広告:ボクの初体験 1 (集英社文庫―コミック版)
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■十二夜(4)

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私は今自分がどこにいるのかを把握するのに苦労した。やがてそこが自分の車の中であることに気付く。私は夢の中で自分が交通事故にでもあったのではと思っていたのだが、どうも無事なようである。
 
服装を確認する。あれれ?これは夢の中で最後のドアを開けた時の服装だ。茶色のチュニック、青いチェックのスカート、そして黒いパンプス。
 
もしかしてまだ夢の続き?
 
ここはどこだろう?
 
私は車から降りてみた。
 
あれ? ここは会社の駐車場だ! もしかして自分はクリスマスイブに帰ろうとして、車に乗り込み、そのまま眠ってしまった!?
 
状況を把握しようとして何か記憶の断片のようなものがないか頭の中で模索していた時、事務の女の子が通りかかった。
 
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「糸崎さん」と声を掛ける。
「はい。何でしょうか?」という返事。あら、そうか。自分は今女の子の服を着ているから、彼女はこちらを認識していないのかも。でも私は構わず尋ねた。
 
「今日は何日ですか?」
「1月6日ですが・・・・え?もしかして、前村さん?」
「うん」
「とにかく来て」
 
と言って、彼女は私の腕を引っ張って事務所の中に入っていった。
 

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「え?前村なの?何その格好は?」と係長。
「どうしてたんだ!心配してたぞ」と課長。
どうも雰囲気的にこの2人、仲直りしたようである。良かった良かった。
 
「昨日も実家のお母さんと電話で話して、今日も手がかりが見つからなかったら警察に捜索願を出そうと思っていた」と課長。
「今までどこにいたの?」と社長の妹の総務主任さん。
「それがさっぱり分からなくて。12月24日の夜に車に乗って帰ろうとして、凄い吹雪にあって、その後さっぱり記憶が無いのですが、ついさっき気付いたら会社の駐車場に車が駐まっていたんです。服装もなぜかこんな状況で」
 
「会社の駐車場に車が駐まっていたら気付くはずだよな」
「そんなところとっくに探してますよ」
「本人も覚えてないというのなら、何があったんだろうね」
「でも、あなたその格好似合ってるわね」と総務主任。
 
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「課長、○○の設計の件はどうなってますか?」
「25日の朝、君の机の上の端末が付けっぱなしで、きれいに基本的な設計が完了していたので、それをベースにみんなに指示を出した。作業は順調に進んでいる」
「完成していた・・・それって、もしかして△△を◇◇◇の形にする奴ですか?」
「そうそう。君らしい素晴らしいアイデアだと思った。先方も満足するよ」
 
その設計は夢の中でしたものである。夢の中の端末を操作して作ったのだが、あれが現実のデータにも反映されていた!? 私は夢と現実がどうもあれこれ混淆していることに思い至った。
 
「着替えに戻るのも時間もったいないし、今日はこの服装で勤務してもいいですか?」と私。
「君さえ構わなければ構わないけど。君に質問したり教えてもらいたい部下たちがたくさんいるぞ」と課長。
「あなた、その服装なら女子トイレ使ってもいいわよ」と総務主任。
 
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そういう訳で、私はその日、この会社に入って初めて、女性の服を着て仕事をした。女装の私にみんな戸惑っているようであったが、やがて中身は変わらないということが分かると、これまでと同様に接してくれた。
 

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トイレに行ってみる。もちろん女子トイレに入る。私はさっきから確かめたくて確かめたくてたまらない問題があった。感触としては「そうなっちゃってる」
気がしていたが、自分の目で確かめたかった。
 
個室は埋まっていて、同僚の智香子が待っていた。手を振って挨拶する。
 
「前村さん、女子トイレにいても何か違和感無いね」
「そう? もうずっとこちらにしちゃおうかなあ」と私。
「あ、そういうのだったら、私、応援してあげるよ」
「ほんと?」
「ね・・・・これまででも時々女装してたでしょ?」
「分かる?」
「前村さんのそばによった時、女物の化粧品の匂いがすること時々あったしね」
「まあね」
「歩き方がね・・・・女の子の歩き方してると思った」
「そうだね。いつもスカート穿いてるから、スカートで転ばない歩き方になっちゃってるし」
「ああ、やっぱりそうだったのね」
 
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立ち話をしているうちにひとつ個室が空き、智香子が入って行く。続けて別の個室が空き、私は中に入った。
 
ショーツを下げて便座に座り、おそるおそるスカートをめくってみた。
 
私は声を立てないまま笑ってしまった。
 
そこには以前あったはずのおちんちんとか袋とかは無くなっており、きれいな割れ目ちゃんができていた。陰毛もけっこう生えている。触ってみるが痛くない。自分が2週間だけあちらの世界に行っていて、そこで性転換手術されたのなら時間的に考えてまだかなり痛みがあるはずなのに。陰毛だって数日でこんなに伸びるわけがない。向こうとこちらでは時間の経ちかたが違うのかも知れない。
 
でも手術代の請求書が送られてきたりしないよな、などと少し不安になった。
 
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新しいお股を使っておしっこをしてみる。飛び散りそうだと予測していたので、手で押さえるようにして服を濡らしたりはせずに済んだ。しかしこれは慣れるまでは大変そうだという気がする。おちんちんって意外に便利なものだったのかな?と一瞬思ったが、おちんちんが付いていることで逆にとんでもない方向におしっこが飛び、靴やズボンの裾を濡らすこともよくあったからどっちもどっちかなという気もした。
 
トイレットペーパーで手とお股をよく拭いてからショーツをあげスカートを整える。流してから外に出て手を洗った。
 

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夕方近くになってから、課長が声を掛けてきた。
 
「なんか今日の前村は凄く調子いいな」
「そうですね。もしかしたら、女装で仕事すると効率が上がるのかも」
「そうか?じゃ、いっそ明日からもそれで出てくる?」
「あ、そうですね。じゃそうさせてもらいます」
 
課長は冗談で言ったようだが、こちらは本気である。このまま女装でずっと勤務しちゃおうかなと思った。
 
夕方になり、今日は早く帰ったほうがいいと言われたので、定時で退社させてもらった。
 
半月ぶりの自宅はけっこう大変だった、年賀状も含めて郵便受けが満杯ですごいことになっていた。あやしい請求書などがないかと思って見てみたが特にこれといったものは無かった。
 
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服を脱いでヌードになり、姿見に映してみる。
 
わあ・・・・いいなあ、これ。
 
美しい女体だ。胸がまだ小さいけど、お股に何も余計なものが無いのが素敵だ。
 
もしかして自分はまだ夢を見ているのだろうか。それならそのままでもいい気がした。何が現実で何が夢かなんて、きっと、相対的なものでしかない。
 
お風呂に入ってシャワーを当てて、お股を洗う。こんな感覚初めてだ。嬉しい。こんな身体が自分のものになるなんて、ほんとに夢のようだ。もしホントに夢なら、ずっと覚めないで欲しい。
 
お布団に入って、裸でちょっとアソコをいたずらしてみた。やり方はだいたい見当が付く。う・・・・・これ、気持ちいいかも。指もちょっと入れてみた。
 
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なんかこんなことしてると、男の子とHしてみたくなっちゃうじゃん。
 
私はその晩は新しい身体をたっぶり堪能して、結局12時すぎくらいに寝た。
 

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翌日、私は起きると顔を洗い、新しいブラとパンティを身につけると、白いブラウスを着て、その上におとなしめのセーターを着て、灰色のブリーツスカートを穿いた。きれいにお化粧してから昨日履いていたパンプスを履き会社に出かけた。
 
「え?今日もその服装なの?」と課長。
「はい。昨日も言ったようにこちらのほうが調子いいみたいなので、当面これで通勤します」
「まあ、中身が君なら構わないけど・・・・」
 
そういう訳で結局私はなしくずし的にこの日以降、ずっと女性の服で会社に行くようになってしまったのである。女子社員たちともすぐに仲良くなることができた。
 
例の設計は無事1月末までに完成し、先方に納品した。納品の際、私が女性用スーツで訪問すると向こうはびっくりしたが、先方のスタッフの中のひとりの女性が「前村さんって、もしかしたらそっち?と実は思っていた」などと言っていた。向こうも仕事が確かであれば別に性別は気にしないと言った。
 
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その納品が終わってから帰宅すると、1通の郵便物が来ていた。
家庭裁判所??何だ何だ?
 
開けてみて私は驚愕した。
 
「申立人の性別の取り扱いを男から女に変更する」
「申立人の名《和志》を《和菜》と変更することを許可する」
 
そんな申請出したっけ?と思ってから思い至る。例の「夢」の最後の部屋で女子高生から「これにサインして」と言われた。たぶん、あれが改性改名の申立書だったんだ! しかしまあ、なんと親切な。
 
和菜というのは私が以前から使用している女性名である。ソフトウェアのユーザー登録などはたいていその名前でしている。mixiもその名前での登録であるし、美容室などのカードもその名前で作っている。
 
翌日は土曜日で休みだったので、私は運転免許センターに行き、裁判所から来た書類を見せて、性別と名前の変更手続きをした。ちょっと恥ずかしいが裏書きでの訂正である。しかしどうせ今年の夏には更新だから、それで新しい名前の免許証に変えることができる。
 
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月曜日、私はむろん女性の格好で通勤していった。さすがに社長に呼ばれた。
 
こちらの性別について問われた。自分はこのまま女性として勤務したいし、今の仕事で問題があるようであれば配置転換などされても構わないと言った。社長は少し考えているようであったが、君の仕事は評価しているので、今のまま勤務して欲しいと言われた。
「実際、この1ヶ月、女装の君は凄いパワーで仕事をしてくれたしね」
 
登録上の名前を変更するかと訊かれて、実は戸籍上の名前が訂正済みであることを明かし、名前が訂正された免許証を見せ、会社にも「和菜」の名前で登録してもらった。
 
そういう訳で、私は女子社員になってしまったのであった。女子の制服も支給された。
 
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しかしあの十二夜は不思議だ。私は休日に車で近隣の道をかなり走り回り、例の道の駅みたいな場所がないか調べてみたが、やはりそれらしき所は無いようであった。もうあそこが既に異世界だったのだろうか。。。
 
あの女子トイレの上に書かれていた文字も調べてみたら、ダンテの「神曲」
に出てくるあの世への門のところに書かれた文字であることが判明した。「この門を通るものは全ての希望を捨てよ」という意味らしいが、私の場合はあそこを通ることで、大きな希望を得たという気がする。
 
この後どうなるかは分からないが、せっかくもらった女の身体と社会的な立場をたっぷり楽しんでいきたいと思っている。
 

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クリスマスの12日
1日目にもらったものは桃の木にいる1羽の山鶉。
2日目にもらったものは2羽の小雉鳩。
3日目にもらったものは3羽のフランス鶏。
4日目にもらったものは4羽の黒い鳥。
5日目にもらったものは5つの金の輪。
6日目にもらったものは横たわっている6羽の鵞鳥。
7日目にもらったものは泳いでいる7羽の白鳥。
8日目にもらったものは乳牛の乳を搾る8人のメイド。
9日目にもらったのは踊っている9人の貴婦人。
10日目にもらったのは跳ねている10人の殿方。
11日目にもらったのは笛を吹いている11人の笛吹き。
12日目にもらったのは太鼓を叩いている12人の太鼓叩き。
 
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