【Powder Room】(中)
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(c) 2002.12.12 written by Eriko Kawaguchi
ボクは起きあがっておそるおそる自分の両足の付け根の部分をのぞき込んだ。ウソみたい。。。。
そこには見慣れた物体は影も形もなく、スッキリした形になっていた。そして中央にはひとすじ、きれいな割れ目ができていた。ちょっと触ってみたら、指が触れただけで、ビクっと感じた。ボクは心臓がどきどきした。
「きれいにできてるでしょ」
そう言われてボクはちょっと頬を赤らめてうつむいた。
ドアを開けてそこから神崎幸子が出てきた段階で、ボクはもう完全に開き直りの気分になった。
「どうも、お疲れさまでした」といって幸子はボクらを中に案内しようとする。その瞬間、彼女の目はボクの上に止まり「あれ、確かさっき会ったっけ?」といった。「偶然ですね」とボクはもう運を天に任せることにしてニッコリ笑って女の子ボイスで答えた。
ペンションのダイニングに移動しながら礼子さんが「あなたが衣子が言っていた人ね」と礼子さんが言う「はい、神崎幸子といいます」と彼女は答えた。「えっと何だったっけ?」とボクが尋ねる。「昨日、夕食の時に衣子が言ってたでしょ?今日、もうひとりお友達が娘さんを連れて来るって」「ついさっき着いたんですよ」
ダイニングには衣子さんと、見覚えのある、幸子のお母さんが座って
談笑していた。幸子がそのまま紅茶を入れてくれようとする。礼子さんが「あ、私がするわ」といってサーバーを取ると、ティーカップを並べて5人分のお茶を入れた。
衣子さんがそれぞれを紹介した。「こちら私の高校の時の同級生の神崎恵子さんとその娘さんの幸子さん。こちらは大学の時の同級生の谷山礼子さんとその娘さんの順子さん」
お互いによろしく、と挨拶を交わしたところで幸子がボクを不思議そうに見つめて何かを思い出そうとするような顔をしている。「どうかした?」
「いや、なんか似た人に会ったことがあるような気がして」「さっきじゃなくて?」「うんーと。。。お名前、谷山順子?」「はい」「あっ」
ボクはその彼女の表情を見て『バレた』と確信した。
「どうかしたの?」と礼子さんがきく。「誰かと思ったら、順ちゃんか。ほら、幼稚園の時一緒だった。覚えてない?」
彼女の意図が分からないが、ボクは取り敢えず話を合わせることにした。「あぁ、キーちゃんか。すっかり美人になってるから分からなかった」とボクは思いっきり可愛い子ぶって幸子と手を取り飛び跳ねてみせた。
「あら、奇遇ね」と衣子さんがいう。幸子のお母さんは気付いていないようで「キーちゃんなんて名前覚えてるなんて、ほんとに昔のお友達なのね」とのどかなことを言っている。彼女は小学校以降は「さっちゃん」だったのだ。
「ねぇ、衣子さん。部屋は空いてるんでしょ?私と順ちゃんでいっしょにお泊まりしたい。つもる話もあるし。ネ、順ちゃん」と幸子は悪戯っぽく言う。ボクが断る理由もないので曖昧に「うん」と答えると、衣子さんは「じゃ105号室を使って」といって、壁からキーを取って幸子に渡してくれた。
その日夕食が終わってから、ボクはいったん礼子さんと泊まっている202号室に行って荷物を取ったあと、105号室に行った。ボクの代わりに衣子さんが202号には泊まることになっていた。礼子さんをひとりにするのはまずいと配慮してくれたのだろう。幸子のお母さんは201号室でひとりになるが、2日後には幸子のお父さんも来ることになっていた。
105号室では幸子はもう中で待っていた。彼女はもうパジャマを着ている。
「まぁ、お座りしてゆっくりお話しましょ、順一子さん」
と幸子はダブルベッドに腰掛けたままニヤニヤ笑って言う。この部屋はダブルベッドとシングルベッドが1個ずつ置かれていた。
ボクはすっかり開き直っているので彼女の隣りに座ると
「ちょっと冗談のつもりだったんだけど」と女の子ボイスのまま答える。
「冗談って何?女子トイレや女子更衣室に入ってみたくて、そういう格好をしてるわけ?」
「とんでもない。こういう格好だから女子トイレは仕方なく入っているだけで。女子更衣室とかは入ったことないよ」
「冗談じゃないとすると、趣味?」
「うーん。。。。。」ボクは自分がなぜ女の子の格好をしているのか、自分で分からなくなってきた。
「それか最近はやりの性同一性障害ってやつ?女の子になりたいの?」
「それはないと思うけど」
「じゃ趣味なんだ。ふーん、順一子さんにこういう趣味があったとは」
「その『順一子』はやめてよ」
「じゃ何て呼ばれたい?」
「あ、えーっと。。。。」
「仕方ない。順子ちゃんて呼んであげる。それでいい?」
「うん」
「じゃ、順子ちゃんと呼んであげる代わりに、今夜は私を抱いてよ」
「うん」と反射的に答えてからボクは「抱く」ということばは単に
抱き合って寝ることではないのではないかということに気付いて慌てた。
「まっ待って。抱くってまさか?」
「もちろん。あれよ。セックス」
「なんで?」
「私は抱くだけの魅力ない?」
「そんなことないよ。キーちゃん可愛いよ」
「じゃ抱けるでしょ。あっもしかして、女の人は好きじゃないのかな?男の人とセックスしたいの?」
「そういう趣味はないよ。私は女の子が好きだもん」
「ふふ。女の子言葉なのね」
「あ、ごめん。この格好してる時は男言葉が出てこないの」
「声も女の子の声だよね。学校の時とは違う」
「それもこの声で話してないと落ち着かなくて」
「じゃ。いいよ。今晩は女の子同士ということで、手を繋いで寝よ」
手を繋ぐくらいならまぁいいか。ボクは同意すると、部屋の隅で手早く着替えて、彼女と同じベッドの中にもぐりこみ、手をつないで
「おやすみなさい」を言った。彼女がクスっと笑ったような気がした。
次の日から神崎幸子はボクにずっとべったりだった。彼女とのことに
ついて礼子さんは何も聞かないのでボクも何も言わない。実際問題と
して説明しなければいけないようなことはなにひとつ起きなかった。
ボクたちは実際問題としてほとんど女の子同士の友達のような感じで
毎日を過ごしていた。お風呂にも一緒に入ったが「間違い」は一切
起きなかった。
ペンションの改装は順調に進んでいるようで、1月下旬にはリニュー
アルオープンできそうということで、ホームページに「2月分より、予約をお受けします」という掲示を出した。ボクと幸子もペンキ塗り
などは手伝った。
年が明けて1月3日の晩。それは唐突に聞かされた。
「明日女5人で町営温泉に出かけましょう」
ボクは最初その言葉を聞き流したが、ふとあることに気付いて焦った。「町営温泉?」「うん。すごく広い浴場でさ。温度の高い源泉もある
から冬でも露天風呂が楽しめるよ」「露天風呂って混浴?」「ううん、男女別よ。特にこの町のは女風呂の方が大きく作ってあるの。実際
観光客は女性が7割だからね」
毎日このペンションでお風呂には入っていたが、いつも礼子さんか幸子とふたりで入っていたので、万一あの付近を見られても大丈夫だった
のだが、そういう場所に行くとなると......
その晩、ボクは「どうしよう」と幸子に相談した。
「胸はなくても平気だよ。まだ中学生だもん。うちのクラスの女子にもマジで洗濯板の子、数人いるよ。」
「それより、下のほうが」
「あぁ、なるほど。いっそ取っちゃう?」
「取るって?」
「ハサミでチョキンと切り落としちゃう」
「そんな」
「止血が大変そうだよね。傷が1晩では直らないだろうから明日の
温泉は難しいなぁ」
そんな問題じゃないんだけど、とボクは思う。
「やっぱりボク、風邪でもひいたことにして温泉パスするよ」
「ふーん。風邪ね。じゃ病院に行って先生に見てもらうの?」
「あ」
「それもまずいよね」
幸子もやっと、これはちょっと困ったことだと考え始めたようであった。
「以前深夜番組で見たことあるけどさ、あれ体の中に押し込めるん
じゃないの?」
「え?」
それは確かに実はやってみたことがある。だが、その場合......
「無理だよ。押し込んでもすぐ飛び出してくるもん。それに押し込んだりすると、刺激でその.....大きくなってよけい隠しにくくなるんだ」
「押し込んでから何かで止めればいいんじゃない。セロテープとか」
「セロテープの粘着力じゃ押さえきれないよ」
「そんな凄いのか。じゃ接着剤は?」
「え?」
それはボクも考えたことがなかった。
「アロンαなら大丈夫じゃない?私持ってきてるよ」
といって幸子はカバンの中からしばらく探して瞬間接着剤を取り出した。
「あれ、これアロンαじゃなくてアマロンαだって。パチもんか」
「ちょっと待って。そんなのでくっつけたら後で取れないんじゃ...」
「大丈夫だよ。ちゃんとハガし液って売ってるから。接着剤が間違って指とかに付いた時にそれがないと困るじゃん」
「あぁ。なるほど。キーちゃん、そのハガし液も持ってるの?」
「今持ってないけど、文房具屋さんに行けば売ってるよ」
ボクは覚悟を決めた。「分かった。じゃやってみるから、その接着剤貸して」
「あ、私がやってあげる」「えぇ!? だって」「幼稚園の時お医者さんごっこした仲じゃない」そんなことしてたっけ? ....してたかも知れない。
しばらく言い合った後、ボクはうまい具合に言い含められてしまった。そうしてボクは彼女に身を任せることになってしまい、下半身裸になり、ひざをまげて股を開き、できるだけ力を抜いて幸子にされるがままになってしまったのである。お風呂では何度も見られているけど、こんな格好で見せるのは恥ずかしい。
最初直接接着しようとすると、どうも「それ」が動いて邪魔なようであった。そこで「それ」をいったんセロテープで固定し、そこから接着作業を進めていった。ちなみに2個のボールは体内にギュッと押し込まれてしまった。この付近も幸子が深夜番組で得た知識らしい。一体最近の女子中学生はどんな番組を見ているんだ!?? 幸子は作業をしながらやっている内容を説明してくれた。ボールを押し込んだ後、バットの方は後ろに倒し、その両脇にあまった皮膚を引っ張り出して真ん中で接着しているのである。結果的にバットは袋で包み込まれてしまった状態になる。されながら結構痛いというか熱い感じがしたが我慢できないほどのものではなかった。
作業は30分くらいかかったであろうか。幸子も終わるとふうっと大きく息を付いた。そして「見てみて」というので体を起こしてそこを見てみたところ、あまりにきれいに仕上がっているのでびっくりした次第であった。
「接着した所がきれいに割れ目状に見えるんだよね。我ながら快心の作だわ」
「ボクもちょっとびっくり。こんなにきれいになるなんて」
「気に入った?」
「うん」
「いっそ、ずっとこのままにしておく?」
「そんな。温泉が終わったら外すよ」
「もったいない。私の力作よ。せめて冬休みいっぱいはそうしててよ」
「うん。じゃそうする。あっ」
「どうしたの?」
「これおしっこどうしよう?」
「しゃがんでみて」
「うん.....あ、なるほど」
「腰を曲げると、押し出されてちゃんと後ろに顔が出るでしょ。そこからできると思う」
「試してくる」
ボクはショーツとスカートを手早く身につけるとトイレに行って、その動作を確認した。おしっこの飛ぶ向きが今までと全然違う!! それに勢いも違う。ボクは慌てて便器の上で腰の位置を前にずらした。
翌日。温泉に行くまで礼子さんはちょっと心配そうにボクを見ていたが、脱衣室(!! ここに入る時は少し勇気が要ったが、幸子に背中を押された)でボクが服を脱いだ所をチラっと見て寄ってきた。ボクはタオルで胸を隠していた。そのタオルの垂れた先がお股の付近までカバーしてくれる。
『それどうやったの?』と礼子さんが小声でささやく
『上手に隠したでしょ。大丈夫よ』と私も小声で答えた。
(礼子さんにはあとでペンションに帰ってからあらためて裸にむかれて、その付近の構造を確認されてしまった)
温泉の中はかなりの人数がいた。お正月ということもあるのだろう。小さい子が走り回っていて、中には3〜4歳くらいの男の子もいる。母親か姉かに連れられてきたのだろう。ちんちんが揺れるのをかまわず走り回っているのを見て、ちょっと微笑ましく感じた。さりげなく自分のを部分を触ってみる。揺れたりすることもなく、安定した感じが新しい感覚だ。ちなみに立った状態では「あれ」は皮の中に完全に埋もれてしまうので後ろから直接見られても心配ない。
お湯の中に入ったら溶けたりしないだろうかと少し心配だったが全然平気な感じであった。さすがにゴシゴシ洗ったりするのは怖かったのでその付近はからだを洗ったあと、かるく流すだけにした。
「順ちゃんって胸ないのね」と声を掛けられたのにビクっとして振り向くと幸子のお母さんだった。「私、成長が遅いみたいで」と恥ずかしげに答える。
「でもうちの幸子も去年の春頃までは真っ平らだったよわ。それが中学に入ってから大きくなってきたから、順ちゃんもこれからね」「あ、はい」
ボクはその瞬間『あぁボクも胸が大きくなるといいな』と思った。しかし、幸子のお母さんが向こうに行ってしまうと、そういうことを考えた自分がおかしかった。『胸大きくなってどうするんだ。女の子になるわけでもあるまいし』と思う。しかしそう思ってからまたふと考えてしまった。
『女の子になる.......か』
ボクはなぜかそのことばを頭の中でリピートしていた。
そうしてこの「秘密の冬休み」はすぎていった。礼子さんもこの旅行がとても気晴らしになったようであった。幸子のお母さんともすっかり仲がよくなり「東京でも時々お会いしましょう」などと約束していた。
しかし二人が東京でよく会うとすると、ボクはまさかずっと「順子」であり続けなければいけないのであろうか。ボクは少しだけ不安があったがあまり深く考えないことにした。
今日はもう東京に戻るという日、ボクたちと幸子たちは別ルートで帰るのでボクたちが先に出ることになっていた。その時、幸子のお母さんがボクを呼び止めていった。
「ねぇ、順ちゃん。これ飲んでみない?」
渡されたビンには『エステミックス』と書かれていた。
「女の子がきれいになれるサプリメントよ」
「へえー」
「実はうちの幸子も飲んでるの。作用が穏やかだから中学生でも大丈夫」
きれいになれるサプリメントか。それならいいか。ボクはそう思って
「じゃ頂きます」といって受け取った。
その時玄関に来た幸子がその様子を見て「あっ」と言った。
「幸子のだけど、順ちゃんにあげていいでしょ。もう帰るし」と幸子の母は言う。幸子は何か一瞬迷ったような顔をしたがすぐにこう言った。
「まぁ、それもいいか。。。。。じゃ、順ちゃん、また東京で」
「うん」
ボクは二人や続けて出てきた衣子さんたちに手を振ってタクシーに乗り込んだ。「何もらったの?」と礼子さんが訊く。
「きれいになれるサプリメントだって」
「へえー」
「飲んでみようかな。水あったよね」
「うん」
礼子さんがペットポトルを出してくれたので、ボクは瓶から錠剤を処方に書いてあるとおり3錠取り出すと口に入れ、その水で流し込んだ。
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