【女の子たちのアジア選手権】(上)

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千里はまた夢を見ていた。バスケットの試合をしているようだ。久井奈先輩が居てこちらを見てパスをくれる。スリーポイントラインの外側に自分が居るのを確認して撃つ。
 
でも外れる。
 
あれ〜? 感触は「入った」感じだったのに。
 
向こうがボールを取って攻めてくる。あれれ?ボールを運んできたのは貴司だ。私、男子の試合に出てるんだっけ?でも今久井奈さん居たし。久井奈さん性転換して男になったりしてないよね? それとも貴司が性転換して女の子になっていたりして!? うーん。その時は私レスビアン覚えなくちゃ。どちらもおちんちんが無い状態でセックスするのって、どうやるんだっけ??
 
そんなことを考えながら貴司の前に出てディフェンスしていたら、貴司は見知らぬ女の子にパスした。彼女がきれいなフォームでシュートする。
 
ボールはバックボードにも当たらず、そのままネットに飛び込んだ。
 
審判がスリー成功のジェスチャーをしている。
 
くっそー。
 
こちらの攻撃。暢子から久井奈さんにボールがスローインされ、久井奈さんが攻め上がる。また自分にパスが来る。よし今度こそは。
 
撃つ。
 
外れる!?
 
うっそー。なんで!??
 
絶対、今の感覚は入ったと思ったのに。
 
また向こうは貴司がドリブルで攻め上がってくる。そして先ほどの女の子にパスする。彼女がまた撃つ。
 
入る。
 
そんなあ。
 
その時、貴司がこちらに寄ってきて言った。
 
「千里、どう?僕の新しい彼女。彼女スリーが百発百中なんだよ。僕は彼女がスリーを外した所見たことないんだ」
 
なんだとぉ!?
 
千里は嫉妬の心が燃え上がり、睨むようにその彼女を見つめた。
 

そこで目が覚めた。
 
しかし千里はしばらくそれが夢なのか現実なのか判別できずに悩んだ。洗面台に行って顔を洗う。うがいをしてからトイレに行く。おしっこをする。自分におちんちんが無いのを確認して少し安心する。おちんちん無くなって良かった。そして安心したら、だんだん腹が立ってきた。
 
『こうちゃん』
『へーい』
 
《こうちゃん》は寝ていたのか、寝ぼけたような返事をした。
 
『貴司の彼女との交際、徹底的に邪魔して』
『おぉ、そうこなくちゃ』
『また次の彼女作られると面倒だから別れさせなくていいから、絶対にキスとかセックスとかできないようにして』
『OKOK。いっそ貴司君のちんちん取っちゃおうか?』
『うーん。私がレスビアン分からないから、それは取らなくてもいいや』
『了解〜』
 
それで《こうちゃん》は楽しそうに大阪に飛んでいった。
 

千里はその日4時から朝ご飯とお弁当を美輪子の分まで2人分作り、5時にはやっと起きてきた美輪子に「行ってきまーす」と言って、学校に飛び出して行った。そして鞄を教室に置くと、朱雀に行って体操服に着替える。そして1人で黙々とバスケの練習を始めた。
 
充分ウォーミングアップしてからシュートしてみる。
 
よし。
 
入るじゃん!
 
千里が黙々とシュート練習をしていたら、1年生の久美子が出てきた。 
「千里先輩、おはようございます! 早いですね!!」
「久美子ちゃん、ちょうど良かった。一緒にシュート練習しようよ」
「はい!」
「シュートしたらゴールの方に走って行く。ゴール下に居た側は落ちてきたボールを掴んでスリーポイント・ラインまでドリブルしてくる」
「分かりました」
 
それでふたりで1本交代で練習していたが、千里は久美子の撃つフォームがおかしいと思った。
 
「久美子ちゃん、ちょっと待って。ここでね、もっとしっかり腰を落とした方がいいよ。そうそう。そこから勢いよく膝を伸ばして。そうそう。それで身体が伸びきる心持ち一瞬前にボールを離すんだよ」
 
「わっ、凄く飛んだ」
「うん。今の感覚覚えてて。それで軌道を調整しよう。強くリリースする場合は低い軌道でもいい。ゆっくりリリースする時は50度の方角に」
 
「45度じゃないんですか?」
「うん。45度で投げるといちばん遠くまで届くというのは、到達先の高さが発射位置と同じ高さの場合なんだよ。久美子ちゃん、身長165cmくらいだから発射点は180cmくらいかな。バスケットゴールまでの高低差が125cmくらいだと思うから・・・・」
 
千里は携帯で計算サイトを呼び出し、数字を入れる。
 
「最も到達距離を稼げる角度は50.2度だね」
「へー!」
「高低差125cmの場合、50度で撃つ場合は初速32.1km/h 滞空時間1.178s, 30度で撃つなら初速38.1km/h 滞空時間0.735s, 70度で撃つなら初速37.8km/h, 滞空時間1.879s」
 
と言って千里は計算結果の表を見せる。
 
「50度から離れると低くても高くても初速が必要なんですね」
「そうそう」
「でも滞空時間は角度が高いほど長くなるんだ!」
「実際そうでしょ?」
「ちょっとやってみます」
 
と言って久美子は低い弾道と、高居弾道を撃ち比べてみた。
 
「ほんとだ。すごーい! これ微積分とかですか?」
「三角関数と二次方程式だよ。ボールの軌跡は放物線だから」
「あ、そうか」
 
「あとはたくさんシュートしてこの距離からはこのくらいの勢いで届くという感覚を覚えていくんだよ」
「やはり練習あるのみですよね」
「そうそう。今から頑張ってればインターハイではレギュラー取れるかもよ」
「頑張ります!」
 

2008年10月17-19日(金土日)、DRKの最後のCDの制作を行った。
 
受験の準備が忙しくなることから、教頭先生からこのバンドの活動は10月31日までと言われていたので、今回の制作で活動は終了ということになる。 
今回は前回欠席したインターハイ・バスケ組が参加できたので、こういうメンツでの制作となった。
 
Gt1 梨乃 Gt2 鮎奈 B 智代 Dr 留美子 Pf 花野子 Fl 恵香・布留子 Ryuteki 千里 Tp 京子・美梨耶 Gl 蓮菜 Vn 孝子・麻里愛 Leier 鳴美
 
14人編成で、田代君がプロデューサーである。例によって田代君は札幌から遠征してきて、この3日間は蓮菜の下宿先に泊まったようである。どちらも各々恋人がいるのに、この2人の感覚はどうにも理解不能だ。同じ布団で寝たけどセックスはしてないよなどと言っていた。もっとも蓮菜のおばさんは、まだ蓮菜が田代君と交際していると思っている。
 
最初に制作したのは花野子が書いた『女子高生の内幕』というコミカルな曲である。ライトな雰囲気に仕上げるので、千里はこの曲では龍笛でなくキーボードでオルガン系の音を入れた。
 
次に千里が書いた曲で前回の制作の時に演奏できなかった『白い記憶』という曲を収録する。千里の龍笛の他に、恵香が篠笛、孝子がアイヌの伝統楽器トンコリ(五弦の竪琴)を弾いている。トンコリは知人の知人から借りて、その時1時間ほど弾き方を教えてもらったらしい。
 
「でも田代君がいるとすいすい進む〜」
という声が出る。
 
「おまいら、勝手に意見出すだけで収拾しようとする意志がないだろ?」
と田代君の弁。
 
1曲目を金曜日の内に仕上げ、2曲目も土曜日の午前中に仕上がり、お昼を食べてから3曲目の練習していた時、ふらりと月夜・美空の姉妹がやってきた。 
「こんにちは〜」
「どもども〜」
 
と声を掛け合う。
 
「こういう時、おはようございますと言うんだっけ?」
と花野子。
 
「そうそう。どんな時刻だろうと、その日最初に会った時はおはようございます」
と美空が言うと
 
「元々おはようございますというのは、そういう挨拶だったんだよ。芸能界はその本来の用法がまだ活きている。朝だけ使うというのは、本来の使われ方から少し変化した使い方」
と千里は解説する。
 
「そういうのって何が本来かが忘れられているものはよくあるよね」
「5月5日は元は女の子の節句だったらしいね」
と京子。
「へー」
「女児節と言っていたらしい。それがいつの間にか男の子の節句に変わってしまった」
 
「女の子が男の子になっちゃったのか」
 
「そもそも端午って、午(うま)だから、午の月の午の日だったんだよね」
と千里が言う。
 
「午の月?」
「十二支と十二月がきれいに対応するから、毎年寅月が1月。午月は5月」
 
何人か指折り数えて「おぉ」と納得している子がいる。
 
「だから端午の節句は5月の最初の午の日だったんだよ。ところがどこかで誤って5月5日になっちゃった。だから今のこどもの日は端午じゃなくて端五だよね」
 
「同音異義語との取り違えも割とある」
「江戸時代の関所は死体は通せなかった。それで死体を運びたい人がこれは死んでいるのではなく寝ているという方便を使って通過させた」
 
「まあ、袖の下があれば通すでしょ」
 
「それでその内、寝ている人を通してはならんって御触れが出た。それで『寝た子は通すな』という話になった」
 
「それが『寝子は通すな』となって、いつの間にか『猫は通すな』って話にすり替わったという話」
 
「なんかそれは意図的な改変という気もする」
 
「まあ関所なんて袖の下次第」
 
「女性が関所を通るときに、大名の妻や娘じゃないかって確認する検査官で検見(けみ)の婆という人がいたらしいけど、大名の息子が女装してないかってので胸とかも触っていたらしい」
 
「ほほぉ」
「で、その胸を触られる時に身体が随分密着するじゃん。その時、さりげなく検見の婆の懐に幾何(いくばく)かのお金を放り込む」
 
「すると、問題ないということで通れる訳か」
 
「しかし大名の妻や娘を識別できる人って、その人本人もかなりの家の出身の女性だよね?」
「だろうね。奥向きの仕事をしていた中臈(ちゅうろう)とかかもね」
 

「あ、そうそう。KARIONの今週水曜日に発売する新しいCD」
と言って美空がまだ発売前のCDをそこに居た全員に1枚ずつ配ってくれた。 
「おお、すごーい」
「聴いていい?」
 
それでスタジオの機器に掛けて聴くが
 
「方向転換した?」
という質問が出る。
 
「うん。性転換してもいいけど方向転換かな」
と美空。
 
「この『秋風のラブレター』って凄く若い人の歌詞だよね?」
と蓮菜が言った。
 
「福島県の中学生らしい。実はKARIONに歌わせたい歌詞コンテストというのをやったんだよ。その優勝者」
 
「へー。櫛紀香さんか。女子中生にしてはけっこうしっかりした詩を書くなあ」
と梨乃が言ったのだが
 
「あ、その人女子中学生じゃなくて男子中学生」
と美空が答える。
 
「何!?」
「『のりか』で男なの?」
「もしかして紀香と書いて『よしたか』と読むとか?」
 
「あ、分かった。これ KARION SUKIのアナグラムだ」
と蓮菜。
 
「そうそう。よく分かるね」
と美空が感心して言う。
 
「でも実は女の子になりたい男の子だったりして」
「そこまでは分からないなあ」
 
「『水色のラブレター』はこれ、少女A・少女Bでしょ?」
と千里が尋ねる。
 
「うん。そのふたり。いつまでも少女A・少女Bじゃ可哀想ということで、森之和泉・水沢歌月という名前を小風が付けた。だから今度のツアーのパンフレットでは『Crystal Tunes』もそうクレジットするかも」
 
「あ、ツアーやんの?」
「来月ね。全国12箇所」
「すごーい」
「札幌にも来るよ」
「すごい。何日?」
「札幌は11月1日・土曜日」
「土曜日なら動けるね」
 
「ね、ね、そのチケット何とかならない?もちろんお金払うから」
「なると思うよ。全然売れてないし」
「うむむ」
 
「いや、今年デビューした新人のチケットがそうそうは売れないでしょ」
「何人来る?」
 
すると千里以外田代君を含めて全員手を挙げる。
 
「ごめーん。私その11月1日はインドネシア」
と千里が言っている。
 
「インドネシアに性転換手術にでも行くとか?」
と美空が訊くが
「いやバスケットの試合なんだよ」
と千里は答える。
「すごーい。海外で試合やるんだ?」
 
「そもそも千里は既に性転換手術済のはず」
という声があちこちから出る。
 
「インドネシアでも性転換手術やってるんだっけ?」
「どうだろう?タイは有名だけど」
 

そういう訳で、月夜が「もしよかったら」と言って1曲提供してくれたので、その曲『負けるな△Love(トライアングル・ラブ)』をその日の午後は練習して収録した。順調に進んで夕方はみんなで一緒にラーメンを食べに行ったのだが・・・・。
 
「美空ちゃん、それ3杯目? よく入るね」
「まだ3杯目だよ」
 
などと最初の頃は会話を交わしていたものの、みんなやがて無言になる。何人かが美空の前に積み上げられた丼の数を目視で数えていた。
 
「私、この世の中にはやはり不思議なことがあるんだと理解した」
「物理的にどうやってあの量のラーメンがこの小さな身体に収納されるのかが不思議だよね」
 
「ね、美空ちゃん。芸能契約書に体重制限とかは書かれてないの?」
「どうだったっけ?」
 

日曜日、午前中は麻里愛が書いた『旭川奏鳴曲』を収録した。奏鳴曲というのは「ソナタ」の日本語訳である。『大雪山協奏曲』・『石狩川序曲』・『加伊の道』と麻里愛が書き続けてきた北海道への讃歌もこれでいったん完結ということになった。 
(加伊とはアイヌ民族の自称のひとつとされ「北海道」の語原。ただし現代の研究では本当に「カイ」という呼称が使われていたのかは不明。ひょっとしたらカムイのこと??) 
最後に千里がインターハイの時に書いた『Aqua Vitae』を収録する。これにも千里の龍笛、恵香の篠笛、貴子のトンコリをフィーチャーしている。更に収録中に見学していた月夜が
 
「この曲には津軽三味線の音が欲しい」
と言い出した。
 
「誰か弾ける?」
「ってか誰か持ってる?」
 
「津軽三味線ならうちのお母さんが持ってる」
「よし。借りよう」
「でも誰が弾くのさ?」
「お母さんごと借りよう」
 
ということで、この曲には智代のお母さんがゲスト参加することになった。月夜が「こんな感じの音が欲しい」と言うとお母さんはみんなの演奏を聴きながら、とても風情のある三味線を入れてくれた。
 
「すごーい。格好いい」
という声があがる。
 
「いや、みんなの演奏が格好良いよ」
とお母さんは言った。
 
そしてこの曲の収録でDRKの活動は終了したのであった。
 

終了後智代のお母さんも入れてみんなでケーキを食べに行った。月夜美空の姉妹だけは飛行機の時間があるので「11月1日に札幌で」と言って別れた。 
「本州方面の大学に進学する人や遠くに就職する人もあるかも知れないけど、印税は遅れて入ってくる分もあるから、移動した人は口座番号を私に連絡してくれない? それで振り込むから」
と蓮菜が言うので、蓮菜の電話番号・メールアドレスを持っていない人は赤外線で転送してもらっていた。
 
「でも結構楽しかったね」
「大学に入ってからも、近くにいる人に呼びかけて再開したいな」
「その場合、DRK, Dawn River Kittens の名前は使わない方がいいよね?」
「うん。それぞれ新しい名前を考えればいいんじゃないかな」
「DRKはここにいるメンツが半分以上集まった場合のみということでいいんじゃない?」
「半分も集まれば名乗ってもいいかもね」
 
智代のお母さんが考えたようにして言う。
「その手の問題って今はみんな仲良くしているからいいけど、あとからしばしば揉めやすい。誰が名前の権利を持っているのかを明確にしておいた方がいい」
 
「んー。じゃ、蓮菜・千里・花野子の3人の共同所有ということで」
と麻里愛が提案する。
 
「ああ、そのあたりが実際いちばん頑張っていたと思うし、それでいいんじゃない?」
と鳴海が言う。
 
それで特に異論は出なかったので、その3人がDRK, Dawn River Kittensの名前を所有することになった。孝子が紙にそれを明記して、その場に居た全員の署名をもらった。
 
「美空ちゃんからは今度の札幌ライブの時に署名をもらおう」
と恵香が言う。
 
「印税の分配に関しては数日中に私が書類を書いて全員に郵送するから、各自署名して返送してもらえる?」
と蓮菜。
 
DRKの音源はCDの売上の45%、ダウンロード売上の70%をもらう契約でそれをその時の制作に参加した人で均等割することにしている。蓮菜はこれをExcelで計算して入金する度に各自の口座に振り込んでいる。
 
「蓮菜、そのあたりの作業でけっこう費用がかからない?」
と心配する声もあるが
 
「私は作詞印税までもらっているからいいんだよ」
と蓮菜は答えた。
 
「振込手数料もそちらで負担してくれているよね?」
「振込手数料は千里持ち」
「そうだったんだ?」
 
「蓮菜が作業してくれるから私は代わりにお金を出してる。私も作曲印税もらってるから」
と千里。
「まあ千里にExcelのフォーム作ったりオンラインで振り込んだりの作業は無理だから」
と蓮菜。
「私、その手の作業、苦手〜」
と千里も言う。
 
「確かに千里は理系の頭脳が欠けてるよね。典型的な文系女子」
「千里、理学部やめといたら?文学部か法学部あたりがいいかも」
 
「うーん。お父ちゃんとの妥協の産物だから。お父ちゃんが水産学部を主張したのを、妥協で理学部にしたんだよ」
と千里は答えた。
 

千里・暢子・留美子・薫の4人は、超特例でウィンターカップへの参加が認められたので、毎日放課後、バスケ部の1−2年生と一緒に練習に参加した。4人は受験生なので授業は朝の0時間目(7:10開始)から夕方8時間目(17:00終了)までたっぷりある。それでも千里は朝6時頃からの朝練をした上で夕方は8時間目終了後女子バスケ部の練習が終わる20時まで汗を流していた。 
インターハイが終わって、いったん部活から引退ということになった直後は1−2年生の練習をたまに見ても物凄い疎外感を感じていたのだが、また彼女たちと一緒に練習していると、物凄い充実感を感じていた。
 
私ってやはりバスケが好きなんだなあ。
 
などとあらためて思う。でも大学に入ったあと、どうしよう?
 

 
2008年10月24日(金)。この日の朝のホームルームは全体集会に切り替えられ、アジア選手権に出場する千里の壮行会が行われた。理事長・校長・生徒会長からの激励のことばがあり、千里も決意の言葉を述べた上でチアリーディング部の激励パフォーマンスを受けた。
 
そして千里はこの日の夕方の便で東京に向かった。美輪子も会社を早退して見送りに来てくれたが、暢子や揚羽たちバスケ部のメンバー、宇田先生や南野コーチ、教頭先生に生徒会長、クラスの女子全員!が見送りしてくれた。 
「みんなありがとう。優勝してきますね」
と千里が手荷物検査の前で笑顔で言うと歓声が上がっていた。
 
羽田空港から電車を乗り継いで本蓮沼駅まで行き、そこからまたまた高田コーチの「言わなくても分かるよな?」ということばに「はい頑張ります」と答えて15kgほどの荷物を抱えてNTCまでジョギングである。
 
ロビーに居た、玲央美・江美子・誠美・桂華たちと手を振り合って挨拶する。 
「いや、朝から壮行会とかされて緊張した」
と千里が言うと
「それ話してた」
とみんな言ってる。
 
「インターハイの前とかも壮行会あったけど、壇上に大勢居たし、決意の言葉も部長の暢子が言ったからさ。ひとりだけ壇上に立って理事長・校長・生徒会長から激励の言葉をもらってチアリーダーのパフォーマンスを受けて、もう羞恥プレイされている気分」
と千里が言うと
 
「確かに壇上が1人か2人というのはけっこう恥ずかしいよね」
と他の子も言っている。
 
「私は部長だからインターハイでも決意のことば述べた」
と江美子。
「右に同じ」
と桂華・玲央美。
 
「でも千里のところはチアリーダーか」
「うちは応援団のエールだった」
と誠美が言う。
 
「千里の所、女子高だったっけ?」
「共学だよ〜。でも、うちは応援部は数年前に消滅したんだよね」
と千里。
 
「今どこでも消滅の傾向にあるみたいね」
 

合宿は明日からなのだが、みんな身体を動かさないと調子悪いということで、夕食後許可を取って体育館で全員汗を流す。高田コーチ(札幌P学園)と片平コーチ(愛知J学園)も付き合ってくれた。
 
軽く(?)2時間ほど汗を流していたのだが、彰恵が言う。
 
「エミ(江美子)ちゃん、体力が随分ついた気がする」
 
「あ、同感、同感」
と桂華も言う。
 
「以前はけっこう休み休み練習していたのに、今日はもう2時間近くやってるのにパワーが全然落ちてない」
 
「うん。ちょっと特訓やって体力つけたんだよ」
「へー。どんな?」
「朝のジョギングやってるし、ニンニクの焼いたの食べてるし」
「ああ、ニンニクはスタミナ付くよね」
「臭いが問題なんだけどね」
 
そんなことを言っていた時、スーパーバイザーの高居さんが来て「みんな居るみたいだから好都合」と言い、インドネシアまでの航空券を配って例によって、名前・年齢・性別に誤りが無いかを確認させた。パスポートも例によって明日の朝いったんスタッフが預かるのでよろしくと言われた。
 

それを機に解散し、部屋に戻る途中で桂華から訊かれた。
 
「結局千里は性別・女のチケットでいいみたいだけど、どういう経緯でパスポートも女になっているんだっけ?」
 
「うーん。私、自分の性別のことを意識したことないから。まあパスポートの申請書には自分は女だと思っているから女と書いたよ。申告通りに発行してくれたんじゃないかなあ」
 
「でも本人確認で健康保険証とか見るよね?」
「健康保険証の性別も私は女になってたと思うけど」
「よく女で発行してもらったね? お父さんの被扶養者だよね?」
「私、バイトの収入が大きいから、国民健康保険なんだよ」
「へー!」
「その手続きする時、やはり自分は女だと思うから、性別・女と書いて申請したから、それがそのまま通ったんじゃないかな」
「その本人確認は?」
と桂華が訊いたのだが
 
「千里って確か生徒手帳も女子だったね?」
と玲央美が言う。
「うん。それはなぜか最初から女だったんだよ。私男ですけどと言ったけど修正してもらえなかった」
 
「要するに千里の本人確認書類って何を見ても女だから、自然とパスポートも女で発行されたのでは?」
「なるほどー」
 
「それって逆に、男のパスポートを申請してたら拒絶されてたね」
「あり得る」
 
「ね、もしかして千里が男の娘だというのが嘘なのでは?」
「うーん・・・・。自分でも自信が無くなってきた」
 

NTCでの合宿は25日から29日まで5日間、みっちり行われた。これがかなりのハードな練習で全員夕方にはくたくたになっていた。疲れがたまって怪我などしないように、練習のあとはお風呂に入って、そのあとマッサージもしてもらっていた。
 
この期間は女子のWリーグのプロチームや、男子の大学生チームなどに練習相手になってもらい、体格的に優位な選手との戦いに慣らした。
 
「これでウィンターカップでQ女子高と当たっても行ける気がしてきた」
などと言っている子もいて、江美子が苦笑していた。
 
ここに出てきている子の内、千里・渚紗・朋美(J学園大学)以外は既にウィンターカップ出場が決まっている。合宿所に入った時点では早苗の山形Y実業も未定だったのだが、26日の日曜に県予選で(早苗不在の中2年生PGが頑張り)優勝して出場を決めた。渚紗の所は秋田県の予選がアジア選手権の後で行われるので、渚紗も帰国後そちらに出場する予定である。
 

国内合宿の最終日29日。お昼の休憩に入る時、親戚の人が面会に来ているよと言われたので、みんなと別れて1Fのエントランスホールの方に降りて行った。 
「お母さん!」
と千里は驚いたように声をあげる。
 
面会に来ていたのは貴司の母・保志絵であった。
 
「神社関係の会合で東京に出てきたのよ」
「それはお疲れ様です」
 
「これうちの神社で必勝祈願したから、御守り」
と言って肌守りをもらう。
 
「ありがとうございます。試合中は全ての装身具が禁止なんで付けられないけど、バッグに入れて持っていきます」
と言って千里はその御守りを受け取って胸に抱きしめた。
 
「ついでにお菓子買ってきた」
「みんなで分けます。たぶん一瞬で無くなります」
 
「それでさ、千里ちゃん」
「はい」
「こないだからちょっと気になってたんだけど、貴司との関係って今どうなってるの? 貴司に訊くとなんか曖昧な言い方してさ」
 
千里は微笑んだ。
 
「本当は3月でいったん別れたんですよ」
「そうだったの!?」
 
とお母さんは驚いた様子である。
 
「ごめんね。なんか色々とお嫁さんみたいなことしてもらって」
「いいえ。私は個人的にはむしろずっと貴司さんの妻のつもりでいます」
 
と千里は言う。
 
「ただ、北海道と大阪では自分たちの年齢ではとても夫婦関係を維持できないと思ったから、いったんリセットしようということにしたんです。私と貴司さんに縁があるなら、いつかまた夫婦に戻ることができると思っています」
 
お母さんは千里のことばをじっと聞いていた。
 
「千里ちゃん、大学は東京方面に行くつもりだっけ?」
「はい」
「いっそ大阪方面に行くとかは?」
 
「それも考えたんですけどね」
と千里は悩むように言う。
 
「私自分が大阪の大学に進学するか、あるいは進学とかせずに、もう貴司さんの奥さん、専業主婦になっちゃうというのも考えてみたんです。でも自分で占うと、それが凶と出るんですよ」
 
「へー!」
「東京方面の大学に進学するというのが吉と出るんです」
「なるほどねぇ」
 
「たぶん、私と貴司が東京と大阪に別れて暮らすことが何かのために必要なんだと思います。でも東京と大阪なら、新幹線で2時間だから頻繁に会いに行きますよ」
「交通費大変そう!」
 
「旭川から大阪に行くほどじゃないから」
「だよね〜。それかさ」
「はい」
「車買っちゃって、それで往復する手もあるよ」
「あ、それもいいですね」
 
と千里は微笑んで言った。
 
そうだよね。私、車運転するの好きだもん。
 
「ただ、免許取るまでに無免許運転、おまわりさんに見付からないようにね」
「はい。自重します!」
 
「でもさ」
と言ってお母さんはまた悩むような顔をする。
 
「どうかしました?」
「うーん。千里ちゃんなら言っても大丈夫かな。あの子、千里ちゃん以外の子と浮気しているような気がするんだけど」
 
「貴司さんの浮気は別に今に始まったことではないので平気です」
「確かに!」
 
「こないだ電話した時、貴司さん、付き合っている女の子がいると言ってました」
「いいの?」
「今はまだ私、貴司の奥さんになってあげられないし、次から次へと浮気されるよりはマシだから、取り敢えず放置です」
 
お母さんが千里を見つめている。
 
「でも卒業したら即、そちらを壊しに行きます」
 
お母さんが吹き出した。
 
「うん、頑張れ、頑張れ」
「それとですね」
「うん」
「その彼女とキスやセックスができないように、呪いかけちゃいましたから」
 
「千里ちゃんの呪いは効きそう!」
と言ってお母さんは笑っていた。
 

お母さんが千里の所を訪問した日、貴司はくだんの彼女から電話をもらっていた。 
「ね、ね。今週末、細川君、試合無いよね? 私も非番なんだけど、金曜日の晩にデートできない?練習のあと、夜9時半くらいに待ち合わせて」
 
貴司は実業団の試合があるので、10月から2月くらいまでの土日の日程が詰まっているのだが、たまたま今週末11月1-2日だけは試合が無いのである。ここまで彼女とのデートは平日の昼間に昼食を兼ねてすることが多かった。平日も夕方は練習があり、終わるのは9時である。しかしその後はデート可能ではある。 
貴司はドキッとした。
 
そんな試合の無い土日前の金曜日の、その時刻からのデートというのは当然のことながら「泊まりあり」という雰囲気になる。そのままひょっとして月曜の朝まで一緒? でも今、自分は・・・
 
「ごめーん。本業の方も忙しくて、仕事が溜まっていて。今週末は会社で仕事しないといけないんだよ」
 
「わあ、休日出勤か。金曜日の夜だけでもできない?」
「それが仕事を持ち帰って自宅で片付けないといけないんだよね」
 
「それって残業じゃないの?」
「うん。バスケ部員ということで、他の社員より早くあがらせてもらっているけど、だからといって仕事を滞らせる訳にはいかないから」
 
「そっかー」
「ごめんね。また昼間のランチいっしょに食べようよ」
と貴司。
 
「そうだね。じゃ、また」
と言って彼女は残念そうに電話を切った。
 

貴司は電話を切ったあと、ため息をついた。
 
どうしちゃったんだろう。
 
この時期、貴司は密かに悩んでいたのである。
 
ちょっとやってみよう。と自分に言って、先日タイのサイトからダウンロードした、レディボーイさんたちのヌード写真を見ながら、あれをいじる。 
30分くらいやっていたが、諦める。
 
だめだぁ!
 
実は貴司は9月下旬以降、1ヶ月以上射精できない状態が続いているのである。それどころか、そもそも女性の身体にインサート可能なレベルまで硬くなってくれないのだ。
 
最初は国体とかで疲れているのだろうと思っていたのだが、1週間以上できない状態が続くとさすがに自分でも何か変だと意識する。それで貴司はここ1ヶ月ほどいろんなことをしてみた。
 
最初は《千里からの荷物に同封されていた》(と貴司が思っている)千里のヌード写真を見ながらやってみたが逝けなかった(結果的にはこの千里のヌードでやるのがいちばん硬くなった)。
 
市販の「女子大生恋写ヌード」なる本を買って来てみてやってみたが、あまり大きくならなかった。
 
千里からもらっていたテンガが切れてしまったので、自分でも買って来てみて使ってみたものの、気持ち良くはなるのに、やはりダメ。実は千里が自分のマンションに置きっ放しにしている服を身につけてみたのだが、これはかなり興奮するものの、やはりダメだった。
 
しかし千里の服を着てけっこう興奮したことと、女の子のヌードでは全然ダメだったことから、もしかして自分はふつうの子のヌードではダメなのかもと思い、一度男性ヌードを試してみたものの、結局、自分は男性ヌードには全く興奮しないことを意識した。
 
それで今度はレディボーイさんのヌードでやってみたのだが、棒がある子のヌードではたとえおっぱいの大きな子でも、ペニスの写真を見た時点で萎えてしまうし、除去済みの子のヌードでは、普通の女性のヌード並みに興奮はするが、それでもやはり充分な堅さまでいかないし、射精もできない。
 
自分はひょっとしてEDになってしまったのだろうかと悩み、病院に行ってみようかとも思ったが、そこまでするのも。。。という気がして、結局半ば思考停止している。
 
そういう訳で貴司は、セックスまで行く可能性のある夜のデートには応じられない状態にあった。
 
でもこれ千里と会えてもできなかったらどうしよう?それとも千里とならちゃんとできるだろうか?と貴司は不安だった。
 

10月30日。
 
千里たちU18女子日本代表の一行はインドネシアに向かう。
 
千里はその日の朝、貴司から「頑張れよ」というメールをもらい「ありがと。優勝してくるね」と返信する。その時、ちょっとサービスしちゃおうかなと思い、自分の下着写真を《きーちゃん》に撮ってもらって添付した。(貴司の彼女を牽制する目的もある) 
朝から協会が用意したバスで成田に向かう。そして空港内で、バスケ協会の幹部さんたちが出席し、報道陣もいる中で壮行会が行われた。
 
そのあと出国・搭乗手続きをするが、例によって千里はSex:Fの航空券・パスポートで何の問題もなく出国できて、選手・スタッフ一同11時のシンガポール・チャンギ国際空港行きB767(全日空・シンガポール航空共同運行)に乗り込んだ。 
「もう千里がひょっとしたら男の子だったのかも知れないという話は忘れることにした」
などと桂華から言われる。
 
フライトは約7時間で到着は現地時刻17:05である(時差が1時間ある)。長いフライトなので、みんな機内ではぐっすり寝ていた。千里や玲央美は機内でお昼を食べたが、百合絵などは熟睡していて結果的にお昼を食べ損なった。 
チャンギで1時間半の待ち時間であった。ここは3つのターミナルに別れていてその間が列車で結ばれているのだが、到着も出発もターミナル2だったので移動も無かった。19:00インドネシア・メダンのポロニア国際空港行きのシンガポール航空の便に乗り継ぐ。到着は19:20着だが時差が1時間あり、1時間20分のフライトであった。この便の中ではずっとおしゃべりしている子が多かった。
 
「到着は何時だっけ?」
「19:20の予定だよ」
「え?私の時計くるってるのかな。今20:20なのに」
と言ったのは彰恵である。
 
「彰恵、時差があることを忘れている」
「あ、そうか」
「シンガポールが1時間、インドネシア西部は2時間の時差」
「みんな時計を直してるの?」
 
「私はシンガポールまで行く機内で2時間ずらした」
「私は成田を出た所で1時間ずらして、シンガポールを出た所で1時間ずらした」
「まめだな」
「私のは世界時モードがあるからBKKバンコクに設定した」
 
「バンコクってインドネシア?」
「バンコクはタイの首都」
「時刻帯が同じだから」
「インドネシアってタイと同じ時刻帯?」
「西部はね」
 
「スマトラ島・ジャワ島・西カリマンタンとかは西部時刻、日本と時差2時間、バリ島・東カリマンタンとかは中部時刻、日本と時差1時間だからシンガポールとも同じ、ニューギニアとかは東部時刻で日本と時差無し」
 
「東カリマンタンってパタリロ!に出てきたな」
「いや、あれはこちらのカリマンタンとはほぼ無関係だと思う」
 
「現実にはもっと美しいニューハーフさんも多いよね」
「いや、現実にはもっと凄いニューハーフさんも多い」
「まあ本人が女でありたいと思うのであれば容姿は関係無い」
「女装は開き直りだって、ネットで知り合った女装趣味の人が言ってたよ」
 
「まあ女子トイレでも、こいつ男では?と思いたくなるような恐らく天然女性のおばちゃんたちもいる」
「つい悲鳴あげちゃったことある」
「私は悲鳴あげられたことある」
「ボクはふつうに悲鳴あげられる」
 
「でもメダンって西部?」
「そうそう。スマトラ島。でも実はタイにとっても近い。プーケットの真南くらいに位置してるんだよ」
 
「今回の選手権で3位以内に入れば来年7月にタイのバンコクで世界選手権に出ることになる」
「今回のメンツがそのまま出るのかな?」
「どうだろうね」
「多分半分くらいは入れ替わるんじゃないかな」
「ここに居る子、誰も出なかったりして」
「あり得るなぁ」
 

ポロニア国際空港で入国審査を経て用意されていたバスに乗り、選手宿舎になっている市内のリゾートホテルに入った。ここで遅めの夕食となるが料理は美味しくて好評であった。
 
「この焼き鳥、けっこう美味しいね」
「カレー味というのが面白い」
「これサテというんだよ。いろんなお肉を串に刺して焼く。地区によってスパイスとかが違うらしいけど、この界隈はこの黄色いカレー味」
 
「これお肉は何の肉だろう?」
「牛肉と、こちらはヤギ肉だと思う」
「へー、ヤギか?」
「豚肉とかは無いのかな」
「インドネシアはイスラム国だから豚肉はNG」
「なるほどー」
 
「でもほんとにこれ美味しい」
 
「インドネシア頑張ってくれてるね」
「部屋もきれいだった」
「このホテルできたばかりだから寝具とかもきれいらしいよ」
「数年後にはヤバかったりして」
 
「でもこういうのって開催地によって極端な差があるみたいね」
「うん。どうかした所だと夏なのにエアコンが無いとか、シャワーが無いとか、御飯があきらかに腐敗していたりとか、酷い所もあるらしい」
「食品の賞味期限って日本は厳しいけど、アバウトな国もあるからね」
「夏にエアコン無しは辛すぎるな」
「シャワーが無いのも辛い」
「入浴の習慣の無い国もあるからなあ」
 

ホテルのレストランでは近くにインドチームの子たちが居て、彰恵がボールペンを落としたのを向こうの子が拾ってくれたのをきっかけにテーブルを動かしてきて!近くに陣取り、お互いに英語でおしゃべりが始まる。何だか気さくな子たちであった。
 
「へー、そちらはヤギ肉と鶏肉にしてもらったのか」
「うん。私たちは牛肉は食べられない」
とインドの子たちは言っている。
 
「実は食べられる子もいるけど、合わせてもらった」
「ヒンズー教徒、シーク教徒、イスラム教徒、キリスト教徒、色々混ざってる」
「たいへんそー」
「お肉自体が食べられない子もいるから、タフ(豆腐)の串もある」
「あ。それ私も食べてみたい」
「どぞ、どぞー」
 
などという感じで江美子が豆腐のサテを食べてみて
「けっこう美味しい!」
と言っていた。
 
「でも日本人ってチマチョゴリ着てるのかと思った」
「それは韓国だよ」
「あ、そうか。日本は何だっけ?」
「フリソデじゃない?」
「あ、そんなの。着ないの?」
「振袖は成人式とかパーティーとかで着るんだよ。ふだんは洋服だよ」
「学校の制服は?」
「こんな感じ」
と言って写真を見せてあげると
「おお、可愛い!」
 
などと声が上がっていた。
 
「インドは制服あるの?」
「あるけど、日本の夏服に近いかも」
と言ってレーミャちゃんという子が写真を見せてくれる。
「可愛いじゃん!」
 
白いブラウスに青系統のチェックのスカート。それに棒タイである。
 
「棒タイはミッションスクールに多い」
「サルワール・カミーズ(いわゆるパンジャビ・ドレス)とか着ないの?」
「あ、それが制服になってる学校もあるよ」
 
「でも日本は夏服・冬服あるんだね」
「インドの気候だと日本の冬服は暑くてたまらんかも」
 
「でも今回は外国の選手ってみんな背の高い子たちばかりかと思ってたけど、インドチームは私たちとあまり背丈が変わらないみたいだから安心した」
とこちらの子が言うと
「私たちもー。こんなに低いのは私たちだけかと思ってた」
とジョーティーちゃんという子が言っている。
 
「でもそちらにも1人背の高い人がいる」
という日本側からの指摘。
「私、イギリス系なのよ」
と本人。ステファニーちゃんという子である。
「でもそちらにも凄く背の高い人がいる」
と彼女。
「私はサクラ、こちらは誠美、こちらは華香」
とサクラが紹介する。
 
「ステファニーちゃん、何cm?」
「184cmくらいかなあ。マサミちゃんは?」
「私も184cmくらい」
 
「ふたりは嘘をついている」
という声が双方からあがる。
 
「よし。測ってみよう」
と百合絵が言ってメジャーを取り出し双方の身長を測ってみた。
 
「ステファニーちゃんは188cm, マサミは186cm」
 
「やはりね〜」
という声があがっていた。
 
「だけど夕方、中国チームを見たよ。すごく背が高かった」
とインドの子のひとりが言う。
 
「中国は民族によってはかなりの長身の人も居そうだね」
「センターのリュウさんって201cmらしいよ」
と玲央美が言う。
 
「きゃー」
「そんな選手とどうやってリバウンド争えばいいのよ?」
と向こうのセンターのアーラーサーナーちゃん(181cm)。
 
「Well, Sometime we just have to giveup(まあ諦めが肝心)」
などとこちらの早苗(164cm)が言うと
 
「Not sometime, "every time"」
と向こうのラースラーちゃん(159cm)が言っていた。
 
 
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