【夏の日の想い出・虹の願い】(2)

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2月2日(水).
 
せっかく警備員を増やし、セキュリティゲートまで新設したのに、予告はまた1歩内部に出現した。
 
交替のために美術室に入ってきた女性警備員が天井から糸でぶらさげられた、テトラドラクマ銀貨を発見した。テトラドラクマ銀貨とはつまり4ドラクマの銀貨で、要するに4日前ということを表しているのだろう。警備員たちに尋ねたものの、誰も怪しい人物は見ていないということであった。
 

その日、社長と風貌の似た人物・村正音三郎専務がやってきた。岩次郎社長の実弟である(演じているのは風上壮馬=風上信助の実弟:ふたり揃って出るとギャラが高い!)。
 
「おい、兄貴、これは本当に盗られるぞ」
と社長に言う。
 
「たくさん警備員入れているのに、その隙を縫って、賊は予告状を大胆不敵に置いていく。俺も不安になってきた」
 
「明智小五郎に依頼したんだって」
「うん。二十面相に対抗できるのは明智探偵だけだって、みんな言うし。でもポーランドに行ってて、26日に帰国したけど、10日間の自宅待機に掛かるから2月5日23:59まで動けないらしい」
 
「予告前日か!」
「自宅待機解除になったら、すぐこちらに駆け付けてくれることにはなってる。自宅からここまで40分くらいらしい。だから2月6日0:40くらいにはこちらに着くという話だ。その後は6日が終わるまでここに居てくれるらしい」
 
「俺が二十面相なら、明智が来る前に盗む」
「実は自分もそんな気がしていた」
 
「ここはやはり偽物を使おう」
「お前それ以前から言ってたよな」
「やはり純金の仏像をいつも展示しておくのは不用心だよ。普段は偽物を出しておいて、大事な客に見せる時だけ本物を見せればいいんだよ」
 
「でも偽物なんてすぐできんだろう」
「兄貴が消極的だけど絶対必要になると思ってさ、半年くらい前から作らせていたのが、実は昨日できたんだよ」
「おお」
「今車の中に置いてる。ちょっと見てくれ」
 

それでふたりは庭に駐めている音三郎のボルボXC90に行く。
 
中に大きな木箱が1つと小さな木箱が12個入っている。岩次郎氏はふたを取ってみた。
 
「きれいにできてるね!」
と岩次郎氏は感心する。
 
「だからさ、台座を下に下げて、上にこれを並べておこうよ。そしたら賊は台座の中に入っている本物には気付かずに上に載ってる偽物を盗っていく」
 
「それはうまい」
「でもこれどうやって運び入れる?」
「台車に載せて運んでいこう」
「分かった。台車持ってくる」
 
それで岩次郎氏が持って来た台車に、仏像を載せる。一度には載らないので最初に薬師如来を運ぶが、人間の手では持ち上がらないので、音三郎専務が持ってきた、小型クレーンで台車の上に載せた。それでまずはそれを仏殿まで運ぶ。
 
彼らはむろん玄関の警備員、美術室入口の警備員、仏殿通路入口の警備員の前を通過するが、社長が一緒なので警備員たちは何も言わない。「お疲れ様です」と声を掛けるだけである。
 
そして全部仏殿内に運び入れてから、仏殿内に居る女性警備員には
 
「悪いけど、ちょっと出てて」
 
と言って席を外させてから、壁のスイッチで台座を下げ、仏像が全部下に隠れた所で警報装置を切る。小型クレーンを使って、薬師如来像を中央に置いた。その後、十二神将像は手で持って、薬師如来像の周囲に並べた(*6).
 

(*6) 撮影に使用した像だが、“本物”として撮影したものは、真鍮の金メッキである。3Dプリンタで作ったABS樹脂の像から石膏で型を取り、鋳造した上で結構な手作業で調整を掛け、最終的に金メッキを施した。安っぽく見えないようにするのに苦労した。そしてこのABS樹脂の父型に金色ラッカーを吹き付けて作ったのがここで“偽物”として登場した像である。審美眼のある視聴者には本物とすぐ区別が付いたはずである。
 
比重:金19.3 銀10.5 真鍮8.5 鉄7.9 アルミ2.7 ABS樹脂1.1
 
純金で100kgになるものを真鍮で作ると42kgになるが実際には中空にしているので“本物”として撮影している像は15kg程度である。“偽物”として撮影しているものだと2kgほどしかない。重そうにしているのは演技である。十二神将の方はあまりにも軽すぎると演技も難しくなるし、風で倒れたりしかねないので、わざわざ重りまで付けている。
 
“本物”の薬師如来・十二神将は、放送局の道具係と仏像製作所との共同作業で半年かかった。制作費は300万円掛かっている。“偽物”の方はラッカーを掛けて乾かしただけで、半日で出来た。
 

向きや並びの順序に問題無いことを確認の上、警報装置を再度入れた。
 
「これでもう安心だな」
と岩次郎と音三郎は言った。
 
「このクレーンどうする?」
「本物を確認する時は上に載ってるのを移動しないといけないし、ここに置いておくか」
「それでもいいな」
と言って、ふたりは小型クレーンは仏殿南側の物置き(釈迦如来の絵の所が壁に見える倉庫になっている)の中に置いて偽物を入れて来た空の桐箱だけを持って出て行った。
 
仏殿外で待機していた警備員が
 
「ここから持ち出されるものは必ず全てチェックするように言われているので」
と言うので、空の箱を見せて納得してもらった。
 

2月3日(木).
 
美術室内の、仏殿通路入口の所に座っている警備員の前にカードのようなものが唐突に落ちてきた。警備員が拾い上げるとトランプのスペードの3だった。
 
警備員が周囲を見回すが誰もいない。
 
「どうやってこれをここに落としたんだ?」
 
敷地内をメイド衣裳で歩き回っていた小林(演:太田芳絵)が駆け付けて、明智の大人の助手・葛西を呼ぶ。そして一緒に調べると、このゲート上方の天井に何かを貼り付けた跡があった。
 
「恐らくここに貼り付けておいて、時間が経てば剥がれて落ちるようにしていたのでしょう」
 
「でもここはいつも警備員が見ているのに」
「だから何か手品のようなことをしたんでしょうね」
と小林は言った。
 

2月4日(金).
 
90分単位の交替のため、家族玄関の所にいた女性警備員が仏殿内部に入ろうとやってきた。通路入口担当の警備員に会釈をして、電子鍵でゲートを開ける。それで通路の先、仏殿入口を見た時、思わず
 
「わっ」
と声をあげた。通路入口の所の警備員も一緒にそれを見て驚く。
 
仏殿入口のゲートこちら側に赤いビニールテープが2本縦に並べて貼られていた。
 
村正氏が明智に電話した。明智は落ち着いた声で答える。
 
「二十面相のいつもの手です。いつでも盗れるぞとアピールして、持ち主が恐くなって、他に品物を移動しようとしたりすると、そこを狙うんですよ。仏殿がいちばん安全なんですから、決して仏像は動かさないでください」
「分かりました!」
 
岩次郎は、本物を台座の中に収納し、偽物を台座の上に並べたことを言おうかとも思ったが、よそへ移動したのではなく、すぐ下に収めただけだから言うまでもないだろうと思い、そのことは言わなかった。
 

2月5日(土).
 
とうとう予告前日である。二十面相の予告は2月6日だが、何時とまでは予告されていない。2月6日0時になったら盗られるおそれがある。頼みの明智探偵は2月6日0:40くらいに来てくれるはずである。問題はその40分かも知れないと村正社長は思った。
 
いつもは朝出現する予告がこの日は現れなかった。しかし明日が予告日であるのは分かっているので警戒は緩められない。
 

小林はここの所毎日朝村正邸に来てはメイド衣裳を着て敷地内に何か仕掛けられていないか、不審な車が駐まってないかなどを調べてまわり、夕方には帰宅しているのだが、この日は朝から12人の少年少女(やや年齢の高い者も混じっているのは愛嬌)を連れてやってきた。来たのはこういうメンツである。
 
井上一郎(演:鈴本信彦)
溝口洋平(演:松田理史)
堂本流馬(演:坂口芳治)
新庄祐司(演:津島啓太)
城山春樹(演:浦野俊徳)
藤本友也(演:福山長洋)
山本五月(演:田代晴美)
河野令子(演:内野涼美)
西山ラン(演:山鹿クロム)
北山レイ(演:三陸セレン)
山口あゆか(演:今井葉月)
朝倉紗希(演:栗原リア)
 
今期の少年探偵団、揃い踏みである!ここに出てないのは、お留守番役の花崎マユミ(副団長)と、後述の“黒豹”メンバーである。
 
ちなみにクロムとセレンの性別は特に物語の中では説明されていないが、髪も長いしバストが目立つ服装をしていて、女子中学生あるいは女装中学生として出ているようだ。
 
栗原リアが今回少年探偵団のメンバーとして出ることになったのは『アルプスの少女』で彼女の演技に美高さんが惚れ込んだことによる。
 

社長は出掛ける準備をしていたので、奧さんが対応してくれた。
 
「すみません。警備は専門の警備会社の人がしてるから、それで充分とは思うのですが、うちの少年探偵団のメンバーが少しでも手伝いたいと言うので、今日・明日、彼らに邸宅の周囲に居てもらってもいいですか?みんな身を隠して目立たなく警戒するのには慣れているので」
 
「ええ、いいわよ」
と奧さんは笑顔で言った。先日賊をいったん取り押さえるなど、小林の活躍を聞いているので、奧さんは歓迎ムードである。
 

「それで警戒に入る前に、念のため仏像の実物を見せて頂けませんか」
「OKOK。案内するわね」
 
と言って、奧さんが案内しようとしたのだが、そこに社長が来る。
 
「おい、昭和天皇に上納した万年筆の・・・って、小林君いらっしゃい」
と途中で小林たちに気付いて挨拶してくれた。
 
小林は社長にも再度説明して、邸の周囲での警戒について。あらためて許可をもらい、実物を見せるのも快諾してもらう。
 
「小林君は掌形登録してたよね?」
「はい。登録して頂きました」
「だったら勝手に入って見ていいよ」
「いいんですか?」
「その人数で入っていたら、二十面相もとても手が出せないたろうしね」
 
それで社長は奧さんと一緒に奥側のプライベートゾーンの方に行ってしまうので、小林は少年探偵団とともに、図書室・美術室の警備員さんに挨拶して、仏殿の中に入った。
 

小林たちは30分ほどで出てくると、邸周囲の目立たない所に散った。
 
この日村正社長はやむを得ぬ要件で朝から出掛けたものの、午後2時頃には自宅に戻った。そして不安な様子で、何度も邸内を歩き回っていた。
 
19時頃、音三郎専務が来る。
 
「兄貴、一緒に仏殿の中で夜を過ごそう」
「それがいいかも知れんな」
 
それで食事を運ばせ、仏殿の中に入ろうとした時、先行していたメイド(演:斎藤恵梨香)が
 
「きゃっ」
という声をあげて、腰を抜かし、トレイもひっくり返った。
 
「どうした?」
「何かに当たって」
とメイドが言うので見ると、仏殿入口のドアに「1」と書いた紙がどうもはさめてあったようである。それでドアを開けた途端、その紙が落ちてきてメイドの顔に当たり、驚いてひっくりかえったということのようである。
 
「そんな馬鹿な。私が中に入った時はそんな紙無かったのに」
と内部にいる女性警備員が驚く。
 
「兄貴、明智先生が0:40まで来られないのなら、その前に助手の方(かた)でもいいから来て頂こう」
 
「うん。そうしよう」
 

邸内に居た小林(演:太田芳絵)が連絡をして大人の助手が2人来た。
 
「すみません。文代は明智の濃厚接触者に準じる扱いになりますし、0時になったら明智をここに連れてくる時に運転手を務める予定なので、明智と一緒に来ます。私が一緒に仏殿内で警戒します」
と小林が言う。
 
「分かりました」
 
それで、女性警備員、岩次郎と音三郎、明智の助手の葛西と森田、メイド姿を解いて男装に戻った小林(演:アクア)の6人で薬師如来と十二神将像を取り囲んだ。男装に戻ったのは何かの時にスカートでは動きにくいからである。
 

女性警備員は、ローテーションにより、19:30, 21:00, 22:30 に交替した。
 
23時頃、社長の奥さんが
「皆さん、お疲れでしょう。眠気覚ましにどうぞ」
と言って、コーヒーを持って来た。
 
女性警備員は
「警戒中は飲食物を頂いてはいけないことになっているので」
と言って取らなかった。それで他の5人が飲んだ(ように見えた)。
 

社長と専務、それに明智の助手の葛西と森田は、最初はあれこれ世間話をしていたのだが、次第に全員口数が少なくなっていく。
 
そして誰も言葉を発さなくなった。
 
20分ほど沈黙の時間が流れ、やがてオメガの壁時計が0時を示した。
 
台座の上にあった薬師如来像と十二神将像がまるで幻のように、すっと姿を消した。
 
そして女性警備員(演:麻生真衣子)は椅子から立つと、出口に向かった。
 
ところが出口の所に小林少年(アクア)が立っている。
 

「逃がさないよ、二十面相君」
と小林少年は女性警備員に言った。
 
「何を突然?私は交替の時間なので出て行くだけですが」
と女性警備員は言う。
 
「交替の時は、交代要員が来てから離れるものだよ。それに賊を警戒して泊まり込んでいた人たちがみんな眠ってしまったことに君は驚かないのかい?」
 
「お休みの所を起こしてはいけないと思って」
「じゃ、薬師如来と十二神将像が姿を消したことは?」
「あら、無くなってる。大変!報せに行かなくては」
と言って、小林を押しのけて外に出ようとするが、小林は女性警備員を思いっきり突き飛ばしてから、隠し持っていたハンマーでドア中央にある掌型認証の装置を破壊してしまった。
 

「これでどっちみち出られなくなったね」
と小林は笑顔で言う。
 
「きさまあ」
と男声で言うと女性警備員に化けた二十面相がスカートをめくって、大腿部に付けていたレッグホルスターから拳銃(S&W M36 Gold)(*7)を取り出すので、さすがの小林もギョッとする。
 
しかし二十面相はそれで仏殿内の非常ボタンとインターホンおよびカメラの“線”を撃った。そしてスカート内側のホルスターに戻す。
 
「これで外に通報もできなくなった」
と二十面相。
 
この仏殿は侵入困難なように全体がステンレスで囲まれているので、静電遮蔽状態になっており、携帯が使えない。
 
(*7) 金色のM36である。M36はS&W (スミス&ウェッソン)の人気リボルバーシリーズ。日本の警察も国産拳銃の製造休止に伴い、2005年以降導入を進めている(M360J "Sakura")。M36 Gold は金色のリボルバーで二十面相の趣味にピッタリである。この金色は、実際には窒化チタニウムの金色である。
 

自宅から村正邸に移動中の明智に電話が掛かってくる(文代が運転して明智は後部座席に乗っている)。
 
「明智先生でいらっしゃいますか?警備員の主任・芳本であります。仏殿内のモニターが消えてしまい、インターホンも繋がらない様子なのですが、すぐ駆け付けた方がよいでしょうか?」
 
「私が行くまで待っていて下さい。一緒に入りましょう。すぐ仏殿内に入ろうとすると、そのどさくさに紛れて逃げられる可能性があります。通路のこちらで警戒していて下さい。そして絶対に誰も出さないでください。二十面相は社長や警備員に化けているかも知れません」
 
「なるほど!」
 
「二十面相は人殺しだけはしませんから、仏殿内に居る人たちが命を奪われたりすることはないです。それと、夜中に申し訳無いのですが、今回のプロジェクトに参加した警備員さんを全員集めてもらえませんか?ちょっと確認したいことがあるんです」
 
「分かりました!」
 

仏殿内。
 
「痛み分けだね。一緒にここで明智先生が来るまで40分間待ってようよ」
と小林は言った。
 
「つまりお前はあのコーヒーを飲まなかったのか」
「こういう場面で眠り薬入りのコーヒーというのは、君の常套手段じゃん。本物の奧さんとは少し雰囲気違うなと思ったしね」
 
「小林、君はほんとに大した奴だよ」
「どういたしまして」
 
「しかし薬師如来と十二神将像は頂いたぞ」
「すぐ取り戻すよ」
 
「俺がどうやって、薬師如来と十二神将像を盗んだか分かるか」
「警備員に化けていれば造作ないんだよ。仏殿の中は1人だから、自分の担当時間にやればどうにでもなる。モニターはプログラムをちょっとハックして定常映像を流し続けていればいい。そして盗んだ後は、ホログラフィの立体映像を見せていた。僕もホログラフィになってるのには気付いたけど、2月6日に盗むという予告を君がどう処理するか見物させてもらったよ」
 
「ああ、ホログラフィにも気付いていたのか」
「きっと警備員として最初に中に入った時、この仏像の写真を様々な角度から撮影した。それを元にホログラフィを生成した。そして仏像を盗んだらホログラフィの装置を作動させた」
 
「予告は2月6日だから、2月6日になるまでは、ちゃんと存在してないといけないからな」
 
「いつもながら律儀だねぇ。自分がこの時間に仏殿担当になっているように、たぶん主任さんか何かに化けて警備会社に行って、シフト表をいじったんでしょ?」
 
「まあ係長に化けたけどね」
 

「ここの警備員は身長168cmまでという条件だったのに、なぜ俺が採用されたか分かるかい」
 
「面接を受けたのは、女の仲間なんだろうね。そして実際にその仲間がかなり勤務してるけど、大事な所では君がやった。その時、身長でバレないように、スカートの中で足を曲げて歩いていたのだと思う。足を曲げることでだいたい10cm程度は誤魔化せるんだよ。ここの制服ってスカートだから足を曲げていても気付かれない」
 
「ふん。お前もよく女装するから、そういうテクは知ってるんだな」
「僕は別に、よくは女装しないけど」
「嘘つけ!」
 
(放送時に視聴者も思わず「嘘つけ!」と言った)
 
「それにここの警備は社長さんが優しいから座って勤務すれば良かった。座っていれば身長はバレにくい」
「うん。それにも助けられた」
と二十面相は認めている。
 

二十面相と小林の対話は30分間続いた。
 
お互いに「あの時は美事に欺された」などと古い友人ででもあるかのように話が弾んだ。
 
0:30.
 
仏殿のドアが開いた。明智と文代、それに警備員が8人も一緒に入ってくる。少し早めに到着したようだ。小林はドアの所に立って、このドアが閉まらないようにした。
 
「皆さん、二十面相はその女警備員に化けています。拳銃を持っているから気をつけて下さい」
と小林が言う。そして小林は続けて
 
「このドア、壊れているんです。中に入ると出られなくなります」
と言った。
 
「佐藤君、何か椅子でも持って来て。高橋君、警視庁の中村課長に連絡して」
とリーダーの人が指示を出す。
 
「文代。皆さんがお休みのようだ。気付け薬を取って来て」
「はい」
と言って文代が出ていく。
 

警備員たちが、二十面相を確保しようとしたが、明智はそれを制した。
 
「二十面相には手錠も縄も無意味です。ここでみんなで監視していましょう」
と明智は言う。
 
「俺は拳銃を持ってるよ」
と女性警備員(演:麻生真衣子)が男の声で言うと、今入って来た警備員たちがギョッとする。
 
「二十面相君は、血が嫌いだから、それで僕らを撃ったりはしないよね」
と明智(演:本騨真樹)は言う。
 
「それは分からないよ。俺もいざとなったら君たちを皆殺しにして逃げるかもよ」
と女性警備員に化けたままの二十面相。
 
「君のことは信用してるから。それにこの事件の顛末を君も最後まで確認したいだろう」
「何かあるのかい?」
 

「芳本さん、警備員は全員集まりましたか?」
「半分くらいは来ました。残りはたぶんあと15分くらい掛かると思います」
「でしたら、芳本さんだけ残って、他の方は警備控室の方に下がっていて下さい」
 
「分かりました。弘前君、断線した線の修理して。他は、須藤君だけ念のため通路入口に居て、他はみんな控室の方に行って」
とテキパキ指示する。
 
そんな芳本さんがかっこいー!と思って小林は彼女を尊敬のまなざしで見た(芳本もきっと小林がまだ若いのにしっかりしててかっこいい、と思っている)
 
警備員たちが、みんな出て行く。
 
「須藤君は、通路入口の所で、中から出てくるものは、たとえ私であろうとも警察が来るまでは誰も通さないように。二十面相は明智先生や社長や私に化けるかも知れない」
 
「分かりました」
それで須藤警備員も部屋の外に出た。
 

弘前警備員がインターホン・モニターの信号線を持って来て断線した箇所を応急修理した。
 
文代が戻って来て、気付け薬を使って、2人の助手、それに岩次郎と音三郎の意識を回復させた。
「これはいったい」
と岩次郎氏が戸惑っている。
 
「賊は女性警備員に化けて、浸入していたのです。警備員に化けているんだから、邸内に予告を残すのも簡単ですよ」
と小林少年は説明する。
 
「そうだったのか。あ!仏像が無い」
 
「仏像は実はとっくに盗まれていて、ホログラフィになってたんです」
「ホログラフィ!?」
「警報装置で近寄れないのにいいことに、精密なホログラフィで誤魔化してたんです。そして2月6日0時になったのと同時にホログラフィのスイッチを切った」
 
「2月6日に盗むという予告だったから、それまでは存在してないといけないからね」
 
と女性警備員が男の声で話すので、岩次郎・音三郎の兄弟がギョッとしている。
 

「そうだ。でも先生、万一の場合に備えて、実は仏像は偽物と入れ替えていたんですよ」
と岩次郎が言う。
 
「ほぉ」
「本物は台座の内側に格納して、上の段に代わりの偽物を並べていたんです」
「へー」
と明智は言ったが、実はこの部屋に居るものの中でその話に驚いたのは、葛西・森田という明智の2人の助手、および警備員の芳本主任だけだった!
 
「だから上の段に並んでいた仏像を取られても、内側の本物は無事のはずです」
「では確認してみましょう」
 
それで岩次郎氏が壁のボタンを押すと、台座が収納されていく。そして下の台座が競り上がってきたのだが
 
「あれ?無い!?」
と岩次郎・音三郎が声を挙げる。
 
その下の台座の上にも何も仏像は無かったのである。
 

「偽物とすりかえておくとか、そんな子供欺しに二十面相ともあろう者がひっかかる訳が無い」
 
と女性警備員に化けた二十面相本人が言っている。
 
「盗もうと思って仏像を見たら、全部偽物が並んでるじゃん。だから偽物は全部どけて、そこの物置に放り込んだ。そして台座をあげて本物を運び出したよ」
と二十面相は大胆に犯行を告白する。
 
「よくひとりで運び出せたね」
「偽物どかすのに時間がかかったから、2日がかりになったけどな」
「でもそのまま持ち出せば目立つでしょ」
「段ボール箱を持ってきて詰めたからね。まさか大事な仏像が段ボール箱に入っているなんて普通思わないし。それに社長に化けてたしな」
「なるほどねー。社長が出入りするのには、警備員も何も怪しまない」
 
「それじゃ偽物はそこの物置かい?」
「ああ」
 
「ではその偽物を確認しましょう。村正社長。ちょっとその物置を見てみてください」
と明智が言う。
 
「はい」
 
それで岩次郎社長と音三郎専務が立っていき、釈迦如来の絵のある所の物置を開ける。そこには大きな薬師如来像と小さな十二神将像が裸のまま入っていた。
 
ふたりが首を傾げている。十二神将像のひとつを持ってみている。
 
重そうだ。
 
「これは本物だと思います」
と2人が言う。
 
「何〜〜〜!?」
と女性警備員の姿のままの二十面相が声を挙げた。
 

「谷本警備員さん、来ておられますか?」
と小林が修理の終わったインターホンで警備員控室にいる警備員の名前を呼んだ。
 
「はい」
と控室にいる女性警備員のひとり(演:中川友見)が返事をした。
 
なお向こうはこちらの様子を(修理の終わった)モニターで見られるが、向こうの映像は仏殿内からは見えず、インターホンを通して声だけが伝わる。
 
(警備員たちを控室に下げたのは実は彼女の顔を二十面相に見せないため)
 
「何か連絡が入っていませんか?」
「さきほど、少年探偵団の成年団員から電話がありました。団長のメインスマホに繋がらないのでということで」
「この仏殿は静電遮蔽されてて電波が届かないからね」
「それで、私がお預かりしていたサブのスマホに連絡があったんです。邸近くの公園に駐められていたクラウンが団員の通報で盗難車ということが分かり、警察がレッカーして行ったという報告でした」
 
(放送時には溝口洋平(演:松田理史)と山口あゆか(演:今井葉月)が警察の押収作業を見守りながらスマホで連絡を取っている様子が映る)
 
「ありがとう」
とインターホンに答えて、小林は二十面相に言った。
 
「君の逃走用の車両は押収されたようだよ」
「ふーん」
と二十面相は平静を装っている。
 

「谷本さん、あなたの身分と実行したことを話してください」
「はい。私は実は少年探偵団・別働隊“黒豹(Panther)”の団員です。谷本というのも仮名です」
 
と言うと、明智・小林以外の全員が驚いている。葛西や森田まで驚いている。少年探偵団や特に隠密部隊である特殊別働隊(*8)のメンバーは団長の小林と副団長の花崎まゆみだけが把握していて明智の他の助手にはあまり知られていない。別働隊のメンツは正団員からもあまり知られていない。
 
(*8) 原作では戦後間もない時期に大量に居たストリートチルドレンを集めた“チンピラ別働隊”だが、今日の日本では使えない設定なので(原作でも世の中が安定していくのにつれ団員は減っていった)、今回のテレビシリーズでは、自衛隊などの出身で夜間の警戒や危険を伴う仕事に従事する部隊“特殊別働隊”という設定になっている。
 
彼女(役名:清川なぎさ:code name="snow")は実は高校卒業後2年間自衛隊に居て、昨年春に少年探偵団に入ったもので、柔道四段も本当のことという設定。演じている中川友見自身は自衛隊の経験は無いが、柔道三段である。インターハイの出場経験も無いが、県大会のベスト8まで行ったことがある。劇中では100kgのバーベルを上げられると言っているが実際は80kgくらいまでらしい。アクアの付き添いで来た川井唯(柔道五段)と意気投合していた!
 

「私は(小林)団長に命じられてこの邸宅に警備員として入らせて頂きました」
と谷本(仮名)警備員は言った。
 
「そういうことなら、最初から言ってもらったら、面接とか面倒なことせずにそのままここの警戒に入ってもらったのに」
と芳本が言うが
 
「主任、欺すことになって大変申し訳ありません。ミッション開始時点では、既に二十面相の仲間が警備会社に侵入している可能性を考えていたので、警備員さんたちにも知られない形で行動したかったので」
と谷本(仮名)は答える。
 
「なるほどー、そういうことか。分かった。でも頼もしい女性ガードマンが入ってきたと思ってたのに。残念」
と芳本さん。
 
「ごめんなさい。それで団長から依頼されたことを実行するために、監視モニターのプログラムを改造版と入れ替えようとしたのですが、既にプログラムが改竄されていて、一定条件で偽の画像を表示するようになっていることを知りました。それでやはり賊はモニター画像を誤魔化して、おそらく警備員に化けた二十面相の仲間がローテーションによって仏殿内の担当になった時に、仏像を運び出すつもりだろうと推測しました」
 
芳本主任が難しい顔をして腕を組んでいる。
 
「2月2日、私が仏殿内で警備していた時、社長と専務が入ってこられて、私は社長に言われて、一応仏殿外に出たのですが、戻ってみると仏像が偽物になっていたので、ああ。本物を隠して偽物を並べたんだなと察しました」
と谷本。
 
「あれ、そんなにすぐ分かった?」
と音三郎氏が言っている。
 
「光沢とかもまるで違いましたから」
 
「うーん」
 
「私は仏殿内に独自の隠しカメラを仕掛けておいたので、仏殿内に居ない時でも中の様子を見ることができます。2月4日、社長が仏殿内に入ってこられたのを隠しモニターで見たのですが、様子が変です。見ていたら、社長と今そちらの部屋にいる偏雲警備員が」
 
と言うので、みんなが二十面相が化けている女警備員(演:麻生真衣子)を見る。
 
「2人で協力して、台座の上に載っている仏像を全部どけて、物置の中に入れ、台座を上げて本物を上に出しました。本来警備員はその手の作業を手伝わないはずなのに」
 
「私は知らんぞ」
と社長が言っている。
 
「私も不審に思ったのですが、その内、これは二十面相と手下の変装ではないかと思い至りました。2人は小型クレーンなども使って、本物の仏像を段ボール箱に詰めてしまいました。そしてどこかスイッチを入れると、台座の上に仏像が出現したので、ホログラフィか!と思いました。ところがここて交替時間が来てしまったので、社長と警備員は箱詰めした仏像の上にブルーシートを掛けて隠し、社長は出ていって、次の警備員が入ってきて交替になりました」
 
と谷本警備員が言うと
 
「あ、そういえばブルーシートがあった」
と言う警備員が多数居る。
 
「私は自分が仏殿内の番になった時、その箱の中にあった仏像を全部出して、物置の中の仏像と入れ替えてしまいました」
 
「よく女ひとりで作業できたね!」
「実はそれを少年探偵団を入れて14人がかりでやったんです」
と小林が言う。
 
「14人でやっても20-30分かかりました。2人では1度には無理だったでしょうね」
と小林は付け加えた。
 
谷本警備員の話は続く。
 
「そして、今日というかもう昨日の夕方、社長と専務が入ってきて、警備員が見ている前で、ブルーシートの掛かっていた段ボール箱を台車に載せて全部運びだしてしまったんです」
 
「確かに社長が入ってこられて段ボールを持ち出されました。でも社長ですので、特に不審には思いませんでした。一応箱の中は確認させて頂いたのですが、土が入っていたので。すみません」
と言う警備員がいる。
 
「仏像の上にふたをして土を乗せてカモフラージュしたみたいですね」
と小林が言った。
 
「でも本物の警備員の前だから、土をどけて、中身を確認することまではできなかった」
と小林は付け加える。
 
「そういう訳で、本物の仏像がそこの物置に残ったのです」
と谷本警備員は言った。
 

「参ったよ。じゃ俺はわざわざ偽物を運ばせていったのか」
と二十面相が参ったように言う。
 
「あの重たい仏像群の運搬には、さすがの君でも時間がかかるだろうからね。でも偽物が無かったら、90分以内に運び出しまでできたかもね」
 
「確かにあの出来の悪い邪魔物をどけるのに時間が掛かった」
と二十面相。
 
「つまり、警備員を90分交替にした村正社長の考え、そして偽物を作った専務のご苦労が、結果的には犯行を防いだことになります」
と小林が言うと
 
「あの偽物も一応役にたったのか」
「へー。ただじっと見ているだけは辛いだろうと思って交代制にしたのが結果的にはうまく行ったのか」
 
「でも兄貴は昔からそのあたりの運が強い」
と音三郎氏が言っている。
 

その時、パトカーのサイレンが近づいて来た。
 
「どうやら警察も到着したようだね。潔く縛に付き給え」
と明智は言った。
 
しかし女性警備員に化けた二十面相は
「いや、小林君と少年探偵団のご活躍の話を拝聴してたら、すっかり遅くなった。今日は楽しい話がたくさんできた。また会おう」
 
と言うと、一瞬にして二十面相の姿が消えた。
 
「え!?」
 
「しまった」
と言って明智が駆け寄る。
 
「この床に細工がしてある。ここに非常時の脱出口が作られていたんだ」
と森田助手。
 
「なんと」
 
「この仏殿は、壁も厚いし、屋根も上部だけど、床は盲点だったかも」
 
「開きますかね」
と葛西助手が言う。
 
「ダメだ。開かない」
「破壊しますか?」
「いや、そんなことしている間に奴はどこかに逃げ出してしまうだろう」
と明智は悔しそうにして腕を組んだ。
 
多数の警官が入ってきたが、明智が、すんでで二十面相に逃げられてしまったことを中村課長(広川大助)に説明する。
 
「それは惜しかった。しかし宝物は守れたんだね」
と中村。
「はい。明智先生や小林さんたちのおかげで、何とか守ることができました」
と岩次郎が言う。
 
「いや、犯行の状況を明かしていく段階で妙に余裕がある気はしてたんだけど。面目ない」
と明智は言った。
 

村正邸の前に多数のパトカーが駐まり、多数の警官が邸内に入っていった時、1人の警官が邸から出て来て、パトカーに乗ると2〜3分後、車を発車させた。
 
「全く小林のおかげで酷い目に遭った。あやうく捕まる所だったぜ。しかしあの女警備員、その内仕返ししてやる」
と運転しながら呟いている声は二十面相の声である。
 
彼は地下に逃れたように見せかけて実はイチかバチかで仏殿の梁に飛び上がっていた。床板は切り取って脱出口は作ったものの、床も基礎がコンクリートでできていて、抜け穴までは掘れなかった。
 
梁に隠れていた二十面相は、素早く警官に変装し、多数の警官が入ってきた所で、その警官たちの間に紛れて脱出した。それで表に出てパトカーを無断借用したのである。鍵は付いていなかったが二十面相なら鍵無しでも始動できる。
 

やがてパトカーは、郊外の庭の広い家に到着した。少し置いて、中から降りてきたのは素顔?の二十面相(演:大林亮平)である。
 
「お頭、お帰りなさいませ。今回は上出来でしたね」
と手下が出迎えた。
 
「はあ?上出来?大失敗だよ。小林の野郎、ほんとに忌々しい」
「でも黄金の薬師如来、十二神将像が手に入ったのでは?」
「偽物を掴まされたんだよ。あんなもん、どこかに捨てとけ」
「え〜?偽物だったんですか?」
と手下は驚いている。
 
とにかく食事を用意させますと言って手下はコックに命じて食事を作らせた。
 
「俺は一眠りする」
と言って、二十面相は自室で寝てしまった。
 

その頃、庭に駐められたパトカーのトランクが小さく開くと、そこから少女が這い出して来た。ところがいきなり懐中電灯を当てられるのでギョッとする。しかし懐中電灯を当てた少女は
 
「なんだ。ナナちゃんか」
と言う。
 
「なんだ、サキちゃんか」
と北里ナナ(演:アクア)。バイクスーツなのでバストが目立つ!
 
懐中電灯を持っていたのは少年探偵団の団員・朝倉紗希(演:栗原リア)だった。
 
「なんでナナちゃん、そんな所に」
「怪しい警官を見たから、トランクに忍び込んだ。サキちゃんは?」
「(偽の仏像に)発振器を付けておいたから、その信号を元にさっき辿り着いた」
 
実は二十面相を前に明智たちがゆっくりと犯行の解説をしたのは、少年探偵団がアジトを見つけ出すまで時間稼ぎをしたかったからなのである。
 
「ともかく小林さんに報せなくちゃ」
と言って、ナナはスマホで連絡を取った。
 

撮影時にアクアは質問した。
 
「なんでこんな所で北里ナナが出てくるんです?少年探偵団員だけで用事は済んでいるじゃないですか?」
 
「だってナナちゃん出さないと視聴者がうるさいもん」
と監督は答えた。
 

やがて二十面相が目を覚ます。
 
「お頭(かしら)、食事ができてます」
「ああ、ありがとう」
 
それでドアを開けたのだが、そこにはコックでも手下でもなく、中村課長が立っていたので仰天する。
 
「通称・怪人二十面相、窃盗罪の疑いで緊急逮捕する」
と言っても中村課長は二十面相の手に手錠を掛けたのであった。
 
「待て。俺は盗ってない」
「パトカーを盗ってったろ?」
「うっ」
「それに偽物の像も持ち出したし」
「あんなガラクタでも罪になるのか〜?メルカリに出したって誰も買わんぞ」
「そして最後は仏像の窃盗未遂だな」
「ふん」
 
「朝食前に逮捕して悪いが、朝食は警察署で食べてくれ」
と中村課長は言った。
 

『少年探偵団』の主題歌は11月上旬、ワンティスのトリビュートアルバムに入る直前に録音された。
 
これはアクアの27枚目のシングルとなる。収録曲は『風よりも速く』と今シーズンではわりと見せ場のある別働隊“黒豹”を歌った『Panther Quality』である。
 
『風よりも速く』(BD version)
『Panther Quality』
『風よりも速く』(Bike mix)
 
『風よりも速く』はマリ&ケイの作品、『Panther Quality』は、加糖珈琲+琴沢幸穂の作品である。今回は、青葉が『ザナドゥ』のトリビュートアルバムの作業で忙しいので、主題歌はマリ&ケイで書いた。
 
『風よりも速く』は2種類のアレンジのものが収録されている。BD version (BD=Boys detective) はアコスティック楽器を多用し(実はスターキッズの演奏)、Bike mix の方がオリジナル(エレメントガードの演奏)で、電気楽器を使っている。後者は、Kawasaki のバイクのCMに使用される。
 
PVは、BD version では、多数の少年探偵団員が走って、やがて1ヶ所に集まる様子が映される。Bike mix では、小林少年(演:アクア)と北里ナナ(演:アクア)がともにNinja 250 に乗って走っている所が映っている。小林は青いバイクスーツで青いバイクに乗り、ナナは赤いバイクスーツで赤いバイクに乗る。2人を見分けるポイントは、ナナには豊かなバストがあることである!
 
(放映時には「アクアちゃん、上手にバストを隠してるね」「まるで無いみたいに見せてる」などと言われた!)
 
アクアの鏡迷宮での写真集など見ると、かなり大きなバストが確認できるので、アクアにバストがあるのは当然と、国民の多くが思っている。
 

『Panther Quality』の方では、今回登場した谷本警備員(仮名)こと役名:清川なぎさ(コードネーム"Snow")を演じる中川友見と、この後の回で出てくる保桂小造(コードネーム"Pocket":原作のポケット小僧に相当する)役の川口康政が映像に出ている。
 
中川はグレイの柔道着に黒帯を締めて、白い柔道着の相手(やはり黒帯)と試合をし、背負い投げを決める所が映っている。
 
「この人、マジで強そう」
という声を聞いて、本人は笑顔だった。
 
川口康政の方は、カバンの中に身体を納める演技を見せてくれている。彼は体操選手を目指していた人で、物凄く身体が柔らかいのでこういう真似もすることができる。身長157cm 体重38kg で、あまりにも小柄であるため体操選手の道を断念し、人生に迷っていた所を雨宮先生に発掘されたのである。
 
小柄なので女装もさまになり、ドラマの中でも披露することになる。
 
彼は雨宮にナンパされたものの、あくまで女装を拒否したレアな人である。
 
「あんた女の子になりたいよね?」
「絶対嫌です」
 
などと言っていたのに、ドラマでは美高さんにうまく乗せられ、セーラー服を着て女子中学に女装潜入するなどの役割を演じるはめになった(北風と太陽?)。演技力があるので、もし来期も『少年探偵団』が制作されたら、再登場の可能性がある。
 

紅葉レポートは続いていた。
 
レポート班は三田・山口組、柳川組、双方青森県に行っているのだが、山陰の大山(だいせん)で既に見頃になっているという報告があった。
 
それで11月8日(月)の放送では、特別レポーターとして、京都在住の竹中花絵が関西在住の協力カメラマン・玉井元奈と一緒にミューズ飛行場から米子空港に飛び、大山のレポートをしてくれた。この日のグルメは、度々あけぼのテレビの取材に協力してくれている、山陰のCATV局・松葉テレビから送ってもらった松葉ガニである。松葉ガニは11月6日が解禁日で、解禁になってすぐに送ってくれた。
 
スタジオでグルメを堪能する係の夕波もえこと水谷姉妹が
「今年いちばんの豊作だ!」
と喜んで食べていたが
 
「何〜〜!?蟹〜〜!?」
と言って、花咲ロンド・原町カペラ・石川ポルカの“売れたらいいなシスターズ”が乱入して、一緒に食べていた。
 

11/08(Mon) 竹中:大山・松葉ガニ
11/09(Tue) 三田:盛岡・わんこそば
11/10(Wed) 柳川:横手・十文字ラーメン
11/11(Thu) 竹中:高千穂峡・チキン南蛮
11/12(Fri) 竹中:耶馬溪・イワナの塩焼き
 
11/15(Mon) 三田:松島・仙台ラーメン
11/16(Tue) 柳川:米沢城址・米沢ラーメン
11/17(Wed) 三田:白河市・白河ラーメン
11/18(Thu) 柳川:長岡市・もみじ園・笹団子
11/19(Fri) 三田:高尾山・八王子ラーメン
 
11/22(Mon) 三田:横浜・山下公園・サンマーメン
11/24(Wed) 柳川:富山・ブラックラーメン
11/25(Thu) 三田:静岡県大洞院・浜松餃子
11/26(Fri) 柳川:飛騨国分寺・高山ラーメン
 
11/29(Mon) 三田:宮島・紅葉饅頭
11/30(Tue) 柳川:京都嵐山・京都ラーメン
12/01(Wed) 三田:小豆島・寒霞渓・小豆島焼きそば
12/02(Thu) 柳川:出雲・立久恵峡・出雲そば
12/03(Fri) 三田:徳島・西部公園・徳島ラーメン
 
12/06(Mon) 三田:香川・大窪寺・さぬきうどん
12/07(Tue) 柳川:長崎市・稲佐山公園・長崎ちゃんぽん
12/08(Wed) 三田:高知市・竹林寺・カツオのたたき
12/09(Thu) 柳川:熊本城・熊本ラーメン
12/10(Fri) 三田:鹿児島市・慈眼寺公園・鹿児島ラーメン
 
「なんか必ずしも見頃ではない所も結構あったような」
「やはりラーメン探訪が優先してるんだな」
 
「桜前線はわりとゆっくり北上するけど、紅葉は全国一斉に紅葉するから、難しいよ」
 
「愛知きしめん絶対あると思ったのに」
「和歌山ラーメンが無かった」
「牛骨ラーメンが出てなかった」
「大山(だいせん)で松葉ガニに行っちゃったし」
「岡山は何も無かった」
「桜で博多ラーメンだったから今回は久留米ラーメン期待してたのに」
 
「後半は駆け足になったからなあ」
「どんどん見頃が来ちゃうし」
 
などといった声もあったものの、概ね好評のうちに今年の紅葉探訪は終了した。
 
実を言うと、この番組は12/03で終わる予定が、積み残しが多すぎるということになり1週間延長された。それで“見頃”としては微妙な所も多発したし、一般的な紅葉の名所を諦めて、町中で紅葉している木を探したりした。
 
また、三田雪代は少年探偵団の撮影に入れなくなって、そちらには太田芳絵が出たとという玉突きも起きたのであった。
 

2021年12月1日(水).
 
常滑真音の9枚目のシングル『12345678急急ニャー律令/風薫る師走』が発売された。と同時に舞音のコスプレで構成された“舞音ちゃんタロット”も発売された。タロットは結局2種類が販売された。
 
舞音版:舞音の実際の写真で構成されたタロット
真似版:舞音版をソフトウェアによってイラスト風に変換したもの
 
実は監修者グループが何人かのタロット占い師さんに実際に使ってみてもらったところ「写真そのままだとイメージが強すぎて実占に使いにくい」という意見が結構出たのである。それでイラスト版を制作することになった。
 
海外販売分では Photo versipn / Paint version と区別する。
 
"oak-que"名義の解説書も同時に発行され、タロットとのセット版も販売された。販売形態はこのようになる。
 
A.舞音版のみ(3500円)
B.真似版のみ(3500円)
C.解説書のみ(2000円)
Set.舞音版+真似版+解説書(8000円)
 
解説書を書いた oak-que というのは、丸山アイの別名・鳴滝桜空(oakuu)と千里の別名キュー(queue)を合体した名義で、両者の共著である。実際には、大アルカナについては丸山アイ、小アルカナについては千里が執筆したらしい。校正は、中村晃湖の弟子・船木冴子(36)が行ったが、丸山アイの深い解釈に驚いていたらしい。200年生きて来た人(?)の解釈は凄いようであった。
 
カードの裏模様は舞音本人が描いた猫のイラストを点対称にしたデザインになっている。写真版はオシャレな黒猫、イラスト版は上品な白猫である。
 

写真集としても、夏に出した舞音のコスプレ写真集を上回る売れ行きで、今年の書籍売上BEST10に入るのは確実な情勢だった。
 
この手の企画では多くが大アルカナ22枚のみか、あるいは小アルカナを付けても絵の無いただの数字カードだったりするのて、78枚全て舞音の写真という構成はタロットコレクターの心を掴み、物凄い売上になった。有名占い師さんがテレビ番組で「このカード使いやすい〜」と言ってこのカード(イラスト版)で占いをしている所を披露したりもしたので、ますます売れ行きに拍車が掛かった。
 
このタロットはタロット占い師の間でも、きちんと各々のカードのシンボリズムを理解して作られていることから、本格的なカードとして評価された。海外でも話題になってアマゾンを通して結構売れた。解説書は英語訳とフランス誤訳・ドイツ語訳も作られて販売されたので、これも相当売れたようである。
 
この手の企画物としては1973年の007映画『死ぬのは奴らだ』(Live and let die)のために作られた通称“007のタロット”(James Bond Tarot, 別名魔女のタロット Tarot of the Witches(The Witches Tarot “魔女団のタロット”とは別))以来50年ぶりのヒットではと、ベテランのタロット占い師がコメントしていた。
 

『12345678急急ニャー律令(ひ・ふみ・よ・いむ・なや・きゅーきゅー・ニャー・りつりょう)』は同時発売のタロットのテーマ曲にもなっている。"12345678" について§§ミュージックは、このように説明している。
 
1 1人の舞音
23 22枚の大アルカナと、舞音が黒猫のコスプレをしたタイトルカード。
4 4つのスート
56 56枚の小アルカナ
78 全部で78枚
 
そして9の代わりに「急急・・・」が入るのである。
 
“急急ニャー律令”は、道教の呪文“急急如律令”(きゅうきゅうにょりつりょう)のもじりで、白招き猫のコスプレをした舞音の写真と“急急ニャー律令”という文字がCDジャケットに描かれている。
 
PVでは白猫のコスプレをした舞音がお客さん(水谷姉)を相手にタロットをシャッフルして、切って、ケルト十字に展開している所が映っている。
 

 
途中で女帝とか星とか恋人とか聖杯3とかのカードを出して期待させておいて、最後のカードは塔!である。
 
「これは恋が順調に進んでいると思っていて、今夜はプロポーズされるかもと思ってデートに行ったら、唐突に『別れてくれ』と言われるパターンだな」
 
と花咲ロンドが解説していた!
 
(実体験?)
 

『風薫る師走』は、舞音が春からずっと出演しているホンダのスクーターのCM曲である。“師走”というのは12月1日からこのCMが放映され始めたからで、実際の撮影は11月に北海道で行なっている。11月9日に根室まで行って撮影したが、ちょうど雪が降って、雪の中の夜明けが美しく撮影できた。
 
舞音のスクーターのCMはこれまでこのような場所で撮影されてきた。
 
4.25 半田市(常滑市の隣)
5.30 北九州空港
8.11 伊良部島(宮古島の隣)
10.07 銚子市
11.09 根室市
 
夏に沖縄に行って、冬に北海道に行っている!
 
全て前日の夕方現地に移動して、ホテルで一泊してから翌日朝の日出を狙って撮影し、すぐ東京に戻ったら、その後、学校に行くあるいは仕事をする、という恐ろしいパターンである。
 
「え〜〜!?舞音、宮古島まで行っても、その日休めないの?」
とアクアでさえ絶句していた!
 
「学校終わって、熊谷までヘリで移動してG650で宮古島まで飛んで、1泊して撮影したら、G650で熊谷に戻って、ヘリで東京に戻って、午後から学校に出席。出席日数が結構やばいから出席可能なら2〜3時間でも出席するんだよ」
 
「それってまさか、その日の学校が終わってからまた仕事とか」
「当然」
「恐ろしい」
 
「何か飛行機に乗るのって日常だよね」
「そうそう。もう車での移動と同じレベル」
 
5機のホンダジェットの中で、アクア専用機の Red と舞音専用機の Orange は、本人でなくても関係者やリハーサル役の子(今井葉月とか水谷姉妹とか薬王みなみとか)の使用まで含めると、フル回転に近い。しかし宮古島まで行った時は、途中ゆっくり休めるようにと、たまたま空いていたG650を使わせてもらった。根室往復はG450になった。
 
「でもアクアなんて、どう考えても3〜4人居ないと仕事不能という気がする」
と舞音。
 
「ボクも時々、自分が2〜3人居るんじゃないかと思うことがある。後からスケジュール表眺めてたら同じ時間に別の場所で仕事してたりするんだよ」
 
「あ、それ私もある!ここどうしたんだろ?とか思うけど記憶が無い」
 
などと、お互い慰め合っていた!?
 

12月3日(金)“ひらく”。
 
さいたま市(旧岩槻市)内に建設中であった§§ミュージックの社員寮が竣工。引き渡された。各フロア12室、地下2階・地上10階という建物で、1階は管理関係の部屋を置くので2-10階が住居。9×12=108戸が入居可能である。基本的には独身者向けの寮だが、結婚または同棲しても1年以内はそのまま居てもいいルールとする。家賃は 1K=8000円, 2DK=10000円である。
 
独身者優先なのは、食生活に問題のある人がいることと、携帯代の督促状が来ているのに気付かず、いきなりスマホが止められて連絡不能になる事態があまりにも多発していることへの対策もあった。
 
オートロックでフロント(深夜を除く)およびガードマン(24時間)が常駐する。
 
入居できるのは、§§ミュージック・グループのアーティスト以外の人で、§§ミュージック・♪♪ハウス・あけぼのテレビ・サンシャイン映像のスタッフ、および各アーティストの専任バックバンドや、信濃町バンドのミュージシャンたちが対象になる。
 
巡回バスは運行するものの、それ以外の公共交通機関などは無い場所なので、どの程度の希望者があるだろうかとコスモスは思ったのだが、希望者は150名を越え、抽選で入居者を決める事態となった。
 
コスモスはいきなり“第二社員寮”の必要性を感じることになる。
 
入居者は、1月頃までに順次入居することになる。
 
アーティスト寮と違って有料にはなるが、食事の配送サービスが利用できるし、日常雑貨はある程度ストックしていてそれも部屋の配送ボックスに配送してもらえるので、実は、あまり買物に行く必要は無い。お肉や野菜・お米なども安く売ってくれる。生理用ナプキンは無料配布である。女性看護師が常駐する。
 
マネージャーで独身の人、主要アーティストのバックバンド・メンバーは優先入居の扱いにしたので(この人たちはスマホを止められたら本当に困るので)、谷口翼やルーシーなどが入居したが、木下宏紀も男子寮からこちらに移ってきた。篠原倉光も高校を卒業したらこちらに来たいということで、その部屋はリザーブされた。同じ所に住んでいた方が何かと便利だからである。深夜作業もしやすい!
 

この社員寮からいちばん近いコンビニまで100mほどの距離があるのだが、その間は街灯も無く真っ暗だった。それでコスモスは市の許可を得て、マンションとコンビニの間の道路に§§ミュージックの費用で、ガードレール付きの歩道を建設。更に道沿いに青い街灯を設置した。
 
そして、青葉が津幡リゾート(?)で導入予定であった、警備ロボットを取り敢えず3体導入した。そして女子および男の娘が歩いてコンビニまで行く時は、昼間であってもこのロボットを同伴するように言った。
 
なお、“男の娘”の基準は自己申告および女子社員たちによる指名!指名されて
「え?ぼく男の娘だっけ?」
と焦っている社員や伴奏者もいたが
「だって○○ちゃんが1人で歩いてたら絶対痴漢に遭う」
と言われて、全員指名に従った。中には
「スカート穿いて勤務していいよ」
と言われて悩んでる子もいた!
 
元々§§ミュージックには服装規定が無いので男性がスカートを穿くのも自由である。お化粧も自由なのでノーメイクの女子もいるし、メイクしている男子もいる。特に伴奏者にはスカート男子がわりと居る。トイレは良識に任されている。
 

社員寮に導入された警備ロボットには入居した女子社員たちにより、勝手に個体名が付けられた!
 
1号:アクア
2号:セレン
3号:クロム
 
なぜこういう選択になったのかはよく分からない。
 
「アクアちゃ〜ん、ちょっとコンビニまで付いてきて〜」
などとやっているようである。警備ロボットはスマホのおしゃべり機能程度の会話はできるので、結構みちみち会話しながら歩いているようだ(利用者の声を識別して「○○ちゃん、疲れてない?」などと話してくれる)。
 
むしろこのロボットを同伴したさに、わざわざ歩いてコンビニに行く社員たちも結構出た。
「社長、同伴ロボットあと2体くらい増やしてくださーい」
とコスモスは言われることになる。
 
(まだ手造りの試作段階なので制作には1ヶ月程度かかる。ついでに本来は同伴ロボットではなく警備ロボット)
 
 
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【夏の日の想い出・虹の願い】(2)