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■夏の日の想い出(4)

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ボクが顔を洗って、メイク落としフォームと洗顔料を落とし、タオルで拭いていたら、いきなり後ろから抱きしめられた。え!?
 
「まーちゃん、もう帰ってたんだね。好きだよ」と、これは花見さんの声だ。人違いですと言おうとしたが、その前に顔を掴まれて唇にキスをされてしまった。
「え!?」
向こうもそこで人違いに気付いたようだ。
「ご、ごめん。間違った」
「あ、いえ大丈夫です」
とは言ったものの、こちらの心臓はドキドキしている。
きゃー、男の人とキスをしてしまった。しかもこのキス、こないだ大阪のイベントで他の出演者の女性からされたような軽いキスではない。かなり強烈なキスだった。
 
「あ、えっと、今日はお仕事だったの?」
と尋ねたりする花見さんもバツが悪そうだ。
「いえ、プライベートな外出です」
「あ、やはりふだんからそういう格好するんだ」
「そ、そうですね。朝は政子さんがいる時にお邪魔して着替えたんですが、帰りが分からないからということで、今日だけちょっと鍵をお借りしました」
「ああ、なるほど」
 
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ボクはメイクは落としたものの、キャミソールと短いスカートのままだ。
「でもそうしてると、君可愛いよ。女の子に生まれてたら良かったのにね」
向こうはフォローで言ってくれているのだろうけど、可愛いと言われるのは悪い気はしない。
「中身知らなかったら、ナンパしちゃうかも」
「それは政子さんに叱られます」
「ははは」
「あ、お茶でも入れます」
 
勝手知った家の中なので、ボクは台所で紅茶のパックを取り出し、ティーサーバーに入れ、電気ポットのお湯を注いだ。ティーカップを2つ、砂糖のパックとメロディアンミニ、ティースプーンを一緒にお盆に載せて、居間に運ぶ。座ってから紅茶をそそぎ「どうぞ」と言って差し出す。
「ありがとう」
花見さんはカップを受け取ると砂糖とメロディアンミニを入れ、スプーンで掻きまぜて飲む。ボクは紅茶だけ注ぎ、砂糖もクリームも入れずに飲んだ。
 
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「だけど、今お茶を入れてくれたのもなんかも凄く様になってるね」
「そ?そうですか?ふだん家でもそのくらいしてますし」
「へー。お料理とかもするの?」
「カレーとか八宝菜とかは私が作ったりしますよ。両親共働きだから、私がいちばん早く帰ってくることもよくあるので」
「八宝菜が作れるのは凄い」
「えー?だってほとんど炒めるだけだし」
 
「いや、高校生の女の子でそこまでできたら偉いと思うよ」
「そうかなぁ」
なんだか褒められている感じなので、ボクは少し照れてしまった。
「あ、すみません。着替えてきますので」
「あ、もうしばらくそのままでいてよ」
などというので、結局ボクはそのあと政子が帰ってくるまで30分ほど、女の子の格好のまま花見さんと世間話などしていたのであった。
 
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政子が帰ってきたのでボクは鍵を返そうとしたが、「あ、ずっと持っててもいいよ。いつでも来て勝手に着替えてもらってもいいから」などという。「え?でも・・・」とボクは花見さんの顔を見ながら
「突然来て、もしお邪魔しちゃったら悪いし」と言ったが
「前にも言ったけど、私が高校卒業するまでは啓介とはHはしない約束だから、ひょっとして冬子が突然来るかも、くらいの緊張感があったほうがいいもん」
などと笑いながら言う。花見さんは苦笑していた。
「そう?じゃ預かっておくね」
 
そういう訳で、ボクはそのあと仕事のない日はほぼ毎日、政子の所に出かけて女の子の服に着替えてからカラオケ屋さんに行き、女の子の声の発声練習をする日々になったのであった。だいたい朝は政子がいるので、着替えがてらいろいろとおしゃべりをした(洋服のこととかメイクのこととかもよく話したので、ほとんどガールズトークになりつつあった)。帰りは政子ひとりの場合はまたおしゃべりを楽しんだが、花見さんもいた時はできるだけさっと着替えてさっと帰るように気を配っていた。花見さんも頻繁に政子の家に来ているようだったが、夕方5時で「面会時間終了」らしかった。それで花見さんは政子の手料理の夕食を食べたことがないらしい。
 
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そして「事件」が起きたのは8月も末、もうそろそろ夏休みも終わるという日であった。その日も仕事は無かったので、いつものように朝政子の所で着替えて、街に出かけ、カラオケで発声練習をしたあと街を少し散歩し、2時頃、政子の家に戻った。居間のテーブルの上に新しいnonnoがあったので、あ、まだこれ見てないと思い、まだ着替えないままボクはそれを読んでいた。そこに花見さんがやってきた。
 
「あ、こんにちは。またお邪魔してます。政子さんまだですよ」
と言ったが、なんか今日の花見さんは様子がおかしい。
「あれ?宴会か何かあったんですか?」とボクは尋ねた。
花見さんは明らかに酔っていた。
「いや、ひとりで飲んでた。。。。。振られちゃって」
「振られた?政子さんにですか?」
「違う・・・その・・・」
 
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「花見さん、もしかして政子さん以外にも恋人がいたの?」
「だって・・・・政子は絶対にHさせてくれないし・・・他で発散させなきゃ我慢できないじゃないか」
「そんなの、裏切り行為だと思います」
「それは分かっていたんだけど・・・・」
と、花見さんは少し落ち込んでいる感じだ。
「でも、そちらと切れたんならいい機会じゃないですか。今後は政子さんひとりに絞りましょうよ」
 
「そうしたいけど・・・・俺、我慢できない・・・・・」
と言って、少しうつろな目をしている。
「今日は帰って少し寝られませんか?寝たら少し気持ち落ち着きますよ」
と言う。
「そうだな・・・・・だけど、君も可愛いな」
「え?」
「な?俺の裏の恋人にならない?」
「はあ?私、男ですよ」
「それだけ可愛ければ構わないよ。妊娠の心配も無いし」
「え!?」
 
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花見さんは突然ボクに覆い被さるようにしてきた。
「ちょっと!」
「冬子ちゃん、Hしたことないんだろ?一度してみようよ。気持ちいいから」
「ちょっと、やめて」
ボクは抵抗するが、腕力ではかなわない。
たくみに洋服のボタンを外されて上半身はブラだけにされ、下半身はスカートをめくられ、パンティを脱がされてしまった。ひぇー。
 
ボクを押さえつけたまま花見さんは自分の服も脱いでしまう。その股間に大きなものがあるのを見た。何これ?ボクは目を疑った。おちんちんって、こんなに大きなものだったの?
 
それは自分の身体に付いている器官とは別物という感じだった。ボクのってそんなに大きくないし・・・・これがおちんちんなら、ボクのは本当はおちんちんじゃないのかも。。。そうか。ボクには実はおちんちんは無かったんだ!!じゃ、ボクって本当は女の子だったのかも。
 
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突然変な事をされて頭の中が混乱してしまったのだろうけど、ボクはその時、そんなことを考えてしまった。
 
激しいキスをされた。唇だけではなく顔のあちこちに次々とキスされる。胸とかおしりとかも揉まれる。あの付近に熱い物体が当たる。ボクはもう抵抗する力を失っていた。嫌だ・・・こんなことされたくないよ。。。。ボクは涙が出てきた。
 
その時だった。
 
ガチャッ、という音がして、居間のドアが開いた。
え?
 
政子だった。
 
「ただいま。。。え!?何してるの?」
「政子・・・助けて」ボクは涙のあふれる顔で言った。
花見さんはしばらく政子の顔を見て、どうしていいか迷っていたようだったが「帰る」というと、服を手に持ち裸のまま、まさに脱兎の如く飛び出していった。
 
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政子はあっけにとられてそれを見送っていたが、すぐにボクのそばに寄り「大丈夫?」と訊いた。
「ギリギリ未遂。貞操守れた」とボクは答えた。まだ涙が出ている。
「そう、良かった」と政子が微笑む。
その微笑みを見てボクは泣いてしまった。政子はボクのスカートの乱れを直すと、ギュッとハグしてくれた。
 
政子がお茶を入れてくれる。
「冬子、いつもお砂糖もミルクも入れてないけど、今日は甘いの飲んだ方がいい」
といって、砂糖とミルクの入った紅茶を勧められた。
「ありがとう」と言って、ボクはそれを飲む。
 
ボクは花見さんから聞いたこと、そしてされたことを全て話した。
「やっぱりね・・・・うん。他にも恋人いるんじゃないかなというのは感じてたのよ。だからキスまでしか許してなかったし。やはり他で性欲を満たしてたのね」
「どうするの?」
「当然サヨナラよ」
「いいの?」
「浮気する男なんて嫌い。婚約は当然破棄。叔母さんに一緒に行ってもらって鍵も返してもらう。念のためこちらの鍵も付け替える」
政子は断固とした口調で言った。なんか漢らしい、と思って惚れ惚れとした目で、ボクは政子を見てしまった。
 
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少し落ち着いてくるとボクは花見さんのおちんちんを見た時、凄く大きいと思ったこと、あれがおちんちんなら自分のはおちんちんじゃなくて、だから自分にはおちんちんが無いのかも知れない。だからボクは実は女の子なのかもと思ったことを話した。すると政子は笑っていたが
「私もさっき初めて啓介のおちんちん、そして冬子のも見ちゃった。確かに別物かもね」と言い、
「でも、冬子はたぶんホントに女の子なんだよ。だからおちんちんは無くていいの。それはきっと少し大きめのクリトリス」と言った。
 
そうか。やはりボクは女の子なのか。そしてあれはクリちゃんだったのか。ボクはその時、凄く納得してしまった。思えば、この時が自分の性別意識の転換点だったような気がする。あの時確かに自分は「女の子かも」という意識を持ってしまった。とんでもない状況の下ではあったけど。
 
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