【女の子たちの性別変更】(1)

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「そういう訳で村山君は今後は女子選手として試合に出てもらうことになりましたので、所属も男子バスケット部から女子バスケット部に移籍することになりました」
と宇田先生が言うと、部室に集まった40人ほどの男女バスケット部員から拍手が湧く。
 
この日は1-2年生の部員が中心だが、3年生で引退している黒岩さん・渋谷さんや蒔絵さんなども出てきていた。
 
「だから俺が『君女子の入部受付の方に並んでよ』と言った時、ちゃんとそちらに並んでくれていたら良かったのに」
と渋谷さんが言う。
 
「宇田先生から今年は女子枠で取った選手を1人男子バスケ部に入れるからと言われた時は、訳が分からんと思ったんだけど、これで正常化だな」
と黒岩さん。
 
「私が卒業する前に、千里ちゃんが女子バスケ部に来てくれて嬉しい。今年はインターハイもウィンターカップも行けなかったけど、来年は頑張ってね」
と蒔絵さん。
 
「正直、今の男子バスケ部から村山を失うのは辛いんだけど、まあ女子は女子チームに参加するのが自然だからな。代わりに花和をもらえない?と訊いたら花和も既に医学的検査で女であることが確定しているからダメと言われた」
と2年男子キャプテンの真駒さん。
 
「学校説明会で千里ちゃんと留実子ちゃんがうちに来訪した時に、凄い選手が2人も入ってくれると思って期待していたのに、千里ちゃんは男子バスケ部に入ると聞いて、何で〜!?と思ったからね。やっと来てくれたね」
と2年女子キャプテンの久井奈さん。
 
「本人から一言どうぞ」
と宇田先生が言うので、千里も挨拶する。
 
「どうも混乱させて済みません。自分では男だと思ってたのですが、お医者さんに見せたら、君は女だと言われるので、申し訳ないですが、女子の方に参加させてください」
 
「いや、千里は自分では女だと思っていたはず」
「だいたい医者に見せなくても、誰が見ても女」
「6月の段階で女性検査官におしっこしている所を見せているし」
「中学の修学旅行では女湯に入ったと言うし」
「中1の夏に札幌でチンコ切る手術受けたというのを村山の友だちから聞いた」
「ビキニの水着姿でテレビ出演している録画がうちにあったって友だちが言ってた」
「というか体育の時間に女子水着を着ている所を見ても何も違和感が無い」
「美術の先生も村山の骨格は女子の骨格だって言ってた」
「彼氏とはちゃんとヴァギナでセックスしているらしい」
 
など声が上がる。何か微妙に変形した情報とか、他のと混線した情報とか勝手な憶測とかが混じってるみたいなんですけど!?
 
「ところで髪はどうしたの?」
「男子だと五分刈りでないといけないかなと思っていたのですが、女子として参加するのなら、このくらいの長さかなと思って」
 
千里はショートウィッグを着けて、この場に来ている。
 
「それで女子制服を着ているのは?」
「女子生徒でないと女子バスケ部には入れないのではないかと思って」
 
「じゃ今後は授業もそれで受けるの?」
「いえ、授業は丸刈り頭で男子制服で受けますが、部活の時はこの髪で女子制服で」
 
「中途半端な!」
「いさぎよくない!」
「女と確定したんだから、女の自覚を持つべき」
 

「これ書いてみたんだけど、見てくれない?」
と千里は『鈴の音がする時』と題した五線譜を智代に見せた。
 
昼休みの音楽練習室である。
 
「ふーん。格好良い曲だなあ。この歌詞は蓮菜?」
「そうそう。歌詞がすごくおしゃれだから、その雰囲気に合わせて曲を付けてみた」
 
「Lucky Blossomが演奏していた『六合の飛行』は美しい曲だと思ったけど、これはまた違う雰囲気。どうやって作曲するの?」
 
「『六合の飛行』は思うままに龍笛を吹いて、それを書き留めたんだよ。でもそういう作曲のしかたって、気付かずに既存曲に似たものを作ってしまう危険があるから、この曲はメインとサビの最初のモチーフだけフルートで探したあと、頭の中で展開して行って作った」
 
「偉い偉い。その方がコントロール効くからね。ここの所、こうしたらどうかな?」
と言って智代は鉛筆で少し譜面に書き込む。
 
「ああ、その方がいいね」
「あと、ここはこんな感じでは?」
 
「うーん。それはちょっと意図と違うんだよね。だったら、こんな感じは?」
「ああ、それはいいかも」
 
そうやって千里と智代は譜面を20分ほど掛けて調整した。
 
「よし、これでスコア作ってみるね」
「よろしくー」
 
その作業を見ていた3組の麻里愛が声を掛ける。彼女は音楽コースに所属していてピアノもヴァイオリンも物凄く上手い。
 
「あんたたち、キーボードで弾いてみたりせずに譜面の調整やってるね?」
 
「えっと弾いてみる必要ある?」と千里。
「五線譜見れば音は分かるからいいよね」と智代。
 
「私は弾かないと分からないよ!」と麻里愛。
 
「え?でも麻里愛ちゃんなんて絶対音感持ってるだろうから、麻里愛ちゃんこそ弾く必要ないでしょ?」
 
「一応絶対音感は持ってはいるけど。あんたたちも持ってるの?」
 
「私、全くない。調子笛ないとヴァイオリンの調弦できないし」と千里。
 
「私は相対音感しかないけど、音符の並びから曲想を読んだり、編曲したりするのにはドレミさえ分かっていれば充分」
と智代。
 
「あんたたち、実は凄くない?」
「そうかな? 私、ピアノの試験に3回連続で落ちて先生から、才能無いって言われてるけど」
「私、こないだ東京の音楽家さんにヴァイオリン下手ねって言われたけど」
 

放課後、千里が部活に行こうと体操服を持って更衣室に行くと、先に更衣室に入っていた同じ女子バスケ部1年の寿絵から言われる。
 
「千里、女子制服に変えたんじゃなかったんだっけ?」
「今まで授業受けてたからね。授業は男子制服で受けてるから」
「ふーん。その髪は?」
 
「あ、トイレに寄って来たから、トイレの洗面台の所でウィッグ装着してきた」
「なるほど」
 
着替えている最中に留実子も来たのでいっしょにおしゃべりしながら着替えてその後、バスケット部の練習場になっている南体育館(朱雀)に行く。
 

南体育館はバスケのコートが2面取られている。入口側を男子、奥側を女子が使用している。千里はこれまで入口側で練習していた。
 
それで既に北岡君や氷山君たちが練習している傍を
「すみませーん。通りまーす」
と言って通り抜けていく。
 
「あ。女子の方のコート使えるのいいなあ」
と北岡君。
 
これまでの男子と女子の実績差で、女子の練習エリアの方が男子の1.5倍ほどの広さがあるのである。練習用のゴールネットも多数設置されている。
 
「北岡君も女子の方に来る?」
「いや、そっちに行くには、あそこちょん切らないといけないみたいだし。さすがにそこまではできないや」
と北岡君。
「北岡君、もし女の子になりたいなら、ボクの子宮と卵巣におっぱいもあげるよ。代わりに北岡君のおちんちんとタマタマをボクにちょうだいよ」
と留実子。
「そんな一瞬悩むようなことを言わないでくれ!」
と北岡君。
 
落合君はコーチの北田さんが付いて、ひたすらシュート練習をしている。
 
「村山〜、村山が抜けたので、春の大会にSGで出すからと言われて今日から猛特訓らしいよぉ。取り敢えず1日シュート1000本だって」
などと落合君。
「頑張ってね〜」
 

練習の内、最初の30分は準備運動や柔軟体操に、基礎的なトレーニングをする。柔軟体操は男子の方ではいつも真駒さんが「何か女と組んでる感触で俺チンコ立っちゃうんだけど」などと言いながらも組んでくれていたのだが、女子の方では留実子と組む。
 
「るみちゃん筋肉すごいね」
「まあ、それで性別疑われたんだけどね」
「男性ホルモンとかもチェックされた?」
「うん。されたけど、残念ながら女性の正常値の範囲らしい」
「でも私より高かったりして」
「ああ。高いよ。暢子がみんなに見せてた千里の血液検査表の数値よりボクの男性ホルモン値の方が高いなと思ったもん。それで千里は既に去勢してると確信した」
「うーん。。。」
 
もう今更、去勢してませんなんて言っても誰も信用してくれないだろうなあ。
 

次の30分はパス・シュート・リバウンド練習である。4−5人1組になってパスしてシュートして、そのシュートが外れたらリバウンドを狙うという連続練習で、パス→シュート→リバウンドと回転していく。
 
が、例によって言われる。
「千里〜。もう少し外してくれ。千里の前に居るとリバウンドの練習にならん」
「すみませーん。無意識に入っちゃうんです」
 
「いや、優秀なシューターって、しばしばそうなんだよ。私の中学の時の同輩がそうだったもん。入れようと思って入るもんでもないし、外そうと思って外れるもんでもないみたい」
と2年生のみどりが言う。
 
「その人はどこの高校に行ったの?」
「特待生になって愛知のJ学園に行ったよ」
「今年のインターハイ優勝校か!」
「うん。決勝戦の中継見てたけど、ポンポン3ポイント入れまくっていた」
 
「もし私たちが来年のインターハイに行けたら、そこと当たる可能性もあるわけか」
「あまり当たりたくない相手だなあ」
 

最後の30分は紅白戦をした。千里は女子バスケ部員として練習に参加するのは初めてではあるが、これまでも何度か女子の練習試合に千里が参加するために彼女たちと一緒に練習したことがあるし、しばしば紅白戦の時に久井奈が千里を男子の方から連行してきて参加させたりしていたこともあったので、コンビネーションではほとんど問題が起きなかった。
 
1年生vs2年生でやったのだが、千里と暢子はお互いに相手を見なくてもパスが通るし、留実子にもスムーズにパスできるので、2年生チームが結構苦戦していた。1度は久井奈さんから、巧みに千里がスティールを決め、「えー!?」
などと久井奈さんは絶叫していた。
 
「久井奈ちゃん。あんたさあ、何度か注意してるけど、ドリブルしてて立ち止まる直前に一瞬、隙ができるんだよ」
と南野コーチが指摘する。
 
「でも今、千里が近づいてきたのに全然気付かなかった!」
 
「男子の方でもさんざん言われてたけど、千里ちゃんは霧に変身して近づいて相手のそばで実体化するから」
 
「それって悪魔の実の能力者ですか〜!?」
と久井奈。
 
「千里は中学の頃は忍者って言われてましたよ」
と留実子。
 
「むしろ。くノ一?」
「当然そうでしょうね」
 

練習が終わって、みんなで更衣室に行き着替える。千里は汗を掻いたので下着を交換していた。
 
「千里、胸大きいね」
「大したことないですよー」
 
などと良いながらブラを交換する。更にショーツを交換していたら
 
「ほんとに付いてないね」
と言われたが、留実子が
 
「お医者さんにも確認されているから今更ですよ。内診台乗せられたでしょ?」
と言う。
 
「あれ、恥ずかしかったよぉ。クスコまで入れられるし」
と千里。
 
「ああ、ちゃんとヴァギナもあるのね?」
 
「でも処女にもクスコ入れちゃうんですか?」
「いや、千里は処女ではないから」
「あ、そうか!こないだの大会の時に彼氏としてたんでしょ?」
 
「抱き合ってキスしただけで、セックスまではしてないんだけどなあ。なんでそういう話になってるんだろう」
「1年生の女子の間では、そういう話で確定している」
「うん。女子トイレの中で裸でセックスしてたと聞いた」
「何それ〜!?」
「今更否定しても誰も信用しないだろうね」
「そんなぁ」
 

下着を交換した後、千里が女子制服を身につけていると
 
「あれ、そちらに着替えるの?」
と言われる。
 
「うん。このあと授業受けるわけじゃないから。女子バスケ部からの帰りなら女子仕様のほうがいいかな、と」
 
「それでおうちに帰っても大丈夫なの? 性転換しちゃったことは親には内緒なんでしょ?」
 
「私、叔母ちゃんちに下宿してるんだけど、叔母ちゃんは私の生態を知ってるから」
と千里。
 
「知ってるというより、煽ってるよね」
と留実子。
 
「そんな感じがする時もある」
「まあさすがに性転換したら一緒に暮らしている人にはバレるだろうからね」
 
「いや、叔母ちゃんは私が性転換までしたとは思ってないと思う」
「じゃ誰にも言わずにひとりで手術受けちゃったんだ?」
「心細くなかった?」
「もしかして彼氏に付いててもらったとか?」
 
何かこの疑問文が数日後には平常文に変化してないだろうか?と千里は不安を感じた。
 
「でも叔母ちゃんにはカムアウトしといた方がいいよ」
「そうそう。理解者を増やしておかなきゃ」
 
「うーん・・・」
 

「あ、ちょっと図書館寄ってから帰るね」
と言って千里は、他の子と別れて図書館に行った。この学校の図書館は夜9時まで開いていて、今日の千里のように部活の後で寄りたい子や、学校の近くにある寮に住んでいる生徒たち、また塾に行ったあと資料を調べたい子などに重宝されている。
 
原子の構造について、授業の内容では何か割りきれないものが残ったものの、参考書などでは《試験に出る》ような内容のことにしか触れてない。それで何か理解を深めるのに良さそうなものがないかと思って探していた。
 
420.物理とラベルが貼ってある付近の棚を見ていて、ノーベル物理学賞を取った人が書いた『原子と素粒子』という本があった。開いて読んでみると、よく書いてあるっぽい。そして授業で誤魔化された気分になった界隈が正確に書かれているっぽい。
 
よし、これ借りて帰ってよく読もう、と思ったものの「あっ!」と思う。千里は生徒手帳の写真は《長髪・女子制服》なのに、実態が《丸刈り・男子制服》なので、ひとりで本を借りようとすると「この生徒手帳違うよ」などと言われてしまうのである。それで、いつもは蓮菜や鮎奈などに付いててもらい「極端に写真が違いますが確かに本人です」とか「女から男に性転換したんです」とか言われて(後者は冗談と思われるだろうと思ったのにマジで取られてる気もした)、それで何とか借りることができていた。
 
しまったぁ。るみちゃんでも誘って残っててもらえば良かった、と思ったものの、「あれ、待てよ?」と考える。今は部活が始まる前に付けた女の子のショートカットのウィッグを着けている。それで今着ているのは女子制服。
 
もしかして、このまま借りられたりして?
 
と思ったので物は試し。カウンターの所に行く。夕方から出て来ているパートの司書のおばさん、もとい、お姉さんに「これ借ります」と言って、生徒手帳と一緒に本を出す。
 
「はいはい」
と愛想良く言ったお姉さんは、生徒手帳のバーコードをスキャンした。モニターに千里の生徒手帳に載っているのと同じ写真が表示される。チラっと千里の顔を見る。そして続けて本のバーコードをスキャンする。
 
おぉ!同一人物と認めてくれたっぽい!
 
それで
「来週の火曜日までに返却してください」
と言われたので
「分かりました。ありがとうございます」
と言って、本をスクールバッグに入れて図書館を後にした。
 
やったぁ!ひとりでできたぁ!
 

その週の金曜日、部活が終わってから帰宅すると、なんと貴司が来ていた。
 
「お邪魔してるよー」
と貴司。
「千里、彼氏呼ぶんなら、一言言っておきなさいよ」
と美輪子。
「ごめーん」
 
だって私も聞いてなかったよぉ。
 
「いや、済みません。僕が千里さんに言ってなかったんです」
と貴司は言うが
 
「かばってくれるのは良い彼氏だ」
などと美輪子は言っている。
 

御飯を食べた後、美輪子が先にお風呂に入って「後は自由に」と言ってくれたので、千里→貴司の順にお風呂に入る。貴司がお風呂に入っている間に千里は布団を敷いてファンヒーターをつけておく。
 
千里は少し迷ったが、着衣のまま取り敢えず今日の宿題をやった。
 
やがて貴司が裸のまま部屋に入ってきた。しかし千里は単に
「お疲れ様ー。お茶入れるね」
と言って、沸騰させておいたポットのお湯でコーヒーを入れて貴司に勧める。
 
「ありがとう」
と言って、貴司は裸のまま千里の隣に、あぐらをかいて座り、コーヒーを飲む。おちんちんは丸出しだ。しかし千里は平常心である。
 
「でも今日はどうしたの?ちょっとびっくりした」
「千里の顔が見たくなったから来た」
「それはいつでも来ていいよ」
 
と言って千里は貴司にキスをする。
 
「そのさ。『医学的に女と判定された』から『女子バスケ部に移動』になったという経緯が確認したくてさ」
 
「あれ、すっごく不可解。病院では私確かに先生が『医学的には男』という診断書を書いたのを見たんだよ。でも協会側から学校に回ってきた診断書のコピーでは『医学的に女』という診断書になってたんだよね」
 
「千里のこれまでの言動からすると、そう言う千里の言葉の方を信用できないんだけど」
と貴司は言う。
 
「私、そんなに信用無い?」
「うん。千里って嘘つきだもん」
「えへへ」
 
「笑って誤魔化そうとしてる」
と言って貴司は千里にキスをする。
 
「本当の所は千里、どっちなんだろうと確かめたくてさ」
「実地に確かめてみる?」
「確かめさせてよ」
 

「じゃ、冷静に確認できるように、いったん鎮めてしまおう」
 
と言って千里はあぐらをかいて座り、既に大きくなって上向きの角度を持っている貴司のそれを、いきなり口に咥える。
 
「あ・・・・」
 
貴司の鼓動が伝わってくる。ふふふ。ドキドキしてる。私もドキドキしてるけどね。私、ソフトクリームでけっこう練習したけど少しはうまくなったかなあ。私、男の子の快感ってのがいまいち分からないし。
 
そんなことを考えながら千里はそれを舐めてあげた。舐めている内に自分自身もHな気分になってくる。やがて貴司はお口の中で逝ってしまう。千里は飲み干してから、優しく舐めてきれいにしてあげる。
 
「せめて電気消させて」
と言って立ち上がり電気を消す。窓には厚手のカーテンが引いてあるので本当に真っ暗になる。ファンヒーターの音だけが鳴り響いている。
 
「私も脱ぐね」
と言って千里は服を脱いで行く。暗闇に少しずつ慣れてきた貴司の目に千里の美しい裸体が映る。
 
「今日は偽乳付けてないんだ?」
「さっき、お風呂に入った時に外したよ。付けといた方が良かった?」
「ううん。生胸のサイズを確認できるから」
 
ブラも外し、ショーツも脱いでしまう。
 
「やはり女の子だよね?」
「触るならお布団の中でにして」
「いいよ」
 

それでふたりでお布団の中に入る。まずは抱きしめあってキスをする。
 
「友だちで彼氏とよくHしてる子の中に、フェラした後はキスしてくれないってぼやいてた子がいたよ」
「自分のペニスと間接キスになるからな」
「貴司はいつもキスしてくれるね」
「千里が可愛いから」
 
貴司は最初千里の乳首をいじっていた。
「これ、春頃からすると、けっこう成長してる気がする」
「測定誤差もあるんだろうけどトップとアンダーの差が去年の暮れ頃から3cmくらい開いてるみたい。カップひとつ大きくなった感じかな」
 
「うん。そのくらい大きくなったよ、これ。もう充分Aカップでしょ?」
「サイズ的にはAカップには足りないんだけどAカップのブラでは少し辛いんだよね。だから最近は付けるの最低でもBカップ」
「やはり」
 
貴司は乳首も舐めてくれた。舌で乳首をコロコロとされると、物凄く気持ちいい。それだけで脳逝きしてしまいそうな気分だ。
 
やがて貴司は、おそるおそるという感じで千里のお股の所に手をやる。
 
「やはり女の子の形だ。これ隠しようがないよね?」
「もし私にヴァギナが付いてたら、貴司、そこに入れてもいいよ」
 
貴司は少し迷っているようだった。しかしやがて「よし」と言ってお股の割れ目ちゃんを開いて、中に指を入れてくる。
 
「この中に入れるの初めて」
「ふふふ」
 
「この少し堅い所、クリトリス?」
「想像に任せる」
「けっこう湿ってるね」
「自然に湿度が出るんだよ。さっきお風呂できれいに洗ってるけど、どうしても臭いはするからごめんね」
「ううん。大丈夫」
 
そう言いながら貴司は割れ目の中を指でまさぐっていたが、やがてハッとするような様子があった。
 
「ここに穴がある気がする」
「そこには悪いけど、指じゃなくて、おちんちんで最初は入れて。私、貴司の指にヴァージンささげたくないから」
「うん」
 
「あれ付けるからちょっと待って」
と言って、貴司は自分の荷物の中から避妊具を取りだした。開封して装着する。
 
「じゃ、入れていい?」
「どうぞ。私の旦那様」
 
貴司は指で場所を確認しながら、また大きく堅くなっている棒を千里の中に入れてきた。
 
ひゃー。
 
思ったよりスムーズに入った。念のためローションは投入しておいたのだが、さっきからかなりHな気分になっているから濡れてくれたのかなと千里は思う。貴司が強くキスする。舌を入れ合い絡め合う。千里も心臓がドキドキ言ってるし、脳内がカァッと気持ち良い物質で満たされる気がした。
 
やがて貴司はスマタでやった時と同様に腰を動かして出し入れをする。これはそんなに気持ち良くもないなと千里は思った。でも貴司が気持ち良さそうだからいいよね、そう思ってギュッと抱きしめる。
 

さっき一度フェラで逝っていたからだろう。結構な時間がかかった気がしたが、やがて貴司は再度千里の中で逝った。その瞬間貴司が脱力して体重を千里の上に掛ける。千里は再度貴司をしっかり抱きしめた。
 
しばらくしてから、またキスしてくれた。
 
やがて身体を離し、千里と並んで寝る。
 
「今、僕千里のヴァギナに入れたんだよね?」
「もし私にヴァギナが存在していればそうだと思う」
「ヴァギナじゃないの? まさか後ろの穴?」
「後ろの穴じゃないことだけは保証する」
 
「じゃ、やはり千里のヴァージンもらったんだ」
「私としては4月にした時に貴司には既にヴァージンをあげたと思ってる」
「確かにそうかもね」
「どこに入れるかなんて些細なことだよ。セックスしたことでお互いにあの時、処女と童貞を卒業したんだよ。私たち」
 
「そうだよね」
「今日のって、スマタと比べてどうだった?気持ち良かった?」
「あまり変わらない気がした」
「じゃスマタでいいね?」
「いや、今度からはこちらに入れさせてよ。ちゃんと付けるからさ」
「ふふふ」
 

「でもやはり、ほんとに女の子になっちゃったんだ・・・」
「私はずっと変わらないけど」
「そうなの?」
「でも、何だか女の子たちの噂では、私が性転換手術を受けにタイに行った時に貴司が親族として付き添ってくれたという話になっているっぽい」
「えーー!?」
「噂って、怪しい話ほど真実味を帯びて伝わるから。秋の大会の時のも、私たち裸になってセックスしているところを見つかって厳重注意受けたって話になっているみたいだし」
「うっそー!」
 
と言ってから貴司は
「やはりタイに行って手術したの?」
などと訊く。
「私は海外に出たことないよ。パスポートも持ってないし」
「じゃ国内で手術?」
 
「女の子たちの別の噂では私は中1の夏に札幌の病院でおちんちんを切ったということになっているみたい」
「それ、鞠古の話と混線してない?」
「うんうん。ほんとに噂って適当だよね。私、そもそも性転換手術なんて受けてないのに」
「こら、どさくさに紛れて嘘つくな」
 

「でも私が本当の女の子だって思っててくれていいよ。どうせ21歳くらいでちゃんと手術受けて本当の女の子になるつもりだし」
「いや、既に本当の女の子なんだよね?」
「うん。そう思ってていい」
 
「また分からなくなった!」
「ふふふ」
 
ふたりはその後、お布団の中で並んだまま、バスケの話とか友人の話などを楽しく話した。キスはたくさんした。時々千里が貴司のおちんちんをいじってあげるので、貴司のおちんちんはずっと大きく堅くなったままだった。貴司もたくさん乳首をいじってくれた。
 
最後にもう一度結合した後、ふたりとも裸のままで眠ってしまった。
 

朝、貴司はヴァイオリンの音で目が覚める。
 
千里が貴司が以前使っていたヴァイオリンで『愛の喜び』を弾いている。但し朝なので、近所迷惑にならないよう消音器を使用している。
 
演奏が終わると貴司はパチパチパチと拍手をした。
 
「だいぶ腕を上げた。移弦ができるようになってるし」
「うん。少し頑張ったかな」
 
「もし僕たちが結婚できたら、こうやって毎朝起こしてくれるといいな」
「さすがに私は貴司のお嫁さんにはなれないだろうけど、ヴァイオリン弾ける子と結婚したら、こうやって起こしてくれるかもね」
 
「でもお嫁さんになれる身体になったんだろ?」
「さすがに貴司のお父さんが認めてくれないよぉ、元男の子だった奥さんなんて」
「説得するよ」
「それに私赤ちゃん産めないし」
 
「別に子供は居なくてもいいし、どうしても欲しければ養子をもらってもいいと思う」
「あまりそういうこと言わないで。私、期待したくなっちゃうもん」
 
「・・・・」
「取り敢えず20歳過ぎてから話し合わない? もしその頃まで私たちの関係が続いていたら」
「うん」
 

 
翌週末。2月に本大会がある全道新人大会の旭川地区予選会が行われた。
 
千里は初めてN高女子の選手として参加する。試合前の練習時間に男女入り乱れてコートで練習していたら、
 
「あれ?今回例の男子チームに参加してた丸刈りの女の子は居ないね」
「ああ、あの子、3年生だからもう新人大会には出ないんだよ」
 
などと近くで話していた人たちがいた。こうやって勝手な噂は生産されていくわけだ!
 
練習が終わった後、休憩していたら、ポンと肩を叩かれる。M高校の橘花だった。
 
「髪伸ばしたの?」
「うん。それに今回から女子チームに参加するから」
「おお!」
「私が男子チームに参加してたらトラブルの元だって言われて」
「そりゃ女子が男子チームに入っていたら相手もやりにくいから」
「当たるのは決勝戦だね」
「ちゃんと勝ち上がってきてよね」
「そちらもね。勝負楽しみにしてるから」
 
と言って千里と橘花は笑顔で握手した。
 

1回戦はあまり強い所ではないので、久井奈や千里・暢子たち主力は休ませて控組を先発させた。高校に入ってからはまだ実戦経験の少ない1年のメグミをPGで出し、2年のSFみどりにバックアップをさせる。1年の寿絵をPF的に使い、どんどんゴール下に攻め込ませる。秋の大会でSGとして出たもののほとんど得点できず、本人も「私3ポイント苦手〜」などと言っていた2年の透子もこの試合では比較的伸び伸びとシュートを撃ち、2ポイント3ポイント合わせて3割くらい放り込んでいた。センターは2年の麻樹である。身長は180cmもあり女子バスケ部で一番背が高いのだが、おっとりした性格なので普段は留実子の交代要員という位置付けに甘んじている。
 
試合は80対12で勝ち、主力組の出る幕は無かった。
 
2回戦は旭川市内の女子チームの中では最強と評価されているL女子高である。今年は春の大会でも秋の大会でも、思わぬ所に敗れて出場できなかったもののいつも千里たちのN高校とインターハイ女子代表を争っているチームのひとつである。もっとも、向こうもこちらのことを「常勝校なのに春の大会も秋の大会も取りこぼしたな」と思っているだろう。
 
当然こちらは最強布陣で行く。PG.久井奈 SG.千里 SF.穂礼 PF.暢子 C.留実子 という先発である。
 
千里は対戦して「すげー強い!」と思った。こちらが最初立て続けに3ポイントを決めると、すぐにマッチアップを変更して、いちばん強そうな子(後で確認すると溝口さんという人だった)が千里をマンツーマンでマークするようになる。実際第1ピリオドだけでシュートを2度も停められた。それで、こちらも無理せず暢子にパスして、中に飛び込んで行ってシュートを決めるパターンも使用する。
 
元々秋の大会ではフィジカルに強い留実子と暢子を使って、近い所からどんどんシュートするパターンで勝ち進んだのだが、今回はそれに千里が遠くから撃つパターンが増えて攻撃の幅が広がっている。千里・暢子・久井奈さんの間のパスは、ほとんど失敗しないので、結果的に3人の中の誰かが攻撃の起点になる形で得点を奪っていった。
 
最終的には69対58で勝った。うち千里が27点、暢子が24点取っている。得点の4分の3をこの1年特待生コンビで稼いだ。
 
「でも千里の得点分が無かったら負けてた所だった。この大会前に千里をこちらに獲得できてて良かった」
などと久井奈さんが言っていた。
 

一方男子の方では、1回戦でいきなり強豪と当たり苦戦した。終始相手にリードを許し、もうダメかと思っていたところで最後の最後に北岡君の3ポイントが決まって延長戦となる。そして延長戦でもシーソーゲームとなったものの、何とか1点差で勝つことができた。
 
「村山〜、もう一度性転換して男に戻る気は無い?」
などと真駒さんに言われる。
 
「おちんちんなんて付いてるのめんどくさいです」
 
「村山、男子のスピードに慣れてたら女子のスピードは遅く感じない?」
と北岡君から訊かれる。
 
「どうでしょう。今日の相手は全国区だからというのもあるかも知れないけどそんなに遅く感じなかったです。もっとも私が元々遅いからかも」
「確かに!」
 
男子の2回戦はそこそこに強い所で、北岡君も真駒さんも1回戦での消耗が激しすぎて精彩を欠いたものの、その分氷山君が頑張り、白滝さんも真駒さんに代わってゲームのコントロール役として活躍し、最終的には15点差で勝利した。
 
男女ともに翌日の決勝に進出する。
 
そして2位までは道大会に行けるので、これで男女とも道大会への進出確定である。
 

「貴司も順調に道大会に進出したのね? おめでとう」
とその晩、千里は貴司と電話で話した。
 
「ありがとう。そちらもおめでとう」
「ありがとう。でも明日も試合があるから気を緩めないようにしないと」
 
「うん。電話も短めにしようよ。でもまあこちらは学校数が少ないから1日で決着したから」
 
「こないだ田代君から聞いたけど、札幌なんか学校数が多いから、リーグ戦やって上位でトーナメントしてで、5日がかりみたい」
「札幌市だけで高校が50校くらいあるからなあ」
 
「でももう私と貴司が当たらないのはちょっと残念だね。貴司相手だと凄く燃えたんだけど」
「僕も燃えた。でも次対戦してたら、また千里にキスしてしまっていたかも知れない」
「さすがに今度やったら、ふたりとも除名されちゃうかもね。私は退学で」
「ああ、怖い、怖い」
 

「男子から女子に移動したこと誰かに何か言われた?」
「M高校の中嶋橘花ちゃんと少し話したくらい。彼女は私と対戦できるのが楽しみだと言ってた。こちらも身が引き締まる思いだけど」
 
「M高校だと松村(友子)もいたな?」
「うん。シューター対決だよ。橘花は直接的にはこちらの暢子とのフォワード対決になる」
 
「秋の大会でチラっと見ただけど、中嶋って貪欲にゴールを奪うね」
「自己流も究めたら凄いってのがあの子だと思う。ミニバス出身だけど所属していたミニバスのチームにそもそもバスケットが分かってる指導者がいなくてああいう欠点だらけのシュートの撃ち方になったと言ってた」
「フォームが間違ってても、それで得点してしまうのが凄い」
「うちの暢子もその点感心してた。どんな体勢からでも入れちゃうからね」
 
「他の人からは何も言われなかった?」
「そもそも男子チームに秋まで出ていた丸刈りの女子が私だったことにほとんどの人が気付いてないっぽい」
 
「確かに、女子なのに頭を丸刈りにして、男子チームに入っているというので注目されてしまった面もあったからな」
「3年生だったので、もう卒業するので出場しないのだろうとかいう勝手な噂が広がりつつあるみたい」
 

「ねぇ千里。千里の元カレのこと訊いてもいい?」
「いいけど」
 
「結局彼、どうすんの?進路」
「北大の医学部受けるよ。模試ではB判定」
「結局プロ野球には行かないんだ?」
 
「甲子園でBEST8だからね。1安打完封の試合とか凄かったし。ホームランも打ったし。それで日本ハムのスカウトさんが来たらしい。でもお断りしたって。彼としてはプロの一軍でレギュラー取れるほどまでの基礎的な素質は無いと思っているみたい。甲子園のマウンドで1番の背番号付けて投げられただけで充分だと言ってた」
 
「大学でも野球はしないの?」
 
「北大志望と聞いて、北大野球部の人も接触してきたらしいけど、大学で野球部に入るつもりもないって。6年間、医者の勉強に集中するって。その内草野球とかはやりたいって言ってたけど」
 
「なるほどねえ。でも高校でスポーツやってた奴の大半はそんな道だろうな。うちの山根さんも大学ではバスケしないと言ってたし」
 
その言葉を聞いて、千里は貴司が晋治の進路選択に自分のことを重ね合わせていること。だから敢えて、あまり話したことのない晋治のことを訊いてきたんだろうと思った。
 
「貴司は高校卒業後、どこか行くの? 大学に行かないならどこかの実業団に行くとか、あるいはbjリーグに行くとか」
 
「実業団は少し考えてる。でもbjはさあ。あれに入るとJBAの選手と一切接触してはいけないんだよね」
「ふーん」
 
「元々の友人であっても、電話やメールで話したり年賀状とかもNGで万一来たら送り返せっての」
「何それ〜〜!?」
 
「まあJBA側の嫌がらせだな」
「おとなげない気がするなあ」
「うんうん。だから高校や大学のバスケット選手とかとも接触できない。僕がもしbjに参加したら千里とこうやって話すこともできなくなっちゃう」
「嫌だよ、それは」
 
「僕も嫌。1年後まで千里と恋人でいられる自信はないけど、友だち関係に戻ったとしても、千里とは色々話したいし」
「うん。私もそう思う」
 
「もっともJBA側でもbjに同情的な人は結構いてね。数年後には歩み寄りも出てくるだろうね」
「それでも数年後か」
「ああいうのプライドで喧嘩してるから」
「確かに」
 

その晩、千里は叔母に2〜3ヶ月前から気になっていたことで、お願いをしてみた。
 
「あのね、あのね、私が今持っている女性ホルモン剤が年明けくらいで切れてしまいそうなの」
「ああ、やはり女性ホルモン飲んでるのね?」
 
「うん。それで実は私、その調達手段を持ってないのよ。でも切れちゃうと、私、男性ホルモンも少ないから、更年期みたいな状態になって、身体がいろいろまずいことになりそうで。精神もだけど」
 
「更年期障害は辛いみたいね」
「若い女性でも生理周期の黄体期はエストロゲンの数値が低くなるからPMSの原因のひとつは多分それだと思う」
 
「まあ確かにPMSがずっと続くのが更年期障害かもね。でも、今まではどうしてたの?」
 
(ここで千里が言っているPMSは月経前症候群 premenstrual syndrome のことだが、実は更年期障害 postmenopausal syndrome も略称がPMSである)
 
「偶然入手したのを少しずつ飲んでた。本来飲むべき量の3分の1くらいに抑えて。だから私ってまだ男性機能が完全には死んでないと思うんだ」
「あんた、去勢もしてないんだっけ?」
「うん」
「だってお医者さんが、男性器は無いという診断書を書いたって」
「あれ何かの間違いだと思う。診察された時は、お医者さん、私の性器に触ってたんだよ」
 
「ふーん。それでホルモン剤を調達するのに協力して欲しいってこと?」
 
「そうなの。女性ホルモンの入手には、私たちみたいな子の場合、まともに医療機関にかかって処方してもらう道と、勝手に個人輸入する道とがあるんだけど、医療機関で処方してもらうのは原則として20歳以上でないとダメなのよ」
 
「それはまた難儀だね」
「個人輸入する場合、書留で、必ず自宅で受け取る必要があるの。局留めはできないんだよね。本人確認があやふやになるから」
 
「それって違法ではないんだよね?」
「自分で飲む薬を自分で輸入するのは問題無い。でも個人輸入した薬を他人に売ったりしたら薬事法違反」
 
「なるほどね。だったら、私はそれが女性ホルモンというのは知らなかったことにしておいていい?」
 
「うん。お母ちゃんにバレた時は、ただのサプリか何かだと思ってたと言って」
「よし、そういうことにするか」
 
叔母としても少し後ろめたいものはあったのだろうが、千里の女性ホルモン調達に協力してもらえることになった。中学3年3学期もホルモン切れを起こして、けっこう自分でも辛かったので、今度は何とかしたいと思っていたのだが、回避のメドが付き、ホッとした。
 

 
女性ホルモン剤の調達のメドが付いたので、その日千里はエストロゲン、プロゲステロンを3錠ずつ飲んで試合に出て行った。このくらい飲むと心が安定するのを感じる。そういえば6月にアンチドーピングの検査受けた時は前日に6錠も飲んでたなと千里は思い出していた。
 
試合前のミーティングでこの試合では「無理するな」というのが通達される。道大会への進出は決まっており、1位か2位かは、トーナメントで有利になるかどうかだけの違いである。そこで暢子と千里は最初から最後まで出るものの、最初PGはメグミを使うなど、強い相手に主力以外の選手に経験を積ませること半分で行こうという話になる。
 
試合前の整列。橘花も友子もキリッとした顔をしている。こちらもみんな気合いの入った顔をしている。そしてスターティングメンバーは向こうも友子・橘花は入るものの、他は1年生の経験の少ない子を並べてきた感じだ。
 
ティップオフは控え組の長身選手同士で行い、M高校のボールで始まる。M高校の1年生PG伶子がボールを運んで来る。SGの友子にパスして友子が撃つが外れる。しかしそこに橘花が飛び込んで行ってリバウンドを取り自らゴールに叩き込む。試合はM高校の先制で始まった。
 
こちらも無理していないが向こうも無理しない感じである。あまり厳しいチェックはしないので、どちらかというとシュート合戦の様相になる。第2ピリオドまで終わって、52対50と点数は拮抗していたが、M高側は友子が18点・橘花が28点、N高側は千里が24点・暢子が20点と、ほとんどの点をこの4人で取っていた。
 
「お前ら、他の子に経験を積ませようとしてるのに」
「いや、相手のチェックが甘いから、楽にシュート撃てるんですよ」
「お互いにだよね〜」
「メグミはちゃんとポイントガードのお仕事してたよ」
「向こうの伶子ちゃんも同様だね」
 
第3ピリオドでは、M高校は友子・橘花を下げて代わりに茉莉奈や葛美が出てくるし、N高校も千里と暢子を下げて久井奈や留実子が出る。すると葛美と留実子が半分くらい点を取る感じになった。
 
第4ピリオドでは、双方とも主力を全員投入する。最終的には88対84で橘花たちのM高校が勝ったが、友子・橘花・千里・暢子、4人の得点が7割以上を占めた。試合終了後は和気藹々と握手したり抱き合う姿があちこちで見られた。千里も橘花・友子とハグしあった。
 
 
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【女の子たちの性別変更】(1)