【女の子たちの性別変更】(中)

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12月23日。土曜日ではあるが天皇誕生日で特進組の補習はお休みである。そしてこの日、Dawn River Kittens の音源製作をすることになった。制作したCDは谷津さんが紹介してくれた横浜レコードというインディーズレーベルから発売することになっている。孝子と鮎奈・蓮菜が学校側と交渉したのだが、メジャーレーベルからCDを出すのであれば歌手デビューということになるから「バイト」とみなさざるを得ない(特進組は本来バイト禁止で千里の巫女は例外的に認められたもの)が、インディーズからのリリースなら趣味の範囲と認めてくれたこともあった。
 
制作の指揮をするために、谷津さんの所属する∞∞プロの関連会社∴∴ミュージックという所の三島雪子さんという人が旭川までやってきてくれて、旭川市内の音響技術者さんと一緒に作業をしてくれるということだった。
 
蓮菜は三島さんの名前を知っていた。
「マリンシスタのマネージャーさんですよね?」
「あ、一時期してました。マリンシスタってメンバーもコロコロ変わっていたけどスタッフもコロコロ変わっていたんですよ」
 
三島さんはメンバーの名前を教えてくれということだったので、蓮菜が持っていたレポート用紙に全員名前を書いた。なりゆきで蓮菜自身が最初に名前を書いたのだが三島さんはその名前を見て
 
「へー。ことお・ほうらいさん?」
と読んじゃう。
 
「いえ、ほうらい(蓬莱)ではなく、れんな(蓮菜)です」
と言って、別の紙に《蓬莱》《蓮菜》と並べて書いて見せる。
 
三島さんはしばらくそれを見比べてから
「あ!違う字なんだ!」
と言った。
 
「連絡先はまた村山さんの携帯にすればいいかな?」
「あ、むしろ学校に連絡してもらった方がいいかもです」
と言って、学校の電話番号を書いておいた。
 

この日集まったのは、Dawn River Kittens のメンバー11人、前回のCD制作の実質的な指揮をしてくれた田代君、様子を見せてと言って押しかけてきた音楽コースの麻里愛、それに鮎奈の従姉妹で、東京に住んでいるもののたまたま旭川に住む父の家に来ていた月夜・美空という姉妹である。
 
月夜・美空姉妹の両親は離婚していて、普段は東京に住むお母さんの所で暮らしているのだが、時々旭川のお父さんの家を訪ねてくるのだという。 
「へー。じゃ田代君たちのバンドもCD作ったの?」
「うん。取り敢えず録音だけ。でも忙しいから冬休みに入ってからミクシング・マスタリングの予定」
「わあ」
 
「でも俺が書いた歌詞を蓮菜にだいぶ変更された」
「だって、そもそも日本語の文法が間違ってるし、誤字・脱字に単語の取り違えまであるんだもん。見てられなくてさ」
 

取り敢えず三島さんの前で収録予定の3曲を演奏する。雨宮さんが書いてくれた『子猫たちのルンバ』、千里が書いた『鈴の音がする時』、そして麻里愛が私の作品も入れて〜と言って提供してくれた『ユーカラ夜想曲』。
 
そしてすぐに三島さんが楽しい人であることが判明する。
 
「『鈴の音がする時』って何だか格好いい曲ね。さすが雨宮先生だなあ」
「えっと、それうちの千里の作品ですが」
 
「『ユーカラ夜想曲』も悠久の時を感じる。ほんとにオーストラリアの平原でコアラが戯れているよう」
「あのぉ、ユーカリと間違ってませんか?」
 
「『子猫たちのルンバ』は楽しい曲だよね。リオのカーニバルとかで踊ってもいいよね」
「それはサンバです」
 

3曲とも智代を中心に京子と千里が協力する形で11ピースバンドの編曲をしていたのだが、自分でも高校生バンドを組んでいるという月夜が
 
「横から口を出すのは何だけど」
と言って、色々と改善した方がいいのではという点を出して、田代君も「ああ、確かにそうした方がいい」
と言って変更が入る。
 
三島さんはそういう細かいことは分からないようであったが
「ああ、その方がきれいかも」
「うん。そこにソロが入ったら格好良いよね」
といった感じで、田代君たちの意見をだいたい追認してくれた。
 
「『鈴の音がする時』はその小型の鉄琴じゃなくてコンサート用のグロッケン使った方がいいんじゃないかな。この曲でのある意味主役だもん」
 
という意見が出て来て、スタジオの大型グロッケンシュピールを借り出す。 
「『ユーカラ夜想曲』はツイン・フルート、ツイン・トランペット、にしようよ」
という話になり、スコアを調整する。
 
「その構成は担当の移動があるよね」
と言って蓮菜が整理する。
 
「フルートは恵香と千里、トランペットは鮎奈と京子、グロッケンが私で、ヴァイオリンは孝子、リードギター梨乃、リズムギター智代、ベース鳴美、ピアノ花野子、ドラムス留実子」
 
「待って。この曲でライアは外したくない」
「うん。ユーカラ(アイヌの叙事詩)の世界観を出すのに竪琴は欲しいよ。本当はトンコリ(アイヌの竪琴)を使いたいところだよね」
 
「じゃ智代はライアを弾くとしてリズムギターどうする? あ、麻里愛ギター弾けない?」
「そんな弦が6本もあるようなの無理〜」
と麻里愛。
 
「じゃ、ベースにする?弦は4本だし。私がリズムギター弾くよ」
と鳴美が言う。
 
「4本でも無理〜」
「いや1本だけでもいいよ」
「うん。ベースはどれか1本だけで弾いちゃえばいい」
 
と言って、麻里愛にベースを持たせてみるが左手でしっかり弦を押さえきれないことが判明する。
 
「ヴァイオリンがあんなにうまい人がなぜベースの弦を押さえきれない?」
「だってフレットがあって邪魔なんだもん」
 
「フルートや龍笛が吹けてリコーダーが吹けないという千里並みに変だ」
 
そんなことを言っていた時、鮎奈が思いついたように言う。
 
「ね、ね、美空ちゃんベース弾いてくれない? この子、すっごくベースうまいから」
「へー」
 

美空が弾いてもいいよというので入ってもらうと、ホントにうまい。
 
「あのぉ、まさかプロということは?」
「いや、お姉ちゃんのバンドでベース弾いてるので」
「へー!お姉さんの担当は?」
「あ、私はキーボード」
「ほほぉ」
 
千里は美空の声を聞いていて、すごくきれいな声だな。でも凄く低い声だなと思った。正直こんな低い声は自分には出ない。
 
「じゃベースパートは譜面を参考にしながら適当にアドリブ入れて」
と田代君からのアバウトな指示。美空はOKOKと言っている。
 
それで合わせてみる。
 
「千里はこの曲ではフルートではなくて龍笛の方がよい気がする」
「うん。龍笛に変えて」
「了解〜」
 
更に合わせてみる。
 
「フルートを1本にしてしまうと寂しいな」
「麻里愛、フルートは吹けない?」
「あ、フルートは吹いたことある」
「私のフルートでよければ」
というので千里のフルートを麻里愛が吹いて合わせてみる。
 
「なんか、物凄く素敵な曲になった!」
と三島さんが感動しているふうである。
 
そういう訳でこの曲は総勢13人の女の子による演奏になったのである。 

それで3曲の録音を1時間ほど掛けて行った。
 
「あとはこれに君たちの歌を入れたらいいね」
と三島さんが言う。
 
みんな顔を見合わせる。
 
「すみません。歌は想定してませんでした」
「え?これ歌無いの?」
と三島さんが驚いたように言う。
 
「『鈴の音がする時』は一応歌詞があるのですがCDに入れる予定はありませんでした。他の2曲にはそもそも歌詞がありません」
 
すると田代君が言う。
 
「歌の上手い子4人くらいで歌おう。歌詞は蓮菜即興で書けよ」
「いいよ」
 
「歌のうまい子というと誰々だ?」
「私音痴〜!」
「私ピアノ弾けるのになぜそんなに歌が下手なんだと言われる」
などという声が出てくる。
 
「蓮菜、田代君のバンドでも歌っているんでしょ?こちらでも歌わない?」
と鮎奈が言ったが
 
「私より、花野子や千里の方が上手い」
と蓮菜は言う。
 
「ああ、確かにうまい」
「でもふたりともメゾソプラノだよね」
「ソプラノとアルトも入れたいな」
 
「ソプラノは麻里愛、歌ってくれない?」
「いいよ」
「アルトの子って誰だ。梨乃?」
「私下手だよー。私が歌うくらいなら、うちの猫に歌わせた方がマシ」
 
「美空ちゃんアルトだよね?」
「うん」
「美空ちゃん、歌うまい?」
「あまり自信無いなあ」
 
とは言うものの、ドレミファソラシドと歌わせてみると、物凄く正確な音程で歌う。
 
「美空ちゃん、もしかして絶対音感持ち?」
「私のは相対音感。出だしをまちがうとそのまま違う音で歌ってしまう」
 
「よし、アルトは美空ちゃん」
 

ということで、蓮菜がその場で2曲の歌詞を書き、京子と鮎奈で校正して、その間に智代・千里・孝子で四声のパート譜を作成した。
 
「まず練習、練習」
と言って歌うが、歌組の麻里愛・花野子・千里・美空、4人とも初見に強いようで、すぐに合ってしまう。
 
「じゃこれを収録〜」
 
録音済みの楽器演奏を再生してそれをヘッドホンで聴きながら、4人で歌った。念のため2回ずつ歌い、後で聴き比べて良い方を使おうということになった。 
「お疲れ様でした〜」
「では明日までにミキシング、マスタリングしますね」
「では1月1日発売の線で」
「すっごーい」
 

更に三島さんは美空を何だか勧誘していた。
 
「美空ちゃんだっけ? 東京に住んでるなら、よかったら気が向いた時でもいいから、うちの事務所に顔出してみない?美空ちゃんほどの歌唱力があったら、お仕事あるよ」
 
「おっ凄い」
 
しかしここで美空が爆弾発言をする。
 
「私、男ですけど、いいんですか?」
「はぁ!?」
 
一瞬全員が驚きの声をあげる。
 
「ほんとに男の子なの?」
と三島さんが戸惑い気味に訊く。
 
するとお姉さんの月夜さんが笑って説明する。
 
「この子、声が低音でしょ? それに小学校卒業時点では、ほんっとに胸が無かったし、まだ生理も来てなかったんですよ。それで中学に入る時、もしかして実は男ってことはないかって疑われて、精密検査受けさせられたんです。でも染色体的にもXXで女の子だし、性器も完全に女性で子宮も卵巣もあると診断されたんです」
 
「びっくりしたー」
と三島さん。
 
「もし男という診断になったら、おちんちん付ける手術受けてもらうかも、とか言われてちょっと期待したんだけどな」
と本人は言う。
 
「ああ、ちんちん欲しかった?」
「あまり欲しくもないけど、あればあってもいいかなとは思った」
 
「でも遺伝子的に男だからといって、それまで普通に女として生きていた人に無理矢理おちんちん付けちゃうというやり方には賛成できないなあ」
と蓮菜が言った。
 
「遺伝子より本人の精神的な発達が大事だよね」
と留実子。この手の話は千里にとっても留実子にとっても全然他人事ではない。 
「それで、その後生理は来たの?」
と花野子が訊く。
 
「中学に入ってすぐ来ちゃったし、その後、胸も膨らみ始めた」
と美空。
 
「千里も生理くるの遅かったよね?」
と蓮菜が千里に敢えて訊く。
 
「うん。私も中1になってから来たー。発達が遅いねと言われて女性ホルモン注射も何度か打たれたよ」
と千里は平然と受け答える。
 
「へー」
と一部に納得しているような声。蓮菜や鮎奈は笑っているが、美空が
「ああ。私もけっこう最初の頃、女性ホルモン注射打たれた」
などと言っている。
 
「でも遺伝子検査とか受ければ分かるけど、実は自分が染色体的には男ということに気付かないまま、女として生活している人って、わりといるらしいですね」
 
「そうそう。妊娠しないというので不妊治療に病院を訪れて分かったりする」
「それって本人も旦那もショックだよな」
「奥さんは男でしたなんて言われた日には」
「うん。だから病院によっては敢えて本当の不妊の原因を言わないこともあるらしいよ」
 
「昔はスポーツなんかで活躍してて、あんまり凄い成績なので検査したら男だったというので、記録なんかも全部取り消されたりした例もあるみたいですね」
 
「それも辛いね。世界中の人に知られている状態で、あんた男なんて言われたら恥ずかしすぎる」
 
「70-80年代頃は有名になる前の段階で怪しい子はさりげなく引退させたりしていたみたいだよ」
 
「でも最近は本人が女子選手として活動したいという場合、体格が女の体格であったら、認めてあげるケースも出て来ているみたい」
「ああ、こないだのオリンピックでどこだったかのバレーチームに元男だった人が入ってたらしいね」
 
「性転換してから数年経って、男だった頃の筋肉はもう落ちてるとかで認めたとか聞いた」
 
「そうそう。セックスチェックする意味は、男の強靱な肉体で女子の競技に出られちゃかなわんってことだから、普通の女の肉体なら構わないじゃんってことになってきているみたい」
 
それは自分もこないだ言われたなあと千里は思った。
 
「でも歌手なんかはスポーツよりハードル高いだろうね」
「声変わりした後で、女の声を出せるようになる人はそう多くないだろうからね」
「やはり声変わり前に去勢しちゃうしかないよ」
「昔のカストラートと同じだよね」
 
「あれ?韓国にニューハーフの人ばかり集めた歌唱ユニットがいたよね?」
「あれはエア歌唱だという説もある」
「あ、実際に歌っている訳じゃないんだ?」
 
「逆に男になりたい女の人は男性ホルモン注射することで声変わりが起きて男の声になるらしいね」
「だったら逆にFTMさんを集めた男声歌唱ユニットはありか」
「需要があるかどうかは別としてね」
 
「蓮菜は男になってみる気とかは?」
と田代君が訊く。全くこいつは。
「雅文が男と結婚したいというのなら考えてもいい」
と蓮菜。みんなは苦笑している。
 

「でも芸能界には、もしかしてこの人って噂のある人いますよね」
「某美人姉妹タレントの姉の方が男ではという説を聞いたことある」
 
「あれは2chのある板で書かれたジョークがネットで拡散したものなんだよ。私、偶然そのジョークが書き込まれた所をリアルタイムで見てる」
と三島さんが言う。
 
「ああ、ジョークだったんですか」
 
「着物が似合う某美人女優が男ではという噂は?」
「事務所の社長が笑い飛ばしてたよ」
 
「マリンシスタの歌い手やダンサーにも実はニューハーフさんがって噂ありましたよね」
「ごめん。マリンシスタに関する話は守秘義務で話せない」
「ほぉ」
「でも戸籍上男性である人が歌い手に参加したことはないよ」
「とっても微妙なお話ですね」
 

12月24日。貴司が留萌に出て来てくれて、クリスマスデートをした。
 
千里が旭川に来て以来、デートは旭川でするパターンが定着しているが、こういう時、貴司が旭川に出る時の切符は貴司が買い、帰りの切符は千里が買ってあげることにしている。
 
この日は午前中は雪が降っていたものの夕方には晴れてしまうという微妙にホワイトなクリスマスイブだったが、ふたりは午前中雪の降る中、街を散歩してクリスマス気分を味わった。
 
「去年デートした時はさすがにこれが最後と思ってたから、またデートできて幸せ」
 
「来年もしようよ」
「でも私・・・」
「もし声変わりしていても、デートくらいはしてもいいよ」
「そう?」
「千里がちゃんと女の子の格好して来るという前提で」
「私、声変わり来ても男装するつもりはないよ」
「だったら来年もデート」
「うん」
 
ふたりはあたりを見回してから、急いでキスをした。
 
「あのさ、もし千里がずっと声変わりしなかったらさ」
「うん?」
「千里が高校卒業するまで恋人でいることにしない?」
「ふーん」
 
「千里、東京のほうの大学に行くと言ってるし。北海道と東京で恋愛維持する自信はない」
「でもそもそも来年貴司が就職してどこか遠くに行くかも知れないよね」
 
「今の所札幌か旭川あたりの会社に就職したいと思っているんだけどね」
「じゃ、どちらかが道外に出ることになったら恋人関係解消というのでは?」
「うん、それでいいよ」
 

商店街を散歩してからゲームセンターで少し遊ぶ。バスケットゲームではまた白熱した競争をしたが、貴司が52対48で勝った。
 
「春にした時より貴司点数あげてる」
「春にした時より千里、僕に詰め寄ってる」
 
ふたりが凄いポイントを稼いだので周囲が注目している感じであった。少し離れてからお話しする。
 
「千里少し筋肉付いた?」
「夏の間、自転車通学していたので足の筋肉は発達してるなという気はする。でも関係あるのかな」
「そりゃ当然。シュートは全身で撃つんだから」
「そっかー」
 
お昼を取るのにファミレスに入ったら、相席でもいいですか?と訊かれる。貴司がいいですよ、というので案内してもらえる。
 
「クリスマスだもんねー」
「デートするカップル多いよね」
 
それでフロア係さんが
「お客様、相席をお願いしていいでしょうか?」
とカップルがテーブルに座っている所に声を掛けるが・・・
 
「あ、るみちゃん」
「あ、細川さん」
 
ということで、鞠古君と留実子のカップルであった。
 
「お知り合いでしたか?」
「うん。友だち友だち」
「ではご相席よろしいですか?」
「OKOK」
 
ということで同じテーブルに就く。
 

「るみちゃんが女装してるって珍しい」
「クリスマスくらい女の子になれって言われたから」
「ふだんは男でもいいけどさ」
 
「今日はどのあたり回ったの?」
「寒いねーと言って、屋根のある所にずっと居た」
「スポーツ用品店に電機屋さんにスポーツジムに」
「色気が無いな」
「空手エクササイズ楽しかった」
「鞠古と花和でやり合ったの?」
「うん」
「ハードなデートだな」
「そちらは?」
「こちらは買物公園通り歩いて、ゲームセンター」
「あ、ゲームセンターいいね。後で行こうよ」
 

やがて料理が来たので食べながら話す。
 
「そうだ。千里たちにも言っておいたほうがいいかな。うちの兄ちゃん、法的にも正式に姉ちゃんになったから」
「ん?」
「性転換手術したの?」
「性転換手術は10月にした。それで即性別変更を申請して、一昨日、認可の手紙が届いたって」
「へー!」
 
「でもよく就職1年目で手術を受けるための休暇が取れたね」
「勤め先の店長さんから、どうせ手術するなら早い内にやっちゃった方がいいって言われて。休みの間は無給だけど、一応手術代以外の貯金が50万円くらいあったから、何とかなるだろうと半ば見切り発車で手術を受けてきたんだって」
 
「すごーい」
「11月いっぱいまで約2ヶ月休んだ。ただ七五三の前だけ無理しない範囲でお仕事した」
「頑張るね」
 
「12月になってから復帰して。でも今のところ、1日4時間にしてもらっているらしい」

「少しでもお仕事して収入があれば、随分気持ちも違うよね」
 
「そうだと思う。お仕事がなくて無収入の状態で療養生活してたら、不安が大きくなって、それで回復も遅れるよ」
「そもそも性転換手術なんてしたら、ホルモンバランス崩れやすいだろうからよけい不安になりやすいんじゃない?」
 
「でも、るみちゃん、お父さん怒らなかった?」
「怒ってたけど、療養中に責めるようなこと言うなとお母ちゃんから釘を刺されて今のところは黙っているみたい」
「ああ、大変だね」
「私、全然他人事じゃない」
「ああ、千里も大変そうだね」
「千里、性転換しちゃったこと、せめてお母さんにだけは打ち明けといた方がいいよ」
「うーん・・・」
 

「ただいまあ」と言って貴司を連れて家に戻ると、美輪子の彼氏・浅谷さんも来ていた。
 
「こんばんはー」
とお互いに挨拶する。
 
「ちょうど良かった。クリスマスケーキ買ってきたんですよ」
と千里が言い、貴司がケーキの箱をテーブルの上に置く。
 
「おお」
「千里がお金出す係、僕が持つ係で」
「なるほどー」
 
浅谷さんがシャンパンを開ける。
「高校生だし、少しくらいはいいよね?」
などと言われて、千里と貴司もグラス1杯だけ飲んだ。
 
ケーキを食べた後で唐揚げでもしようということになる。鶏肉は買ってあったので、食べ頃サイズに千里が切って下味を付け、テーブルにフライヤーを持って来て揚げながら食べた。ハーブティーを入れて飲み、少しおしゃべりしながら、交替でお風呂に入った。全員入浴したところて゜
「じゃ、後はお互い不干渉で」
と言って、お互いの部屋に入った。
 

貴司が何だかそわそわしている。
 
「どうかした?」
と千里は貴司にキスしてから言った。
 
「今日もヴァギナのほうに入れていいよね?」
「え? だって私にヴァギナなんて無いよ」
「だって、こないだそこを使ってセックスしたじゃん」
「夢でも見ていたのでは?」
「でも、千里、性転換したんじゃなかったの?」
「そんなのしてないよ。私は男の子だけど」
「だって、お医者さんが肉体的に女だって診断書を書いたんでしょ?」
「お医者さんの勘違いだと思うなあ」
「えーー!?」
「ふふふ。気持ちよくしてあげるから」
 
と言って千里は貴司に抱きついてディープキスをした。
 

その夜、貴司は千里の口の中で1回、手の中で1回、スマタで2回と4回も逝き、最後はほんとに精根尽きた感じであった。
 
「だめー。もう立たない」
「まだ私は行けそうなのに。立たないおちんちんはちょん切っちゃおうかなあ」
「勘弁してぇ。だってセックスの時の運動量は男と女で大違いなんだから」
「ああ、そうかもね。私は男に生まれなくて良かった」
「千里、さっき自分は男の子だと言ってた」
「気のせい。これ何とか立たないの?」
「無理〜。次会った時に、またしてあげるからさ」
「いいよ」
 
「でも冬休みは千里、留萌に帰るの?」
「そのつもり。まだ何日になるかは分からないけど」
「留萌のどこでしようか?」
「高校生が怪しいことできるような場所が無いよね。旭川では友だちの話を聞いてると、カラオケ屋さんとかネットカフェで結構こっそりやってるみたい」
「それ見つかったら追い出されるのでは?」
「うんうん。ネットカフェでしようとしてて、追い出されたと言ってた子もいた」
「オープンスペースと大差無いからなあ、ネットカフェって」
「お店の人がモニター見てるからね」
 
「でもどこかでしたいな」
「ふふふ」
 

月曜日、冬休み前の全体集会・HRの後で部活に行こうとしていたら、化学の古川先生に呼び止められる。
 
「あ、千里ちゃん、放送委員だよね? ちょっと原稿読んでくれない?」
「はい」
 
女性の先生たちの多くは千里のことを他の女生徒と同様に名前で呼ぶ。 
それで職員室の奥の放送室に入る。内容は冬休みに入るにあたっての生徒への注意事項であった。
 
「美しい朗読だなあ。きれいに読むね」
と先生から褒められる。
 
「小学5年生で初めて放送委員選ぶ時にジャンケンで負けてやることになって。その後、中学に入ると、小学校でやってたみたいだからと言われて任命されて、高校に入ると、中学でやってたみたいだからと指名されて」
 
「ああ。放送委員とか、図書委員とかは、そうなりがち」
 
と言ってから先生は小さな声で
 
「でも千里ちゃん、声変わりがほんっとに来ないね」
「最近ちょっと喉の調子が微妙なんですけどね」
「あら、とうとう声変わりが来るのかしら?」
「最近低い声が出にくいんですよ。高い声は問題ないのですが」
「うーん。。。千里ちゃん、声帯が伸びるんじゃなくて縮みつつあったりして」
「そうかも」
 

それで部活をしていたら、今度は「村山千里さん、南国花野子さん、職員室まで来て下さい」という放送がある。この声は同じ放送委員の麻里愛だ。やはり、たまたま近くを通ったところを徴用されたのだろうか。
 
それで職員室に行くと、麻里愛が教頭先生の所に居て
 
「東京のプロダクションの人から連絡があったのよ」
 
と言う。てっきり谷津さんかと思ったら、三島さんの方であった。ほどなく英語部で残っていた花野子もやってくる。
 
「Dawn River Kittens の音源でちょっと調整したい所が出て来たんだって。それでリーダーの蓮菜と、歌を歌った花野子・千里・麻里愛・美空の4人にちょっと来て欲しいと。美空ちゃんの連絡先は誰が知ってるんだろ?」
 
「あ、あの子は鮎奈の従妹なんだよ」
 
と言って、教頭先生にことわって鮎奈に電話を掛ける。鮎奈はすぐ連絡を取ると言ってくれた。蓮菜にも連絡する。また美輪子にも電話して東京に行く許可を取った。それで、結局、千里は麻里愛・花野子・蓮菜と一緒に、その日の旭川空港からの最終便で東京に向かうことになった。また、美空は東京に戻っていたので、直接指定のスタジオに入ってもらうことになった。
 
「ところで向こうから指名があったみたいだから呼び出したけど、蓮菜がリーダーだったんだっけ?」
と私は疑問を呈した。
 
「うーん。リーダーって決めてないけど、確かに蓮菜は偉そうにしていた」
と花野子。
 
「もしかしてこないだ名前書いた時に先頭に蓮菜ちゃんが名前書いたからでは?」
と麻里愛。
 
「あ、確かに」
「まあいっか。蓮菜、決断力あるし」
「うんうん。漢らしい」
 
交通費は向こうが出してくれるということであったが、取り敢えず東京までの交通費を教頭先生が貸してくれた。
 

千里は女子制服に着替えて麻里愛・花野子と一緒に旭川空港に向かったのだが(蓮菜は別途自宅から空港に向かっている)
 
「あれ?千里ちゃん、今日の全体集会は女子制服で出たの?」
と麻里愛に言われる。
 
「ううん。男子制服で丸刈り頭で出てるよ。でも部活するのにウィッグ付けて部活の後はいつも女子制服に着替えて帰宅してるから」
「それ絶対変!」
 
空港で蓮菜と落ち合う。三島さんが予約だけ入れてくれていた航空券を購入する。セキュリティを通ってすぐに搭乗案内があった。結構ギリギリで動いている感じであった。
 
1時間40分のフライトで羽田に着き、京急と山手線を使って新宿に着いた。スタジオに入ったのは24時前であった。美空は先に入っていた。
 
雨宮さんが来ているのでびっくりする。
 
「どうせなら、もう少し売れるようにしてあげようと思ってね」
と雨宮さんが言って、アレンジの変更の要点を説明する。要するに雨宮さんの意向で変更が入ることになったようである。
 
「でもそれだと演奏も一部録り直さないといけないのでは?」
と蓮菜が言う。
 
「同じ機材を用意して、こちらで手配したミュージシャンに、元の演奏者に似た感じで演奏させたから、それをつなぐ」
 
「うーん。まあいっか。時間も無いみたいだし」
と蓮菜は妥協する。
 
その演奏分の録音は夕方から始めて、既に終わっているらしい。素早い! 
「でもよく機材が分かりましたね」
「美空ちゃんが全部覚えていた」
「凄い!」
 
「美空ちゃんが覚えていてくれて助かった。私、ギブソンとフェンダーの区別もつかないから」
などと三島さんは言っている。
 
「ただ声だけはどうにもならないから、あんたたちに来てもらったのよ」
 
ということで、変更された部分を歌ったのだが、
 
「やはりあんたたち素人だ」
と雨宮さんに言われる。
 
「すみませーん。下手で」
 
「いや、うまいよ」
と雨宮さん。
「ただ、土曜日の歌と声質が違うんだよ。これじゃつながらない」
「ああ!」
 
「きちんと訓練受けた人の声は、あまり変動しないんだけど、素人の悲しさで毎回違うんだな。仕方無い。歌は全部録り直そう」
 
「分かりました」
 
ということで、3曲全部を歌い直して録音した。
 

仮ミクシングして聴いてみる。確かに旭川のスタジオで作ったのとは見違えた感じがする。演奏に関してはあの時録音した部分が全体の9割を占めているのにちょっとしたアレンジの変更と編集でこうも変わるものなのか。
 
「凄く良くなったというのが分かります」
とみんな言う。しかし雨宮さんは悩んでいる。
 
「『子猫たちのルンバ』と『鈴の音がする時』の間奏にギターソロが欲しい。『ユーカラ夜想曲』の間奏にはフルートが欲しい」
 
と言って、その場で五線紙に音符を書いていく。
 
「ギター演奏を入れるんなら、ギタリストを居残りさせておけばよかったですかね。でもフルートもあるんですね。打ち込みしますか?」
などと三島さんが言うが
 
千里は
「ギターは琴尾ができるので彼女に弾かせてもらえませんか?フルートは私が吹きます」
と言った。
 
「楽器は持ってきてる?」
と雨宮さんが訊く。
 
「フルートは持って来ています。ギターはスタジオのを借りられますよね?」
と千里。
 
「あんた用意が良いね!」
 
それで旭川で収録した時に梨乃が使用していたのと同じフェンダーのギターを借り出してくる。
 
「梨乃が持ってたのと違うような」
と蓮菜。
 
「色が違うだけで同じものだよ」
と美空。
 
「へー!」
 
美空が設定を調整してから蓮菜に渡す。
「ありがとう!美空ちゃん」
 
それで雨宮さんが書いた間奏を千里と蓮菜が演奏して収録する。聴いてみると本当に凄く格好良い曲に仕上がっていた。
 
「よし。これで完成!」
「後はこれを再度ミクシング、マスタリング」
 
「9時までに出来る?」
と雨宮さんが技術者さんに言う。今時計はもう午前4時過ぎである。
 
「やります」
「じゃ、よろしく」
 
わあ、大変そうと千里たちは思った。
 

「君たちは、お疲れ様でした」
「雨宮先生ありがとうございました」
「OKOK」
 
「ホテル取ってるから、連れて行くね」
と三島さんが言う。
 
「ありがとうございます」
 
「誰か私と一緒のホテルに来たりはしない?」
と雨宮さん。
 
一瞬顔を見合わせたが、蓮菜が
 
「淫行で捕まりますよ」
と言うので、雨宮さんも笑って手を振って帰って行った。
 
「あの手の誘い文句はあの先生のジョークだから気にしないでね。それにあの先生、実際には女性ホルモン飲んでるから立たないという噂だから、ホテルに行っても撫でたり舐めたりされるだけだとは思うけどね」
と三島さんが言う。
 
「でも本気にしちゃう子いそう」
「うんうん。特に歌手デビューを熱望してる子とか。一晩お付き合いしたら有利にならないだろうかって考えちゃう」
 
「あの先生はむしろ自分と関係のある女の子は絶対に売らないみたいよ。公私の区別が厳しいんだよ」
と三島さん。
 
「なるほどー。結果的に逆効果か」
 
それで三島さんにホテルまで連れて行ってもらい、ひたすら寝た。
 

起きたのはもうお昼近くであった。麻里愛・蓮菜・花野子にメールすると、麻里愛は折角東京に出て来たので、CDや楽譜の物色をするということだった。帰りの航空券はオープンにしてもらっているが麻里愛は今日の最終便で旭川に戻ると言っていた。花野子は横浜の親戚の家に寄って行くということだった。また蓮菜は好きなアーティストのライブが偶然今夜あるのでそれを見て明日帰ると言っていた。
 
「東京までも行けないと思って諦めていたのよ」
「チケットは取れるの?」
「うん。それは取れる。あんまり売れてないから」
「なるほどー」
 
千里は何をしようかなと思い、とりあえずチェックアウト時刻ぎりぎりの12時になってからホテルをチェックアウトし、お昼を食べようと新宿駅の方へ行く。すると、バッタリと思わぬ顔に出会う。
 
「あれ、千里ちゃん」
「こんにちは、橘花ちゃん」
 
それは旭川M高校のバスケ部エース、橘花であった。
 
「千里ちゃんもウィンターカップ見に来たの?」
「ウィンターカップ? 今やってるんだっけ?」
「うん。24日から29日まで」
「わっ、見たい! 今日何時から?」
「今日はもう終わっちゃった」
「あらぁ!」
「もし良かったら明日、一緒に見に行かない?」
「うんうん。何時から?」
「第1試合が10時、第2試合が11時半。明日は準々決勝の4試合。AコートとBコートで2試合ずつ」
 
それで翌朝9時に千駄ヶ谷駅で待ち合わせることにして別れた。お金がいるなと思い、手近なATMで取り敢えず5万円降ろす。それから美輪子に電話して、ウィンターカップを見たいのでもう一泊してから帰りたいと告げる。
 
「ウィンターカップって何だっけ? フィギュアスケートか何か?」
「バスケだよ」
「ああ、それで。いいけど、お金足りる?」
「うん。取り敢えずATMで5万降ろした」
「どこに泊まるの?」
「何も考えてない。ネットカフェとかに泊まれるよね?」
「ホテルにしなさい!」
 
ということで美輪子が新宿のホテルを予約してくれたので、そちらに行ってチェックインし、宿代を払う。そのあと蓮菜に電話したら、一緒に渋谷にでも行かない?というので、そちらに移動して109を見た。
 
「でもなんて109なの?」
「東急がやってるから」
「そうだったのか! 語呂合わせなんだ! じゃ本当はトウキューって読まないといけないの?」
「いや、ここはイチマルキューでいいよ」
 

「でも今年東京に3度も来て、自由時間が取れたのは初めてだよ」
と千里は言った。
 
「ああ、前回もハードだったみたいね」
 
千里は9月に東京に来た時は夜中に到着して、夜通しLucky Blossomの練習を聴きながらスタッフの人たちとお話をし、翌日は夕方まで鮎川ゆまとひたすらお話をして夕方の便で旭川に戻っている。
 
11月に来た時は、またLucky Blossomの人たちやスタッフさんとお話をしてからファーストライブを見て、その日はホテルに泊まったものの、翌日は谷津さんから呼び出されて、大量にテーブルの上に置かれた歌手志願の女の子たちの履歴書の中から有望な子を探し出す、などというののお手伝いをしたのである。(この時のオーディションでデビューしたのが大西典香であるが千里は自分が拾い出した履歴書の人かどうかまでは覚えていない) 
109の他にも色々お店をのぞいた後、ライブに行く蓮菜と別れて千里はホテルに戻りお風呂に入って、8時頃に寝た。
 

ところが夜11時頃、電話で起こされる。
 
「あ、蓮菜、おはよー」
「千里の所は朝?こちらは夜だけど」
「どうしたの?」
 
「いや、私今夜はネットカフェに泊まろうと思ってたんだけどさ。身分証明書を出してというから生徒手帳見せたら、18歳未満は深夜の利用はダメって言われちゃって」
 
「ああ、そういうものなんだ! 私もネットカフェに泊まるつもりだったのに。どうすんの?」
「千里の部屋に泊めて」
「へ?」
 
ホテルの人に言って部屋をひとつ取る?と言ったのだが、ホテル代までは持ってないというので(ネットカフェで1000円で朝まで過ごす魂胆で、三島さんからもらった交通費もライブのチケット代やグッズ代で使い込んでしまったらしい)、結局「バレないよね?」などということにして、蓮菜は千里のホテルまでやってきた。
 
「私、フェイスタオルの方には手を付けてないから、お風呂入って身体はフェイスタオルの方で拭くといいよ」
「サンキュー、助かる」
 
蓮菜がコンビニでおやつを大量に買って持ち込んでいたので、結局それを食べながら1時頃までおしゃべりしてから、同じベッドに並んで寝た。蓮菜はライブでかなり興奮したようで、楽しそうに公演の内容を話していた。
 
「ところで千里はレズっ気は無いよね?」
「ないつもりだけど。蓮菜は?」
「ないつもりだけど、寝ぼけて千里を襲ったらごめんね」
「うむむ。でも田代君とは何回くらいしたの?」
「8回した。千里は?」
「こないだのクリスマスの時が6回目」
「まあクリスマスはするよね」
「蓮菜たちは?」
「したよ」
 
「でも札幌と旭川だと交通費がたいへんでしょ?」
「そうなのよね〜。お小遣いあまり無いし。千里たちも大変でしょ?」
「うん。だいたい旭川でデートすること多いから、貴司が来る時は自分で払って帰りは私が切符を買うようにしてる」
「なるほどね。私たちは旭川と札幌で交互に会ってるんだよね」
「なるほど、なるほど」
 
お互いの恋愛のことを話している内にいつの間にか眠ってしまっていた。その晩は猫がダンスしている夢を見た。
 

朝起きたら、蓮菜はまた詩を書いているようである。
 
「お早う」
とだけ声を掛けてから、部屋の外に行き、お茶を2つ自販機で買ってきて、ひとつ蓮菜の前に置いた。
 
「さんきゅ」
 
眺めていると蓮菜は校正をしている最中っぽい。
「恋歌だね」
「うん。昨夜、デートの交通のこととか話したでしょ? それでちょっと書いてみた」
 
レターパッドの一番上には『君に続く道』というタイトルが書かれている。 
「これ仕上がったら、また曲を付けてよ」
「うん、いいよ」
 

コンビニで朝御飯を買って来て食べる。千里がバスケットのウィンターカップを見に行くと言ったら、蓮菜も見ようかなというので、チェックアウト後、一緒に千駄ヶ谷の駅まで行った。少し待つと橘花が同じM高校1年バスケ部の伶子と一緒にやってくる。
 
「そちらもバスケ部だっけ?」
「あ、こちらは彼氏がバスケ部」
「ほほお」
「千里も彼氏がバスケ部だよね」
「ああ、その件は北海道中のバスケ関係者が知っている」
 
「でも、試合中にキスした丸刈りの女の子は亡くなったという噂も広がっている」
と伶子が言う。
 
「えーー!?」
「まあ、こないだの新人戦になぜ出てなかったのかというのから、そういう話に発展したんだろうね」
と橘花が笑いながら言う。
 
「それでN高女子チームで今回活躍していたシューターはその人の妹だという噂」
「亡くなった原因は癌で、丸刈りにしてたのはその治療の為だとか」
 
「人の噂って怖い!」
 
 
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