【夏の日の想い出・虹の願い】(5)

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『作曲家アルバム』最終回の取材で、青葉を含む私たち取材陣一行は、先月完成したばかりで、まだ青葉本人も見ていなかった高岡市内の新居を訪問し、広大なピアノ室に来ていた。
 
そこで青葉はスタインウェイ&ソンのコンサートグランドで『猫ふんじゃった』を弾いてみせた。
 

「でもこの部屋は音の響きが凄く自然だね」
と青葉は言った。
 
私もそれを感じた。町田朱美が頷いているが、東雲はるこは首を傾げている。
 
「マンションや普通の戸建てで業者さんに防音工事頼むと、全面に吸音板を貼り付けたり、酷い所は、壁にグラスウール吹き付けたりするでしょ?」
と千里は言う。
 
「それダメなの?」
と私は訊いた。
 
「そういう業者があまりにも多いからね〜。火牛アリーナとか、織姫・牽牛の構造を考えてみなよ」
と千里は言ったが、私は分からなかった。
 
「まず壁にグラスウールを吹き付けるのの最大の問題点は、空気層が無いこと。音を停めるのは空気なんだよ。だから吸音板とかを使う場合も、壁に直付けするのではなく、壁から少し浮かして固定する必要がある。結果的に壁は二重壁になる」
 
「うちのマンションの防音室は吸音板を浮かして留めてる」
と私は言った。
 
「取り敢えず、防音のことが分かってる業者さんはそうする」
「うん」
 
「でもその手の防音室で楽器を演奏すると、まるで反響が無いんだよ。だから野外のステージで演奏しているような感じに近い」
 
「ああ、確かに野外の感覚に似ている気はする」
 

「音楽のことが分かっている業者さんなら、ちゃんと音楽室の音響を考えた施行をする。音楽室というのは、それ自体が楽器なんだよ」
 
と言って千里は龍笛を取り出すと、それを吹いてみせた。
 
ラビスラズリがその素敵な笛の調べに感動しているようだ。長坂さん・佐竹さんも「凄い」という顔をしている。私と青葉のあらためてその笛に聴き惚れた。そしてその笛を聴いていて、私は千里の言う“音響”というのが少しだけ分かったような気がした。
 
千里が吹き終えると、みんな拍手をしたが、千里はそれにお辞儀をして返してから言った。
 
「今のは私の笛が鳴ったんじゃない。この音楽室が鳴ったんだよ」
「音楽室というのは、つまりギターの共鳴胴を更に大きくしたものだ」
 
「そういうこと。全面に吸音板貼り付けちゃう業者さんは、音楽室それ自体が鳴り響く楽器であることを認識してないんだな。楽器の音を騒音か何かと思っているんだよ。だから騒音を外に出さないということしか考えない。でも吸音板で覆われていると、音は全部吸収されて何も響きが無い。エレキギターをアンプにつながずに弾いてるのと同じ、お布団の中で女物の服を身につけてみる女装初心者と同じ」
 
「そうか。音楽室はちゃんと鳴らないといけないんだ。女装初心者は分からないけど」
「うん。だから、音楽室の壁は必ず二重壁にして、内壁は音響を考えた作り方をして、外壁は防音のために作る。その防音の壁は吸音板を浮かして作るから最終的には三重壁になるけどね」
 
「そうか。火牛アリーナや牽牛・織姫はそういう作り方をしたんだ」
「でしょ?でもここはあんなに広くないから、あそこまでは鳴らすことができない。それなりの音響を作るしかないけどね」
 
「そういうことだったのか」
 

「冬も一戸建てで創作活動しなよ。今とはきっと感覚が変わるから」
「そうかも知れない気がして来た」
 
「音響を考える場合、様々な要素があるんだけど、最も大事なのが残響時間なんだよ」
「それは結構コンサートホールの特性として言われるよね」
 
「基本的には楽器から出た音や歌声などが、60dB(デシベル)小さくなる、つまり10-6= 100万分の1になるまでの時間を残響時間という。大阪のシンフォニーホールは日本で初めてこの残響時間というものを意識して造られた本格的なホール。あそこが落成した時は“残響時間2秒”というのが流行語になった。その後、やはり音響をよくよく意識して造られた東京のサントリーホールは残響時間が2.1秒の設計になっている」
 
「それってクラシック向けの残響時間だよね?」
 
「そうそう。オーケストラやピアノの演奏では残響が豊かに残って欲しい。でもオペラだとこんなに残るとセリフが聞き取れないから残響時間は1.3-1.6秒くらいでいい。講演会なら1.0秒以下。ロックやポップスなら、その中間のだいたい1.0-1.5秒くらい」
 
「それ電気楽器をバリバリ使う人と、ギターやピアノだけで伴奏する人とで、かなり違うよね」
 
「違う。生ギターで伴奏しながら歌う人なら長めがいいけど、ハードロックみたいなのは短めにしないと耳が壊れる」
 
「ああ」
 

「お風呂の中で歌うと凄く残響があって気持ちいいよね。一般的なサイズの家庭用お風呂の残響時間は2-3秒あって、実はクラシック用のホール並み」
 
「そんなにあるんだ!」
「歌ってて気持ちいい訳だ」
と朱美も言っている。
 
「でもお風呂でエレキギター鳴らしたら耳が潰れるよね」
「エネルギーが大きすぎるからね」
 
「この部屋は今残響時間が1.1秒くらいの設定になっているんだけど、これを変えてみる」
と言って千里は壁のロータリースイッチを回した。
 
カーテンが自動で閉まる!
 
「今残響時間を最短の0.3秒にした。青葉もう一度弾いてみ」
「うん」
 
それで青葉が再度『猫ふんじゃった』を弾く。
 
「ああ」
とラピスラズリの2人が声を挙げる。
 
「これは普通の防音室の響きに近い」
と青葉が言う。
 
「カーテンが物凄い吸音性能を持っているからね。だからここはカーテンの開け閉めによって、残響時間を変えることができるんだよ」
 
「これいいかも」
 
朱美は「このシステム、私の家にも欲しい〜」と思った。七瀬さんに電話して頼めばいいかな?
 
「他に中に居る人の数でも変わるね。人間は音の吸収体だから、人数が多いほど音はよく吸収されて残響時間が短くなる」
 
「あ、ピアノの発表会で、リハで人が入ってない時と、観客が入ってからの本番では全然音響が違ってましたよ」
と東雲はるこが言っている。
 
「うん。だから、音響技術者は観客の人数を見て残響時間を調整する必要がある。夏と冬でも違うし、男女比でも変わる」
 
「夏と冬で違うのは分かる」
「冬は夏の倍吸収する」
「でしょうね!」
 
「性別でも変わるんですか?」
「女性の衣服は概して装飾が多い。特にスカートは表面積が物凄くある。更に髪も長い。だから、女性は男性よりずっと音を吸収する」
「女性は夏冬の差が男性よりあるかも」
「それはありそうだね」
 
「男の娘は女性と同じ計算でいいと思う」
「女の子の服を着てれば女の子の計算でいいですよね」
「普通の女の子以上かも。概して背が高いもん」
「髪を長くしている確率も高いかもね」
「あ、それは絶対そうですよ」
 

「まあそういう訳で、ここは二重壁になってて、外側の壁は吸音板を使って音を音楽室の外に漏らさないようにしてるけど、内側の壁はアテ(*19)の板壁と合板の穴あき板を組み合わせて音響優先の設計がされてるんだよ。複雑な反射を起こすためにレリーフも作っている」
 
「それ格好いい!と思ったけど、音響のためだったんですね」
「ホールなんかにこういう感じのレリーフがあるよね」
「ええ」
 
「そしてカーテンの開け閉めで残響時間は0.3秒から1.1秒まで変わる。今カーペットを敷いているけど、これを全部剥がしてしまうと下はアテの無垢材のフローリングが出るから残響時間は1.3秒まで上げることもできる」
 
「なるほどー」
 

「いっそクラシック・ホールみたいに残響時間2秒とかにはできないんですか?」
と長坂ディレクターが尋ねる。
 
「この部屋の内部を全面石膏ボードに交換すると、残響時間2秒になりますよ」
と千里は意味ありげの微笑みで答える。
 
「できるなら、そうしないんですか?」
「更にタイルなら4秒、コンクリートなら8秒まで上がりますね」
「そんなに!?」
と長坂さんは言うが、朱美が
「それは、さっき話の出たお風呂の状態ですね」
と言った。
 
「そうなんだよ。朱美ちゃん、よく分かってる」
と千里は純粋な笑顔で言った。
 

「その部屋の広さに応じた、適正な残響時間というものがあるんですよ」
と千里は言う。
 
「大きなホールでは長い残響時間が気持ちいいけど、狭い部屋でそんな長い残響時間はただうるさいだけになります」
「ああ、そうかも」
 
「適正な残響時間ということでいえば、だいたい一般の家庭の6畳の部屋で0.5秒、400人程度入る小型のコンサートホールで1.2秒くらい。2000人入る大きなホールで1.8秒くらいになります」
 
「それって計算式とかあるの?」
「ありますよ。理想残響時間=体積/表面積×0.254 + 0.357 です」
と言って、千里は数式をメモ用紙に書いて長坂さんに渡してくれた。長坂さんが頷いている。番組編集時にテロップで入れるつもりだろう。
 
しかしそんな数式をさらさらと書けるということで、ここにいるのが千里3であることが(私や青葉には)分かる!
 

「体積と表面積が関係するんだね?」
と私は言った。
 
「音は室内の空気で響くからね。だから体積が無いと音のそもそもの響きが生まれない」
 
「あ、そうか」
 
「小さな部屋は空気の体積が小さいから、どんなに頑張っても大きなホールのような音響にはならない。人工的にホールのような音響を付けると称する装置は昔からわりとあるけど、個人的に満足のいく音響になっているものに遭遇したことがない」
と千里が言うので
 
「同感」
と私も言った。
 
「だから音響をよくするには空気の体積を増やすのがいちばん良いやり方。家庭などで面積が取れない場合は、可能な限り天井を高くする。ここは移動にストレスがないように地上に作ったから天井5mだけど、地下に作ったら7mとか14mとかにすることも可能だった」
 
と千里が言うと、朱美は「だったらうちの音楽室は地下に7mで作って正解だったんだ」と思った。
 
「そして表面積で音が吸収されて減衰していく。大きなホールで音がよく響くのは、スケールが倍になった時、体積は8倍になるけど、面積は4倍にしかならないからだよ」
 
「なるほどー!」
 

「だからこの部屋の音響は、小型のサロンの音響に近い」
と千里は言うが、
 
「むしろこの部屋はサロン並みの広さがあると思うんだけど」
と私は言った。
 
「基本的にグランドピアノが快適な音響で響くには、天井が普通の家のように2.4mの場合で、壁の総周囲長がグランドピアノの長さの10倍以上でなければならない」
 
「そんな規則があるんだ?」(*18)
 
「経験則だよ。だからスタインウェイ&ソンのコンサートグランド、長さ274cmをまともに響かせるには、壁の周囲長が2740cm必要で、この条件を満たす部屋の広さは、正方形部屋なら32畳程度ということになる。この部屋の内寸は実際には7半間×9半間の 31.5畳だけど。壁の総延長は(7+9)×2=32半間=2909cmで、2740cmより長いからOK」
 
「コンサートグランドなら、最低そのくらいの広さは欲しい気がしてきた」
「まあコンサートグランドを4畳半に置くのは無茶だよね」
 
「でもそれほとんど小ホールだよね?」
 
「例えば東京の雑司ヶ谷音楽堂は約57平米で、これは7半間×10半間の35畳、つまりここより少し広い程度なんだよ。面積的には」
 
「やはり小ホールだ」
「まあ向こうはもっと天井が高いし、更に置いてあるピアノはコンサートグランドではなくて1つ下のクラシック・グランドピアノだけどね」
 
「音響的に許されるギリギリでは、やはり微妙なのだと思う」
 
「まあ普通の家では、さすがにそこまではできないけど、可能な範囲で、それに迫る音響を作ろうと頑張った」
 
「お疲れ様!」
 

(*18) Steinway and Sons Grand Pianos
 
size(cm) 音響的最小部屋
D-274 32畳(8x8)
B-211 24畳(8x6)
A-188 15畳(6x5)
O-180 12畳(6x4)
M-170 12畳(6x4)
S-155 10畳(5x4)
 
ここで述べているのは最低限の音響が確保できる広さである。部屋の天井の高さは8フィート(2.4m)である場合を想定している。
 
なお、音響を考えずに単に“設置”するだけなら、コンサートグランドは最低3畳、それ以外は最低2畳あれば“置く”ことはできるが、とてもまともな音にはならない。音響を作り出す部屋の空気の体積が絶対的に足りなさすぎるのである。
 
(グランドビアノは分解すると小さくなるので“搬入”の問題は起きにくいが、アップライトピアノや多くのエレクトーンは分解できないため、しばしば“設置”は可能なはずだが、“搬入”できない!という問題が生じたりするので注意。玄関経由では不可能だったので、クレーンで吊って窓から入れたなどという話も過去に何度か聞いた)
 
ただ、ヤマハのグランドピアノCシリーズは元々日本の一般的な家庭に置くことを想定した音造りがされているため、6畳程度の部屋になら置くことが可能である(洋室より畳部屋に置いたほうがよい。畳は吸音板並みの吸音能力があるので騒音問題が起きにくい)。
 
ケイの古い友人・鳥野(旧姓野乃)干鶴子は実家に居た頃は四畳半にC3を置いていた(搬入しに来た人が置けたことに驚いていたらしい)。ピアノの下で寝ていたのだが、朝起きると毎朝のように頭をピアノにぶつけていたという(学習能力が無い)。
 
槇原愛の家では、もう少し?余裕があって5畳半!?の部屋にC3を置いている。こちらもやはりヤマハCシリーズというピアノの特性に救われている。
 

音響の話をかなり長時間した所で、いつもの、ラピスラズリがその作曲者さんの曲を歌うコーナーとなる。残響時間を0.8くらいに調整してから、青葉自身のピアノ伴奏で、ラピスラズリは、岡崎天音作詞・大宮万葉作曲で、KARIONが歌った『白兎開眼』を歌った。
 
東雲はるこがウサギ耳のカチューシャを着け、町田朱美がワニ頭の帽子をかぶり、因幡の白兎がワニと戦っているイメージの振付でふたりは歌った。実はこの歌を歌うために、今日ははるこが白いドレス、朱美が黒いドレスを着ていたのである。
 
演奏が終わると
「うん、面白かった」
と言って、青葉はふたりに笑顔で拍手を送った。
 
(このライブ録音は後日、ラピスラズリの『懐メロ』シリーズのアルバムに収録されることになる)
 

私たちはピアノルームを出ると、縁側を歩く。途中、千里はカーテンの引いてある部屋の前で
「ここが青葉の部屋ね。だから自分の部屋から縁側を通ってピアノルームに行ける」
と言った。
 
(再掲)歩いたルート

 
青葉はふと気付いたように言った。
 
「ね、ピアノルームに入るには、もしかして作曲室から入るか、縁側から入るしかないということは?」
 
「正解!それ以外のルートを作ろうとすると、建蔽率をオーバーするんだよ」
「なるほどー。結構ギリギリなんだ?」
「そうでもないけど、廊下を1個余分に作ろうとすると、玉突きで建坪が40坪くらい増える」
 
「なぜ〜〜!?」
 
「ずっと男の身体で我慢していた人が、ひとたび睾丸を取ると、そのままあっという間に性転換手術まで受けてしまうようなものかな」
 
「全く意味不明」
 
(ここはさすがにカットされるだろうと思ったが放送された!)
 

縁側を歩いていると、東雲はるこが楽しそうであった。
 
「縁側のある家って、私、小さい頃に親戚の家で体験して以来」
などと言っている。
 
「英語でいえばウッドデッキですかね?」
と町田朱美が言う。」
 
「そうそう。縁側を英語で言ったらウッドデッキ(wood deck)、台所はキッチン(kitchen)、お風呂はバス(bath)、寝室はベッドルーム(bedroom)、押入れはクローゼット(closet)、屋根裏はロフト(loft)、物干しはサンルーム(sun room), 屋上屋はペントハウス(pent house)・・・」
 
と千里は言っているが
 
「それ最後の方のは違うと思う」
と青葉。
 
「あれ?小公女セーラが住んでたのもロフトですか?」
と東雲はるこが訊く。
 
「あれはアティック(attic)」
 
「ロフトとは違うんだ!」
 
「屋根裏でもロフトはまだ下の方、わりと暖かい。アティックは屋根上でも最も高い部分で、寒いし、ふつうそこへのアクセスルートは作ってなかったりする」
 
「屋根裏にもランクがあるんだ!」
 
「ビリー・ジョエルに『Songs in the Attic』というアルバムがあったね。屋根裏部屋で演奏したかのような、素朴な演奏で出していた初期の曲を新たな感覚で再生することを目的としたアルバム」
 
「そういう楽曲の再生という作業はいいかもね」
 

「この縁側は濡れ縁(ぬれえん)だね」
と私は言った。
 
「うん。ここは雨風が吹いても吹きさらし。だから建坪には含まれない。屋内なのか屋外なのか微妙な部分だよね」
と千里が言うので、私も
 
「日本人って昔から曖昧なのが好きだよね。西洋人なら、屋内か屋外かはっきりしろと言うかもしれないけど」
 
「西洋は男か女か明確にしたがる文化、日本はわりとその人のありようをそのまま見てくれる文化」
 
「なぜそういう話になる?」
 
「室内が女の子、室外が男の子、縁側は男の娘かな」
などと千里が言うと、町田朱美が頷いている(この部分も放送された!)
 

「ここは雨戸を立てたりしないんですか?」
と町田朱美が尋ねる。
 
「立てない。雨戸を立てるなら、濡れ縁ではなく廊下扱いになる」
 
「あ、廊下ですよね!」
「だから雨戸で守るのなら建坪に含まれる」
「ああ」
 
「くれ縁とかいうのは?」
と私は訊いた。
 
「それは縁側の板の張り方の流儀。この縁側の外端に割と太い材木が通っているよね」
「うん」
 
「これを縁框(えんがまち)というんだけど、縁をこの縁框と平行に渡した長い板で構成する方式を“榑縁”(くれえん)と言う。これに対して、垂直に短い板を多数並べて構成する方式を“切れ目縁”という。この家は榑縁(くれえん)」
 
「なるほどー!それも見たことある気がする」
 

 
「いづれにしても濡れ縁は雨風に曝されるから丈夫な木材で作る必要がある。合板では無理」
 
「これヒノキだっけ?」
「これは能登産のアテ(*19)だよ。ピアノルームの内装と同じ」
 
「地産地消か!」
 
(*19) アスナロ(ヒバ)の、能登半島での呼ばれかた。能登半島はアテの名産地である。“あすなろ(翌桧)”という言葉は、枕草子の記述が語源とされるが、その後、地域によって、アスヒ・アテビ・アテなどと呼ばれるようになった。
 

サンルームに戻ると、早月がお茶を運んで来てくれた(結果的に早月もテレビに映ることになる)。ラピスの2人が「可愛い!」と言って喜んでいた。
 
「この家は、さっきの縁側の縁框(えんがまち)にしても、部屋の柱にしても太いですね」
と朱美が言った。
 
「ええ。昔ながらの伝統工法で使用していた8寸材を使っています。工法自体はユニット工法ですけどね」
と千里は説明している。
 
「柱もアテですか」
「そうです。アテ材です」
「アテ(ヒバ)もいい木ですよね〜。でも結構高く付きません?」
 
「それなんですけど、津幡での開発がまだまだ続くので、2020年の年末頃に能登町の山を幾つか買って、2021年春には製材所も1つ買ったんですよ。田舎は林業に従事しようとする若者がいなくて間伐もできずに放置状態になっていたんですよね。でも、うちは給料がいいし、コロナ不況だから、かなりの応募があって、営林部門と製材部門併せて取り敢えず20人ほど採用しました。そしたら、町から感謝状まで頂きましたよ。2022年春にはまた20人ほど採用する予定ですが。この家はこの製材所の第1号出荷分を使っています。2020年末に山を買ってすぐ伐採して、冬の間は葉枯らししておいて、春に山から降ろして製材所で半年間機械乾燥して製材したものですね」
 
と千里は言っている。
 
「また買ったんだ!これで4つ目?」
と青葉が訊く。
 
「そうそう。栃木県塩谷町・福井県大野市・北海道深川市に次いで4番目の朱雀林業の拠点。あ、この発言カットしてくださいね。うちの宣伝と思われたら困るから」
 
「いいですよ」
と長坂ディレクター。
 

「ちなみにこの家の部屋はユニット部品を組み立てて作られているので、ユニットハウス工場のある福島県の近くの、栃木県の桧(ひのき)や一部合板も使用していますけどね。合板の材料は間伐材や、曲がっていてそのまま材木としては使用できない木などです」
 
「ああ、曲がった木はそうやって活用するんですね」
「間伐材を合板に加工している所は少ないと思います。人手不足で間伐自体ができないでいる山が多いので。それでロシア産のカラマツとか使っている工場が多いですね。うちはしっかり間伐やってますから」
 
「でも材木って切ってすぐ使えるんじゃないんですね?」
と東雲はるこが尋ねる。
 
「そうそう。生の木は大量の水分を含んでいるから、それを抜かないと使えない。時々、それをちゃんと乾燥させないまま使っちゃう工務店とかあって、そういう所に頼むと、住んでいる内に柱が曲がってきたりするんだよ。水分が抜けて」
 
「それは恐い」
 
「法隆寺の五重塔の芯柱(しんばしら)なんて伐採した後100年くらい乾燥させたものを使用している」
「凄い」
 
「一般に材木を伐採してから建物に使えるようになるには10年の乾燥が必要」
「建築って凄い長いスパンのお仕事なんですね」
とはるこが感動している。
 
「木管楽器とか弦楽器も10年くらい乾燥させたの使いますよね」
と朱美。
 
「そうそう。きちんと乾燥させてない木材で笛とかヴァイオリンとか作ったら、時間が経つにつれピッチが変わってきたり、棹が曲がったりする」
 
「それは困ります」
 
(市販の篠笛や安物の龍笛には本当に数年経つとピッチが変わってしまうものが時々ある。ヴァオリンやギターの共鳴胴の板が反ってしまったりするものも)
 
「ただ現代人は忙しいから、製材所に高温の乾燥室を作っていて、最近はだいたいここで乾燥させたものが多い。半年くらいの機械乾燥で10年くらい自然乾燥させたのと似たような状態になってくれる」
 
「それでも半年かかるんだ!」
 

「その前に何とかカラシとか言ってましたね」
「葉枯らし(はがらし)ね。伐採した樹木はだいたい現地で一冬置いて、その後、運び出すんだよ。その間に含水率は120%くらいから30%くらいまで大きく減少する」
 
「パーセントが100を越えるんですか?」
「含水率というのは、その木材を完全に乾燥させきった時の重さに対する比率を言うから、120%ということは、乾燥させきった木材が100kgだったら伐採した直後は220kgで、その内の純粋な木材が100kg, 水が120kgということ」
 
「じゃ何ヶ月か山に置いておくだけで重さが半分になるんですか!」
「そうそう。凄いでしょ。それで切ったばかりの木で家を建てたりしたら、どうなるか分かるよね?」
「家が半分に縮んじゃう」
「あり得る、あり得る」
 
「木材を山から降ろす手間も違いますよね」
「重さが半分になれば運び出すのも楽だよね」
 

「まあ、この家はユニット工法だから、ただ並べるだけならこんな太い柱は要らないんですけど、屋根に太陽光パネルをたくさん並べたから、それを支える必要があったから」
 
「あれ、たくさん並んでるよね!100枚くらい?」
「120枚。6枚×20列。重さは2.5トンほど」
「ああ」
「アクアがCMやってる、K製作所のアマテラスを使った」
「わあ」
「設置に青山さんが来たよ」
「そうか。青山さんが勤めている部門で販売してるんだったね」
 
「可愛かったよ」
「青山さん、結局女性になっちゃったんだっけ?」
「少なくとも女性にしか見えなかった」
「やはり、元々そういう傾向あったのかなあ。あ、ここ、内輪ネタなんでカットしてくださいね」
と青葉は言ったものの、放送された!
 
ご丁寧に、青山さんの男性時代の写真と、最近のK製作所の女子制服を着た写真が並べて映された!(本人には事後承諾:彼はもう男に戻るのは困難になりつつある。彼は睾丸は取っちゃったのだろうか?と青葉は考えていた)
 
「アマテラス・パネルは凄く発電能力が高いから、この120枚のパネルが生み出す電力は、1日平均180kwh程度に達する。この家で使う電気を全部まかなえる」
「120枚も並べたらそうだろうね」
 
「一応北陸電力と連系してて、足りない場合は北電から供給してもらえるけど、実際にはかなり余って、北電が買い取ってくれることになる。特に夏は大きくあまると思う。発電量が大きくなるから」
 
「夏に北電に渡せるのはいいことだ」
「うん。電力会社のほうが電力不足になりがちだからね。この家は“燃料節約のため”集めた雨水を屋根の上で流したりするから、あまり暑くならないようになっているはずだから多分あまり冷房は使わない」
 
「そもそも平屋建てが暑くなりにくい気がするよ」
 
(モーターで貯水槽から屋根に水を吸い上げて流すが、水が屋根から落下する時にタービンを回して発電するので、総合的にはあまり電気を食わない。このシステムは熊谷のコテージ“桜”でも採用されている)
 

この新・青葉邸の取材で、2年間にわたる作曲家アルバムの取材は終了した。また主な流行作曲家はほぼ網羅したと思う(最終回は1時間スペシャルとなり、熊谷からホンダジェットで移動する所から始まっていた)。
 
この日の午後、青葉邸に来た人たちは各々次のように行動し、地元・〒〒テレビの長坂ディレクター以外は、夕方、能登空港に集まって、Honda-JetBlueで熊谷に帰還した。
 
町田朱美と東雲はるこは、伊勢真珠と、青葉が呼んだ沢口明恵に車(青葉のニスモ・朋子のヴィッツ)で送らせて、各々の実家に顔を出した上で、夕方、能登空港に連れて行った。
 
◇◇テレビの佐竹カメラマンはやはり青葉が呼び寄せた皆山幸花が案内して〒〒テレビの車で、S字型に架かる伏木万葉大橋、巨大な新湊大橋と海王丸、雨晴海岸や美しい斜張橋・比美乃江大橋などの映像を撮ったらしい。氷見市で一緒に氷見うどんを食べてから、能登空港に移動した。
 
(雨晴海岸の映像は、ラピスラズリが『白兎開眼』を歌うバックに流された)
 

なお、東雲はるこだが、
 
「私事になるからあの場で発言しなかったけど、大宮先生の音楽室の音響の良さに比べてうちの実家のピアノ室は音響が悪すぎる気がするんだけど、誰かに見てもらえないかなあ」
 
と言った。それで津幡リゾート?の開発準備のため偶然こちらに来ていた、播磨工務店の青池さんに、音響技師さんを連れて行ってもらった。
 
はるこ(岬)の実家では、お母さん・温子さんが小さい頃からピアノを弾いていて、小学生の時までは古いアップライトを弾いていたが、中学時代にS400B (1982.7-1990.2に販売) を買ってもらった。当時は亡くなった祖父(岬の曾祖父)の隠居部屋にグランドピアノを置いていたが、あまり音響のいい場所ではなかったという。
 
お母さんがお父さんと結婚した時、お父さんはこの実家を二世代住宅に建て替えた。その時、リビングに隣接して、ピアノ部屋(12畳サイズ)を作った。(1階が居間とピアノ室でいっぱいなので、この家ではお風呂が2階にある:祖父世帯は平屋で2軒は渡り廊下で接続されており、LDKを共用する)。
 
このピアノ部屋を作った時、温子さんは、今まで畳部屋で残響が物凄く短いのが不満だったので、残響時間が長くなるように、部屋の内装は硬い材料で作ってもらったらしい。温子さんはよく
「ここは部屋は12畳サイズだけど、音響は1000人規模のホール並みなんだよ」
 
と言っていたのだが・・・
 
岬はこの部屋は響きが大きすぎると感じていた。
 

それで今回音響に詳しい人に見てもらいたいということになったのである。
 
青池が連れてきた音響技術者・山畑さんの見立てではこういうことだった。
 
・天井が2.4mしかなく、部屋の空気の体積が小さいので音が響きにくい。
・その割りに壁が音を反射しやすい石膏ボード(推定吸音率0.05)、床もPタイル(推定吸音率0.03)になっており、この部屋の広さに対する適正残響時間(0.5sec)を大きく上回る1.6sec もある。
 
この残響時間を“コンサートホール並み”とお母さんは思っていたのだが、山畑が播磨工務店のスタッフに防音カーテンを持ってこさせて、試しに部屋の周囲2割程度に貼り付けてみたら、
 
「あ、こちらの方が快適に感じる」
とお母さんも言った。
 
それで、播磨工務店に頼んで、音響を再調整してもらうことにした(費用は、はるこが出す)
 
はるこの今日の帰省はこの作業だけで終わってしまった!
 

青葉と私は取材が終わった後、あらためて朋子さんと千里の案内で、家の中を見てまわり、特に青葉は、呆れ返っていた。
 
↓再掲

 
こどもたちの部屋は(来紗・伊鈴の分も入れて)6つ取られているものの、実際には由美(2歳11ヶ月)はまだ幼いので、隣の早月(4歳7ヶ月)の部屋で一緒に寝ている。緩菜(3歳3ヶ月)は非常にしっかりしているので、ひとりで寝る。早月がかえって緩菜を頼ったりしている。
 
私たちが家の中を回っていたら、プレイルームで、早月・緩菜・由美がレゴ(デュプロ:標準の倍のサイズの幼児用)を組み立てて遊んでいた。でも見ていると、握力が弱いので、しっかり填め込めず。あまり大きく積み上げると崩れやすく、なかなか設計図?通りには行かないようであった。朋子がそこに入って、すっかり、おばあちゃんする。
 
私と青葉・千里は、サンルームに戻り、セルフサービスでコーヒーを入れてしばらくおしゃべりした。コーヒーはニューギニア産ブルーマウンテンである。ヨーロッパでは結構出回っているらしいが、日本では、千里以外にはこの輸入ルートを持っている人は少ないので、青葉や千里の家、龍虎(アクア)の家くらいでしか味わえない味である。
 
「そういえば桃香は?」
「酔い潰れて寝てる」
 
それ面倒くさいから酔い潰したんだったりして。
 
「桃香と子供たちは、いつまでこちらに居るの?」
「年末に京平を連れてきて、お正月が終わったら、京平と早月を連れ帰る。早月は幼稚園に入る準備をさせないといけないから」
 
「ああ」
 
「早月ちゃんは、浦和の幼稚園に入れるの?」
と私は何気なく訊いた。
 
この時私が言ったのは、浦和か?高岡か?という意味だった。
 

ところが千里は言った。
 
「それ大変だったんだよ」
 
「何かあったの?」
 
「桃香が季里子ちゃんとパートナーシップ宣言をしたのは知ってる?」
と千里は言う。
 
「そうなの!?」
「だって桃香は千里1番と結婚式挙げたじゃん」
 
「この問題を説明するためには、桃香が2人いることを説明しなければならない」
「はぁ!?」
 
「アクアが3人から2人に減った時、葉月が2人に分裂しちゃったでしょ?」
「あ、うん」
 
「私と千里1が統合された時に、その余波で桃香が分裂しちゃったんだよ」
「全然気付かなかった!」
「それって2人とも女?それとも男と女?」
「残念ながら2人とも女だった。男に変えてあげようか?と言っけど、男になったらレイプ魔として逮捕されそうだからやめとくと言ってた」
「よく自分の性格を分かっているな」
 
「だからこの2人を仮に桃香A、桃香Bとする。桃香Aが季里子ちゃんと結婚して、桃香Bが千里1と結婚したんだよ」
 
「そういうことになっていたのか」
「じゃ重婚はしてないわけか」
 
「今ここにいる千里は3番だよね?」
と私は確認した。
 
「もちろん。分からない?」
「見ただけでは分からない。音響の計算式とかをスラスラ言ったから3番だろうと思った」
 
「2番はアバウトだし、1番は直観の人だから」
などと千里3は言っている。
 

「だけど、葉月は最終的に1人に戻ったよね。桃香もいづれ1人に戻ったりしないの?」
 
「ずっと将来的には分からないけど、当面は、私が3人で活動している間は、桃香も2人だし、アクアも2人だと思う、というのが丸山アイの意見。これ本人たちには絶対言わないでね。それに期待するから」
 
「うん」
 
「だったら千里は3人のままでいればいいと思う。千里は自分の分裂を制御できるんでしょ?」
 
「今の所はね。ずっと先にはどうなるか分からない。私の分裂にはどうも“かなり上の方たち”の思惑が絡んでいるみたいで」
 
「うーん・・・」
 

「2人に分裂はしたけど、桃香は戸籍・住民票が1つしか無い。季里子ちゃんとパートナーシップ宣言するには、住所を同じ所にしないといけないから、桃香は自分の住民票を千葉市に移動した。巻き添えで早月も住民票が千葉市に移動になった」
 
「ああ」
「幸いにも“千里は”貴司と婚姻届けを出すから、どっちみち“千里と桃香は”パートナーシップ宣言はできないはずと桃香は考えた。だからそちらは純粋な事実婚でいいだろうというプランだったんだよ」
 
「なるほど」
 
「それで早月は住民票の上では、季里子ちゃんちに居ることになっているし、桃香たちとしては、早月は季里子が養子縁組して、苗字も紫尾にした上で、千葉の家から幼稚園・小学校にやろうと計画した。これに関しては朋子さんも私たちも了承した。今“高園”の苗字を受け継ぐ子が早月だけなんだけど、どうせお嫁さんに行ったら苗字は変わるんだし、と朋子さんは同意してくれた」
 
「うん」
 
「ところが早月は千葉に行くのは嫌だと言った」
 
「それ早月ちゃんの気持ち分かるよ」
と私は言った。
 

「自分は来紗ちゃん・伊鈴ちゃんと仲良しだし、苗字を来紗ちゃんたちと一緒にするまでは、構わない。でも自分は京平・由美・緩菜と姉妹だから、浦和の家で由美たちと一緒に暮らしたいと言うんだよ」
 
「それが自然な感情だと思う」
と青葉も言った。
 
「それで、私と桃香と季里子ちゃんの3人で腹を割って話し合った」
「その3人で集まったんだ!」
 
「桃香は季里子ちゃんと暮らしてるほう、桃香Aが出た。私たちは1番も2番も私に任せると言うから、私が出ていった。それで丸一日話し合った結論」
 
「うん」
 
「やはり私たちって、おとなの都合で子供たちを随分翻弄してるからさ」
「確かにね。他人(ひと)のこと言えないけど」
 
「だから早月ちゃんの気持ちを大事にしようということになった」
「うん」
 
「だから早月を季里子ちゃんが養子縁組する話もキャンセル。早月は浦和で幼稚園・小学校と行かせることになった。だから早月だけ住民票を分離して浦和に戻した上で、浦和の幼稚園の入園試験を受けさせたんだよ。無事合格」
 
「良かった」
 
「でも早月・由美は、来紗・伊鈴の妹という意識は持ち続ける」
「それでいいと思う」
「だからこれまで通り、毎週週末に、子供たちを千葉に行かせる」
「それも大変そうだけどなあ」
 

「結局住民票はどうなったんだっけ?」
「早月は桃香の住民票から外れて、単独の住民票になった。京平と同じ」
「京平君って、貴司さんと千里の戸籍・住民票に入ってないの?」
「入ってない。京平は単独の戸籍で単独の住民票」
「は?」
 
「京平は、阿倍子さんと貴司の離婚の時、阿倍子さんの戸籍・住民票に入った。そして阿倍子さんの再婚の前に、京平を住民票の上では独立させて浦和に移動した。そして阿倍子さんが晴安さんと再婚したことで京平は篠田阿倍子の戸籍に1人だけ取り残された」
 
「あ、由美ちゃんも似た状態だ」
 
「そうそう。由美は“川島千里”の養女として、川島の戸籍に入っていたけど、千里1が復氏届けを出した上で千里2が細川貴司と結婚したことで、由美は川島の戸籍に1人だけ取り残された」
 
「緩菜ちゃんだけが親と一緒になってる?」
「うん。緩菜は貴司と美映さんが離婚した時に、貴司の戸籍に残された。そして貴司が千里2と結婚したので、貴司・千里2・緩菜はひとつの戸籍・ひとつの住民票に入っている」
 
「凄い複雑なことになってる」
「今回の操作でますます複雑になったね」
 
※浦和の家の住人
 
細川貴司 細川貴司戸籍筆頭者
細川緩菜 細川貴司の娘で細川千里の養女。でも本当は信次と千里1の子供。
細川千里(千里2)細川貴司の妻として戸籍に記載。但し本人はずっとフランスのLFBに参加しており、コロナのため2019年秋以降フランスにずっと滞在中!(東京五輪前後だけ日本に来た)
 
篠田京平 細川貴司の息子。戸籍は篠田阿倍子の戸籍に1人だけ残る。阿倍子自身は、立花晴安と婚姻して篠田の戸籍を離脱している。
 
桃香B 戸籍と住民票が無い!
早月 桃香の娘。住民票は千葉市に移動していたが浦和に戻された。
村山千里(千里1)(*20) 桃香Bの妻。信次の元妻。
由美 千里1の娘。戸籍は川島の戸籍に1人だけ残る。遺伝子的には川島信次と桃香の子供。
 
川上青葉 桃香・千里の妹。
鈴江彪志 青葉の婚約者。京平がとってもなついていて、千里不在の日はたいてい彪志の部屋で一緒に寝ている。
 
村山千里(千里3)(*20) この家の事実上のオーナー。独身。日本のWリーグに参加。
 
長野龍虎(龍虎F)普段は八王子の家に住んでいる。
長野龍虎(龍虎M)普段は代々木のマンションに住んでいる。
 
村山千里(千里4"Green")千里たちの元締め!?しかしその存在は未だ確認されていない!?
村山千里(千里5"Violet")その存在は確認されていない!? Violetの役割はいづれ説明することになる。
 
村山千里(千里6"Orange")丸山アイが存在を予測しているが、筆者も存在するかどうか知らない!
 
千里4・千里5の存在は多分丸山アイだけが気付いている。でも千里の専任ドライバーの矢鳴姉妹は「千里さんは絶対4人以上は居る」と感じている。もっとも矢鳴姉妹の前には千里1〜5のみでなく、千里B(貴人)・千里D(天后)・千里E(朱雀)、更には千里Xや千里Zなども現れている。
 
千里4,千里5は冬子や青葉の前にも結構現れているのだが、青葉や冬子は千里は3人と思っているので、1〜3の中の誰かだと思い込んでいる。京平はさんざん欺されたので、最近、どの千里なのか見分ける自信を失っている!京平は、実は1番の千里は2〜3に近いパワーを回復させていて、まだまだ力が弱いかのように装っているだけでは?と疑っている。緩菜は何か知っているようだが、あの子は口が硬い。
 
龍虎は千里たちを見分けるのは無理!と最近諦めた(彼らもさんざん欺された)。コスモスは意外に複数の千里をかなり高確率で見分けている。コスモスは千里が3人ではない気がしてきている。1〜3のどれにも該当しない気がする千里と会うこともあるのである。
 

(*20) 千里1〜3と、Blue/Red/Yellow の対応については、いづれ説明することになると思う。現時点では説明できる前提条件がまだ提示されていない。
 
なお、千里Whiteは2017年7月の事故で死亡・消滅している。Whiteは元々、留萌Q大神が作った身代り人形だったので、身代りとしての役割を果たした。
 

「だったら、これ以上、子供たちを翻弄するのは可哀想だよ」
と私は言った。
 
「うん。だから、私と桃香と季里子は、早月の気持ちを大事にしようという結論に到達した」
 
「良かった」
 
「その上で、朋子さんと季里子ちゃんのお母さん・呼子(ここ)さんとが電話で話して、学校の長期の休みの時には、来紗・伊鈴、京平・早月・緩菜・由美の6人を高岡の家に呼ぶことにした。
 
「わあ」
「取り敢えず、このお正月には、京平・来紗・伊鈴の3人でこちらに来る。それで由美と緩菜は置いたまま、京平・早月・来紗・伊鈴の4人がお正月が終わったら帰るけど、京平と早月は浦和の家、来紗・伊鈴は千葉の家に戻ってこれまで通り」
 
「何か結果的にいちばん良い形になった気がするよ」
「うん。私もそう思う。子供たちの移動にお金は掛かるけどね」
「確かに!」
 

「結局こちらの桃香はもうしばらく高岡?」
「青葉が戻ってくる1月下旬まではそれでいいかなと。そもそも桃香をしばらくこちらに置いていたのは、青葉がずっと熊谷に居るから、こちらをお母さんひとりだけにしたくなかったからというのもあるんだよね。あまり役に立たないけど」
 
「飲んべえじゃね〜」
「料理も掃除もできないし」
「車の運転とか絶対させられないし」
 
まあ早月ちゃんが浦和に戻って高岡に残るのが由美ちゃんと緩菜ちゃんだけになっても、緩菜ちゃんが3歳にしては、しっかりしてるみたいから多分大丈夫だろう、と私は思った。
 

そういう訳で、夕方、私と青葉は酔い潰れて寝ていた桃香にひとこと声を掛けただけで(桃香がギョッとしていた:桃香は裸で寝ていた!ちんちんは付いてなかったけど)、千里にインプレッサで送ってもらい、能登空港に向かった。空港でラピスラズリ、佐竹カメラマン、と合流し、Honda-Jet で熊谷に帰還した。
 
青葉は熊谷のコテージ“さくら”に入って、ワンティスのトリビュートアルバムに関する作業に復帰した。青葉が取材に行っている間は、南田容子が立花紀子にフルートの吹き方の基本を指導してあげていたようである。
 
私はコテージに少し顔を出して南田・立花にお土産の「ますの寿し」を渡して励ましてから、佐良さんの運転するエルグランドでラピスラズリと一緒に東京に戻った。
 

(*21) 計画図の問題点
 
↓計画図(再掲)

 
・家の中心であるべきLDKが隅に追いやられている。
・建坪の広さに対してLDKが狭すぎる。
・子供たちの部屋がLDKから遠すぎる。
・家の重心に倉庫(書庫)や住人の居ない部屋がある。
・光を取り入れるべき南・東が完全に塞がっている。
 
これは運命学の専門家の青葉と千里が話し合いに入っていたとは思えないほどの凶相の家、家運が先細りになる家である。南田は違和感を感じて再度千里と話しあい、千里も誤りを認めて、家の中心にLDKを置き、東と南の光を取り入れるサンルームを追加して大幅に計画図を書き直した。サンルームを作ってみると、それが“仏間”の役割を果たしていることに気づき、仏間をサンルームに統合した。
 
↓仏間があった時期の計画図(途中経過)

 
↑の途中経過はかなり理想に近いのだが、ピアノルームの位置に違和感があるのに加え、家の間口が16半間もあり広すぎて、庭が細長くなりすぎて車もまともに駐められないデッドスペースと化すのでボツとし、家の間口を11半間まで絞った。
 
ピアノルームは最初16畳で考えていたのだが、スタインウェイを置くことを考えると、16畳では全然足りないので倍くらいのサイズにし、また家の間口を絞ったせいで玄関近くには置けなくなったので、いったん北側に移動した。この時点ではピアノルームは5半間×11半間(4.5m×10m)で考えていたのだが、4.5m幅に2.7mのピアノと30cmくらいの椅子を置くと、両脇が70cmずつしか無いことになり、狭っ苦しいし、どう考えても音響が悪い。そこで、ピアノルームは西に離れとして置くことを考えた。
 

 
この結果、千里の部屋は目の前に5mの壁が出来て、事実上、窓が無くなってしまうのだが、千里はそれは別に構わないと言った。
 
ところが、ここで早月の本命卦が間違っていたことが発覚した!
 
実は千里と南田が検討していたら、桃香が出て来て
「そうだ。こんだけ広いなら、来紗と伊鈴を連れた来た時の部屋とかも確保できない?」
 
と言うので子供部屋を東西に1個ずつ増やそうとした。ところがそこで千里が違和感を感じて、早月の本命卦を確認したら間違っていたのである。
 
「いや、千葉の季里子ちゃんの家では来紗ちゃん以外、全員東四命で処理したはずなのにと思った」
 
(あの家の間取りは季里子と桃香で決めたのだが、桃香は実はかなり千里からアドバイスを受けている)
 
「青葉の勘違いだな」
「青葉も疲れてるからね」
「早月が男の子なら坎でいいけど」
「性転換しちゃう?」
 
「おお、あの子はちんちん生えて来たら喜びそうだけど」
「何なら桃香も男に変えてあげようか?」
「母と娘から父と息子に華麗なる変身」
「その逆に父と息子から母と娘になった親子知ってる」
 
「ちんちんは欲しいが、男になってしまうと、仕事にも就かずに昼間から酒を飲んでたら、民生委員さんから叱られそうだからやめとく」
「それ、女でも問題だと思うんだけど?」
 
そういう訳で、正しい本命卦はこのようであった。
 
来紗 2013.06.03 坎(西)
京平 2015.06.28 震(西)
 
伊鈴 2014.08.10 艮(東)
早月 2017.05.10 艮(東)
由美 2019.01.04 兌(東)
緩菜 2018.08.23 乾(東)
 
「ということは、子供部屋は、東に2つ、西に4つ並べる必要がある」
「それならピアノルームは母屋の西ではなく東に置かないとスペースが足りない」
「それは結果的に千里の部屋の日当たり問題も解消する」
 
それで早月は男になるのは免れることになった!?
 
↓完成図(再掲)

 
(日当たり問題を解決するため、ピアノルームは90度回転させた。そして東側の子供部屋が2つしか無いから、桃香の部屋にはかろうじて窓ができることになった。桃香は「窓なんて要らん。朝が来なければいいのに」と言っていた)
 

2021年12月15日(水).
 
ローズ+リリーの34枚目のシングル『虹の願い』が発売された。
 
11月17日に33枚目のシングル『ぼくたちの秘密基地』を出したばかりで1ヶ月で次のシングルを出すというのは異例だが、八雲課長としては、相乗効果狙いのようである。
 
「ローズ+リリーのファン層は経済力はあるから、これを買うついでに前のも買ってくれるよ」
と言っていたが、それって花野子の言っていた、ファン層の高年齢化??
 
1週間くらい前からFMなどで掛けてもらっていたのだが、かなり好評な感じであった。それで初日に予約を含めて45万枚来て、
 
「手応えがいい」
と八雲課長も笑顔であった。
 
このペースならまたミリオン行きそうな感じである。
 
個人的には和泉の編曲は、シンプルすぎるサウンドになっていて、微妙な気持ちはしたのだが、どうも一般の人たちには、こういうサウンドが受けるようである。
 

この日12/15でトリビュートアルバムに関する青葉の作業は完了し、南田容子・立花紀子と一緒にささやかな打ち上げをして解散した。
 
青葉は浦和の千里家に移動し、南田容子は東京・五反野の女子寮に戻る。ついでにコスモスに誘われて、立花紀子もしばらく五反野の寮で寝泊まりすることにした(桜井真理子・安原祥子が入っているC4階のひとつ下!のC3階に部屋をもらった)。これでフラワーサンシャインの全員が寮に入ることになった。
 
(他の4人はまだA8階の808に4人まとめて放り込まれたまま)
 

青葉は、1/20-23の北島康介杯まで、浦和に滞在する。つまりお正月は彪志と一緒に過ごすことになる。途中、1月1日のローズ+リリー・ニューイヤーライブにも参加してもらう。
 
管弦セクションの作業も12月17日(金)には終わったので、吉田邦生・日高久美子・田中世梨奈という北陸組の作業も完了したのだが、彼女たちには青葉同様、1月1日のローズ+リリーのニューイヤーライブにも参加してもらうので、そのまましばらく五反野の女子寮に滞在してもらうことにした。
 
なにしろ、伴奏の仕事はたくさんある!特に年末年始はみんな物凄く忙しい。また金管奏者は貴重なので、吉田は毎日誰かの伴奏でスタジオやテレビ局に出て行っていた(テレビ局のパスも渡された)。
 
地元では「あ、吉田さんテレビに出てる」
と随分話題になっていたが、本人はそんなに話題になっているとは知らない。
 
「でもすっかり女の子してるね」
「やはり女の子になっちゃったのね」
 
「K大笑劇部でヒロイン役をした人は本当に女になるという伝統が続いてるんだ(*22)」
 

しかし本人はむろん女にはなってないし、特に女装しているつもりもない!
 
吉田はいまだに自分が女子寮に滞在していることに気付いていない。そして女子寮の誰もが、吉田が男性であることに気付いていない。
 
女子寮のメンツが吉田の性別に気付かなかったのはまだいいとして?、吉田がずっと自分が居るのが男子禁制の女子寮であることになぜ気付かないのかは、知るよしもない!
 
コスモスは吉田のことを“女の子になりたい男の子”なのだろうと誤解していたようである。
 

(*22)吉田が1年生の時に半年間在籍したK大笑劇団では、少なくとも2011年以降、1年生でヒロインを演じた部員が、やがて部長になり、性転換して女優になるという伝統?が続いている。
 
2011年眠り姫を演じた白木君は2012秋-2013に部長を務め、2014年性転換
2012年かぐや姫を演じた里田君は2013秋-2014に部長を務め、2015年性転換
2013年オデットを演じた梅野君は2014秋-2015に部長を務め、2016年性転換
2014年マドンナを演じた桜井君は2015秋-2016に部長を務め、2017年性転換
2015年シンデレラを演じた楡木君は2016秋-2017に部長を務め、2018年性転換
2016年カシムの妻を演じた楢山君は2017秋-2018に部長を務め、2019年性転換
2017年白雪姫を演じた佐倉君は2018秋-2019に部長を務め、2020年性転換
2018年マドンナを演じた田所君は2019秋-2020に部長を務め、2021年性転換
 
全員部長を務めている内に、だいたいゴールデンウィークあたりで去勢して、部長を退任した後、女装で学校に出てくるようになり、4年生の夏休みに性転換手術を受け、戸籍も女性に変更して女性として就職している。性別くらい変更していてもK大卒業生は就職率が高いし、今は性別変更に理解のある企業も増えている。中には既に(男性と)結婚した人もいる。全員「女になれて幸せ」と言っているらしい。
 
吉田は2016年にモルディアナを演じたので、順当に行くと彼が2017-2018に部長を務め、2019年に性転換していたかも知れなかったが、彼は1年生の文化祭が終わると即退部して水泳部に入ってしまったので、性転換してしまう運命を逃れたかと思われた。が、やはり性転換していた!?というお話である。
 
笑劇団では部長を務めた人以外は性転換していないので、元々そういう傾向のある人が集まった集団ではないものと思われる。
 
何かの呪いかも知れないが、青葉は調べるつもりもない。誰からも依頼されていないし、特に不都合の起きている人は無いし!
 
 
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【夏の日の想い出・虹の願い】(5)