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■夏の日の想い出・幼稚園編(2)

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「取り外す派にも、ネジ式とか、ボタン式とか、接着式とか、マジックテープだとかファスナーとか諸説あって」
「今考えたら、まるでディルドーだね」と私たちは大人だから言えるジョークを言う。
「ほんとほんと」
「まことちゃんに預けるなんて説もあったよ」
 
「冬もおちんちん取り外せたらいいのにね、なんて言われてたね」
「あはは、言われてた」
「だけど実際問題として、冬のおちんちんを見たことのある子は女の子でも男の子でもいなかったよね。私は多分見てると思うんだけど、自信無いんだよなあ」
「ふふふ」
「しかも、おちんちんの付いてないお股を見た記憶もあるんだ。あれ、冬って本当は女の子だったの? なんて訊いた記憶あるし」
「ふっふっふ」
 
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リナのお母さんによれば、私は友人たちから「ウラヌスちゃん」と呼ばれていたらしいが、私もリナもこのニックネームは覚えていない。
 
「リナと遊ぶ時、よく冬ちゃんってリナのスカート借りて穿いてて、お絵描きもその格好でよくしてたよ」
 
などとも言われたのだが、これは私もリナも覚えていない。ひょっとしたら私って自分が思っている以上に小さい頃、女の子の服を着ていたのかもと思うこともあるが、やはりその頃の記憶そのものが曖昧である。
 
私の描く絵でセーラームーンの影響というのは大きかったみたいで、当時私が描く絵はみんな少女漫画っぽかったらしい。園児の絵が幼稚園の玄関とかに張り出してあると、多くのお母さんたちから
 
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「あら、この絵上手ね。女の子らしくて可愛い」
などと言われて、母は他人の振りして聞いていたなどと言っていた。
 

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恐らく年中さんの6月頃ではないかと思う。
 
地元でスポーツ大会か何かがあって、多数の幼稚園児が開幕式典に動員され、歌を歌い、マスゲームをするということであった。そのため、お歌やマスゲームの練習を結構やらされた。
 
当日、幼稚園に集まってからバスで会場に移動し、最初は各幼稚園ごとの区画に座って開会式が始まるのを待つ。
 
やがて式が始まり、先生の指示で起立する。流れる音楽に合わせて歌を歌う。私のノートには『あかいちから』を歌ったと書かれているが、きっと『若い力』
だろう。
 
そのあと、マスゲームの準備をするためいったん退場する。体育館の外側廊下に出て、控室で衣装に着替えるという話だったのだが、控室の準備ができていなかったようでしばらく待たされる。
 
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けっこう待ってから大会の係の人が
「控室が空きましたので女の子はこちらに来て着替えてください。男の子は申し訳ないですが、体育館の外で着替えてください」
などと言う。
 
それで男子と女子に別れてそれぞれ着替える場所に移動する。
 
この時、私は外に出ようとしたのだが、玄関の所で腕章を付けたお兄さんに止められる。
 
「君君、女の子は向こうで着替えるから」
と言われ、そばにいた腕章を付けたお姉さんに
「この子連れてってあげて」
と言われた。
 
「OK。君、迷子になっちゃった? お姉さんが着替える場所に連れてってあげるね」
と言われて、手を引いて控室に連れて行かれる。
 
そして控室の中で赤いワンピースのような服と帽子を渡された。渡されたので、まあいいかと思い、私は幼稚園のスモッグの上にそのワンピースを重ね着し、赤い帽子もかぶった。
 
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やがて「さあ行くよ」と言われ、ぞろぞろと出て行く。このマスゲームは男子は全員同じ動き、女子は全員同じ動きで、まとまっていなくても良いので、ここではそもそも色々な幼稚園の子が入り乱れている感じだった。
 
10人単位でフロアに出て行く。赤い服を着た女子の輪を、白い服を着た男子の輪が取り囲んでいる状態で音楽スタート。私は幼稚園での練習では男子の方の動きをしていたのだが、女子の動きもいつも見ていたので、そちらもちゃんと踊ることが出来た。左右の子とタイミングが揃うように気をつけながら女子の動きをする。
 
『走れマキバオー』(『走れコータロー』の替え歌)の歌に合わせて、結構速いテンポで踊りは進む。左右の子と手を繋いで中心に寄り、また輪を広げる。こちらが両手を挙げて立っている所で、外側に居る男の子がぐるりとその周りを回る。音楽に合わせて走って輪が回転する。最後は外に向かって座り、その前に男の子が立つ形で踊りは終了した。
 
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退場し、男子はまた外に出て行き、女子はさっきの控室に戻る。ここで赤い服を脱ごうとしていた時、バッタリとリナに遭遇した。
 
「あれ、なんで冬、赤い服着てるの?」
「よく分からないけど、こっちに連れて来られてこの服渡されたからこれ着た」
「へー。じゃ、それで踊ったの?」
「うん。私、女の子の踊りも分かるし」
 
「まあ、冬はそれでいいのかもね〜」
と言ってリナは笑っていた。
 
一緒に服と帽子を脱いで畳み、戻す場所に置く。そして一緒に自分たちの幼稚園の集合場所に移動した。
 
そういう訳で、このマスゲームで私が女子として踊ったことを知っているのはリナだけだと思う。
 

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当時私たち一家は愛知県内に住んでいたのだが、年中さんの夏休みに何かの懸賞で大分ハーモニーランドの招待券(パスポート引換券)が当たってしまい、折角当たったならということで、博多に住んでいる伯母(母の姉:四女)の家を訪ねるのを兼ねて行くことにした。父は仕事の都合が付かないということで母・姉・私の3人で出かけた。当時姉は小4である。
 
以下の話も小学生の時に書いた「私の思い出」という秘密のノート、それから後に姉や母から聞いた話を総合し、若干の推測を加えたものである。
 
朝早くから電車に乗り名古屋駅に出て新幹線に乗る。朝早く出てきたので待ち時間に駅構内のドーナツ屋さんに入った。
 
「あ、私そのキッズセットがいいな」と姉が言った。
子供向けのグッズ数点とドーナツ数個、ドリンクのセットのようである。「ふーん。まあいっか」と母は言い
「じゃ、そのキッズセット2つください」
とオーダーした。
 
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「お子様のサイズは何センチですか?」
「あ、この子は150で、こちらは100です」
「かしこまりました。ではお詰めしますね」
 
と言ってグッズを詰めた袋を渡してくれた。
 
姉はすぐに中身を見たかったようだが、あまり時間もないので新幹線の中で見ようということになる。
 
私はドーナツ1個にアイスウーロン茶(私は小さい頃からお茶派だったらしい)を飲み、姉はドーナツ2個とメロンソーダを飲む。母はアップルパイにコーヒーを飲んでいた。食べた所でお店を出る。
 

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子供にとって新幹線に乗るというのは興奮する体験である。窓の外の景色も楽しいし、特に窓際に座った姉はかなり興奮して「静かにしなさい」と叱られていた。
 
「あ、そうだ。キッズセットのグッズ見てみよう」
ということで、中を開けてみる。
 
「へー。ノートに鉛筆に、お茶碗にお箸に・・・・」
「結構入ってるね」
「お正月の福袋の残りかな」
「さすがにもう福袋のは残ってないんじゃない」
「あ、パンツもある。りりかのか」
「ああ、それでサイズ聞かれたのね」
 
「冬のも同じ?」と言って姉が覗き込んでくるので、私は袋の中身を出した。
 
「手帳とボールペン、マグカップにスプーンか。ね、ね、私のと交換してよ」
「うん、いいよ」
「あ、冬のにもパンツ入ってる。こちらもりりかだ」
「ふーん」
「あれ、でもこれ女の子パンツだよ」
 
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「ああ」
「お店のお姉さん、冬を見て女の子と思ったのかな」と姉。
「まあ、そんなこともあるだろうね」と母。
 
でもそういうのは、割と日常茶飯事である。
 
「サイズ100だから私は入らないしなあ」と姉は言ったが
「まあ、冬が穿けばいいんじゃない」と母は言った。
「そうだねー。別にパンツなんて他人に見せるもんでもないしね」と姉。
 
私は女の子パンツを穿いていいと言われて、ちょっとドキっとした。
 

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景色を見ながら、姉がしゃべりまくるのを聞きながら、おやつなども食べながら、3時間ほど揺られて小倉に着く。
 
ここで博多から来た伯母と、2人の娘(私の従姉)純奈・明奈(小3・小1)と落ち合った。一緒に大分行き「ソニックにちりん」に乗り、杵築駅で降りてバスに乗り換え、ハーモニーランドに入る。
 
絵本で見るサンリオのキャラクターがたくさん歩いているので、私は凄く興奮した。それまで私は「キキとララ」が好きだったのだが、園内に入ってすぐに「マイメロ」ちゃんに握手してもらったので、すっかりマイメロのファンになってしまった。姉や従姉たちもとても楽しそうにしていた。
 
あれこれショーを見たり、観覧車に乗ったり、コースターに乗ったり、園内のふたつの区画を結ぶ汽車に乗ったりして、とても楽しい時間を過ごした。私は後に東京に引っ越してからピューロランドにも行っているが、ただ見るだけという感のあるピューロランドに対してハーモニーランドは動きがあって、より遊園地志向が強い。
 
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園内を歩いているキャラクターとはたくさん記念写真も撮った。キティちゃんのお家みたいな所があり、そこでも色々衣装を着けて記念写真を撮るコーナーがあったので、みんな写真を撮ろうということになる。
 
従姉たちはキティちゃんとミミィちゃんの着ぐるみを着たが、姉は赤いプリンセス風のドレスを着た。そして姉は私に「あんたこれ着たら?」と言って、ばつ丸くんの着ぐるみを渡したのだが、姉が可愛いドレスを着ているので「私もドレス着たい」と私は言った。すると母が「ああ。それもいいんじゃない?」
と言ったので、私はピンクのドレスを着た。
 
それで私と姉、従姉2人、4人入った写真、母と伯母まで入り6人で写った写真と4枚の写真を撮った。
 
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この時の写真はその後紛失したものと思っていたのだが、母がスキャンしてパソコンに取り込んでいたものが、私が大学1年の時に偶然出てきて、データを送ってきてくれた。これは政子に見つかりにくいようにサムネールを偽装して、フォルダートリーの深い所に隠しておいた。
 
「じゃ、女の子たち、ひとり1回ずつくじを引いて」
と言われて、純奈と明奈はそれぞれ1回ずつ引き、キティの手鏡と指人形を当てた。次に姉が引こうとしたのだが、思い直したように
 
「冬の方がくじ運強いから、冬が引いてよ」
と姉から言われ、私が2本引くことになった。
 
すると青い玉が2個出た。
 
「大当たり〜!」
と可愛い服を着たお姉さんが言って、キティちゃんの水着か当たったと告げる。
「君たちサイズは何かな?」
 
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「あ、お姉ちゃんの方は150、小さい子は100です」と母が言い、可愛いキティの水着をそれぞれもらった。
 
この時、もし伯母の娘が1人であったら、私が当てた水着は従姉にあげてたところだが、向こうが2人だから1人にあげると姉妹で微妙な感情になるので、こちらで2着とももらった方がいいと思ったのだ、と後で母は言っていた。
 
「でも男の子用の水着もひょっとしてあったのでは?」
「あ、それは考えなかった」
と言って母は笑っていた。
 
「わーい、水着だ。プールとかも行きたいなあ」と姉が言うと
「じゃ、博多に戻ってから一緒にプールに行こうか」と伯母が言い、「あんたたちにも水着買ってあげるから」と娘たちに言った。
 

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充分楽しんでから、引き上げる。帰りはバスで日出(ひじ)駅のほうに出て(ハーモニーランドは杵築駅と日出駅の間にある)、JRで別府に入り、別府の大きな旅館に泊まった。
 
私たちの家族で1部屋、伯母たちの家族で1部屋取る。一息ついてから温泉に入りに行こうということになる。
 
「冬は男湯に入るの?」
「幼稚園児をひとりで入れられないし、まだ小さいから女湯でいいよ」
 
「あ、そうか。高山の温泉でも女湯に入ってたよね。でもおちんちん付いてるのに女湯に入っていいのかなあ」
「うーん。じゃ、おちんちん取っちゃおうか」
 
取っちゃおうかと言われて私はドキっとした。おちんちん取られたら、私、女の子になっちゃうのかな?
 
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「ちょっと、冬いらっしゃい」
と言われ、ズボンとパンツを脱ぐように言われる。
 
「あんたのタマタマってよく身体の中に入り込んでるんだよね。だからいつものように押し込んじゃおう」
と言ってギュッと中に押し込まれる。押し込まれると出てこない。そうそう。私のタマタマは小さい頃しばしば、袋の中には無くて体内に入り込んでいた。お腹に力を入れると飛び出してくるのだが、特にそういうことをしない限りは結構長時間、中に入ったままになっていた。
 
更に母は
「おちんちんも押し込んじゃえ」
と言ってギュッと中に押し込み、その上から広い肌色の絆創膏のようなものを張り付けた。
 
「ほら、これでおちんちんもタマタマも無くなった」と母。
「わあ、女の子みたい」と姉。
 
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などということで、私はお股を女の子風に偽装された、と小学校の時に書いたノートには書かれているのだが、母はそんなことをした記憶は無いという。
 
「あんた、おちんちん付けたままお風呂に入ってた気がするけどなあ」
と母は言うが、その後の記憶やノートの記述を見ると、やはり股間偽装していたのだと思う。
 

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夏の日の想い出・幼稚園編(2)

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