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■春眠(2)

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「だよねー。ね、奈々美も彼氏いるよね?」
「・・・・いると思う。今、一瞬彼女から恋愛問題相談されたことないよなって、考えて確認した」
「ああ、相談受けたら、クライアントになるから守秘義務が出るのね」
「うん」
「奈々美、Hしてるよね」
「してるっぽいね。ちゃんとしっかり避妊してくれていることを祈るのみ」
 
「私、私と彼が大学に合格した時、記念にHすることにしたんだ」
「あ、そういうのいいね。励みになるんじゃない」
「うん」
「でも、そしたら日香理は大学に行くのね?」
「うん。その問題ではやっと母ちゃんを説得した」
「おめでとう!頑張ったね」
「うん。就職とか見つからなくても、うちじゃ面倒みないからね、と言われたけど、何とかバイト見つけてでも頑張ると言った。大学も入学金だけ出してもらったら、授業料はバイトと奨学金で頑張って、親には迷惑掛けないようにすると言ったし」
 
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「良かったじゃん、ちゃんとお母さんとそういう話ができて」
「先月末に青葉に相談したのがきっかけで、少しちゃんとお母ちゃんと話してみようという気になって、その件で何度も話して、あんたには根負けしたと言われた」
「偉い偉い」
「彼氏とのことも今後、絶対門限破らないように頑張ると約束した」
「そしたらそれはマジで頑張らなきゃ」
「うん。今のところちゃんと門限守れてるし」
「よしよし」
 
「たださ」
「うん」
「行く大学のことではまだ母ちゃんと合意してないんだよね」
「ああ。。。。。日香理はどこに行きたいの?」
「私、東京方面に出たいんだよね。今目標にしてるのは東京***大学」
「おお、超難関だ!それは頑張らなきゃ」
「でも母ちゃんは地元の富山大学か金沢大学でいいじゃんと言ってる」
「富山大学も金沢大学もけっこうレベル高い」
「でも東京に出たいんだよねー」
「まだ大学受験までは4年あるからね。もっともレベルの高い大学に行くには高校も少し考えないといけないけど」
「そうなのよね。それがあるんで、今母ちゃんとはバトル中で」
「まあ頑張ろう」
「うん」
 
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その晩は、青葉の部屋に青葉と日香理、桃香の部屋に桃香と千里が寝た。日香理が翌朝起きると果たして青葉はいない。下に降りていくと青葉が御飯を作っていた。「お早う。手伝うね」「ありがとう。そちらの鍋にお味噌入れてくれる」「OK」
 
「ふたりとも早起きだねえ」と母がニコニコして言っている。
「桃香姉ちゃんたちは、千葉でもだいたい8時頃起きてたなあ」
「桃香はいつも遅刻ギリギリだったよ。高校時代まで」
「青葉は今朝も4時起き?」
「うん。4時に起きて1時間ほど走って、30分瞑想して、それから汗を流さないと私の1日は始まらない」
「偉いなあ。規則正しい生活。でもそしたらごめーん。昨夜は遅くまでおしゃべりしてて」
「ううん。楽しかったよ」
「じゃ、いっか」
 
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10分ほどおしゃべりしている内に朝御飯は出来てしまった。
 
「しかし、あの子たち起きて来ないね。青葉起こしてきて」
「OK」
青葉は階段を上っていき部屋の外から「桃姉〜、ちー姉〜、朝だよ〜!」と大きな声で言っている。
それを聞いて日香理が「中に入って耳元で声掛けないと起きなかったりして」
と言う。すると母が「いや、お恥ずかしい。あの子たちきっと裸で寝てるから」
 
「あ・・・・・、そうか。あのおふたりそういう関係だったんですね」
「うん。世間ではレスビアンという奴」
「わあ、それもいいなあ・・・・私、一度、女の子とも恋愛してみたい」
「おやおや」
 
青葉は部屋の外で5分くらい声を掛けていたようであった。その間に日香理が御飯とお味噌汁を5人分盛る。やがて、青葉に続いて千里、そして少したって桃香が降りてきて、朝御飯となった。
 
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6月はコーラス部のコンクール、地区大会があった。市内の中学校から10の学校のコーラス部が参加しての大会で、上位3校が県大会に行くことが出来る。青葉のいた中学はこれまでいつも5〜6位だったのだが、青葉の加入が部員を刺激して、みんな今年は練習に熱が入っていたし、そもそも練習に出てくる部員の率が例年より随分高かった。青葉のソプラノソロをフィーチャーした「島の歌・幸い」はひじょうにいい出来に仕上がっていた。
 
この曲のソプラノソロは本来F5の音までしか使用されていないのだが、寺田先生はそれを一部書き換えて、リピート部分をオクターブ上!つまりF6まで使うようにして青葉に歌わせた。中学生ならG5かA5まで出れば立派。C6まで出ればかなり凄いソプラノであるが、敢えて青葉の声域を見せつける作戦に出たのであった。
 
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実際の演奏ではそのオクターブ上の部分を青葉が歌った時、会場のあちこちからざわめきが聞こえた。審査員の先生達も思わず顔を見合わせていた。そして、このインパクトも利いたようで、青葉達の学校は2位に入賞。県大会に駒を進めた。
 
「青葉ちゃんも凄いけど、みんなのレベルが上がったよね」と部長の府中さんは言っていた。
「なんか県大会に行けるかもという気がしたから頑張ったんだよね」
「この勢いで中部地区大会まで頑張ろう!」
部員たちの間でも威勢のいい声が上がっていた。
 
「今年は今まであまり真面目に練習に出て来てくれてなかった男子たちが頑張ってくれたのも大きかったね」
「うんうん。今まで男声パートで曲が崩れてたからなあ」
「悪かったな」
 
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コンクールの出場枠は35名で、内28名が女子(ソプラノ12人・アルト16人)、7名が男子(テノール4人・バス3人)であったが、男子部員には音程が不安定な人が多く、以前はしばしばそれで全体のバランスが崩れてしまっていたらしい。寺田先生は結構ギリギリまで、女子だけで出るか、男子も入れるかを悩んでいたというが(女声合唱で出ればその分多く女子部員を出してあげられる)、今年は男子たちがまじめに練習に出て来ていたので、混声でいくことを半月くらい前に決断したのであった。
 
「いや、なんか今年はこの部室が熱く燃えてる感じだったから、ちゃんと練習に出ないといかんかなと思って」
などとバスのパートで1人で5人分くらいの声量を出している山岸君が言っていた。
 
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6月中旬から、体育の時間に水泳の授業が始まった。青葉は水着姿をクラスメイトたちに初披露した。
 
「下着姿はいつもの体育の着替えの時に見てたけど、水着になっても完璧に女の子なんだね」
「へへ。こういう感じで、小学2年の時からスクール水着を着てるから」
「あの〜、おまたの所が完璧に女の子なんだけど、その付近、どうなっているのでしょうか?」
「あはは、興味ある人はそのうち、一緒にお風呂にでも行こうね」
 
「青葉、女湯に入れるの?」
「むしろ、男湯に入ったことがない」
「えー!?」
「といっても、小学5年の時までは個室の浴槽にしか入ってなかった。
ふつうの女湯に初めて入ったのは小学6年のゴールデンウィークだったかな」
「へー」
「その頃にはけっこう、おっぱい発達してきてたから。去年は、向こうの学校の友達とも一緒に温泉の女湯に入ったよ」
「おお、すごい」
「じゃ今度、一緒に温泉でも行こうよ」などと美由紀が言っている。
 
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着替えの時はそんな感じでガヤガヤしていたものの、いざプールに入ると、みな青葉の泳ぎに驚嘆の声を上げる。
「速ぇ〜!」
「フォームもきれい」
 
「おい、川上、お前遠泳もできるだろ?」と体育の先生。
「向こうではよく湾の横断とかやってました。片道1kmちょいかな」
「片道ってことは往復するの?」
「だって元の所に戻って来ないと着替えられないから」
「えっと・・・・」
「じゃ往復2km?」
「でも海は潮流があるからなあ」
「青葉、トライアスロンとかにも出られるんじゃない?」
「無理。私、自転車乗ったことないもん」
「えー!?何でもできそうなのに」
「練習すればすぐ乗れるようになるよ」
 

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そして青葉はその週の木曜日に日香理と美由紀と一緒に温泉に行ったのであった(詳細は「クロスロード1」参照)。その週末、青葉はまた岩手まで往復してきた。その岩手の避難所で青葉はボランティアに来ていた桃香・千里と偶然遭遇するとともに、ちょっと「不思議な人達」とも遭遇した。そして次の週の木曜日には、日香理・美由紀に加えて、明日香・奈々美・星衣良と一緒に温泉に行った。
 
翌週の火曜日、青葉は公用で東京に出た。水曜日に「震災遺児を励ます会」という大会が政府系の団体主催で都内でおこなわれ、震災で両親・姉・祖父母を失った青葉もその大会に招待されたのであった。前泊・後泊で行くことにしたので28日火曜日に東京に出て1泊し、29日水曜日にその大会に出席、その晩また1泊して30日木曜日に帰ってくるつもりでいたのだが、どうせなら7月1日金曜日を休んでしまって土日までゆっくりして帰れば?などという話になり、ちょっと行きたい所があったので、そうさせてもらうことにした。
 
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28日には10日ほど前に岩手で遭遇した「不思議な人達」と都内で会って色々と情報交換をしたり、親睦を深めた(この件は「クロスロード2」参照)。中でも今年の春に性転換手術を受けたばかりの歌手の唐本冬子(ケイ)さんには、しばらく継続的に青葉がヒーリングをしてあげることになった。30日・1日は千葉の桃香と千里の所に行き、少しのんびりとした時間を過ごした。
(29日も桃香たちの所に泊まった)
 
そして1日の夜、青葉は東京駅で夜行列車を待っていた。7月といえどもやはり夜になると少し夜風がしみる。車内販売の無い列車なので、夜食と明日の朝の朝食を準備して駅に来ていたが、暖かい缶コーヒーでも買って来ようかなと思い、いったんコンコースに降りて自販機かまだ開いてる売店を探していた時のことであった。
 
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「あれ?」
「あっ!」
 
青葉はあまりにも意外な人物にそこで遭遇した。
 
「青葉、こんなとこで何してんの?」
「彪志こそ、こんなとこで何してんの?」
 
「いやー、実は途方に暮れてて」と彪志。
「ん?切符無くしたとか?」
「いや、実は切符が買えなかった」
「どこ行くつもりだったの?」
 
「今日の午後、岡山の大伯父が亡くなって」
「あらあ」
「いや、俺も会ったことない人なんだけどね」
「うん」
「大阪にちょうど出張に行ってた親父が駆けつけたんだけど、男手が足りないからお前も来いと言われて、夕方の新幹線に飛び乗ったんだけど、東京まで来てみると岡山まで行く新幹線がもう無いんだ」
 
「・・・・この時間にはもう名古屋行きしか残ってないんじゃないかな」
「さっき出て行った新大阪行きに乗ろうかどうかと迷ったけどやめた」
「新大阪まで行っても、その先がどうにもならないよね」
 
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「一ノ関を出る時は乗り換え案内で見て、明日の朝6:27に着く連絡がある!と思って飛び出したんだけど、東京まで来てみどりの窓口に行ってみたら、それってサンライズ出雲かサンライズ瀬戸を使う連絡だったんだよね。俺、てっきり新幹線乗り継ぎとばかり思い込んでて」
「夜行の新幹線は無いよ。で、サンライズの切符は?」
「売り切れ。ということで仕方ないから神田かどこかにでも行ってネットカフェで一晩過ごしてから、明日の朝一番の新幹線で岡山に向かおうかと思ってた所」
 
「サンライズのチケット持ってるよ」
「え?」
「私、サンライズ出雲で出雲市まで行く予定だったから。古い友人からうちにちょっと寄らないかと誘われてて。ちょうど時間が取れたから」
「でも、それ青葉のチケットだろ?」
 
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「私が持ってるチケットね、シングルツインという不思議なチケットで」
「なにそれ?」
「シングルなのかツインなのかはっきりして欲しいような名前だよね。サンライズは全席個室だけど、実はこれ、一人でも二人でも利用できるって部屋なんだ」
「へー」
「私はひとりでのびのびと使うつもりで取ったんだけど、彪志の分の特急料金を別途払えばふたりで使えるよ」
「ほんとに!?」
「だから、一緒に乗ろうよ。私は出雲市まで行くけど、彪志は岡山で降りればいいよね」
 
「・・・・だけど、個室なんだろ?その・・・・一緒でいいの?」
「検札に来たら兄妹ですって顔してればいいよ」
と青葉は笑って言った。
 
「二段ベッドだから、彪志、上の段に寝てくれる?私、わりと寝相が悪いから上の段からは落ちるかも知れない」
「OK」
「じゃ、みどりの窓口にこのチケット持ってって、2人利用になりましたということで言って特急券発行してもらおう。乗車券は持ってるの?」
「うん。岡山まで買ってる」
「じゃ、行こう行こう」
 
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