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■萌えいづる日(2)

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結局手伝ってもらうことになるのか。僕はそう思うとまた少し赤面したが、佐々木に促されて更衣室に入る。
「メイド服はワンピースだからスカートよりは男の子でも着るの抵抗感が小さいんじゃないかな。取りあえずズボン脱いで・・・・足の毛は明日までに剃って来てね。白のストッキング穿いてもらうから毛があるとけっこう目立つんだ」
「あ、はい」
「ああ、Tシャツの下は何も着てないのか。じゃそのTシャツはそのまま着てて。明日はキャミソール付けて欲しいんだけど、そんなの持ってないよね」
「持ってないです」
「じゃ後で一緒にユニクロにでも買いに行こうよ。あ、そのくらいのお金は店長に出してもらうから大丈夫だよ」
「はぁ。あれ、佐々木さんって店長の?」
「従妹なの。東京のメイド喫茶に2ヶ月ほど勤めていたことあるんで、今回頼まれちゃってね。でも東京の私が勤めていたメイド喫茶にも実は男の子って子がいたよ。誰の目にも女にしか見えないのであればノープロブレム」
「そういうもんなんですか」
僕はズボンを脱いでTシャツは着たまま、ワンピースをかぶろうとしたら
「あっと。それはかぶるんじゃなくて穿くの」
と言われる。服を下の方に持ったまま足を入れて上の方に引き上げて腕を通す。上腕部の袖の絞りが肌を締め付けて痛いくらいだ。それとウェストがさすがに苦しい。しかし何とか着れた。
 
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エプロンを掛けるが後ろは自分の手では結べない。
「結んであげる。これ自分では結べない人が多いよ。今まで採用した子3人の中でも自分で結べたのはひとりだけだった。そしてこれ」
 
カチューシャというのか帽子というのか・・・・付け方の見当がつかない。僕は素直に「分かりません」と言った。
 
「メイドハットは基本的にはかぶるだけなんだけど、かぶる深さがね・・・・こんなものかな」
「ありがとうございます」
「うーん。可愛いな。高校生の若さのパワーもあるし。そこの鏡、見てみて」
 
佐々木さんに促されて更衣室の奥の大きな鏡に映してみる。
 
可愛い。自分でもちょっとそう思ってしまった。思えばもうこの時僕は完全にこの世界にはまりこんでしまっていたのだろう。
 
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そのまま更衣室を出て佐々木に連れられ店長の席に行くと、神田は別の女の子の面接をしていた。しかし佐々木に促されてこちらを見ると
「うん。似合ってるじゃん。それじゃ明日から頼むよ」
と嬉しそうな顔で言った。僕はまた赤くなってしまった。
 

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結局その女の子も採用になった。
 
3時からの講習では最初の1時間くらい喫茶店のスタッフとしての基本的なことを教えられた上で、そのあと「お帰りなさいませ」「行ってらっしゃいませ」
「そろそろお出かけの時間です」などメイド喫茶特有の言い回しを覚えさせられ、その場でひとりずつ動作付きで実習をさせられた。最後に遅刻・欠勤する場合は前日までに必ず連絡するようになど、労働面での注意があった。
 
講習が終わってから僕と佐々木さんだけ店長に別室に呼ばれて「微妙な問題」について打ち合わせをした。一応男の子であることはバレても構わないので「もしかして男の子?」などと聞かれた時は正直に答えてもよいが、自分から進んでカムアウトはしないようにと釘を刺された。通勤途中で男の子の格好をしているところを見られたくないから、女の子の服で通勤してくれないかと言われたが、そんなの親に叱られますと僕が言うと、結局通勤途中で佐々木さんの家に寄ってそこで女の子の服に着替えてから店に出てきて、帰りは女の子の格好で佐々木さんの家まで行き、そこで男の子に戻って帰宅する、という方式を取ることになった。
 
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下着を含めて女の子の服は店長のポケットマネーで佐々木さんが買い揃えてくれることになった。佐々木さんはこの「遊び」が楽しいようで、足の毛など僕が自分で剃りますと言ったのも、剃ってあげるからといってやってくれたし、僕に着替人形みたいに色々な服を着せてみたりした。眉毛は細く切りそろえられたが最近は眉を細くしている男の子も多いから、家族も咎めたりはしなかった。それどころか、姉は僕があの髪型にあまり文句を言わなかったことに味をしめて、「先を切り揃えてあげる」などと称して、ますます女の子っぽい髪型にしてしまった。
 
最初の頃は佐々木さんの家から店までの間(実際は駅前まで車で出るので駐車場から店まで)女の子の格好で歩くのが死ぬほど恥ずかしかったが、次第に慣れると平気になってきて、時間がある時はその格好でショッピングを楽しんだりマクドナルドに行ったりもするようになった。
 
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ショコラは初日から物凄く繁盛した。メイド喫茶である前に喫茶店としてきちんとしていなければならないという店長の姿勢が好意的に客に捉えられたようで、料金もシアトル系カフェより少し高い程度で、むしろ普通の喫茶店より安いくらいであったので、普通にコーヒーや紅茶を飲んだり時間をつぶすことを目的として来てくれる人も多く、スタッフは大忙しだった。初日最初は佐々木さんが僕に配慮してくれて、コーヒーや紅茶を入れる作業中心に仕事をしていたが、すぐに僕も接客でフル回転しなければ手が回らない状況になった。女の子は追加募集で7月中に更に4人追加したが、最初からのメンバーの内の2人辞めてしまったので、忙しさは全然緩和されなかった。給料はびっくりするくらいもらったが、佐々木さんの薦めで、お小遣い程度を遺して全部銀行の定期預金にしてしまった。
 
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そして結局僕は夏休みが終わっても学校が終わった後ここでバイトを続けることになってしまったのであった。毎日4時頃家に戻るとそのまま宿題を抱えて佐々木さんの家に行き、女の子の服に着替えて店に行く(宿題は移動中のバスの中で片付ける)。佐々木さんから鍵を渡されていたので本人がいなくても平気である。夕方6時から8時までの特に混む時間帯で勤務して終わったらまた佐々木さんの家に戻り、学生服に着替えて帰宅するという生活である。土日は朝から夕方まで。そしてもちろん一度も男の子であることはバレていない。10月には最初サブをしていた花田さんが辞めた後任のサブに任命されてしまった。勉強をする時間は少なくなったが、その分短時間に集中してやるようになったのでかえって成績は上がり始めた。おかげで両親もバイトについては文句を言わない。
 
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今の成績なら東京の有名私立とかを狙えそうな気がしてきているが、高校を卒業してもし東京に出るんなら、知り合いが経営しているメイド喫茶紹介するよ、と店長さんからは言われている。もしそのころまでブームが続いていてら、何だかそれもいいかも知れないなと思いつつある今日このごろだ。
 
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