広告:まりあ†ほりっく 第3巻 [DVD]
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■夏の日の想い出・心の時間(2)

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「あの契約書不備問題は私は知ってたけど、当然クニちゃんも承知の上だと思ってたんだけどね」
と津田先生(姉)。
 
「うん。その件はかなり後になってから知って焦った。でも対策を取る前に週刊誌の件が出ちゃったから。僕はケイちゃんのお父さんを説得するのに、姉ちゃんに動いてもらうつもりだったんだけどね」
と津田社長(弟)。
 
「私の方がケイちゃんとの付き合いは長いからね」
「ええ。うちの父とも顔を合わせたことが何度かありましたね」
 
「でもメジャーデビューの話が出てきたのは、もうひとつのルートがあるんだよね。ローズ+リリーで制作したCDがすぐ売り切れちゃったでしょ? その報告を聞いてウラちゃんがこいつは化けるかも、なんて言ってたところで、丸花さんが『うん、この子たちは絶対売れる』なんて言ったから、ウラちゃんは、メジャーデビューに向けて、町添さんに直接電話入れて動き始めたんだよ」
 
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「そういう経緯だったんですか」
「でも、あの時、いくつかの線が並行して動いていた感じだから、結果的にどれが有効だったのかは僕たちもよく分からないね」
 
「私自身、何だかさっぱり分かりませんでした!」
 
「ケイちゃん、デモCDも作ってたよね?」
とお姉さんの方から言われる。
 
「そうなんです。私だけ歌ったものと、マリと2人で歌ったものと1枚ずつ。その私1人で歌ったものは、実は雨宮先生と作ったものなんですが」
 
「あ、そうか。そこに雨宮先生が関わっているのか!」
 
「上島先生が曲を書いてくださったのも、どうも雨宮先生の推薦があったからみたいですし」
 
「ああ。なるほど。それでか。実は上島先生が曲を書いてくださった理由が謎だったけど、雨宮先生からのルートか」
と津田社長。
 
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「結局雨宮先生の推薦で上島先生が曲を書いてくださって、上島先生が町添部長に、ぜひ★★レコードから出してください、と言ってくださったことから、最終的にメジャーデビューが決まったみたいです。雨宮先生の口ぶりからすると」
 
「なるほどねえ」
「じゃローズ+リリーの影の仕掛け人は実は雨宮先生だったのか」
 
「雨宮先生自身がお忙しいので、結局5月に完成したデモ音源自体は私自身ももらってないんですけどね。でも雨宮先生が加藤課長にお聞かせして、この子いいね、と言ってもらっていたらしくて。だからそのルートもあるんですよね」
 
「忙しいってより女から逃げてたんじゃ?」
 
「あはは。でもそのルートで進んでいたら私のソロだったろうから。結果的にはマリとのデュエットで良かったと思います。そもそもソングライトは私とマリのペアでやってるから、そのペアで歌も歌った方が自然です」
 
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「うん。このふたりの組合せが絶妙だと僕も思う」
「ケイちゃんひとりで歌うより、人気の出やすい組合せだよ」
「ケイちゃんの歌は完璧すぎるから、マリちゃんの歌でホッとするね」
 
「でもマリちゃんだけだと、ただのアイドルにしかなれなかったろうね」
「いや、アイドルとしても難しい。あの子、サービス精神が無いから」
「ああ、それは言える。あの子、サイン頼んでも無視されたという話が多い」
「すみません。それはマリがいつもボーっとしているからで、聞こえてないんです」
「なるほど」
 
「マリちゃんもやはりケイちゃんがいるから輝くんだな」
「結局、ケイちゃんとマリちゃんって切り離せないよね」
 

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「ケイちゃんの性別問題も知っていた人と知らなかった人が入り乱れてるよね」
 
「そうなんです。丸花社長はご存じでしたから、私はてっきり浦中部長もご存じかと思っていたら、ご存じじゃなかったみたいで」
 
「ああ、それそれ。ウラちゃんさ、丸花さんに『この子、男の子だったんですよ。びっくりしました』と言ったら「あれ、言わなかったっけ?」と言われたって」
「あはは」
「絶句して、そんなの知ってたら最初から教えてください!と言ったらしいけど」
 
「やはりケイちゃんが女の子として完璧すぎるからね」
「うん。普通この子を見て、男の子だとは思わないもん」
「だから性別を知っていても、その性別に注意して取り扱わなければならないということ自体を思いつかない」
 
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「あ、でも1月に手術して完全に女の子になったんでしょ?もう傷は痛まないの?」
「へ?」
「タイに行って性転換手術を受けて来たと聞いたけど」
「手術なんて受けてません」
 
「うっそー!?」
「だってケイちゃん、明らかに12月頃とは雰囲気が変わってる」
「そうですか?」
「そもそもおっぱいは昔から大きくしてたもんね」
「ええ、それは確かです」
 
「去勢もデビュー前には済ませてたよね。だから最終手術だけだと思ってたんだけど」
「私まだ去勢してませーん」
 
「嘘!」
 

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しかし私と政子がローズ+リリーとして活動し始めてからメジャーデビューするに至る経緯の中では、雨宮先生・上島先生、津田先生・丸花社長、町添部長・加藤課長、津田社長など、かなりの人数の人がそれぞれの立場で動いていたようで、結果的にどの線がどうなって、メジャーデビューに至ったのかは、結局はよく分からない面も多かった。
 
ただ、雨宮先生と津田先生の動きは特に大きかったのではないかという気がした。
 

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その雨宮先生と話す機会も、春休み中に訪れた。
 
4月4日の土曜日。私は新宿歌舞伎町を歩いていて、バッタリと雨宮先生と遭遇した。
 
「あら〜、こんな所で会うなんて奇遇ね」
「ご無沙汰してまして済みません」
「でも今日は4月4日、オカマの日じゃん。オカマの日にふたりのオカマがよりによって歌舞伎町で出会うって、私たち運命的な出会いじゃないかしら?」
「ホテルには行きませんよ」
「じゃ、カラオケ行こうよ」
「はい、それなら」
 
ということで私たちは歌舞伎町のシダックスに入った。
 
先生はいきなり大量の食べ物・飲み物を注文する。
「昨夜徹夜だったからお腹空いてね〜」
などとおっしゃっている。
 
「生ビール2つ」
というオーダーは
「いえ。ビール1つと烏龍茶1つで」
と訂正したが。
 
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「ビールくらいいいじゃん。お酒の内に入らないわよ」
「一応アルコール飲料です。私は未成年ですから」
「硬いなあ。で、いつものように負けた方がお勘定持ち」
「了解です」
 
お互いに相手が押した番号で呼び出された曲を歌う形式である。雨宮先生はいきなり『甘い蜜』を呼び出した。私が歌うと
 
「CDの時よりうまくなってる」
とおっしゃる。
 
この日、私が呼び出した歌はいつもよりあまり気が入らない感じで適当に歌っておられたが、雨宮先生の方は、ローズ+リリーがCDやライブで歌っていた曲をどんどん呼び出して私に歌わせた。
 
「活動停止していても練習はサボってないね」
「当然です。すぐ復活しますから」
「よし。それでなくちゃね」
 
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「ところで雨宮先生、もし良かったら、昨年の春に作ったデモ音源、私にも一部いただけませんでしょうか?」
「渡してなかったっけ?」
「頂いてません」
 
「すまん、すまん。でも★★レコードの加藤課長とか、◎◎レコードの林葉課長とかには聞かせたよ」
「はい、その件はご本人たちから聞きました。○○プロの丸花社長も聴いたとおっしゃってました」
 
「あれ、丸花さんには渡してないけど、どういうルートで聴いたんだろう。あ、そうだ。その音源渡すからさ、ケイちゃんも、私とデモ音源作った後、マリちゃんとふたりで吹き込んだデモCDあるんでしょ? それ私に頂戴よ」
 
「あ、はい。それでは御自宅に郵送します」
「あれ、いっそそのままリリースしないの?」
「うーん。売るにはもう少し手を入れたいのですが」
「少なくとも『明るい水』よりマシだと思うけどね」
「あはは」
 
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「ケイちゃんひとりで歌ったデモCDは、シモやんの所にも1部置いてたはずだから、そこに行ってコピーさせてもらおう」
 

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ということで、私たちはカラオケでたっぷり歌った後、渋谷に移動して、下川先生のオフィスを訪れた。
 
そこはとても明るい、普通のビジネスをしている会社のオフィスのような整然とした所であった。ここに来るのは初めてである。
 
ただ、そこで働いている人たちはみなラフな服装で、みんな机の上に数台のパソコンを置き、作業をしている。これだけ見たらIT関係の会社かと思うだろう。ただ普通の会社と少し違うのは全員ヘッドホンをしていることと机の上に3オクターブほどの鍵盤が置かれていることか。
 
下川先生は、私たちの突然の訪問にびっくりしたようであったが、応接室に招き入れて、ケーキとコーヒーを出してくれた。
 
「ケイちゃんの服装が可愛い。女子高生を満喫してる感じ」
「ありがとうございます。最近開き直ってるんで」
「なるほど。でも、どこにも出かけてなくて良かった。何かあったっけ?」
と下川先生。
 
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「うん。今日は4月4日オカマの日だから、私とケイちゃんとオカマ同士連携して親密になろうかと」
「そんな話はありません」
と私が言うと、下川先生は笑っておられた。
 
「モーリー、女子高生とHすると淫行で捕まるよ」
などとおっしゃっている。
 
「あ、それでさ。ローズ+リリーがデビューする少し前に、私がケイちゃんのデモCD作って持って来たでしょ。あれあるよね? 1部コピーさせて」
「ああ。あったはず。ちょっと待って」
 
と言って、下川先生は応接室内の端末を操作して、そのデータを見つけ出した。
「CDにプリントしてあげるよ」
と言って、そのままCDライトの操作をする。
 

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「でも下川先生、こういうオフィスでお仕事なさってるんですね」
「そそ。ここが上島ブランドを支える影の生産工場だよ」
 
「下川先生の編曲ってチームワークだったんですか」
 
「うん。ここで働いているのは、みんな有能なアレンジャーばかり。彼らに編曲をしてもらって、それで検査チームでチェックして品質維持をした上で最終的には僕が見て、OKを出せば、それで『下川圭次編曲』の名前で出す。演歌系とかロック系とかアイドル系とか、それぞれ各ジャンルの得意なアレンジャーがいるからね。それで作業分担。他にサウンド制作チームもある」
 
「編曲のマージンは1:2だったわよね」
「うん。印税は下川コーポレーションと、実際に編曲した人と1:2で分ける。だから、自分が編曲した曲がヒットすればけっこうな印税がもらえる場合もある。買い取り式の場合は別だけどね」
 
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「まあ実際は大半は買い取り式の方が収入としては大きいでしょ?」
「そそ。とにかく上島の作曲量が半端無いからさ。あいつだいたい年間1000曲くらい書いているから、上島本人で編曲まではできないんだよ」
 
「上島先生は基本的にメロディメーカーですもんね。ご自身で編曲までなさる曲はそう多くないみたいですね」
 
「うん。自分で作曲から編曲までしていたら年間たぶん50曲が限界だよ。だから上島がメロディーを書いた曲は僕のオフィスに持ち込んで、チームワークで編曲する。求められたらサウンド技術者に伴奏音源も作らせる。ここには常勤・非常勤を含めて100名くらいアレンジャーがいるから、ひとり年間30本編曲すれば最大編曲能力は3000曲ってことになるけど、実際の実績としては、だいたいひとり平均年間15曲くらいだね。その7割が上島作品。実際にひとりで編曲する曲数は多作な人で70〜80本、少ない人で4〜5本」
 
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「ただ、特別な曲はシモやん自身が編曲してるよね」
「年間20〜30曲だね。『その時』『遙かな夢』『甘い蜜』などは僕自身が編曲した」
「わあ」
「上島がこれはリキ入れてアレンジしてくれと言ったからね」
「ありがたいです」
 

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CDがプリントされてきた後で、私たちは下川先生も含めて、ちょっとオフィスを出て、近くの喫茶店に入った。
 
「それで私自身もあの時期って何だか色々なことが同時進行していてよく分からなくなっていて。私たちがメジャーデビューに至った経緯とかで、先生方がご存じのことがあったら教えて頂きたいと思っていて」
 
「メジャーデビューが決まったのは上島フォンだよね」
「ああ、そうだろうね。上島が『その時』を書き上げて、そのまま町添さんに電話したので★★レコードからのデビューが決まった」
 
「やはり上島先生が曲を書いてくださって、それで町添部長に推薦してくださったのは、雨宮先生のご推薦だったんですか?」
 
「まあ推薦というより、たきつけたからね。この子たち凄い子だよ。今にライちゃん、この子たちに追い抜かれるよってね。だから将来のライバルにライちゃんの実力を見せつけてやりなよって」
「わあ」
 
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「それでさ、私がさんざんたきつけて『その時』を書いて、すぐシモやんに送って編曲してもらって、それを△△社に送ったでしょ。ところがその翌日にはシモやんの所に「これも編曲お願いできないでしょうか」と言って、マリ作詞・ケイ作曲『遙かな夢』の譜面が送られて来た。その譜面を見て、上島が悔しがってた」
 
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