ」
「それはありがたい」
「じゃ、おやすみ。私は夕方くらいまで寝る」
「うん。おやすみ」
命(めい)と理彩はその後も頑張って勉強を続け、1月のセンター試験、2月の二次試験を無難に乗り切った。二次試験が終わった後、ふたりは試験のため泊まっていたホテルで8月以来のセックスをした。8月のセックスはある意味特別なもの、例外的感覚だったので、その日こそがふたりにとって「初夜」
の感覚だった。ふたりとも物凄く燃えて6回もした。命(めい)もさすがに精魂尽き果てて、足腰も立たないし、理彩にどんなに刺激されてもおちんちん自体立たない状態になった。理彩も「まだしたーい」などと言ってはいたが充分満足することができた。実際理彩は命(めい)をふだん「女の子」とみなしているが、その夜は「男の子の命(めい)」を満喫出来た。
命(めい)は中学3年の時以来、理彩との関係を「友だち」ということにしていたので、やっとこれで「恋人」になれたと思ったのだが。。。。翌朝理彩はあと1年は「友だち」の状態を続けたい。そしてその間に他の男の子と付き合いたい、などと「浮気宣言」をした。命(めい)は自分は女装もやめるつもりだし(実際9月以降していなかった)、男として頑張るから、今すぐ恋人になって欲しいと主張したが、口のうまい理彩にうまく言いくるめられてしまう。
ふたりは微妙な感情のまま、その日の夕方村に戻った。そして各々の母親から「向こうでセックスした?」と訊かれたものの「何もしてないよ」と答えた。理彩は行く前に母親から渡されていたのと同じ避妊具の未開封の箱を母親に返そうとした(大阪で「証拠隠滅」のため買った新しい物)が、どうせすぐ使うだろうから持ってなさいと言われた。
そしてその翌日2月28日(火曜日)。
命(めい)は理彩が自分の親戚に配るのに買ったお土産の袋を自分がうっかり持って来てしまったことに気付き、それを渡すのに理彩の家を訪れた。学校はもう出席を取っていないので理彩たちはこれまでの受験勉強の疲れもたまっていることから今月いっぱい、29日までは休むつもりでいた。
神棚に挨拶し、お母さんに挨拶して、袋を渡すが、理彩から「一緒に勉強しよ」
と誘われる。ふたりとも試験は感触が良くて「合格してる」という自信はあったが、合格発表までは油断ができない。もし阪大に落ちていた場合は信州大学の後期試験を受けることにして、一応既に願書は出して受験票も受け取っている。
阪大用に受けたセンター試験の科目で医学部・理学部ともに受けられる大学を探してみたら、信州大学が一番近いという結論であった。ふたりは「同じ大学に行く」というのは絶対条件と考えていた。
母に電話して勉強していくと伝える。勉強道具は持って来ていないが、信州大の過去の入試問題を一緒に解いていった。お昼を頂いて(こういうのはお互いに全く遠慮しない)、その後更に勉強しようとしていたら、お母さんが「午後からちょっと出かけてくるね」といって出てしまう。
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【神様のお陰・愛育て】(1)