【夏の日の想い出・ボクたち女の子】(5)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-10-03
電話が鳴っているのに、誰も出ない。彼は事務所を覗いてみたが、あいにく全員席を外しているようだ。彼は“気が重かったものの”編集室を出て、事務室の電話を取った。
「大変お待たせしました。HTF制作・制作部でございます」
「電話取るの遅いよ!」
「大変申し訳ありません」
「美女(きら)部長いる?」
「大変申し訳ありません。席を外しておりますが」
「じゃ伝言しといてよ」
「はい。承ります」
「『三度伯爵の朝食』で撮影場所に使う予定だった、レストランがこないだの地震で崩壊してしまったらしいんだよ。それで代替場所について打合せたいから、連絡欲しいって」
「承知いたしました。そちら様は、##放送の鶴岡部長様でしたでしょうか?」
この声には聞き覚えがあったのである。
「うん。そう。ごめん。言い忘れた。君の名前は?」
「わたしでございます」
「いや、だから名前を訊いているんだけど」
「えっと・・・」
と彼が困っていたら、そこに部長秘書の黒部が戻ってきた。
「少しお待ちください」
と彼は言うと、電話を保留にしてから、黒部を呼び止め、手短に用件を伝える。
「じゃ私がお返事します」
「助かる」
それで黒部は電話の保留を解除して受話器に向かう。
「お待たせしました。美女(きら)の秘書・黒部でございます。『三度伯爵の朝食』の撮影場所の件、確かに承りました。美女はあと1-2時間で戻ると思いますので、すぐ連絡するよう申し伝えます」
「うん、頼むよ」
と言って、鶴岡は電話を切った。
「ありがとう。助かったよ」
と渡司監督は言った。
「だいたい電話口では監督のお名前通じないですよね〜」
「渡司(わたし)です、と言うと、だから誰?と言われる」
「いっそ苗字を変えます?」
「苗字は簡単には変更できないよ」
「たとえば、私(わたくし)のお婿さんになってくれるとか」
「そういうのあまり安易に言うと、本気にする男もいるよ」
と渡司は軽くいなしておいた。
アクアは8月20日に20歳になった誕生日の記者会見で、自分の両親が2003年に事故死した、高岡猛獅と長野夕香であることを明らかにしたものの、そのこと自体に対する反響はあまり無かった。
ただ、そのことより、彼女(彼?)が出生届けを出されていなかったために戸籍を獲得するまでに大きなドラマがあったことがかなり話題になった。そこで、この話を映画化しようという動きが出てくる。
いくつか動きのあった所がお互いに調整しあった結果、独立系の番組制作会社HTF制作が制作することになった。HTF は Hakusan-Tateyama-Fujisan で日本三名山の名前を連ねたものである。
ここは以前、アクアが小学1年生の時に手術を受けた際のエピソードを映画化した『アクア2008-奇跡の邂逅』(2017.7公開)を制作している。その時の監督・溝口さんは独立して別の制作会社アインガング(Eingang) を設立していたので、HTF制作の制作部長・美女(きら)は、若い監督・渡司条時に白羽の矢を立てた。
映画のタイトルは『私を求めて-アクア2008序章』である。配役はこのように発表された。
佐藤翌桧(アクア相当)白雪みずほ(小2)
佐藤涼香(長野支香相当)小野寺イルザ
佐藤幸子(長野松枝相当)橋本一子
佐藤道香(長野夕香相当)山口梓
近藤竜也(高岡猛獅相当)暁昴
室田晩成(上島雷太相当)高橋和繁
歳浜流礼(雨宮三森相当)鮎川ゆま
水原志摩(志水照絵相当)原野妃登美
水原研二(志水英世相当)大林亮平!
辰奈弁護士:山折大二郎
バリバリ関係者を起用している。山折大二郎は上島雷太の(自称)一番弟子。小野寺イルザと原野妃登美は“上島カズン”。高橋和繁も“上島カズン”のAYAの夫。鮎川ゆまは雨宮三森の弟子。橋本一子は海野博晃の妻で、海野率いるナラシノエキスプレスはワンティスのライバル・バンドのひとつだった。一子自身、ワンティスがレギュラーになっていた番組の司会を務めていた(海野との結婚はワンティス活動休止後)。
そして極めつけ、アクアの役を務める白雪みずほはアクアの三従妹違いである。
そして前回の映画と違って今回はギャラの高い人が多い!前回の映画の制作予算はわずか2000万円であったが、今回はどう見てもギャラだけでその10倍を突破している。
雨宮三森役の人選には実は苦労した。最初女優さんを候補にあげたら雨宮が
「私は男なのに女の俳優を当てるなんて失礼ね」
などと言う。それで男性の俳優を当てたら
「まさか男みたいな声で演じたりしないわよね」
などとおっしゃる。
どうしろと言うんじゃ?と困り、実は私の所に美女部長から相談があった。それで私がゆまを推薦したら、美女さんも「それはいい考えだ」と言う。雨宮先生に照会すると「ゆまならまあいいか」と納得してくれたのである。ただし、私はゆまに睨みが利く三宅先生から「撮影中禁酒」を厳しく言い渡してもらった。
一時的に雨宮役を頼まれていた高橋和繁さんは
「女装せずに済んで良かったぁ」
と言っていた。彼は上島雷太役に回ることになる。
また最初に頼まれていた山口梓さんは長野夕香役に回った。
制作発表記者会見には、HTF制作の美女(きら)部長、渡司監督、出演者の小野寺イルザ・橋本一子・原野妃登美・高橋和繁が並んだ。
美女部長が出演者をPowerPointのスライドで紹介した上で、
「監督は“わたし”か務めます」
と発言すると、記者たちの間にざわめきが起きる。
「美女(きら)さんご自身がメガホンを執られるんですか?」
もし美女部長自身が監督を務めるなら、おそらく20年ぶりくらいになる。
「違う、違う、監督は“わたし”だよ」
「やはり、美女さんご自身が?」
「いや、そうじゃない」
と言って、美女部長は渡司監督を立たせ
「彼の名前が渡司(わたし)なんだよ」
とPowerPointのスタッフ一覧の所を探し出して表示した上で彼の名前のところをマウスで指し示した。
記者たちの中で渡司監督の名前を知っていたのは3〜4人で彼らはさっきから笑い転げていた。ほかの記者たちはやっと意味が分かったが、しばらくざわめきはやまなかった。
美女部長が渡司監督を紹介する。
「渡司条時(わたし・じょうじ)君は、武蔵野美術大学の映像学科を出た後、2年間東海ピクチャーに勤めて山田勲監督の下で撮影助手を務めました。東海ピクチャーの倒産後、アメリカに渡り、ハリウッドのレッドリバー・ムービーズに入りました。ルナ・ビールマン監督の下で最初は下働き、やがて撮影技師に採用されてGeorge Watershootの名前で『ハムレットの朝食』や『パンが無かったらナンを食べよう』などといったユーモア映画の撮影者を務めました」
と言うと、記者たちの中から歓声にも似た声が起きる。
「昨年春に、コロナの流行で帰国して、ΛΛテレビさんの『白い壁』、◇◇テレビさんの『魔仁子の結婚』でディレクターを務めています」
記者たちもそれだけの実績があれば監督を務めるのも期待していいかもという空気になったようである。
橋本一子(48)が発言した。
「今回の映画の出演者さんは、みんなおとなだもん。ちゃんと監督の指示を守って、いい映画を作ってくれますよ」
笑顔で橋本一子がそう言うと、記者たちは頷いていた。要するに彼女が睨みを効かせるから、若い監督にはあまり雑音を気にせず、思い通りに撮影を進めてもらいたい、ということだろう。彼女の発言で記者たちの空気は完全に安心感に変わった。
龍虎(アクア)は8月20日に20歳に到達したので、長野支香による未成年後見人も終了した。支香はただちに、龍虎の本籍地(さいたま市)に後見人終了の届出を出したが、この他に2ヶ月以内に、財産収支報告書・引継書を提出する必要がある。これが物凄く大変であった。
龍虎の資産は、預貯金・投信のほか、株式や債券、不動産、金やプラチナなど様々な形になっており、しかもその量がハンパではない。日本円だけでなく、ドルやユーロ、また仮想通貨(ビットコインやイーサリアムなど)になっているものもあって、その総額の評価については、半年前からプロの証券マン5人による評価専門チーム!を作って調査・評価していったのだが、途中で人数を10人に増やしている!!
結局評価は9月末に完了し、支香は2000ページを越える分厚い引継書を裁判所に提出した。これをチェックする裁判所の事務官も大変だろうなと思った。実際にはチェック不可能だと思う。
プロが運用していただけあって、龍虎の資産は本当に物凄い金額になっているらしい。しかし彼自身は、財産運用チームから毎月振り込まれてくる1000万円の“お小遣い”を使う暇もなく、質素な生活をしている。
Mは実際には毎月20万円程度で生活している。食材調達用に彩佳に毎月10万円渡している(正確にはMとFが5万ずつ出している)ので、そのお金で彩佳・宏恵・桐絵が食材を買い出しに行き(一部は“大地を守る会”などの宅配も利用しているし、女子寮からも食材を分けてもらっている)、それで彩佳たちに食事を作ってもらっている。着る服などはほとんどファンからのプレゼントで間に合っている!
Fもやはり毎月20万円程度で生活している。自身の眷属である《りっちゃん》(竜崎由結)に買物を頼んでいる。彩佳が“大地を守る会”を“田代龍虎”の名前で代々木のマンション(18F)で受け取っているので、Fは“らでぃっしゅぼーや”の宅配を“長野龍虎”名義で八王子の家で受け取っている。それで自身でご飯を作っているが、実は彩佳が毎日“2人分”の食事を用意してくれているので、彩佳が持って来た食事の半分をこちらに転送して食べていたりもする。(仕事が遅くなった時は八王子まで帰らず、代々木の10階の部屋で食事をして寝ることもある。10階の部屋を知っているのは現時点ではFとMに和城理紗・竜崎由結のみ)
理史が八王子に泊まることが多くなってきているので、コスモスは2人と会って「きちんと婚約するまでは、泊まる日は月に8日以内にしてほしい」と要請。2人はコスモスにそれを守ることを約束した。
(理史が龍虎にダイヤの指輪を贈ったことはコスモスも知っているし“黙認”している−町田朱美と平野啓太の関係は“黙殺”状態である)
しかし理史の“荷物”を収容するため、龍虎Fは八王子の家の自分の部屋の西隣(敷地入口から見たら奥側)に自分の部屋と同じサイズの部屋を増設してしまった!それで理史はそこにかなりの荷物を搬入した。
理史の部屋と龍虎Fの部屋は、襖(ふすま)だけで区切られている。理史の部屋に入るには、龍虎Fの部屋を通過するか(理史は龍虎Fの部屋の鍵も持っている)、あるいは南渡り廊下→西側の廊下と回り込んで向こう側から入るかである。
基本的には回り込むのが面倒くさいので、だいたい龍虎Fの部屋を通過する。回り込むルートを作ったのは、コスモスへの言い訳である!
それで理史は平日は川口市のマンションに帰宅するが、だいたい金曜日の晩には八王子に行き、月曜日の朝、そこから出勤する。要するに週末同棲だが、実際には理史も龍虎も忙しいので、なかなかイチャイチャする時間は取れない。
ところで、この春に結婚した私の従姉・明奈であるが、夫の高岡亀平さん(♪♪ハウス白河夜船社長の長男)がこれまで大阪→北海道→福岡と、数年単位で転勤してきているので、1〜2年の内には、またどこかに転勤する可能性があったのだが・・・
彼の勤めている会社が10月1日付けで、九州電力と共同で、太陽光パネルや、太陽光を集光して光ファイバーで導き屋内照明にするシステム、家庭用風力発電システムなど新エネルギーのシステムを製造販売する会社を設立。彼はこの会社の技術課長に就任することになった。
つまり・・・彼は当面福岡から異動することは無い!
(どうも福岡で地元の女性と結婚したことから、この事業に投入されたようである)
明奈は内心、転勤族の彼氏と結婚することで、親元から離れられると、もくろんでいたようだが、少なくとも10年程度は異動することはなくなったようである!
姉の純奈の夫・布施暢彦さんは、北海道の出身で、北九州支店に転勤してきてからもう5年ほど経つので、そろそろ次の転勤の可能性がある。
「うちのが転勤になったら、母ちゃん父ちゃんのお世話よろしくねー」
などと純奈は妹に言っているらしい。
ちなみに白河社長(61)は自分の子供に事務所を継承させるつもりは無い。親子継承は頑張ってくれたマネージャーさんたちをないがしろにする行為だと彼は言っている。つまり適当な年になった所でマネージャーの誰かを社長にするつもりなのだろう。それで亀平さんは化学製品の会社に就職したし、弟の寿成さんは銀行に勤めている。彼も転勤族で、東京→仙台→福岡→金沢と2〜3年おきに飛ばされている。福岡で結婚した奥さんと現在は金沢暮らしである。
(要するに兄弟とも福岡の女性と結婚した)
常滑真音主演のドラマ『Girl from West』は9月7,14,21,28日と全4回の放送が終了。視聴率はひじょうに良かった。原作の筋を大切にし、変な結論を出したりせずに、微妙な三角関係を続けていく状態で終わっていたのも好感された。この手のドラマではしばしば原作を無視して、どちらかとくっつけたりしがちてある。そして、舞音は“セリフのある役”でも充分演技力が高いことを示した。
舞音は休みを取る間もなくお仕事をしていた。
7/19-8/10 熊谷で音源制作
-8/21 ライブ準備
8/22 ネットライブ
8/23-30 『Girl from West』撮影
8/31 ネットフェス
9/01-30 タロット制作
10/01-31 『八犬伝』制作
『八犬伝』制作中の10月13日(水)には、先日のアルバムからのシングルカットを含む、舞音の8枚目のシングル『人魚のスカート/犬と猫のルンバ』が発売された。4曲入りのマキシシングルである。
『人魚のスカート』
『犬と猫のルンバ』
『マネが布団でフットンだ!』(extended)
『くろ猫のサンバ』(carnival mix)
後の2曲がアルバム『くろ招き猫』からのシングルカットである。『マネが布団でフットンだ!』は、アルバム用のMVを制作していた時、編集でカットしていたものをかなり復活させ、演奏時間が5分を越える長い曲になっている。歌詞もかなり増えているが、これも元々あった歌詞である。
『くろ猫のサンバ』は“武蔵村山サンバ隊”というサンバチームの人たちと信濃町ガールズの三田雪代・太田芳絵・斎藤恵梨香・大仙イリヤの4人がこの曲にあわせてサンバを踊るシーンが収められている。信濃町ガールズの4人は全員黒猫の着ぐるみを着て躍っている。
『犬と猫のルンバ』は、舞音の楽曲ではおなじみ未来居住さんの作詞で福沢聖子(松本花子の舞音専用システム)作曲の作品。これは舞音が白黒ぶちの犬の着ぐるみを着て。水谷姉妹が黒猫と白猫の着ぐるみを着て、一緒にルンバを踊っている。
むろん『黒猫のサンバ』(水野歌絵作詞・琴沢幸穂作曲)へのアンサーソングである。
『人魚のスカート』はノノ・パパイヤさんの新しい製品“人魚のスカート”のイメージCMソングである。
CMでは冒頭、人魚(演:常滑舞音)がお店に
「私に合うズボンを下さい」
と言って入ってくる。ところが人魚にはズボンが穿けない!
それで店長(花咲ロンド)が
「お客様、スカートではいかがでしょう」
と言って、マーメードラインのスカートを出してくる。
するときれいに穿くことができたので
「嬉しい。これで王子様とデートしよう」
と言って、出て行くというストーリーになっている。
CMでは例によって色々な人が人魚の下半身がお魚になっているコスチュームを付けてこの“人魚のスカート”を穿いている。
登場したのは、原町カペラ・石川ポルカ、町田朱美・東雲はるこ・宮村尚子(この3人は『人魚姫』の出演者)、馬仲敦美、松梨詩恩と水森ビーナ!岡原襟花、恋珠ルビー(なにげに『シンドルバッド』の出演者)、アクア!!、UFOの3人。
更にWADOの央我君まで、フェイクバスト(と思う)に貝殻ブラを付けて、この人魚のスカートを穿いてくれて、WADOのファンの女子たちが
「きゃー、可愛い!!」
と悲鳴をあげていた。
「央我君って女装が似合いそうって前から思ってた」
という声が結構あがっていた。
そういう訳で今回のCMも出演者が豪華なので話題になったのである。シングルのMVでは出演者を§§ミュージック(と♪♪ハウス)のタレントさんの分だけにして編集していた。
ノノパパイヤのCMは10月頭から流れていたのだが、舞音のシングルは§§ミュージック内部の“発売衝突回避”の調整の結果10月13日に発売された。デイリーでは1位を取ったのだが、10/18発表のウィークリーでは2位に沈んだ。舞音のシングルがウィークリーで1位を取れなかったのは、集計対象外だったファーストシングル以来のことである。
この件は後述する。
五反野の女子寮では、7月13日から、2号館の建築工事が行われていて、一応完成は11月中旬の予定なのだが先行して地下駐車場が完成したので、10/11に引き渡され、早速供用開始した。
女子寮で車を使うのは高校を卒業しているメンバーだけなので(高校在学中は免許を取得しても原則として運転禁止)、去年くらいまでは敷地内の空いているところに適当に駐めていた。しかし今年はその高卒以上のメンバーも増えてきて駐車スペースが実は足りなくなってきていたのである。それで近隣の駐車場なども利用して、結構苦しい運用をしてきた。
そこで今回工事をするのを機会に地下駐車場を作ることにした。
地下駐車場は地下3-4階に相当し、出入りはカーエレベータを使用する。使うのが若い子ばかりなので、壁にぶつけたりする子は居ないだろうということで、この選択になった。地上に駐めるのは原則としてマネージャーやSCCのドライバーによる送迎などのみになる。但し、朝の通学時間帯は、地下駐車場でドライバーさんは待ち、寮生が乗車してから、カーエレベータで外に出て学校に向かうという対応を取る。カーエレベータは表側と裏側に2基×2セット作っている。混雑時間帯は上行きと下行きを分離し、送迎車は寮の裏側のエレベータで降りて、表側のエレベータで出て行く。
ともかくもこれでかなりの台数が駐められるので、近隣の駐車場の契約は今年いっぱいで解約することにした。
ΛΛテレビの昔話シリーズで、9月11日には新里耕児君主演で『ブーツを履いた猫』が放送された。“猫”は、14歳の大内小猫ちゃんが着ぐるみを着て熱演してくれた。この小猫の猫が、可愛かったというのでかなり評判となる。完璧に主役を食っていた。
9月25日の『銀河鉄道の夜』はUFOの主演なので、ファンたちがストーリーなどほとんど気にせず!熱い声援を送っていた。視聴率は物凄かった。アクア版シンデレラ、同浦島太郎、七浜宇菜主演ヤマタノオロチに次ぐ、このシリーズ4位の視聴率をあげた。
9月11日、大内小猫ちゃんの猫の演技が素晴らしかったのを見た花ちゃんは、ドラマを見終わったら即、コスモスに電話した。
「八房役なんですけどね」
「うん。昨日C大学に行って、犬のロボットの動き見てきた。あれは結構よくできてるよ。あれなら使えるんじゃないかと思うんだけどね」
「八房は舞音にやらせましょうよ」
「え〜〜〜〜!?」
「『犬と猫のルンバ』の犬の着ぐるみも似合ってましたよ」
と花ちゃんは言った。
10月9日の『ヘンゼルとグレーテル』は、WADOの主演で若春君が兄のヘンゼル、淳紀君が妹のグレーテルを演じたが、淳紀君の女装が物凄く可愛い!というので、ひじょうに受けた。
「こんなに可愛くなるなんて、もう淳紀君はこの後、女の子キャラでもいいんじゃない?」
「淳紀君を私のお嫁さんに欲しい」
などといった少し興奮気味のコメントが多数付いていた。
なお、残りのメンバー、大児と央我は魔女のところに囚われていた他の子供という役柄で出演していて、4人で協力して魔女を倒すというストーリーになっていた。ちなみに大児は男の子、央我は女の子の役をしていた。
またこのドラマでは、淳紀君と央我君が女の子のような声で話していたが、恐らくボイスチェンジャーを使っているのだろうと、みんな言っていた。
央我君はノノパパイヤのCMでも今月初めから“貝殻ブラをつけた人魚”のコスプレを披露していたので
「本当に央我君は女装が似合うね〜」
「淳紀君と央我君が女の子になって、男女2人ずつのユニットになってもいいんじゃない」
などというコメントも入っていた。
一週間後の10月16日(土)、WADOの新しいCDが発売されたのだが、ファンクラブの会報でも事前のCDタイトルが「未定」になっており、そもそも発売日が10/13の予定だったのが10/16に変更されたので、制作が遅れたのだろうなと多くのファンが思っていた。だいたい人気ユニットのCDを土曜日に発売すること自体が異例である。通常は統計が有利になる水曜日に発売する。
このCDの発売に関してWADOは前日の10月15日(金)に記者会見を開きますという告知をしたので、20組ほどの芸能記者たちが、記者チケットを発行してもらい、都内のホテルから行われたネット記者会見に参加した。この様子はネットを通して一般の人にも公開された。
会見場に4人が全員女装!で入ってくるので、記者たちもざわめくし、ネットで中継を見ていた人たちも、あるいは笑い、あるいは首を傾げていた。
4人はソーシャル・ディスタンスを置いて座ると、リーダーの若春が
「私たちの記者会見に接続したり、閲覧してくださってありがとうございます」
と言うが、その声が女の子の声のように聞こえるので、また騒然とする。
「それで今回の私たちのシングルですがタイトルは『ぼくたち女の子』です」
と言って、若春はPowerPointのスライドを表示させる。
『ぼくたち女の子』cw『スカート大好き』
というのが表示されるので、記者たちもネットで見ていた人たちも大爆笑となる。ここでみんな、彼らがこういうタイトルの曲をリリースするのに、わざわざ女装したのかと思ったのである。
「それで私たちは全員女の子になったので、名前も改名しました」
と言って、若春は“改名表”まで見せる。
W 若春(わかはる)→若南(わかな)
A 淳紀(あつのり)→淳子(あつこ)
D 大児(だいじ)→大菜(だいな)
O 央我(おうが)→央花(おうか)
「全員名前の先頭の音は変わってないんですよね」
と淳紀(淳子?)が補足する。彼も女声である。
「だから私たちのユニット名はこれまで通り WADOで」
と大児(大菜?)が言う。彼も女声である。
「名前の後ろの方が変わっただけだもんね」
と央我(央花?)。彼も女声である。
記者から質問がある。
「皆さん女の子のような声の出し方がお上手ですね。もしかして今回のシングルは全部女の子のような声で歌ったんですか?」
「はい、そうです」
「私たちは女の子になったので、今後は女の子の声で歌います」
みんな“女の子になった”はジョークだと思っている。
「私たちは全員、中学生の頃に声変わりによって、それまでの女の子の声にも聞こえる声を失い、男の子の声になってしまったんですけど、1年ほど前からボイストレーニングに通って、全員女の子の声を取り戻しました。ですから、私と淳子がアルト、大菜がメゾソプラノで、央花がソプラノになります」
と言って、4人はその場で彼ら(彼女ら?)のヒット曲『橋を架けよう』を女声四重唱で歌ってみせた。
本当に女性4人で歌っているように聞こえるので、記者からもネットの閲覧者からも拍手が起きる。
みんなここまでは笑いながら見ていた。
「一応経緯を説明します」
と若春(若南?)が言う。
「私たち4人はデビューしてから4年間は性別を変更しないという契約をしていました。その期限が昨年6月に切れたので、私たちは各々自分の本来の性別に戻ることにしました。私たちは昨年7月に全員睾丸の除去手術を受け、女性ホルモンの摂取を始めました。それで現在、私たちは4人ともBカップからCカップ程度のバストがあります。それと同時にボイトレに励み、私たちは全員女声を取り戻しました」
記者席がざわめく。みんなひょっとしてジョークではなかったとか?と考え直し始めたのである。ネットで見ている人たちも多くは混乱している。
「そして今年7月。5日に私、6日に淳子、7日に大菜、8日に央花が性別再設定手術を受けて、全員女性になることができました。すぐに性別取り扱いの変更と改名を家庭裁判所に申請し、9月上旬に全員認可されました。それで私たちは全員、法的にも女性になることができました」
と若南(元若春)は説明する。
記者が遠慮がちに質問する。
「もしかして本当に性転換なさったんですか?」
「はい、最初にそう言ったはずですが」
ネットで見ていたファンたちから多数の悲鳴があがる。ショックで混乱している様子の子もある。
「これが証拠です」
と言って、全員パスポートを取り出して見せた。
パスポート番号や本籍地などはマスキングされているが、全員 名前が女性名になっているし、SEX:F と記載されているのが分かる。発行日は全員10月5日である。4人同時に新しいパスポートの発行を申請したのだろう。
記者たちがたくさん質問するが4人はそれに丁寧に答えていった。質疑応答は2時間以上に及んだが、ネットを通した視聴者はどんどん増えて行った。
この件は全員が性転換したということが判明した時点で速報がネットに流れ、その後情報を追加して続報も流れた。
若南はファンクラブについても触れて
「ファンの皆様には唐突な私たちの性別変更は、申し訳無く思っています。ファンクラブを解約したい方は、私たちのホームページに掲載しております登録解除フォームをダウンロードして、記入の上送っていただきましたら、今年度の会費を全額Amazonの商品券で返金させていただきます」
と述べた。
淳子は言った。
「私たちは4人とも物心ついて以来、自分は女の子だと思っていました。それなのに男の子のアイドルとして、活動していたのは、皆さんを欺しているみたいで、凄く心苦しかったです。もうこれ以上欺し続けてはいけないと思い、法的な性別もちゃんと女性になったこの機会に、私たちの本当の性別についても、発表させていただきました」
彼女は更に言う。
「性別の移行はもっと簡単にできたらいいと思うんですよね。理想をいえば、小学4年生くらいで、本人に男になりたいか女になりたいか、希望をきいて女の子になりたい男の子には、女性ホルモンを投与して男性化するのを止めておいて、中学高校は女子制服で通学する。そして高校3年生くらいになってから、再度意志を確認して、それで本人がやはり女の子になりたいということなら、高校3年の夏休みに性転換手術を受けさせて、立派な女性として社会に出て行く。男の子になりたい女の子も同様ね」
「かなり過激な意見ですが、当事者の人としては、そのくらいしたい気持ちかも知れないですね」
と理解を示してくれた記者もあった。
「自分は女の子だと思っているのに声変わりして、身体中に毛が生えてきてからだがごつくなっていくのは辛いです。逆の場合でも自分は男の子だと思っているのに、生理が来て胸が膨らんでいくのは死にたいくらい辛いそうです。だから、私たちみたいな人には自殺者が物凄く多いんですよ」
「確かに辛いでしょうね」
とこれは女性の記者さんが同情的なことを言ってくれた。
「7月から9月に掛けてテレビとかイベントへの出演もなく、アルバム制作中ということでしたが、本当は性転換手術を受けて、療養なさっていたんですね」
「はい、療養していましたが、療養しながら楽曲を作って各自自分の体調と相談しながら練習してました。そして9月に入ってから、録音しました。それで『Woman』というタイトルのアルバムを来月発売します。もうWADOは見捨てたという方も多いかも知れませんが、少しでも関心がある方は、良かったら買ってください」
「8月の下旬に『ヘンゼルとグレーテル』のドラマ撮影をしましたが、あの時期は全員、手術跡もだいぶ痛みが取れてきていたので、頑張って演技しました」
「あのドラマでは、淳紀君と央我君の女装が可愛いと話題になりましたけど、本当は淳紀君と央我君が女装していたのではなくて、若南さんと大菜さんが男装しておられたんですね」
「実はそうなんです。久しぶりに男装したら、すごく変な気分でした」
と大菜(元大児)が笑って言っていた。
「あのドラマでは若南さんと大菜さんは男装・男声、淳子さんと央花さんが女装女声でしたが、あの声はボイスチェンジャーとかで作ったのではなく、ご本人の声だったんですね」
「はいそうです。私たちは一応男の子のような声も出せますけど、基本的には今後は使用しません」
と淳子が答えた。
WADOの“みんなで性転換しちゃった”は翌日のスポーツ紙のトップを飾る。週刊誌も軒並み取り上げたし、テレビのワイドショーでも一週間くらいこの話題で持ちきりだった。
そして土曜日発売の『ぼくたち女の子』は土日で70万枚を売り、10/18の統計では、13日に発売されて日曜日までに66万枚売っていた舞音の『人魚のスカート』を抜いてウィークリー・ランキングで1位になったのであった。
もっとも翌週10/25の数値では累計売上が、舞音が90万枚、WADOが85万枚と逆転していた。ウィークリー1位を奪われたことから、舞音の一部の熱狂的なファンがもう1枚買ったりして、ランキングを押し上げたようである。
そして舞音のCDは11/01の統計で120万枚に到達して7枚目のミリオンとなったが、WADOのCDは最終的にミリオンには到達しなかった。もっとも彼女たちの過去最大のヒット曲『橋を架けよう』の35万枚を大きく上回り、彼女たち最大のヒット曲となったのである。
ちなみにWADOの4人が性別を移行していく過程を撮影し、最後は性転換手術を受ける直前、受けて意識回復したところに(同じ事務所の先輩女性タレントさんが)インタビューしたりしたビデオが存在することも、若南は明らかにした。
それを発売するかどうかは未定だと彼女は述べたのだが、ぜひ発売して欲しいという声が強く、12月になってDVDで発売され、物凄いセールスとなった。
なおWADOのファンクラブ(公称会員数12万人)で、解約を申し出た人は1000人程度に留まった。但し翌年は更新しなかった人が多く、更新した人は3万人しかいなかった。但し新規加入した人が5万人もあり、会員数は8万人となって、WADOは女性ポップスグループとして活動を続けていくことができた。
新規加入した5万人は恐らく女装者やMTFさんたちではないかと想像された。
ところでWADOの衝撃的な記者会見の直後から、WADOのメンバーがCMに出演している提供元に大量の電話やメールが掛けられたり送られたりした。
「まさかWADOをおろしませんよね?」
「お願いです。WADOのCMをやめないで」
各社は実はどう対応するか、各社社内でかなり激論したようである。
ところがその日の夕方。ノノパパイヤの上原椰椰社長が自らビデオメッセージを主な動画サイトに投稿してこのように述べた。
「WADOの“みんなで女の子になっちゃった”って凄いねー。私もびっくりしたけど、みんな可愛いから女の子になっちゃうのも、いいんじゃない?そうそう。女の子になったのなら、ノノパパイヤのレディスの服を買ってね」
CMの取り扱いについては何も述べていないが、それ以降流れる舞音主演の“人魚のスカート”のCF内で央花(元・央我)の出演部分はカットされておらず、そのまま流れていた。
つまりノノパパイヤとしては、彼女の性転換は特に問題にしないということのようだとして、WADOのファンたちの間では安堵が広がる。
更にその日の夜遅く、ΛΛテレビは翌日10/17に予定しているWADO主演『ヘンゼルとグレーテル』の再放送は予定通り放送するし、他の作品同様、DVD/Blurayも発売予定であることをホームページに記載した。
そしてノノパパイヤやΛΛテレビの対応を見て、結局WADOのメンバーが出演しているCMを放映中止する企業は出なかった。
「性別変更は美容整形などと似たようなもので個人の自由。不祥事ではない」
とあるメーカーの部長さんが記者の質問に答えて言っていた。
WADOのメンバーはCMが中止になり損害賠償を求められた場合の対応もある程度考えていたらしい。事務所の社長にお金を借りて損害賠償を支払い、著作権などを事務所に買い取ってもらった上で、残金は10年くらい掛けて返済していく計画だったらしいが、杞憂で済んだ。
それどろか、彼女たちが、男装男声で出演していたS社のビールのCMではメンバー4人が女装・女声で出演する新たなバージョンが制作され、10月下旬から流れるようになった。これにはWADOのファンたちからは絶賛の声があがりこのビールの売上が急上昇する展開となった。
さて、WADOの全員性転換の話題が落ち着き始めると
「アクアも自分の性別について正直に語るべきだよな」
という意見が多数出てくる。
「きっとアクアが女の子になりましたと言って記念CDを発売したら400万枚売れるよ」
などという声もあった。
この件で放送局から出て来た所をキャッチしてインタビューした記者に対してアクアは
「ボクは男の子ですよー」
と答え
「嘘つけ!」
と多くの人から言われたのであった!!
まだ世間の人々は、今年アクアが紅白の紅組から出ることを知らない。
さて、10月には常滑舞音が10/13に『人魚のスカート』を発売したのだが、10/6,20には水森ビーナと恋珠ルビーがドラマ『青い鳥』の関連曲を発売している。
10/6 水森ビーナ『青い空・青い海・青い鳥』(ending)
10/20 恋珠ルビー『幸せとは自分が頑張ったこと』(主題歌)
ビーナはデイリーとウィークリーの1位を取ることができたが、ルビーはデイリーこそ1位だったものの、WADO騒動の余波でウィークリーでは3位に沈んだ(1位舞音、2位WADO、3位ルビー、4位トラインバブル)。
トラインバブルは10/20は有力歌手はルビーだけだから、1位か2位だろうと思ってこの日に発売したのに、デイリー2位・ウィークリー4位であった。ルビーもトラインバブルもちょっと気の毒ではある。
ローズ+リリーのアルバムに先行するシングル『ぼくたちの秘密基地』は2021年11月17日(水)に発売された。収録曲は下記3曲である。
『ぼくたちの秘密基地』
『歯磨き味のイチゴ』
『元気になって』
『歯磨き味のイチゴ』と『元気になって』はアルバムの方に入れることを想定して制作していたのだが、弾き出された形の曲である。どちらも物凄く話題になった。『歯磨き味のイチゴ』では、
「その間違いやったことある!」
という類いの声が多数あり、
「こういう失敗もした」
という声も多数寄せられた。
「昔、上越新幹線に“あさひ”という列車があった頃、長野行き北陸新幹線の“あさま”と間違って乗車して、高崎の次に長岡というから仰天した」
という声にはマリが
「それ私もやった!」
と叫んだ。
実際あれはあまりにも紛らわしいというので“あさひ”の名前が廃止されて“とき”に変更されたのである。
それ以外にも多数の声が寄せられたが、中には本当に同情したくなるものも多数あった。
でも中にはこんなのもあった。
「間違って別の女友だちに電話掛けてプロポーズしたら、OKされちゃって。仕方ないからその子と結婚したけど、彼女はとても気のいい子で、子供も3人できたし、今はとっても幸せです」
まあ結果オーライ(死語?)という奴かな、と私は思った。
アルバム予定曲ではなかったが、今回シングルのタイトル曲としたのは『ぼくたちの秘密基地』である。
これは元々は、大学生時代に書いていた曲を、昨年思い立って大改訂した曲である。近いうちにシングルとして出したいと思ってこの春にアレンジまで済ませていた。
10/31にシングルを作る企画が急浮上した時、私が譜面を見せると鱒渕さんも八雲課長も賛成してくれたので、11月1日の1日だけで制作した。10/31日の夕方、七星さんに譜面と仮音源を渡し、翌日1日かけて練ってもらっている間に私はマリの歌唱指導をした。
11月1日夕方に伴奏音源ができたという連絡が入ったら、すぐそれに合わせて私とマリで歌い、21時頃に音源は完成。有咲はその夜の内にマスタリングしてくれた。一方で妃美貴と鱒渕さんが協力して一日でジャケット写真や歌詞カードも作ってくれたので、11/2朝一番に白石マネージャーが工場に持ち込んだ。
それで11月17日の発売に間に合わせたのである。11月も§§ミュージックの歌手の発売が目白押しだったが、11/17だけ空いていたのである。正確には石川ポルカのCD発売日だったが「どうせ私は1位取れないから大丈夫です」と彼女は言っていた。(実際にはポルカは3位で本人がびっくりしていた)
アクア主演『ロミオとジュリエット』は、7月15日以降、全世界で公開されたのだが、日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカ・オーストラリアでもひじょうに高い評価を得て、物凄い動員となった。
劇場での密を避けるため、映画公開の1週間後にはDVD/Blurayが発売されるが、これも物凄い数が売れた。
この映画により、アクアは世界的に評価される“女優”!となったのである。アクアが昨年公開の『気球に乗って5日間』にも出ていたというので、そちらのDVD/Blurayもたくさん売れた。
海外では“アクアとそっくりの男性俳優”は
「双子の弟でアクオ(Aquo)という名前らしい」
という震源地不明の勝手な噂が一人歩きし
「アクオ君もわりとうまいね」
などと評価(?)されていた。
日本でも「アクアって本当は男女の双子なのでは」という説が再び浮上して結構それを信じる人も出たようである。
その興奮が落ち着き始めた10月1日(金)、アクア主演『白雪物語』が制作され、12月に公開予定であることが発表され、トレーラーまで流れると、また騒然となる。
トレーラーは王妃が鏡に問いかけるシーン、狩人が白雪姫に弓矢を向けるシーン、白雪姫がリンゴを手に倒れるシーン、白雪姫が武装して、男女の狩人を従え、王子と一緒に王宮を進むシーンなどが入っていた。
トレーラーは、日本語版・英語版・ドイツ語版・フランス語版が取り敢えず公開されたので全部見比べる人まであった。(実は微妙に収録シーンが異なる。映画会社の悪戯心である)
とうとうアクアは女性役のみをするのか?と思った人もあったようだが、リリースでは、ちゃんと「アクアは白雪と狩人の1人2役」と記載している。
狩人のようなひじょうに男性的な役と、白雪姫の2役というのに(日本では)多くの人がその出来に期待した。
実は私もこの時初めてこの映画のことを知り
「いつ撮影するの?」
とコスモスに尋ねたら
「もう撮影は終わっている」
と言うので2度びっくりした。
更にはΛΛテレビはアクアが1月15日放送予定、昔話シリーズ最終回となる『ピーターパン』の放送でウェンディとフック船長の2役をすると発表したので、このこれまで誰もしたことがないであろう、2役をアクアがどう演じ分けるのか、そちらも『白雪姫』の映画にもまして、関心を引いたのであった。
ΛΛテレビの昔話シリーズの残りの放送予定と主演者も発表されたのだが、その中で注目されたのが『セロ弾きのゴーシュ』を演じる岩本卓也君であった。
セロ弾きのゴーシュの主演は、実は春頃から岩本卓也と決まっていた。
“セロ”というのは、チェロ(cello)の日本での古い呼び方だが、何語か不明である。イタリア語・英語・ドイツ語ならチェロ、フランス語ならヴィオロンセル。
ともかくも岩本君は、このチェロという楽器に触ったこともなかった。同族のヴァイオリンさえ弾いたことが無かった。
この物語はゴーシュが最初は下手糞だったのが、動物たちとの交流を通して、次第に上手くなっていく過程を描いた成長物語である。それで春頃から彼にはチェロのレッスンを受けさせ(ヴァイオリンも一緒に習わせる)、彼の演奏が少しずつ上手くなっていく過程をずっと録画しておいたのである。彼は“穴の空いたチェロ”とまともなチェロの2個を渡され、レッスンはまともなチェロで受けているが、撮影は穴あきチェロでおこなっている。
今回のドラマでは、その半年間の上達の軌跡が2時間半に凝縮されることになる。ドラマの中では彼が“ゴーシュの衣裳を着けて”!チェロのレッスンを受けたり、本物のオーケストラに入って演奏している所も映る(オーケストラの皆さんお疲れ様です)。
ただ、彼が『セロ弾きのゴーシュ』に主演することはここまで伏せられていた。それは彼がどうしてもまともに演奏できるようにならなかった場合、ちゃんと演奏できる人を主役にして撮影するオプションを考えていたからである(一応ハイライトセブンスターズのヒロシから内諾を得ていた)。現在の彼の演奏技術が、既に高校生のオーケストラ程度のレベルには到達しているので、撮影する11月までにはアマチュアオーケストラ程度のレベルくらいには到達してくれるだろうという期待で、彼の主演が発表されたのである。
(この小説が書かれる少し前、宮沢賢治は「3日でセロが弾けるようにレッスンして欲しい」とチェロ奏者・大津三郎に申し込んだらしい。それは無理だと言われたものの、宮沢が熱心に頼むので大津は一応レッスンをしてあげたという。しかしさすがに3日でマスターできるものではない。宮沢のチェロはかろうじて“音が出るかもしれない”程度のものだったらしい。彼が使用したチェロは現在でも花巻市の宮沢賢治記念館に保管されている:例の穴の空いたチェロではない−それは賢治の友人が所有していたもの)
今回、岩本君に渡した“穴のあいたチェロ”は、当時の写真なども参考に、楽器メーカーさんに依頼して、コンピュータによるシミュレーション計算も経て、できるだけ演奏に影響が出ないような穴のあけ方をしてもらった特注品である!(かえってまともなチェロより予算が掛かっている)
ドラマに彩りを添えるのに、彼と“恋人未満”の女性を登場させる。これも春の段階で馬仲敦美ちゃん(23)にオファーがあり、彼女も岩本君や松田理史などとは長い付き合いなので受けた。但し彼女には、主役がヒロシに交替になる可能性もあることは納得してもらっていた。
彼女は楽団のヴァイオリン弾きという設定である。敦美はヴァイオリンは一応弾けるものの、あまり下手な所は見せられない!と言って、撮影までの半年間にヴァイオリンのレッスンに通うことにした。
この『セロ弾きのゴーシュ』の撮影(予定 11.21-30)は実は昔話シリーズの最後の撮影となる。
12月に入ると人気タレントさんはみんな忙しくなるので、この手のドラマ撮影は困難になる。それでそれまでに全て終わらせてしまおうという計画だったのである。
10月中旬、『八犬伝』の撮影が進む中、コスモスは坂田由里を事務所に呼び、契約をA契約に変更したいと言った。
すると突然彼女は泣き出してしまった。
めったに物事に動じないコスモスも驚いてどうしたのかと尋ねると由里はコスモスに泣きながら、あることを告白した。しかしコスモスは言った。
「それはもう気にすることはない。もう忘れなさい。その後の彼女の君への接し方を見れば分かるでしょ?彼女は君を許してくれたんだよ」
「はい、それは分かっていましたけど」
「だから忘れよう。きっと彼女は君のA契約移行を喜んでくれるよ」
「そんな気がします」
(実際物凄く喜んでくれたので「ほんとにいい子だなあ」と再度尊敬した)
「私も忘れるからさ」
「はい」
それで彼女はA契約に移行することになり、マネージャーに関しては当面、常滑真音のサブマネージャー中原レイを兼任で当てることになった。彼女の御両親には電話して、東京に出て来て契約書を交わした方がよければお迎えに行かせますと言ったが
「もう随分長くお世話になっていて、そちらの事務所が本当に良い事務所であることは分かっています。社長さん、とてもお忙しいのにお手間を取らせるのは申し訳無いので、郵便のやりとりで契約書を交換しましょうよ」
と向こうのお父さんが言う。それで郵便による往復で契約書を交換した。
坂田由里がA契約に移行したので、年末年始の挨拶にも参加することになり、急遽大田区サテライトでその撮影をおこなった。
白系統の振袖を着付けてもらい、最初は「今年もお世話になりました」という挨拶をする所を撮影する。もう他の人たちは全員撮影を終えているので、その集合ビデオを見ながらタイミングを合わせて挨拶した。
その後、着ていた白い振袖を脱ぎ、長襦袢姿のまま撮影スタジオ付属のトイレに行ってきてから、今度は青い振袖を着付けしてもらう。そして年末と同様にビデオに合わせて、年始の挨拶「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」を言った。
更には色紙にメッセージを書き、それを抱えて笑顔で手を振っている所を撮影された。
「でもこんな撮影するなんて、まるでスターみたい」
「君はもうスターだよ」
と撮影に付いていた広橋窓佳マネージャーが言うと、坂田由里は感動していた。
今年のビデオガールコンテストの入賞者で最後まで芸名が決まっていなかった2人の芸名がやっと決まった。
森田浩絵は "宮地ライカ"となる。彼女が福津市出身で、福津市の有名神社・宮地嶽(みやじだけ)神社から宮地と採り、ライカは・・・コスモスが唐突にひらめいたかららしい。
成瀬久美は“知多めぐみ”となる。彼女は愛知県大府市(おおぶし:大阪市でも大阪府でもない。念のため)の出身で、大府市は知多半島の付け根付近にある町なので、そこから。めぐみは、やはりひらめいた、とコスモスは言っていた。
(実は適当なのではないか??)
1.風谷リンゴ 中3 “美崎ジョナ”
(2)特別賞 広中礼音 中1 “立山きらめき”
3.池田芽衣 中2 “夕波もえこ”
4.四宮七菜 中2 “薬王みなみ”
6.鈴木春南 中1 “鈴原さくら”
10.森田浩絵 中1 “宮地ライカ”
11.成瀬久美 中1 “知多めぐみ”
春の昇格者
森村雪子“鈴鹿あまめ”
松元徳世“長浜夢夜”
平良百合“花貝パール”
特別加入
柴田数紀“水森ビーナ”
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【夏の日の想い出・ボクたち女の子】(5)