【Shinkon・理彩的見解】(1)
(c)Eriko Kawaguchi 2012-06-05
理彩はその日非番だったのだが、勤務先の病院から急な呼び出しがあって村の自宅から奈良市まで急行していた。しかし途中で「患者は他の病院に転送した」
との連絡を受け、やれやれと思い、車を自宅へと戻す。理彩がちょっと疲れていたのでただいまも言わずに家の中に入っていった時、居間で何かを書いていた命(めい)がピクッとした様子で慌ててその書いていたものを隠した。
理彩は命(めい)の所に行き首に抱きついて
「ただいま〜、まい・はにー。今隠したものを見せなさーい」
と言った。
「おかえり。早かったね。まい・だーりん。別に何でも無いんだけど」
「何でも無いなら見せてくれてもいいよね」
「えーっと」
「浮気相手との交換日記とかじゃないよね?」
「最愛の理彩がいるのに、僕が浮気する訳無いじゃん」
「はい、見せる」
「分かったよ」
と言って命(めい)が見せてくれたのはかなり年季の入ったノートで「Shinkon」
と書かれていた。
「へー。かなりインクが古い。あー、なんか昔の日記だ。何か高校時代のこととかも書かれてる」
と言って理彩はその古いノートを読み始めた。
その日、星は朝から真那・海と一緒にお出かけしていたが、14時頃一緒に帰って来た。見ると星も海も女装だ。たぶん海は身体も女の子に変えられているのだろう。しかし、この家って男の子はみんな女の子になっちゃうんだろうか?と思うと理彩は少し憂いたい気分になったが、星がおみやげに持って返って来た赤福を見るとご機嫌になって、2階の自室で勉強していた月を呼び、お昼寝していた光も起こして、みんなで食べた。
「伊勢に行ってきたの?」
「そうそう。実は円さん(現役神様)から頼まれてね。二見浦の神様にお届け物してきた。行こうとしてたら真那が来たから一緒に行ってきた。ついでにおはらい町にも寄った」と星。
「神様同士の会話とかさっぱり分からないから、私は海ちゃんとカエルさん見て遊んでたんですけどね」と真那。
「でも女の子になって行く必要あったの?」
「ああ、ただの気分の問題。こないだ大阪で買ったこのスカート穿きたかったし」
「海は?」
「私が女の子になったら、海も女の子にしてと言ったから、性転換させて、ついでに連れてった」
「結局、趣味の問題か」
「星、あんた、最近女の子でいる時間の方が長くない?」
「まあ、私そもそも性別って無いから。男の子の姿は便宜上のものだし」
星は最近けっこう学校にも女子制服で出て行っている。先日も担任の先生から星の学籍簿上の性別は男のままでいいのでしょうか?女に変更しましょうか?などと連絡があったところである。本人に訊くと男のままでいいということだったので、そのままにしてある。最近はどこの学校も性別の取り扱いには柔軟になってるなと理彩は思った。中高生で性転換手術を受ける子も増えてきた。理彩も昨年は自分の病院で1件、高校生の性転換手術を執刀した。
真那はその日両親が出張しているということだったので、うちに泊めることにした。星と真那は部屋(居間の隣の、神社の分霊が祭られている部屋が星の自室である)で、ずっと勉強しながらおしゃべりしていたようであったが、夕方になると台所に来てふたりで協力して今日の晩御飯を作ってくれたので、理彩はずっと命(めい)の日記を読み続けていた。
しかしミニスカを穿いた星と真那が楽しそうにお料理しているのをみると、まるで仲の良い女の子の友人ふたりでいっしょに作業しているみたいだ。昔の自分と命(めい)も、母親からはこんな感じに見えていたのかなあ、などと思うと微笑ましい気分になってきた。
命(めい)は居間の隅に置いているワーキングデスクで何かの企画書を書いているようであったが、時々コーヒーを入れて、理彩や星たちのところにも置いて回っていた。理彩がしばしば日記を読みながら笑っているので、命(めい)はかなり気になる様子である。
海は夕飯を食べたらすぐ寝て、光も8時には寝た。月は勉強しながらゲームもしていたのを見つかり命(めい)にゲーム機を取り上げられたので、ふてくされて9時に寝た。星と真那は10時頃(布団を2つ敷いて)寝た。星は男性機能を持っていないので、このふたりが寝る時、避妊具を枕元に置いてあげる必要は無い。
海は寝るのと同時に男の子に戻されたようであったが、星は女の子の身体のまま今日は寝たようであった。男の子の身体で一緒に寝ると真那がイタズラするからなどと言っていたので理彩はまた自分たちの高校時代のことを思い出し微笑んだ。自分たちが寝る時は母がそっと枕元にコンちゃんを投下して行っていた。
命(めい)は仕事が一段落したようで、羊羹を切ってお茶を入れて居間の座卓に座った。
「なんか楽しそうね。たくさん笑ってる」と命(めい)。
「だって、もうたくさん嘘書いてあるからさあ」と理彩は笑いながら言う。
「本当のことと嘘がうまく混ぜられているから不自然さが少ないよね。これ、どこかに公表するの?」
「まさか。だって僕と理彩のプライベートなこと、たくさん書いてるし。星に自分が生まれた頃のこと書いてと言われたから書き始めたんだよね。最初書いたのは、星が小学生頃だよ。その後、少しずつ後のことを書き足して来た」
「じゃ、読むのは星だけか」と理彩。
「うん。月はこういうの読まないと思う」
「でも、これ正誤表が必要だよ」
「そうかな」
「だって・・・これ読んだら、命(めい)は星を妊娠する以前、ほとんど女装をしたことが無かったみたいに読めちゃう」
「えー、そんなにしてないと思うけど」
「嘘付くと、閻魔様におちんちん切られちゃうよ」
「僕、もうとっくにおちんちん取られちゃってるんだけど」と命(めい)。
「やはり、嘘ばかりついてたからだね」
「理彩だって嘘つきな癖に」
「ま、女の子って嘘つきかもね。よし。これ、コピー取って、加筆訂正しちゃおう」
「おいおい」
阪大の二次試験(前期日程)。僕と理彩は受検の前日、ふたりでバスと電車を乗り継ぎ、大阪に出た。普通なら、男の僕はひとりでいいとして、理彩にはお母さんが付いてくるところだが、僕と理彩は過去にもふたりだけで何度か大阪に出てきているので、すっかり放任状態になっている。部屋も普通ならシングル2部屋のところを、ひとつのツインに同泊である。僕たちはチェックインすると荷物を置いてまずは文具などを買いそろえてから一緒にファミレスで夕食を取り、それからホテルに戻って、ふたりでテーブルに並んで座り一緒に勉強した。
「なんかふたりで泊まるのも普通になっちゃったね」
「ふだんもよくお互いの家で一緒に寝てるしね。お母ちゃん、本試験だし付いて行こうか?って言ったけど、命(めい)とふたりの方が集中出来ると言って断った」
「信頼してるんだね」
「そうでもないな。これ渡されたし」
と言って、理彩はスポーツバッグから、何か薄い箱を取り出した。
「何?それ」
「私も箱は初めて見たよ」
僕はその箱を受け取ると、ひっくり返して裏を見た。何だ?これ・・・・と思って、しばらく見ていた時、突然、その正体に気付いて僕は真っ赤になった。
「あ、赤くなってる。純情なんだ」と理彩。
「僕もこれ、箱に入ってるのは初めて見た!」
僕たちはそれを「単品」でなら今までも何度か親に渡されたことあったし、僕たちがどちらかの家で一緒にお泊まりする時は、いつの間にか枕元に2個ほど置かれていたので、実物はおなじみなのだが、箱で見たのは初めてだった。
「1箱10枚入りなんだね。10枚までは使えるってことかな?」
「使うってその・・・・」
「今夜、このコンちゃん付けて、私とHする?」
「いや、そんなこと、受検前にやってたら落ちるよ」
「私も同感。でも『受検前』にってことは、受検終わった後は?」
僕はドキっとした。交通の便が悪いので、僕らは前泊・後泊である。受検が終わった後、1泊してから帰るのである。終わった後・・・・理彩とセックスする??
「でも、僕と理彩、まだ恋人になってない」
「そうだねー。私たち『友だち』って建前だったもんね。セックスするなら、お互いの関係見直した方がいいよね」
「その話は・・・・受検終わった後にしない?」
「うん、そうしよう」
そんなことを言って、僕たちはまた勉強に戻った。
二次試験が終わったホテルでの夜。夕食を終えてホテルに戻った僕と理彩は部屋に入るなり、今まで我慢していたものが一気に吹き出すような思いで、熱いキスをした。もうそのままベッドに入ろうかという雰囲気もあったが、一応お風呂に入ることにした。
昨晩、その前の晩は試験前であまり時間も取りたくなかったからシャワーだけだったが、今日はふたりの実質的な「初夜」だからちゃんと湯船に入ろうということでお湯を入れた。理彩が先に入り、その後僕が入った。理彩はお湯を流していなかったので、僕は理彩が浸かったお湯に自分が浸かるというだけで興奮して、あそこが少し大きくなってしまった。
お風呂からあがると、理彩は今日買ってきた服を取り出して見ていた。
「可愛い服だね」
「でしょ。それに値段も可愛いのよ。このTシャツが300円、スカートも1000円」
「それはまた凄いね。さすが大阪!」
「ね?命(めい)も着てみる?」
「なんで、僕が着るのさ?」
「だって、いつも女の子の服着てるじゃん。最近ちょっと勉強で忙しかったから命(めい)を着せ替え人形にして遊ぶのやってなかったけどね」
「高校卒業とともに女装も卒業しようかと思ってたんだけどな」
「無理無理。命(めい)はたぶん大学に入ったら、1年以内におっぱい大きくして2年以内に去勢して3年以内に性転換して4年以内に妊娠すると思うな」
「妊娠は無理だと思うけど、まあ女の子の服を着るのは嫌いではないなけど」
「素直に女の子の服着たいと言いなさい。さあさ、これ着てみて」
「うん。着てみようかな」
僕はまあ試験も終わったことだし、こういうお遊び自体は好きだしと思い、理彩からTシャツとスカートを受け取ると、着ていた服を脱いで、それを身につけてみた。
スカートを穿くのって好きだ。ちょっと頼りない感覚もあるが、その開放感がたまらない。思えばこの快感が僕を女装の世界に誘ったのかも知れない。着てみると、スカートもTシャツもサイズぴったりだった。そもそも僕と理彩ってサイズ同じだしな。。。
「あ、足の毛剃ってある」
「それはいつも剃ってるよ。ヒゲもちゃんと抜いてるよ」
「ふーん。。。。大学入ったらまず永久脱毛だね。まあ、鏡見てごらんよ」
僕は浴室のそばにある姿見に自分の姿を映してみた。
「うーん。こういうの嫌いじゃないなあ」
「さすが、スカートが似合うね。もうずっとこういう格好でいなよ。大学生になれば好きな服着られるんだし。そもそも普段からスカート穿いてるんでしょ?」
「ううん。そんなに穿いてないよ」
「そんなに穿いてないって事は時々穿いてるのか。私がたまに穿かせてあげてるの以外にも」
「あ、いや、それは・・・・」
「別に隠し事しなくてもいいじゃん、私と命(めい)の間柄で」
「僕と理彩の間柄って?」
「こういうことする間柄」
と言って理彩はいきなり僕に抱きつくとディープキスした。
『あ・・・・』だめだ。理彩にこんなキスされると理性が吹き飛ぶ。
僕たちはもうただの男と女に戻って、ベッドの中に抱き合ったまま潜り込んだ。
「待って。僕たちの関係の見直し」
「こんなことするの、ただの友だちであり得る?」
「じゃ、僕たちもう恋人だよね?」
「ふふふ。その話は朝になってからちゃんとしよう。今は本能に任せようよ」
「分かった。好きだよ、理彩」
「私も好き、命(めい)」
その夜は物凄く燃えて、休憩を挟みながら、途中お腹が空いてコンビニでカツ重とかチキンとかまで買ってきて食べたりしながら、6回もセックスしてしまった。さすがに僕は精根尽き果てて最後は理彩がどんなに刺激しても立たなくなってしまった。
「もう立たないの? コンちゃん、まだ4枚あるよ」
と言って理彩は僕のおちんちんを振ったり揉んだりしている。
「ごめん。限界」
「立たないおちんちんは切っちゃうぞ」
「もう切られてもいいくらい、今幸せな気分。でも疲れた」
「寝てていいよ。その間におちんちん切っといてあげるから」
僕は何か言おうとしたが、睡魔に捉まってしまった。
目が覚めたらもう窓の外はすっかり明るくなっていた。「理彩?」と小さく声を掛けると「おはよう」と言って理彩が目を開けた。
「あ、ごめん寝てた?」
「ううん。私も寝てたけど、少し前に目がさめた。でも、気持ち良かったね」
「うん。凄く気持ち良かった。女の子の方も気持ちいいものなの?」
「そうでなきゃ、セックスしようと思わないよ」
「だよねー」
「下手な男にやられると、全然気持ちよくないらしいけど。私が気持ち良かったから、きっと命(めい)はうまいんだよ。夏にした時も気持ちよかったけど、今夜のは、あの時の倍くらい気持ち良かった。あれから、誰か他の子としたりした?」
「理彩以外の子とする訳無いよ。でもきっと、僕たちセックスの相性がいいんだよ」
「ああ、そうかもね。あ、そうそう。顔の感覚、変じゃない?」
「え?」
そう言われて、僕は初めて顔に違和感があることに気付いた。何?これ?
「ふふふ。鏡貸してあげるね」
と言って、理彩はベッドのそばに置いていたポーチから、小さな折りたたみ式のミラーを取り出して、僕に貸してくれた。
「ぶっ」
「可愛いよ」と理彩がニコニコして言う。
僕は顔にお化粧を施されていた。
「命(めい)って、女の子と見ても美人の部類の気がするなと思ってたけど、お化粧すると、ますます美人になるね」
「あはは」
「スカート穿いて、その顔で、コンビニとかにでも行ってくる?」
「さすがに勘弁して」と言って僕は笑った。
「恥ずかしがることないのに。女装外出なんて今まで山ほどしてるじゃん」
と言って、理彩は僕の唇にキスをした。僕たちは舌を絡め合って、相手をむさぼった。
「でも、ほんと僕、高校卒業を機会に女装はやめようかと思ってんだよね」
「あ、それは無理。だって、私命(めい)のおちんちん切っちゃったから。もう命(めい)は女の子だから、女の子の服着るしかないよ」
「え?」
そう言われて自分の股間に触ってみると、そこにあるべき棒が無い!
慌てて僕は布団から出てみた。
タックされてる!
「びっくりした。ほんとに切られたかと思った」
「ね。これも命(めい)のために買っておいたの。着けてみない?」
と言って理彩は、凄く可愛い、黄色地に茶色の上品なレースの入ったブラとショーツのセットを手渡した。僕も「わあ、可愛い」と言って、それを身につけた。タックしたお股に女の子ショーツを着けると、スッキリしたラインがとても馴染んで、自分で自分に興奮してしまう感じだ。ショーツはゴムになってなくて単に布が陰部を覆うタイプ。こういうのはタックしてないと「こぼれてしまう」から着けられない。
「へへ。写真撮っちゃえ」と言って理彩は僕の下着姿を携帯で写真に撮る。
「もう・・・・理彩、こんな写真ばかり撮るんだから。でもいいや。理彩と恋人になれたし」
「恋人か・・・それなんだけどさ、あんなことした後で言うのも何だけどそれ保留にしてくれない?」
「へ?」
「私、やっぱりこういう女の子の格好している命(めい)が好きなんだ。だから、これからはずっと女の子の友だちとして私と付き合ってくれないかな?」
「僕、男の子として理彩と恋人になりたい」
「うん。それを少し先送りしたいの」
「どうして?」
「私、命(めい)のこと好きだけど、それ友だちとして好きなのかも知れない気がして」
「こういう関係作っておいて、それはないよ!」
「たまにセックスしちゃうかも知れない、お友達ってのではダメ?」
「嫌だ。恋人になりたい」
「じゃ、お友達として1年間付き合って、それでやっぱり恋人の方がいいと思えたら、あらためて恋人になってもいい」
「1年間・・・・」
「私さ、物心付いた頃から、そばに命(めい)がいたし。私自身、命(めい)のことを事実上彼氏と思ってきたけど、命(めい)以外の男の子のこと、全然知らないなと思ってさ」
「知らなくてもいいじゃん。僕も頑張って男の子として振る舞うから」
「ううん。命(めい)はやはり女の子でいて欲しいの。私、男の子の命(めい)より女の子の命(めい)が好き。だから、私と命(めい)の関係は恋人になるとしたらレスビアンだと思うの」
「うーん・・・・」
「だから、私レスビアンじゃない、男女の恋もしてみたいのよね。1年間私にわがまま許してくれない? 他の男の子ともセックスしちゃうかも知れないけど、しばらくは見逃して欲しいの。命(めい)のこともずっと好きだから」
「それって、浮気宣言?」
「浮気になるのかな。。。。。でも、凄く好きな男の子できちゃったら、その子と結婚しちゃうかも。そうなったら、ごめんね」
「結婚式に殴り込みする」
「それもいいな・・・・花嫁の略奪ってロマンティック。私を奪い取ってくれたら、命(めい)と結婚するよ」
「でも、他の男の子とも付き合ってみたいの?」
「うん。でもきっと1年後には命(めい)の所に戻ってくるよ。1年間だけ、命(めい)の彼女というポジションに休暇をくれない? その・・・1年間だけなら、命(めい)も他の女の子と付き合って、セックスしてもいいよ」
「僕はずっと待ってる。だって、僕が好きなのは理彩だけだもん」
「そうだね。私、凄くわがままなこと言ってるのは分かるんだけど」
「今はじゃ。。。。まだ恋人になれないの?」
「ごめんね。どうしてもセックスしたくなったら言って。その時、私に彼氏がいても命(めい)とセックスしてあげる」
「でも、それもあくまで、友だちとしてのセックスなの?」
「うん。1年後。来年の2月に再度、私たちの関係を話し合えない?もしその時、ふたりともフリーだったら婚約しよう。その時安いのでいいから指輪買ってよ」
「分かった。理彩がそんなこと言い出したら、絶対撤回しないし。でも僕は、ずっと理彩のこと好きだから。指輪のお金、貯金する」
「うん」
そう言うと、理彩は僕にキスをしてくれた。
大学に入ってすぐの頃、僕は一応男の子の服を着て学校に出て行っていたが、それでも「あれ?男の子なの?てっきり女の子と思っちゃった」などと言われるかと思えば逆に「なんだ。女の子だよね。男の子みたいな服だから間違った」
などと言われることもあった。
同じ理学部の新入生(クラスは別)で、高3の夏休みに予備校の講習で一緒になっていた女の子からも
「なんで、そんな男の子みたいな服着てるの?」
などと言われた。僕は一応「いや、私男だから」と言ったものの、彼女はそれを冗談と思っていたようで、ずっと僕のことは男装女子と思っていたようであった。
僕が一応教室で「男」を主張するので、男の子の友だちも3人できたが、むしろ女の子の友だちの方が多かった。そのクラスの女子6人全員ともとても仲良くなり、ゴールデンウィーク初日の4月28日には彼女らに誘われて、一緒に大阪市内のレジャープールに泳ぎに行った。僕は彼女らと一緒に女子更衣室に入り女の子水着を着た。胸も一応あるし(水着用ヌーブラだけど)、お股はタックして変な盛り上がりも無いので「おお、さすが」などと言われた。
「実はもう肉体改造済みだったりして?」
「うーん。そのあたりは企業秘密ということで」
などと僕は答えておいた。
当時、女の子の同級生とは町の書店などで遭遇したりした時に一緒にお茶を飲んだりすることもあったが、男の子の同級生の場合、相手が2人以上でないと「お茶したいけど、また今度」などと言われた。自分が嫌われてるのだろうか・・・・と一時期悩んだこともあったが、ある時、ひとりの男子から
「だって、斎藤とふたりでお茶飲んだりしたら、デートしたと思われる」
などと言われて、僕は更に悩むことになる。
4月には、神戸大に行った春代と香川君とも会い、理彩と4人で一緒に居酒屋で夕食を取ったこともあった。香川君はビールや水割りを飲んでいたけど、他の3人はもっぱらウーロン茶やジュースである。
「一瞬誰だっけと思った」と香川君。
「お化粧すると、凄い美人になっちゃうねー」と春代。
「1時間掛けてフルメイクされた」と僕は笑いながら言った。
「睫毛は100回くらいマスカラ塗ったからね」と理彩。
「パッチリ睫毛が凄い可愛い」
「服もそれ素敵だよね」
「これは昨日、本人連れ出して、色々試着させて選んだ」
「命(めい)きっと高校卒業したら、完全に女の子になっちゃうね、なんて拓斗と話してたんだけど、やはりそうなってるみたいね。もう学校にも女の子の格好で行ってるんでしょ?」と春代。
「まさか。行ってないよ。男の子の格好で出て行ってるよ。僕は高校卒業したら女装も卒業するつもりだったんだけど」と僕は言うが
「それ、絶対無理と私は主張してる」と理彩。
「あ、同意、同意」と春代も香川君も言う。
「命(めい)は今年中にはおっぱい大きくして、来年には去勢して、再来年には性転換して、その翌年には赤ちゃん産む、と私は予想してるんだけどね」と理彩。
「赤ちゃん産んじゃうの?」と春代。
「うん。多分私が父親」と理彩は言う。
「理彩、おちんちん持ってるの?」
「あ、命(めい)が切ったの、もらうから」
「なるほどー。じゃ、理彩、卵巣1つあげたら?」
「そうだね。せっかく2つあるし、命(めい)が性転換したら、お祝いにあげようか?」
「いや、だから性転換するつもりないし。今日はつい理彩に乗せられてこんな格好してるけど、僕は基本的に男の子でいるつもりだから」と言ってみたが「ダウト」と3人から声をそろえて言われた。
「だけど、春代と香川君、凄く仲が進展してる感じ」と理彩。
「あんたたちの仲には負けるよ」と春代。
「Hした?」と理彩。
「へへへ。こないだしちゃった。理彩たちはもう毎日やってたりしない?」
「取り敢えず毎週日曜の晩は一緒に寝てるよ」と理彩。
「日曜の晩って珍しいね。ふつうは金曜の晩にエンドレスじゃないの?」
「こいつ、金曜の晩は他の男の子とデートしてんだもん」
と僕は少し不満げな表情で言った。
「ああ・・・・浮気してんのか」と春代。
「うん。取り敢えず1年間は浮気たくさんしていいって命(めい)から許可もらったから」と理彩。
「許可も何も一方的に宣言されたに等しいんだけどね」と僕は言う。
「じゃ、斎藤も浮気しちゃったら?」と香川君。
「ううん。僕はずっと理彩オンリー」
「それだから、理彩が安心して浮気しちゃうんだよ」
と春代は呆れるように言う。
4月下旬には、この4人に加えて、京都の私立大学に行った子4人(全員女子)もあわせて8人で「女子会」をしたこともあった。
「こうやって女の子ばかりで集まると、何だか楽しいね」
「高校時代は私たち、他のクラスの子たちが遊んだりデートしたりしてるの横目に見ながらひたすら勉強してたからね。みんな彼氏作った?」
当時確かにぼくたち進学クラスは、他のクラスと全然その付近の雰囲気が違っていた。
「でも男の子抜きで、女の子だけだと、本音トークできていいよね」
などと京都組が言っていると、遠慮がちに香川君が
「あの・・・・僕、男なんだけど」と言う。
「あ・・・ひとり男の子がいたか。まあ、ひとりくらいはいいよ。生理の話とか、おっぱいの話とか、女の子のセックスの話とかは聞かなかった振りしておいてね」
などと言われている。香川君に続いて僕も
「えっと・・・僕も男なんだけど」
と言うと
「ダウト!」と言われた。
「だいたいスカート穿いて来ておいて、男の子だなんて言えないよね」
「全く」
「命(めい)は高校時代に既に女の子に性転換してたでしょ?」
「だって、女子トイレにいたし、女子用スクール水着で泳いでたし」
「体育の時間にも結構女子組にいたよね」
「男の子とデートもしてた」
「私廊下で命(めい)にぶつかった時、確かにバストの感触があって、あれ?と思った」
「夏になるとワイシャツからブラ線が見えてたよね」
「女子制服もけっこう着てなかった?」
「卒業アルバムに写ってた命(めい)の写真は全部女の子の格好してた」
「私命(めい)からナプキンもらったことある」
「あ、私は命(めい)にナプキンあげたことある」
「命(めい)の病院の診察券見たことある。性別 F になってた」
「私、休みの日に図書館とかショッピングセンターとかで命(めい)と会うと、いつも女の子の服を着てたよ」
「女の子浴衣着てる命(めい)と遭遇したことある」
「初詣の時に振袖着てたよ、命(めい)は」
「高校時代にもお化粧してる命(めい)を見たことある」
「バレンタインのチョコ売場で命(めい)に会ったことある」
などと京都組に言われている。
「じゃ、命(めい)の性別判定資料としてこの写真を」
などといって理彩が自分のiPhoneに入っている写真を京都組に見せている。のぞき込んだら、僕の下着写真だ!
「可愛い!」と声が上がってる。
「ちょっとー、そんなの見せないでよ」と抗議するが理彩は
「いいじゃん、可愛いものはみんなで共有」などと言っている。
「ボディラインが完璧に女の子」
「ね、おっぱいあるよね、これ」
「お股のところ、どう見ても付いてるようには見えない」
「これ高3の夏休みの写真だよ」
「じゃ、その頃はもう既に女の子の身体になってたのね」
「命(めい)、20歳過ぎたら戸籍の性別も変更できるんだよ」
「命(めい)はお料理も得意だし優しいし、いいお嫁さんになりそう」
僕はどう答えていいか困ってしまった。
「でもおちんちん無くなっちゃったんなら、理彩、命(めい)と結婚出来なくなっちゃったね」
「あ、大丈夫。私レズだから」などと理彩は言っている。
「だから、命(めい)は戸籍の性別は敢えて変更せずに私と結婚してくれるのよ」
「ああ、なるほど!」
「じゃ、ふたりともウェディングドレス着て結婚式?」
「そうそう。式挙げる時はみんな来てね」
「うん、いいよ」
「応援しちゃう」
僕が性転換しちゃったって話が既成事実化されつつある!と僕は少し焦ったが、理彩が堂々と人前で僕と結婚すると発言したことの方が、僕は嬉しかった。でも結婚式で、僕もウェディングドレス着るの〜!?
そういう感じで僕はゴールデンウィークの頃には、男の子としての生活を続ける自信を失い始め、もう学校に女の子の格好で出て行っちゃおうかな、いっそ身体も改造しちゃおうかな、などと思い始めていた。なお、この時期既にヒゲは永久脱毛していたし、髪は高3の12月に切って以降は切らずに伸ばしていたので、この頃は髪だけ見たら女にしか見えないくらいになっていた。
そんな5月の上旬。僕は世にも不思議な体験をすることになる。
毎晩深夜に不思議な訪問者があり、僕はその訪問者の男性と毎晩セックスをした。しかもそのセックスをする時だけ僕の身体は女の子になっていたのであった。女の子の身体に変化するのは実は以前からけっこう体験していたものの(僕がナプキンを常備していたのはそのため)、その身体でセックスまでしてしまうというのは、ほんとに驚きの体験だった。
彼の訪問は途切れることが無かった。普段はだいたい夜中の1時くらいに来ている感じだったが、3時頃まで起きていたら、寝てすぐにやってきた。アパートにいなかったらどうだろうと思ってファミレスで一晩過ごしてみたら、明け方うとうととしていた時に、彼はやってきて、彼としている間周囲には何も無いような感じだった。
ある時は、理彩のアパートに泊まって、理彩とHしたのだが、その日は理彩とたっぷり愛し合った後、疲れて眠ってしまったところに来訪された。その時、理彩はそばにいたはずなのに、何も見ていないと言う。どうも僕はその夜の訪問者とセックスする間、異次元空間のような所にいるようであった。
2ヶ月ほど訪問は続いたが、彼は7月4日に「次は3月に来る」と言ったまま来なくなってしまった。そして僕はその後で自分が妊娠していることに気づく。しかしその自分が妊娠しているということに気づく少し前の時期、僕はとても体調が悪くて困っていた。
そんなことを理彩に言うと
「少し疲れてるんじゃない?女装して気分転換するとかは?」
などと言う。
「そうだなあ。。。でも女物の服あまり持ってないし」
「嘘つくのは良くないよ。でも持ってないというのなら貸してあげるよ」
と言って、理彩はその日の内にぼくのアパートまで自分の服を数セットに、女物の下着(新品)まで持ってきてくれた。
僕も「うん。女装はいいよね」と思い、理彩が持って来てくれた服を身につけてみると、少し気分がすっきりする。ちょっとその格好でコンビニに行って、お化粧品少し(マニキュアとアイカラー)と生理用ナプキンを買ってきたら、もっとすっきりした。
やがて僕は自分が妊娠していることに気づき、理彩に付き添ってもらって産婦人科の検診を受けた。お医者さんとも話し合った上で、僕はこの子を産みたいと主張し、お医者さんもずっと妊娠の状態をチェックしてくれることになった。ただ、お医者さんからは、妊娠が進めば、乳房が大きくなるとともに男性機能は次第に弱くなって消失するだろうと言われた。
「たぶん、妊娠が終わっても、男性としての機能は回復しませんよ」
「はい、それでいいです」
と僕は言い切った。
病院を出たあと僕たちはお昼を一緒に食べたが、理彩は
「男性機能無くなってもいいです、と命(めい)は断言したね」と僕を見ながら言う。
「とうとう、男を辞める覚悟が出来たのね?」
「先のことは分からないけど、とにかく今はこの子優先」
「男性として不能になっちゃったら、もうセックスもしてあげられないね」
「今、すごーく理彩とセックスしたい」
「じゃ、しようよ」と理彩は笑顔で言った。
僕たちはホテルに行った。アパートだと昼間友人が訪ねてくる可能性もあるし、壁が薄いから隣に聞こえないように気をつけてしないといけない。その日は声なども出して、思いっきりしたい気分だった。
理彩はいつものように正常位とか騎乗位でやると、ぼくのお腹を圧迫してよくないからと言って最初は側位、そのあと松葉で結合した。ただし2戦目はきちんと立たなくて、無理矢理押し込んではみたものの、発射もできなかった。
「命(めい)の乳首少し立ってるよね」
などと言いながら理彩は僕の乳首を舐めてくれた。高校時代にも乳首は結構舐められていたけど、特に快感は無かった。でも今は凄く敏感に感じてしまう。
「でもセックス気持ちいい。本当は毎日やりたいくらい」と僕は言った。「毎日したければ、してあげるよ」と理彩が優しい顔で言う。
「でも、○○君ともデートするんでしょ?」
「実は○○とは別れた」
「えー!?」
「いやー、命(めい)とした時のコンちゃんが見つかっちゃってさ。やっぱり他にも男がいるのか。浮気女とは付き合えんって言われて」
「ありゃー。ごめん。僕が持ち帰ってれば良かったね」
「でも潮時だった気もしてね。私、そろそろ彼に飽きて来てたし。最近ケンカが増えてたし」
「理彩、中学や高校の時も、他の男の子と時々デートしてたけど、あまり長続きしてなかったね」
「うん。命(めい)以外の子と4ヶ月以上付き合ったことがない。でもこのタイミングで私がフリーになっちゃったのって、きっと命(めい)のサポートをするためという気がするよ。男の身で妊娠しちゃうなんて、多分、女性の協力がないと、社会的にもいろいろ困ったことが起きるよ」
「そうかも知れないね」
「だけどやっぱり男性能力落ちてるみたいね。6月は3発できた日もあったのに。そういえば最近は1発しかしてなかったよね」
「やはりホルモン的に女性になりつつあるんだろうなあ」
「命(めい)のおちんちんが立つ間は、セックスしてあげるよ」
「妊娠が進むと女性ホルモンがもっともっと分泌されるだろうから、もう立たなくなっちゃうんだろうね」
「ニューハーフさんで、女性ホルモンを飲んでる人って、女性ホルモン飲むのやめても、もう男性としての機能は回復しないらしいから、命(めい)もたぶんそういう状態になっちゃうよ」
「まあ、仕方ないね、それは」
「仕方ないって思えるんだね。やっぱり、命(めい)って実はおちんちん無くなってもいいとか、むしろ無くしたいって思ってない?」
「ちょっとだけ。女の子になりたいって気持ちは昔から少しあった」
「そんなのずっと前から分かってるよ。でも、命(めい)がおっぱい大きくなって、赤ちゃん産んで、おちんちんも取っちゃって女の子になっても、私は命(めい)の友だちだし、恋人でもあるからね。私、元々バイだし」
「もう、恋人でいいの?」
「取り敢えず今、彼氏がいないし。また他の男の子を見つけたらそちらを恋人にするよ。来年の2月までは」
「頑張るね」
「でもちゃんと命(めい)の妊娠のサポートもするからね」
「ありがとう。とりあえずこの子が生まれるまではサポートして欲しい」
「うん」
僕たちは一度帰省し、僕が妊娠していること、そして出産までのサポートを理彩がするつもりであることを報告した。
僕と理彩の両親は驚いたものの、僕たちの考えを支持してくれて、いろいろ協力することも約束してくれた。そして僕は両親にも賛成してもらい、出産まで女装で暮らすことにした。男の格好をしている妊婦というのは、あまりにも奇異すぎる。幸いにも元々僕はふつうにしていても女に見えてしまうから女装での生活は好都合である。
女装での外出は高校時代までも理彩に乗せられてけっこう経験はしていたので、あまり戸惑いは無かった。実際高3の夏休みには予備校の講習を受けるため12日間にわたりフルタイム女装生活をしていたので、結果的にはあれがこの時期以降の生活の予行練習になった感もあった。結局、僕はこのあと一度も男装生活に戻ることは無かったのである。
女子トイレは以前から結構使っていたし、高校時代など、男子の制服を着たまましばしば女子トイレに入っていて、それを見ても友人たちは何も言わなかったし、列が出来ている時は、前後の女子とあれこれおしゃべりしながら待っていた。理彩や春代など僕の手を取って「一緒にトイレに行こう」などと言って女子トイレに連れ込むこともあった。
理彩は「女の子生活にもっと慣れよう」などと言って、女性専用車両に乗せたり、女性専用の喫茶店に連れて行ったり、映画のレディースデイに行ったりした。女性だけにサービス品のつくランチでも、ちゃんとふたりともサービスのプリンをもらったが「でも高校時代に女装してなくても命(めい)って女性向けサービスをしてもらってたよね」などと言われた。
更に理彩は僕をプールに連れて行き女子更衣室で着替えさせて(さすがに泳ぐ訳にはいかないので)ウォーキングをさせたり、更にはスーパー銭湯に連れて行って、女湯に一緒に入ったりもした。もっともプールは高校時代もしばしば女子更衣室で女子スクール水着に着替えて泳いでいたこともあったし、大学に入ってからも可愛い女の子水着を持って何度か行ったし、女湯も高3のゴールデンウィークの合宿の時に入っていたのを皮切りにその後何度か経験していたので、僕もそんなに緊張しなかった。
特にこの時期は少しバストが膨らんで来ていたので、女湯ではむしろ堂々としていることができた。
この妊娠が発覚した時期、僕は家庭教師のアルバイトをしていた。高校3年生の女の子で、大阪市立大学の医学部を第一志望にしていたが、学校の先生から「絶対無理」と言われ、第二志望の近畿の某国立医科大でもE判定という状況であった(A:安全圏 B:ギリギリ C:頑張れ D:厳しい E:ほぼ無理)。こちらはついこないだまで受験勉強をしていたので、かなり等身大で接して教えることができた。
初日その家を訪問した時、僕は「あれ?女の子だったんだ」と思った。家庭教師の依頼はふつう、女生徒には女性講師、男子生徒には男性講師が依頼されることが多い。でもまあ何か縁があったのだろうと思って指導していたのだが、生徒からも、そのお母さんからも
「先生、まるで男の子みたいな服を着てる」
などと言われて、僕は『あれ?』と思ってしまった。
もしかして、僕って女の子と思われて依頼されちゃった??
でも僕はその生徒にも、お母さんにも結構気に入ってもらえた気がしたので、次回行く時は、もっと中性っぽい服装にした。そして、そのうち妊娠が分かって完全女装生活に移行してしまってからは、このバイト先にも僕はふつうに女の子っぽい服で行くようになってしまった。すると、
「あら、今日は可愛い。先生、やはりそんな服装が似合いますよ」
などと言われるようになってしまった。
僕はちょっと面はゆい気もしたが、夏休み中、熱心にこの子の指導をして、即採点方式のネット模試で、目標にしていた某国立医科大で何とかC判定になるまでは学力向上させた。
しかしバイト先にも女の子の服で行くようになった結果、僕はもう男の子の服は全然着なくなってしまった。理彩は「もう男の子の服は要らないよねー」
などと言って、8月末には僕の男物の下着を全部捨ててしまったし、9月末には、ワイシャツや、どう見ても男物っぽいアウターなども古着屋さんに持って行き処分してしまったのであった。
それで僕はもう女の子の服しか持っていない状況になった。
理彩は妊娠が進むと僕は男性能力が消失するだろうから、その前に僕の精液を冷凍保存しておこうと提案した。掛かっている産婦人科で相談すると、先生も賛成してくれたので、僕は3日間禁欲した上で、精液を採取した。先生にチェックしてもらったら、ちゃんと精子はあるということだったので、これを8月から9月にかけ毎週1回、合計4回採取した。この時期は3日禁欲して精液採取して、その後4日は理彩とセックス三昧という生活を送っていた。
また、理彩は精液だけでなく「僕の陰茎」も保存しようと言って、陰茎の型を取る道具を買ってきた。僕を勃起させた上で型取り用パウダーとぬるま湯を混ぜチューブの中に注ぐ。そこに僕のペニスを挿入する。固まったところでペニスを抜き、そこにシリコンゴムを流し込み、バイブレーターも埋め込む。そして固まった所で型から外す。母型(マトリックス)を取っておけば、このシリコンゴム製のペニスは何本でも作ることができる。
「これで、命(めい)のおちんちんが立たなくなっても、あるいは切って無くなってしまっても平気だね」などと理彩は言う。
「理彩、それを自分のに入れて遊ぶの?」
「まさか。命(めい)にインサートするに決まってるじゃん」
「えー!?」
そういう訳で僕はしばしば、自分のペニスを自分の身体にインサートされるはめになった。むろんコンちゃんを付けローションも塗った上でインサートするのだが、高校時代にそこを使って遊んでいた頃には、もっと細いものしか入れたことがなかったので、最初けっこう辛かった。更にはバイブが仕込んであるので、入れたままそれを仕掛けられると自分が壊れてしまいそうな感覚になる。僕は我慢出来ずに声を出していたが、僕が痛がったり声を出したりするのが理彩にはとっても楽しいようであった。
「あんまりやると、赤ちゃんがびっくりするから勘弁して」と僕は言うが「大丈夫。赤ちゃんにも少し運動させないと」などと理彩は言っていた。
後に僕が女の身体に変えられた後は、この「僕のペニス」は僕のヴァギナにインサートされることになった。
「理彩は自分の身体にはこれ入れたりしないの?」
「私は生のペニスを別途調達してるから大丈夫」
「理彩、浮気を開き直ってる」
「彼には確実にコンちゃん付けさせてるし、自分でもピル飲んでるから絶対妊娠はしないよ」
「僕もピル飲んでたら妊娠しなかったのかなあ・・・」
「妊娠はしなかったろうけど、ピルって要するに女性ホルモンだから、身体は女性化して男性機能は消失してたね」
「どっちみち、そうなってたのか!」
やがて月日もたち、12月のクリスマスイブ。僕たちは結婚した。正直、僕は妊娠して身体が半ば女の身体のようになってしまって、もう理彩との結婚はできなくなったと諦めていたから、理彩から「結婚して」と言われた時は、もうただ嬉しくて言葉にならなかった。
その日僕たちは婚姻届に署名し、翌日理彩がその婚姻届を持って村に帰省して僕の父と理彩の父に、婚姻の証人になってもらうのと同時に、(未成年なので)「婚姻に同意する」旨の記載をしてもらった。
理彩はその届けをそのまま村役場に出したので、僕たちの結婚記念日は2012年12月25日である。僕たちは、僕がお腹が大きいままだったけど、僕がマタニティ用のウェディングドレス、理彩が普通のウェディングドレスを着て、写真館で記念写真を撮った。そして大阪市内の貴金属店で結婚指輪を買った。理彩はその指輪をすぐにはめたが、僕は出産後はめることにした。
そして年明けて1月16日、僕は帝王切開で星を出産した。手術室で下半身麻酔を掛けられた状態で、その元気な産声を聞いた時、僕はもう天にも昇る思いだった。理彩もまるで自分が産んだ子のように可愛がってくれて、ああ、ホントに理彩と結婚して良かったなあと僕は思った。理彩は自分たちふたりの子供として育てて行こうと言ってくれている。そんなこと言われると、理彩の少々の浮気くらい大目に見てあげたい気分になる。
出産して一週間ほどたった時、どこからか噂を聞きつけたようで春代と香川君が病院にお見舞いに来てくれた。ふたりはてっきり理彩が僕との間の子供を出産したと思っていたようで、僕が出産したのだということを聞き、驚いていた(まあ、ふつう男が子供を産むとは思いもよらない)。
僕のお乳を搾乳し、新生児ICUに行って授乳するところも一緒に見学した。搾乳するところを見た春代が「へー、凄い」なんて言ってた。この搾乳を見なかったら、春代もほんとに僕が産んだということを信じなかったろう。
「だけど、妊娠中、斎藤はどんな服着てたの?やっぱり普通の妊婦服?」
と香川君が訊く。
「ふつうに女物の妊婦服を着てたよ。妊婦服を着ることになる以前から、少し女物に慣れておこう、なんて理彩から言われて、8月頃からずっと女物の服着て出歩いてたけど」
「待て待て。斎藤は前から女物の服着てたよな」と香川君。
「結局、ふつうに女性が妊娠して出産したのと同じだよね」と春代。
「高校卒業して以降、俺斎藤が男の服着てるところ見たことない」と香川君。
「あ、私も女の子の格好して女の子の声で話す命(めい)しか見たことない。それに今更女子トイレや婦人服売場を恥ずかしがったりもしないだろうしね」
と春代。
「念のため、私が手を引いて、ランジェリーショップ、女子トイレ、電車の女性専用車、プールの女子更衣室、スーパー銭湯の女湯、と連れ回したからね」
と理彩。
「わあ、女湯も行ったんだ。恥ずかしくなかった?」
「それが命(めい)ったら、全然平気な顔してるのよね」
「つまり以前から結構そういう所に斎藤は行っていたと」と香川君。
「そうとしか考えられん」と理彩。
「女湯はさすがに初めてだったから、緊張したよ〜」と僕。
「ダウト」と3人。
「でも斎藤って、高校時代にもほんとによく女装してたからなあ」
「理彩にさせられてたというか」と僕は言うが。
「命(めい)が女の子の服を着たがってたから着せてあげてただけよ」
と理彩は言う。
「私と命(めい)って、元々服のサイズが同じなのよね〜。だから、よく私の服を着せてたんだよね。まあ、私も着せ替え人形みたいにして少し遊んでたけど」
「女物の浴衣を着せられて一緒にお祭りに行ったこともあった」
「振袖着て初詣にも行ってたじゃん」
「その時に命(めい)って神様に見初められたのかもね」
「あはは」
「僕、ウェストが女の子みたいに細いんだよね。逆にいうとウェストサイズで服を選ぶとお尻が全然入らない。だからいつも大きなサイズのズボン買ってきて、ベルトで締めて穿いてたんだよね。ここ半年ほどですっかり女物の服を着るの味しめちゃったから、お腹のサイズが戻っても、ジーンズは女物穿いてようかな、とか思ってる」
「スカートも好きだよね」と理彩。
「うん。まあ」
「ああ、命(めい)、きっともう男物の服には戻れないよ」と春代。
「だろうと思ったから、命(めい)の男物の服は、私が全部処分した」と理彩。
「ああ、じゃもうずっと女の子の服着るしか無いね」
「いっそ、このまま性転換しちゃったら?」と香川君。
「それ、唆してるんだけどね」と理彩。
「ああ、唆さなくても自主的に性転換手術受けるんじゃない?」
と春代は笑って言った。
「どうせ出産に伴うホルモンの影響で、男性器は機能停止してるしね。機能の無いおちんちんなら、取っちゃった方がすっきりするよって盛んに言ってるんだけどね」
などと理彩は言う。
「ああ、さすがに男性機能は停止か」と香川君。
「うん。それは覚悟で産んだんだけどね。シャワーのように大量に体内に女性ホルモンが分泌されているはず」
と僕は言った。
「じゃ、斎藤は事実上もう完全に女になってるんだな。あとは股間をちょっと修正するだけ」
「そうそう。何なら私が手術してあげてもいいけどね」
「いや、理彩が医師免許取るまで、我慢出来る訳無いよ。きっと来年くらいには性転換しちゃうんじゃない?」と春代は笑って言った。
「ひどい。理彩。これじゃ僕がまるで女装狂いの変態みたい。僕高校時代はそんなに女装してないし」と命(めい)は抗議した。
「こっちの方が事実に近いと思うけどなあ」
「僕の気持ちも理彩の都合がいいように書き換えられてる。まるで浮気容認してたみたいな。僕と理彩がしたセックスの頻度もかなり勝手に増やされてるし。大学に入った当初は、毎週1回もさせてくれなかったじゃん。月1〜2回くらいしかしてないよ」
「そんなもんかなあ。でも、2月にした時から、妊娠発覚直後までしてなかったというのは、大嘘。命(めい)、そんなに我慢出来るたちじゃないもん。そもそも受験が終わって村に帰った翌日やっちゃったし」
「うーん。でも我慢出来ないのは理彩もでしょ。彼氏とホテルに行った晩に、直後、僕のアパートに来てそのまま僕とセックスしようとしたこともあったね」
「命(めい)、する前にビデで洗えって言ったね」
「他の人が使った食事の皿はちゃんと洗ってから使うものだよ」
「はーい。でも、私ふつうの男の子とセックスしても、なかなか逝けないのよ。命(めい)とだったら確実に逝けるんだもん。結局潮吹きは命(めい)以外では体験したことないし」
「だったら、浮気しなきゃいいのに。それから僕は大学1年の頃に自分の身体を女の身体に改造しようなんて1度も思ったこと無かったよ」
「嘘嘘。小さい頃から何度も私の前で『女の子になりたい』『性転換手術したい』
って言ってたじゃん」
「そんなこと言ってたかな・・・」
「私だけじゃないよ。春代も聞いてるよ」
「うーん。。。。だけど、これ一番仰天したけど、僕が以前から結構女の子の身体に変化していたことがあるってどういう創作? 海じゃあるまいし、そんなのあり得ない」
「それだけどさぁ、私、命(めい)が女体になっている所を確かに見た記憶があるんだよね。小さい頃から何度も。それに命(めい)、いつもナプキン持ってたじゃん。あれ何のためよ?」
「えっと・・・・・それは・・・・」
「私、最初はオナニーした後、下着を汚さないようにナプキン付けてるのかなとか想像してたんだけど、高3の時、命(めい)がうちのトイレに入った後、捨てたナプキンに経血が付いてたの見たこともあるんだよね−。その時、私もお母ちゃんも生理じゃなかったら、あれは間違いなく命(めい)のナプキンだった」
「ちょっとぉ。人の使用済みナプキンをチェックするなんて、理彩こそ変態!」
「メディカルチェックよ」
「あと、高校時代にまるで後ろの穴をたくさん使ってたみたいに書かれてるけど、高校時代は理彩に1度指を入れられたことがあるだけだよ」
「私は1度しか入れてないけど、自分でたくさん入れて遊んでたんじゃないの?タックしてておちんちん使えなかったら、あそこ使ってオナニーするしかないでしょ?」
「そんなのしてないよう。どうしてもしたい時はタック外してたもん。あとは、プールに女の子水着で行ったのも、実際問題として高校の時1度と、4月に理学部の女の子たちと行った時、それとあの後、理彩に連れられて行った時だけだし」
「そうかなあ。それも絶対私の見てない所で行ってると思うけど」
「女湯だって、合宿で行ったのと理彩に連れられて行った時だけだよ。星を産む前は」
「いや、それは絶対嘘だ。たくさん経験しているはず。でないと考えられない落ち着きようだったもん」
「だいたい、妊娠する前は胸が無かったから、女湯には入れなかったし」
「まあいいや。命(めい)が書いたのと、私が加筆修正したのと、両方見てもらえば、少しは真実に迫れるんじゃないかな。だいたい一人称小説ってたくさん嘘書けるのが最大の特徴だからね」
星の部屋から「クスクス」という声がしたような気がした。
「でも、結局、指輪はお父ちゃんたち、どうしたの?」
とある時、星は理彩に訊いた。(星は命(めい)を「お母ちゃん」、理彩を「お父ちゃん」と呼ぶ)
「お前を産んだ後って、もう子育てと学業とで精一杯でさ。とてもバイトとかしてる余裕無かったんだよね。だから貯金できなくて。宝くじ当ててもらった資金があるから学資と生活と育児に必要なお金は一応あるし、結婚してすぐに結婚指輪もその資金で買って、ふたりとも付けるようにしたんだけど、エンゲージリングは自分で稼いだお金で買いたいって命(めい)が言ってさ。農園の事業を立ち上げて、最初の年に出荷した桃の売上げ代金が入ってきた時に、そのお金で買ってくれたよ」
と言って、理彩は宝石箱から、そのダイヤのプラチナリングを取り出して、星に見せた。
「小さな石だけど、最初売上げが入り始めた頃はこのくらいしか買う余裕無かったからね。でも、嬉しかったなあ・・・結婚して6年目くらいだったからね」
「お母ちゃんって、お父ちゃんのこと、物凄く好きだよね」
「そうだね。小さい頃から1度もぶれずに私のこと愛してくれてる。私、それだけは幸せだなと、よく思うし、結婚して良かったと思ってる」
「そんなに愛されてるんだったら、お父ちゃんも、そろそろ浮気はやめたら?」
「うーん。。。。そうだね。。。。。」
と理彩はそのエンゲージリングを左手薬指に、結婚指輪と重ねて付けてみて微笑んで答えた。
【Shinkon・理彩的見解】(1)