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■萌えいづる日(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2005-09-19  
思えば夏休みで帰郷してきた姉貴が「髪を切る練習させて」と言い出したのがすべての元凶だった。
 
姉は仙台に出て美容専門学校に通っている。地元の盛岡の学校でも構わないはずなのにわざわざ仙台に行ったのは、親元から離れて羽目を外したいからだろうと思っていた。最初は東京の学校に行きたいと行っていたのを東京は生活費が高いからとても仕送りできないと両親が反対し、妥協で仙台になったのであった。
 
僕は今回の期末試験が自信がなかったのでかなり頑張って勉強していて、1ヶ月くらい散髪に行って無くてけっこう髪が伸びていて終業式の時に先生から注意されたくらいである。ちょうどいいかなと思ったので、姉貴に任せて、切ってもらっている内にウトウトと寝ていた。「和実、終わったよ」という声で起きてから鏡を見てびっくり。
 
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「ねぇ、これ女の子の髪型じゃないの?」
「そうかな? まぁ確かに私まだ女の子の髪しか切ったことないけどね。男の子は初めてだから少し変だったかも。でも大丈夫だって。男の子でもそんな髪の男の子はたくさん仙台では歩いているから」
「ホントに?」
 
僕はかなり怪しい気がしたが、夏休みで学校に行く訳でもないし、元々髪型とかあまり気にするタチではないので、まぁいいかと思うことにした。
 
ちょうどそこに友人の桜木隆司から電話がかかってきた。いいバイトの口があるのだけど行かないか?というのである。うちの高校はのんびりしていて1年の内は補習とかもないので、夏休みはバイトをする生徒も多い。内容は喫茶店の仕事だというので、それならご飯とかも食べられそうだしいいかなと思い、取りあえず行ってみることにした。
 
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そのまま面接になるかも知れないと思い、カッターシャツと学生ズボンで行こうと思ったのだが、あいにくカッターシャツが全部洗濯中、学生ズボンもクリーニングに出したのをまだ取ってきていなかった。仕方ないので、手近にあった黒いTシャツと黒のジーンズを着て、バスで盛岡駅前まで出た。
 
少し待ち合わせ時刻に遅れたかなと思ったが桜木はまだ来ていなかった。そのまま10分ほど待ったが来ないので電話を入れると「済まん。急用が出来て行けなくなってしまった」と言われた。
 
「駅前から歩いて2つ目の角を右に曲がった所にある青葉ビルという所の2Fで、ショコラという店なんだ。興味あったら直接行ってみない?桜木の紹介だといえば合格確率高いと思う。明日オープンなんでまだ看板が出てないかも知れないけど。盛岡初のメイド喫茶だぜ」
「メイド喫茶って、それ女の子ばかりじゃないの?」
「もちろん女の子のスタッフが多いけど、どうしても男手もいるからね。急に話が決まったんでまだスタッフが足りないらしくて。オーナーが東京に行ってるうちの兄貴の先輩なんで、誰かいないかと頼まれたんだ」
 
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僕は少し迷ったがせっかく駅前まで出てきたことでもあるし、バイトというもの自体初めてなので面接なるものを経験しておくのもいいかも知れないと思い、行ってみることにした。
 
ビルはすぐ見つかったが確かに看板らしきものは出ていない。エレベータを探して2Fに上ると「ショコラ」と書かれたドアがある。入るといきなり「お帰りなさいませ」と声を掛けられた。
 
声を掛けてきたシックな感じのメイド服の20代半ばかな?という感じの女性が少し戸惑ったような顔をしていると、奥から背広姿の20代くらいの男性が飛んできた。「済みません。明日からなんですが」という。「あ、いえ面接なんですが」
 
「ああ、そっちか。ごめんごめん。電話もらった人だっけ?」
「いえ。でも友人の桜木から紹介を受けたんですが。工藤と言います」
「ああ、桜木の紹介か。さすが美形を選んでくれるな。向こうで少し話しようか」
と言って、店の奥の方のテーブルに連れて行かれる。店内ではまだ内装工事が進められていた。ここ本当に明日オープンするのか?と僕は少し不安を感じた。
 
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「まず座って」
と言われて、椅子を引いて座ると
「うん。座り方が優雅だ。気に入った」
と言われる。うちは祖母が行儀に関して躾が厳しかったので確かにそういう所は大人の人には受けがいいのかも知れない。
「僕は店長の神田ね。履歴書は持ってきた?」
「あ、いいえ」と答えてから、そうかそんなものが面接には必要だったのかと気づいて少し焦り、顔が赤くなった。
「お、照れる所も可愛い。黒い服が似合っているし、結構気に入ったから、まぁ履歴書は後でいいよ。名前は?工藤君だったっけ?」
「はい。済みません。工藤和実です。高校1年です」
「うん。和実君ね。高校1年ならバイトは初めて」
「はい。初めてです。あの、夏休みの間だけ仕事させて頂きたいのですが」
「うん。それはOK。君、コーヒーとか紅茶とかは普段どうやって入れてる?」
「コーヒーはうちはサイフォンです。紅茶はリプトンの茶葉で」
「ほほぉ。ティーパックではなくて茶葉使うんだ」
「ティーサーバーに茶葉を入れて熱湯を注ぎ、茶葉が沈んだ所で茶漉しを通してカップに注いでいます」
「うん。頼もしい。こうして会話している時の感じもいいし。君、取りあえず仮採用ね。」
「ありがとうございます」
「じゃ3時からスタッフ全員集めて開店前の講習をすることにしているから制服に着替えて待機していてくれないかな」
「あ、はい」
 
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「佐々木君!」と店長が呼ぶと先ほどのメイド服の女性がやってきた。
「こちらチーフの佐々木悠子君。こちら今採用した工藤和実君。佐々木君、この子に制服出して、着替えも見てやってくれない?」
「はい、旦那様」
 
着替えを見る?やはり男性スタッフもきちっとした服装でないといけないということなのかな、などと思っている内に佐々木は「和実ちゃん、身長いくら?」と聞くので「167cmです」と答えると、「じゃこのサイズかな」といって紙袋を出してくれた。「着替え自体手伝った方がいい?それとも着替えてからチェックしようか」と訪ねられる。僕は真っ赤になって「自分で着替えますからそのあと見てください」と答えた。「うん。じゃ更衣室はそこね」とドアを指さされた。
 
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中に入りドアを閉めて、紙袋から服を出して、僕は戸惑った。
 
いったん服を袋に戻し更衣室のドアを開けると佐々木がそこで待っていた。
「あれ?やはり難しい?手伝おうか?」
「じゃなくて、これ女の子の服みたいなんですけど」
僕がそう言うと、佐々木はまじまじと僕の顔を見た。
「もしかしてあなた男の子?」
「え?はい、そうですけど」
「うそー!ちょっと待ってて」
といって佐々木は店長を呼んできた。
 
神田が困惑した顔をしながらやってきた。
「君男の子だったの?」
「はい」
「すっかり女の子と思いこんでいたよ。ごめんごめん。でもさ、男のスタッフはもう定数が埋まっているんだよね」
「そうなんですか」
「女の子のスタッフはこの佐々木君を入れてまだ4人しか決まってなくてさ。どうしても明日までにあと最低2人くらいは欲しかったんだよね」
「済みません」
 
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神田はしばらく悩んでいたがとんでもないことを言い出した。
「君さ、女装とかしたことないの?」
「そんなの無いです」と言うと僕は少し赤くなった。
「そんな反応がまた女の子っぽいな。ね、そのメイド服、ちょっと着てみない?」
「えー!?」
「その黒いTシャツが似合っているからゴシック系のうちの衣装も合うかも知れないと思って。そうだ。着てくれるだけで今日の日当に2000円払うよ」
「でも」
「それで違和感無かったら、取りあえず女の子の補充ができるまでの間だけでも働いてもらえないかな。衣装を着た所で女装した男にしか見えなかったら諦めるから」
 
僕は溜息をついた。確かに幼稚園の頃は時々女の子に間違えられたことがあるのだが、小学校以降では久しく無かったことだった。これも姉のせいだ。しかし2000円もくれるというのはおいしい。1ヶ月分のお小遣いの額だ。僕は心が揺れた。
「じゃ取りあえず着てみます」
「うん。さすがに女の子の服の着方分からないかもしれないし、佐々木君手伝ってあげて」
「はい」
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