【夏の日の想い出】(中)

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お盆の14-15日はお盆の行事の設営の仕事で出て行ったのだが、公園でお坊さんがたくさん来て読経する場所を設営していたら、他のイベント会社から来ていた女性に声を掛けられた。
 
「もしかしてローズ+リリーのリードボーカルの方ですか?」
「あ、はい」
とボクは中性的な声で返事をする。むろん服装は女性仕様で、今日は動きやすいようにショートパンツとフレンチ袖のシャツだ。ちゃんとブラジャーもして、バストパッドも入れている。
 
「こないだ、水戸でたまたま通りかかった時に見かけて。いいですねー。活動し始めてどのくらいですか?全然知らなかった。仕事柄インディーズのアーティストには注意していたつもりだったのに」
「まだ結成してあまり日が経たないんですよ」
「でも△△社さんのスタッフなんですね」
「はい。ふだんはこうやって設営の仕事してます」
「フリーだったら、うちでマネージメントしたい所だなあとか思ったんだけど惜しいなあ」
「それはありがとうございます」
「そうだ!サインもらえます?」
「あ、はい」
 
ボクは彼女の手帳にローズ+リリーのサインを書いた。一応サインに関しては、明らかに転売目的と思われる場合以外は、個人的にも応じて良いと言われていた。
 
この日は他にも3人から声を掛けられて、同様にサインに応じた。政子の方も声を掛けられたらしい。その件を須藤さんに言うと
「思った以上に注目されてきているね」
と言って少し考えているようであった。
 
翌16日、ボクたちは事務所に来るように言われ、行くと、暫定的なアーティスト契約を結びたいと言われた。
 
「どうして暫定的なんですか?」
「本当はきちんとした形で契約書を取り交わしたいのだけど、ふたりとも未成年だから、契約書を交わすには、親御さんの承諾が必要なのよね」
「ああ」
「政子ちゃんの方は説得すれば何とかなるかもしれないけど、冬子ちゃんの方はどう考えても承諾がもらえるとは思えないので」
「ボク、親にはとても言えません」
「だよね。だから暫定」
「分かりました」
 
契約の内容は基本的には専属に関するもので、ローズ+リリーという名前の使用権が会社側に属すること、勝手にCDを作ったりダウンロード公開したりしないことなどの権利関係の問題、そしてギャラに関するものであった。
 
「このユニット、今月いっぱいのつもりだったんだけど、どうも人気が出てきているからさ、9月になっても、放課後や土日限定でいいから続けて欲しいのよ」
「それはいいと思います。ね?」と政子が答える。
「うん、学校の勉強に支障が出ないなら」
 
「で、今月いっぱいは約束通り、スタッフとしての報酬に+3割、冬子ちゃんが女の子ではないとばれなかった場合ね。ばれたら2割増しに減額」
「はい」
 
「で、来月からのギャラなんだけど、固定制で月1人2万というコースと、実際に稼いだ分のマージンというコースとを考えてみたのだけど、どちらがいい?」
「マージンの率はどのくらいですか?」と政子が質問する。
「CDは1%。ダウンロードは2%。これを2人で分けてもらう。ラジオなどのメディアに出演した場合は1回3000円、雑誌やネットサイト等の取材は1回1000円、ライブイベントの出演に関しては無料のイベントについては1回1000円、有料のものについては1回1万円。これ全部ユニットに対する報酬だから、各々の取り分はこの半分ね」
「マージン方式がいいです」と政子が答えた。
 
「たぶん、マージン方式だと月に2000〜3000円になっちゃうと思うけどいい?」
「はい。でも売れたらそれだけたくさんもらえるんでしょ?」
「うん。まあ、売れたらね」
と須藤さんは苦笑する。
「冬子ちゃんも、それでいい?」
「はい。2000-3000円ももらえたら、充分お小遣いとして美味しいし」
 
「あと、こないだ作ったCD『明るい水』だけど、これまでに400枚売れてて。もし1000枚を越えたら、その後は1枚につき10円払うから。今日明日にもダウンロードでも売れるようにするので、その分は最初から1ダウンロードあたり2%払うね」
「ありがとうございます」
「ギャラに関しては、売れたら出演料とかも少しあげてあげるから」
「はい」
 
そういうわけで、僕たちは夏休みが終わっても、2人で活動を続けることになったのであった。それはボクの女装もまた続いていくことになったことを意味した。ただ、この頃から、ボクは女装するのを自然なことのように受け入れ始めていた。ふだん1日男の子の格好で家で過ごしたり、図書館などに行ったりしている時は、何か物足りない感じがしたし、スーパーなどで鏡面に自分が映っている姿を見て、バストが無いのが変な気がしたりした。
 
そんなことを政子に言ったら
「女装にハマっちゃったね。癖になるっていうもんね」
などと言っていた。
「なんなら、仕事の無い日でもうちに来て着替えてっていいよ。事前に電話でもしてくれたら」
などという。
 
政子は両親がこの春から転勤でタイに行っていて、ひとり暮らしなので、このあたりの融通がききやすいのである。転勤になる時に政子も一緒に行こうとも言っていたのだが、受験を考えるとタイには行きたくないと政子が主張し、それで時々近くに住んでいる叔母さんに様子を見に来てもらうことにして、ひとり暮らしを始めたのであった。当時既に花見さんとはよく電話したりする仲だったが、花見さんがご両親の前で、将来政子と結婚を考えているが、高校卒業までは肉体的な関係は持たないと誓ったらしい。
 
しかしそういうことで、早速翌日は仕事は無かったものの、朝から政子の家に行って、着替えて町に出てみた。帰りの時刻が分からないと言ったら、自分も出かける予定なので勝手に入って着替えていいよと言われて、合い鍵を預かった。次仕事で会った時にでも返してもらえばいいからということだった。
 
思えばプライベートで女装するのは初めてだ。これまでも仕事に行く時、政子の家から仕事の現場までは女装で移動していたわけだけど、あくまで経路だけで、多少コンビニなどに寄ったりすることはあっても、のんびりと町を歩いたりすることはなかった。こういう格好でひとりで自由に歩き回るのも初めてだ。
 
その日は膝丈のスカートとキャミソールという軽装だった。夏の暑い日差しの中でコンクリートに暖められた熱い空気が吹き付ける。それが肌に当たると、快感だった。男の子の服ではこんな感触って味わえない。女の子の特権だなと思った。
 
しかしデパートに入ったら、急速冷凍された気分になった。きゃー。これ冷房の掛け過ぎだよ。背広の男性に合わせてない?もっと弱めでいいよなと思う。ボクはあまりの寒さにお腹がおかしくなって慌ててトイレに飛び込んだ。
 
ひと息ついて個室から出る。ふと見回すとゴージャスな作りだ。男子トイレってこんな立派なの見たことないなと思った。女子トイレには金掛けてるのかなあ。そういえば便器もウォシュレットだったし、音姫も付いていた。こんな格好をするようになるまで、音姫なんて意識したこともなかったけど、ここしばらくの『女の子』としての行動で、トイレでは音姫を作動させるのが習慣になっていた。そういえば男子トイレって音姫付いてたっけ??? しばらくデパートとかの男子トイレって入ってなかったので、記憶が曖昧だ。
 
お昼になったので、ファッションビルの7階にあるビアレストランに入る。500円のランチがあるのでそれが目的だったのだが、席に案内されると「本日レディスセットをお得な450円でご案内しておりますが、いかがですか?」などと言われる。レディスセット……なんか食べてみたい気がした。
「じゃそれお願いします」と言った。
 
待っていたら、小さめに盛ったチキンライスに野菜サラダ、小エビのパスタ、ステーキが3切れ、そしてドゥミタスコーヒーとアイスクリームが付いている。いろいろ種類もあるし、量も手頃でいいなと思った。レディスセットって男でも頼めるのかも知れないけど少し恥ずかしい気がする。こういう格好でいればふつうに頼めていいな。
 
昼食後ぶらぶらと歩いていてサンリオショップに気付く。こういう所1度入ってみたい気はしていたけど、男の身では入るのが恥ずかしい気がしていた。今なら入れるなと思って入ってみる。
 
きゃー。これはホント女の子の世界だと思う。頭の中の構造が破壊される気分だ。可愛いとは思うけど、ちょっとこういうグッズを自分で使うのは恥ずかしい気がするとも思ったが、女の子の格好の時はこういうの使ってもいい気がした。結局シナモロールのボールペンとけろけろけろっぴのスケジュール帳を買った。
 
14時半を回ったので、そろそろ帰ろうかなと思って歩いていたら、ふとカラオケ屋さんに目を停めた。ボクは実は自分の発声で悩んでいた。中性的な声で出せる声域が狭くて、けっこう裏声で誤魔化している部分がある。あのあたり少し練習してみようかなと思って入った。
 
最初に楽曲は流さずに「あああ」でドレミファソファミレドを歌ってみる。半音ずつピッチを上げていくと、この発声では声が出ない所まで行った。うーん。この上をどうするかだよなあ・・・・逆に裏声で思いっきり高い音を出してみる。やはり「あああ」で歌って少しずつピッチを下げて行ってみた。うっこのあたりから苦しい。あれ?でもこの裏声の一番低いあたりってかなりいい感じに出てない?
 
ボクは試しにそのあたりの音域の裏声でドレミフアソと歌ってみて、携帯電話のICレコーダーを使って録音してみた。
 
聞いてみる。
 
うん。ほとんど女の子の声に聞こえる!
 
これは発見だった。これって、この声の出し方をしっかり覚えて、この出し方で出る音域を広げていくと、今主として使っている中性的なボイスだけでなく、純粋に女の子の声に聞こえる歌い方ができるのではないかという気がした。
 
試しにこの声の出し方で出る音域を調べてみると、だいたい6度くらいだった。1オクターブもないというのは辛い。でも練習すればもっと出るような気がした。よし、今度からカラオケに時々来て、練習してみようと思った。
 
スタッフ報酬は「女の子でないとばれなかったら3割り増し」の部分を除いては毎回現金でもらっているので、カラオケに通う資金はある。ただ・・・・
 
仕事の無い日に頻繁にカラオケに来るということは、ほぼ毎日女装することになったりして!?
 
そのあとは、女性ボーカルの歌で比較的高音域を使っている歌をカラオケで流して、主として裏声を使って歌い込んだ。苦しくなるあたりをできるだけ我慢して自分の声域を広げていく練習だ。
 
取り敢えずその日はけっこういい感じで歌い込みができたので、満足した気分で政子の家まで帰った。預かっている合い鍵で中に入り、トイレに行ってから、洗面台の所でメイクを落としていたら、ドアの開く音がした。あれ?政子帰ってきたのかな?
ボクが顔を洗って、メイク落としフォームと洗顔料を落とし、タオルで拭いていたら、いきなり後ろから抱きしめられた。え!?
 
「まーちゃん、もう帰ってたんだね。好きだよ」と、これは花見さんの声だ。人違いですと言おうとしたが、その前に顔を掴まれて唇にキスをされてしまった。
「え!?」
向こうもそこで人違いに気付いたようだ。
「ご、ごめん。間違った」
「あ、いえ大丈夫です」
とは言ったものの、こちらの心臓はドキドキしている。
きゃー、男の人とキスをしてしまった。しかもこのキス、こないだ大阪のイベントで他の出演者の女性からされたような軽いキスではない。かなり強烈なキスだった。
 
「あ、えっと、今日はお仕事だったの?」
と尋ねたりする花見さんもバツが悪そうだ。
「いえ、プライベートな外出です」
「あ、やはりふだんからそういう格好するんだ」
「そ、そうですね。朝は政子さんがいる時にお邪魔して着替えたんですが、帰りが分からないからということで、今日だけちょっと鍵をお借りしました」
「ああ、なるほど」
 
ボクはメイクは落としたものの、キャミソールと短いスカートのままだ。
「でもそうしてると、君可愛いよ。女の子に生まれてたら良かったのにね」
向こうはフォローで言ってくれているのだろうけど、可愛いと言われるのは悪い気はしない。
「中身知らなかったら、ナンパしちゃうかも」
「それは政子さんに叱られます」
「ははは」
「あ、お茶でも入れます」
 
勝手知った家の中なので、ボクは台所で紅茶のパックを取り出し、ティーサーバーに入れ、電気ポットのお湯を注いだ。ティーカップを2つ、砂糖のパックとメロディアンミニ、ティースプーンを一緒にお盆に載せて、居間に運ぶ。座ってから紅茶をそそぎ「どうぞ」と言って差し出す。
「ありがとう」
花見さんはカップを受け取ると砂糖とメロディアンミニを入れ、スプーンで掻きまぜて飲む。ボクは紅茶だけ注ぎ、砂糖もクリームも入れずに飲んだ。
 
「だけど、今お茶を入れてくれたのもなんかも凄く様になってるね」
「そ?そうですか?ふだん家でもそのくらいしてますし」
「へー。お料理とかもするの?」
「カレーとか八宝菜とかは私が作ったりしますよ。両親共働きだから、私がいちばん早く帰ってくることもよくあるので」
「八宝菜が作れるのは凄い」
「えー?だってほとんど炒めるだけだし」
 
「いや、高校生の女の子でそこまでできたら偉いと思うよ」
「そうかなぁ」
なんだか褒められている感じなので、ボクは少し照れてしまった。
「あ、すみません。着替えてきますので」
「あ、もうしばらくそのままでいてよ」
などというので、結局ボクはそのあと政子が帰ってくるまで30分ほど、女の子の格好のまま花見さんと世間話などしていたのであった。
 
政子が帰ってきたのでボクは鍵を返そうとしたが、「あ、ずっと持っててもいいよ。いつでも来て勝手に着替えてもらってもいいから」などという。「え?でも・・・」とボクは花見さんの顔を見ながら
「突然来て、もしお邪魔しちゃったら悪いし」と言ったが
「前にも言ったけど、私が高校卒業するまでは啓介とはHはしない約束だから、ひょっとして冬子が突然来るかも、くらいの緊張感があったほうがいいもん」
などと笑いながら言う。花見さんは苦笑していた。
「そう?じゃ預かっておくね」
 
そういう訳で、ボクはそのあと仕事のない日はほぼ毎日、政子の所に出かけて女の子の服に着替えてからカラオケ屋さんに行き、女の子の声の発声練習をする日々になったのであった。だいたい朝は政子がいるので、着替えがてらいろいろとおしゃべりをした(洋服のこととかメイクのこととかもよく話したので、ほとんどガールズトークになりつつあった)。帰りは政子ひとりの場合はまたおしゃべりを楽しんだが、花見さんもいた時はできるだけさっと着替えてさっと帰るように気を配っていた。花見さんも頻繁に政子の家に来ているようだったが、夕方5時で「面会時間終了」らしかった。それで花見さんは政子の手料理の夕食を食べたことがないらしい。
 
そして「事件」が起きたのは8月も末、もうそろそろ夏休みも終わるという日であった。その日も仕事は無かったので、いつものように朝政子の所で着替えて、街に出かけ、カラオケで発声練習をしたあと街を少し散歩し、2時頃、政子の家に戻った。居間のテーブルの上に新しいnonnoがあったので、あ、まだこれ見てないと思い、まだ着替えないままボクはそれを読んでいた。そこに花見さんがやってきた。
 
「あ、こんにちは。またお邪魔してます。政子さんまだですよ」
と言ったが、なんか今日の花見さんは様子がおかしい。
「あれ?宴会か何かあったんですか?」とボクは尋ねた。
花見さんは明らかに酔っていた。
「いや、ひとりで飲んでた。。。。。振られちゃって」
「振られた?政子さんにですか?」
「違う・・・その・・・」
 
「花見さん、もしかして政子さん以外にも恋人がいたの?」
「だって・・・・政子は絶対にHさせてくれないし・・・他で発散させなきゃ我慢できないじゃないか」
「そんなの、裏切り行為だと思います」
「それは分かっていたんだけど・・・・」
と、花見さんは少し落ち込んでいる感じだ。
「でも、そちらと切れたんならいい機会じゃないですか。今後は政子さんひとりに絞りましょうよ」
 
「そうしたいけど・・・・俺、我慢できない・・・・・」
と言って、少しうつろな目をしている。
「今日は帰って少し寝られませんか?寝たら少し気持ち落ち着きますよ」
と言う。
「そうだな・・・・・だけど、君も可愛いな」
「え?」
「な?俺の裏の恋人にならない?」
「はあ?私、男ですよ」
「それだけ可愛ければ構わないよ。妊娠の心配も無いし」
「え!?」
 
花見さんは突然ボクに覆い被さるようにしてきた。
「ちょっと!」
「冬子ちゃん、Hしたことないんだろ?一度してみようよ。気持ちいいから」
「ちょっと、やめて」
ボクは抵抗するが、腕力ではかなわない。
たくみに洋服のボタンを外されて上半身はブラだけにされ、下半身はスカートをめくられ、パンティを脱がされてしまった。ひぇー。
 
ボクを押さえつけたまま花見さんは自分の服も脱いでしまう。その股間に大きなものがあるのを見た。何これ?ボクは目を疑った。おちんちんって、こんなに大きなものだったの?
 
それは自分の身体に付いている器官とは別物という感じだった。ボクのってそんなに大きくないし・・・・これがおちんちんなら、ボクのは本当はおちんちんじゃないのかも。。。そうか。ボクには実はおちんちんは無かったんだ!!じゃ、ボクって本当は女の子だったのかも。
 
突然変な事をされて頭の中が混乱してしまったのだろうけど、ボクはその時、そんなことを考えてしまった。
 
激しいキスをされた。唇だけではなく顔のあちこちに次々とキスされる。胸とかおしりとかも揉まれる。あの付近に熱い物体が当たる。ボクはもう抵抗する力を失っていた。嫌だ・・・こんなことされたくないよ。。。。ボクは涙が出てきた。
 
その時だった。
 
ガチャッ、という音がして、居間のドアが開いた。
え?
 
政子だった。
 
「ただいま。。。え!?何してるの?」
「政子・・・助けて」ボクは涙のあふれる顔で言った。
花見さんはしばらく政子の顔を見て、どうしていいか迷っていたようだったが「帰る」というと、服を手に持ち裸のまま、まさに脱兎の如く飛び出していった。
 
政子はあっけにとられてそれを見送っていたが、すぐにボクのそばに寄り「大丈夫?」と訊いた。
「ギリギリ未遂。貞操守れた」とボクは答えた。まだ涙が出ている。
「そう、良かった」と政子が微笑む。
その微笑みを見てボクは泣いてしまった。政子はボクのスカートの乱れを直すと、ギュッとハグしてくれた。
 
政子がお茶を入れてくれる。
「冬子、いつもお砂糖もミルクも入れてないけど、今日は甘いの飲んだ方がいい」
といって、砂糖とミルクの入った紅茶を勧められた。
「ありがとう」と言って、ボクはそれを飲む。
 
ボクは花見さんから聞いたこと、そしてされたことを全て話した。
「やっぱりね・・・・うん。他にも恋人いるんじゃないかなというのは感じてたのよ。だからキスまでしか許してなかったし。やはり他で性欲を満たしてたのね」
「どうするの?」
「当然サヨナラよ」
「いいの?」
「浮気する男なんて嫌い。婚約は当然破棄。叔母さんに一緒に行ってもらって鍵も返してもらう。念のためこちらの鍵も付け替える」
政子は断固とした口調で言った。なんか漢らしい、と思って惚れ惚れとした目で、ボクは政子を見てしまった。
 
少し落ち着いてくるとボクは花見さんのおちんちんを見た時、凄く大きいと思ったこと、あれがおちんちんなら自分のはおちんちんじゃなくて、だから自分にはおちんちんが無いのかも知れない。だからボクは実は女の子なのかもと思ったことを話した。すると政子は笑っていたが
「私もさっき初めて啓介のおちんちん、そして冬子のも見ちゃった。確かに別物かもね」と言い、
「でも、冬子はたぶんホントに女の子なんだよ。だからおちんちんは無くていいの。それはきっと少し大きめのクリトリス」と言った。
 
そうか。やはりボクは女の子なのか。そしてあれはクリちゃんだったのか。ボクはその時、凄く納得してしまった。思えば、この時が自分の性別意識の転換点だったような気がする。あの時確かに自分は「女の子かも」という意識を持ってしまった。とんでもない状況の下ではあったけど。
 
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