【夏の日の想い出・虹の願い】(3)
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(C) Eriko Kawaguchi 2022-04-09
11月上旬、町田朱美(本名:落合茜)はコスモスの所に来て言った。
「実はうちの姉が♭♭音大に合格しまして」
「おめでとう!もう入試やってるんだ?」
「総合選抜というんですよ。取り敢えず入ってもらって、本人の実力と傾向を見て最終的にどの専攻になるかが決まるらしくて。試験もオンラインで受けられるんです」
「へー」
「11月から始まって3月まで毎月1回、最大3回まで受験できるんですが」
「面白い選抜方法だね」
「その1回目で合格したんですよ。姉は8月に行われた事前実力テストでも上位だったので、今回はその再確認になったみたいで」
「優秀じゃん」
「でも総合コースは最終的にどの専攻に行くことになるか分からないから、姉はできたらピアノ専攻に行きたいから、あくまでここの総合コースは滑り止めで」
「なるほど。本命は?」
「東京藝大のピアノ専攻に」
「凄いじゃん!」
「入れたらいいなあ、ということで、それは夢物語なんです」
「あはは」
「特に姉は音楽以外の一般科目が成績悪いから」
「それだと国立(こくりつ)は厳しいかもね」
「一応東京藝大の願書は出しますけど、そこは多分通らないという前提で芸大の合格発表の前に入学手続きの締め切り日が設定されている私立を受けます」
「まあだいたいそういう設定になってるよね」
「##大学と∫∫音楽大学を受ける予定です。あと総合で合格している♭♭音大のピア専攻一般入試も」
「ああ、プロの演奏家を目指すなら、その付近だよね」
「∫∫音大が第1志望らしいです」
「そこ、ひょっとしたら芸大より凄いかも」
「姉もそう言ってます。芸大は学費が安くて志望者が多いから通りにくいけど。でも音楽大学って、学校によってはかなり酷い所もあるみたいですからねー。かえって教育大学の中にみっちり鍛える所もあるみたいだし」
「そのあたりの批評は避けるけど、チェリーツインのピアニスト、桃川春美ちゃんとか、北海道教育大学の特設音楽課程(通称“特音”)の出だから」
「そこは凄いレベル高いと聞いたことあります」
「それで社長、2つお願いがあるんですが」
「うん」
「姉が東京の大学を受験する時に、オンラインで受けられる所はそれで受けますが、リアルにこちらに来て受験しないといけない所もあって、その時に、うちの寮に泊めてもいいでしょうか?」
「いいよー。寮のグランドピアノも使っていいよ。花ちゃんに言っとくね」
「ありがとうございます!」
「楽器の演奏者って、練習を1日休んだだけで、その落ちた実力を回復させるのに1週間かかると言うもんね」
「姉もそんなこと言ってました。私なんて週に3回くらいしか弾かないから下手なままで」
「茜ちゃんは、プロのピアニストを名乗れる程度の実力あると思うけどなあ」
「それは褒めすぎです」
「但し条件がある」
「はい」
「東京に出てくるのに、公共交通機関を使わないこと」
「だったら、父に車で送ってもらいましょうか」
「ホンダジェットを飛ばせばいいじゃん」
「いいんですか〜?部外者なのに」
「それを通して君が感染したら困るからね。外食もこちらに来る1週間前から禁止」
「分かりました。言っておきます」
「前日に家族全員コロナの感染検査を受けてもらう」
「それは全く問題ありません」
茜は言った。
「あと1つ、滑り止めの♭♭音大に合格したことで、4月から東京近辺で暮らすことが確実になったんですが、私、姉に一緒に暮らさない?と提案したんです」
「ほぉ」
「私が東京近辺に中古住宅を買って、防音室を作って、そこにグランドピアノ入れて毎日練習できるようにするんですよ」
「それは必要だね。ふつうのミュージシャンならクラビノーバでもいいけど、音大生にはグランドピアノが必要だもん」
「それでその家を買って防音工事ができたら、私、退寮してそこに引っ越していいですか?」
「もちろん、もちろん。但し仕事の都合があるから東京23区内にして」
「分かりました」
「高崎線の沿線は良くないなあ。目黒とか立川とか調布とか川崎とか、まあ大学の近くがいいよ。交通機関を使わずに通学できる所」
「あはは」
高崎線の近くというのは、つまり啓太の所に行きやすい場所!ということだ。
「それは自粛します。今考えてるのは江戸川区なんですよ。都区内では土地相場が安いから」
「ああ、それはうまいと思う。高崎線じゃないし」
と言ってからコスモスは茜に言った。
「それとこちらからお願いなんだけど、その家に岬ちゃん(東雲はるこ)を居候(いそうろう)させてあげられないかな」
「それこの話が社長に許してもらったら岬に話してみるつもりでした」
「あの子は精神的に不安定だからさ、茜ちゃんが付いてないと心配で」
「なんかいつも心に不安を抱えてるんですよねー」
「ピアノはどうするの?こちらで1台買う?」
「実家のを移動してこようかなあと言ってたんですけどね。ピアノ弾くのは姉と私だけで、兄はずっと金沢に住んでて、元々音楽音痴でグランドピアノとアップライトピアノの区別も分かってない人だし」
「いや、それ音楽してる人でも値段が違うだけの同じ楽器と思っている人がわりと居る。リコーダーとクラリネットくらい違う楽器なのに」
「それも似たようなものと認識してる人いると思いません?」
「いる!」
「母も弾かないんですよ。エレクトーンなら弾けてグレード6級持ってるけどピアノはタッチが重いから無理って言うんですよね」
「6級なんて実質プロレベルじゃん!でも小さい頃から弾いてた人でないと結構ピアノは大変なのよね」
「それで子供には全員3歳になったらピアノ教室に行かせたんですよ。兄は挫折したんですが」
「弾く人がいなくなるなら、お父さんさえよければ、持って来てもいいかもね。実家ではピアノはどういう場所に置いてるの?」
「姉が小学4年生の時にピアノコンクールで県大会3位になったご褒美にグランドピアノを買ってもらえることになったんですよ。でも家の中にはとても置けないからそのために離れを建てたんです」
「大変だね!」
「敷地が狭いから大きな離れは建てられなくて、広さは8畳なんですけど、屋根の高さは2階建ての高さにして。天井を高くすることで音響がよくなるんだと父は言っていました」
「お父さんは音楽するの?」
「オーディオマニアなんです。クラシックのLP/CDがたくさんありましたよ」
「それで茜ちゃんもクラシックに強いんだ?」
「強いというほどではないですけどねー。ただうちの家ではいつもクラシックが流れてて、父がこれは誰の指揮の何とか楽団の演奏で、この時のコンサートマスターは誰々でとかよく解説してました」
「いい環境で育ってるじゃん」
「母はSMAPとか聴きたいけど、父は音程の合ってない歌は気分悪くなるといって」
「いや、それたとえじゃなくて、本当に気分が悪くなる人はわりと居る。岬ちゃん(東雲はるこ)がそうでしょ?」
「音感がいい人は0.5Hzくるってても耐えられないみたいですね」
「楽器は何置いてるの?」
「Yamaha C3Xです。他に母が弾く古いエレクトーンでHS-8というのもあります」
「物持ちがいいね!」
HS-8は1987-1991年に販売されていた機種なので、30年は経っていることになる。動いているのが驚異だ。コスモスにとっても初めて弾いたエレクトーンである。その後姉(メロディー)が高校に進学した時にSTAGEAに乗り換えている(つまりEL-90をスキップしている)。
茜は言う。
「姉(翠)はどうせならS4Bとか買って欲しかったみたいですが、S4Bみたいな本格的なピアノを置くには30畳くらいの部屋が必要だけど、Cシリーズなら狭い部屋で聴いても大丈夫だからと言って。それでも8畳は欲しいと言ってました。でもC3とS4って大きさはほとんど同じですけど、性質が全く違うみたいですね。値段も倍するけど」
「お父さん、ほんとによく分かってる」
とコスモスは感心していた。
「でも4月から住むなら、防音工事もあるから、年内には買わないといけないですよね」
と朱音が言うと、コスモスは少し考えてから言った。
「土地だけ買って、仕事の速い工務店に、自由な設計で建てさせればいいよ」
「間に合います?」
「C3を置くには、お父さんも言う通り、最低8畳程度の部屋が必要だと思う。でも中古住宅で8畳の部屋を持つものなんて、滅多に無いよ」
「そうかも!」
「江戸川区ならどこでもいい?」
「どうせ車でアクセスすることになると思うから、どこでもいいです」
「じゃ、誰かに土地を探させるよ。どっちみちあんたはとても時間無いでしょ?」
「それどうしようと思ってたんですよ」
「じゃ、3LDK+8畳以上の部屋が取れるという条件で。200坪くらいあればいいかな」
「そんなに必要ですか!?」
朱美も忙しいし、姉も受験で忙しいので、コスモスと茜は話し合い、工務店の誰かを朱美の実家に行かせて、御両親と話し合ってもらい、まず家の設計図を書き、それが建てられる土地を探そうということした。
そこでコスモスは播磨工務店!の前橋に電話してみたのだが、彼女は今建設中の社員寮の方で(みんなが勝手なことをしないように)“監視”しているので、七瀬に“監視”させて、南田(社長)にやらせますと言った。
「南田さんで大丈夫?」
「私や七瀬が付いてたら大丈夫です。青池さんがいちばん確かだけど、あの人は豪邸みたいなのにしか興味無いから。小さな家は適当になりがちなので」
「青池さんって、信頼できるけど気まぐれだもんね〜」
それで、南田がちょうど11月13日に青葉の家の引き渡しに行くので、それが済んだら、そのまま宇ノ気(うのけ)に回ってもらい、それで朱美の両親と話し合うことにしたのだった。むろん七瀬さんにお目付役をしてもらう。
実はこの時期、播磨工務店は青・白とも別件をやっていて、住宅建設グループでは南田のチーム(赤組)だけが空いていたのである。(ビル建設担当の黄も§§ミュージックの社員寮をやっている)
ところで『時のどこかで』や『ヒカルの碁』の制作をした、ΛΛテレビの和田プロデューサーから、
「アクアちゃん、2-3月くらいにでも時間が取れませんか?」
という話が来た。
「アクアは3月までは、『少年探偵団V』を撮っているので」
「ああ。そうか。その後でもいいですから、1ヶ月くらい時間を頂けませんかね?どうしてもアクアちゃんがダメなら常滑舞音ちゃんでもいいですが」
「それどのくらいの負荷になります?」
「1ヶ月くらいだと思うんですよ。その間にテレビのレギュラーとかに出たりシングルの制作したりするのに多少抜ける程度は構いません」
「映画か長時間ドラマですか?」
「ゴールデンウィークか、間に合わなければ夏休みに映画の形で公開したいと思っているんですよ。制作費は2億円くらいを考えているので主演の方のギャラは3000万円くらいを想定していたのですが」
「舞音なら3000万でもいいですよ。長い付き合いですし」
「やはりアクアちゃんはそのギャラでは厳しいか!」
「ゲスト出演する程度なら」
「あ、それ是非お願いします」
ということで、常滑舞音主演の映画が制作されることになったのである。
「何か原作のある映画ですか?」
「実は1963年のフランス映画『アイドルを探せ』のリメイクなんですよ。それで様々なアイドルにワンカット程度でもいいから出演してもらおうというので、あちこちのプロダクションに声を掛けている所で」
「ああ、それなら主演はそれなりのパワーがある人でないとダメだ」
「そうなんです。これは“大物アイドル”にしか務まらないんですよ。考えてみたんですが、アクア(20)、常滑舞音(16)、七浜宇菜(18), ビンゴ・アキ(17)、あたり。大内小猫(14)だと若すぎるんですよね。羽田小牧(14)も若すぎるし、彼は最近、女の子役は嫌ですと言っているし」
「アクアも男の子なんですけど」
「でも自然に性別が変化して女の子になっちゃったんでしょ?時々あることらしいですね」
まあ、常滑舞音で良かったようだ!
ワンティスのトリビュートアルバムの制作は進んでいた。青葉による編曲作業はできたら11月中に終えたかったのだが、さすがに1日1曲は無理で、12月15日まで掛かった。
10/30(Sat) 忘れられた座席
10/31(Sun) 虹色の首飾り
11/01(Mon) 夕暮れ時のスピカ
11/02(Tue) 一杯の水
11/03(Wed) 雪の恵み
11/04(Thu) 髪の長い少年
11/08(Mon) キャット・ウォーク
11/09(Tue) 背中に書いたラブ・レター
11/10(Wed) 祭り太鼓
11/11(Thu) 時間の忘却
11/13(Sat) フィドルの妖精
11/14(Sun) サチ・カ
11/17(Wed) Long Long Ago 11/20(Sat) ボヤージュ・ロマンティック
11/22(Mon) 人魚諸島
11/24(Wed) 朝日の海岸 11/25(Thu) 川と花の物語 11/26(Fri) 深き山に入りて
11/28(Sun) ヴィーナスの涙 11/30(Tue) 極楽鳥
12/02(Thu) ラピスラズリ 12/04(Sat) 光の柱
12/10(Tue) 生命の水 12/11(Wed) リズミトピア 12/14(Sat) 神曲
12/15(Sun) ただいま
11/5-7の中断は社会人選手権に参加したためのものである。また12/7-9も後述の作曲家アルバムの取材のため中断した。
『時間の忘却』は、千里が大本のCubaseのデータをくれたので、1日で編曲を終えることができた。それでこの曲は編曲のクレジットが“大宮万葉・醍醐春海”になっている。
青葉が編曲した楽曲は、原則翌日夕方(土日は朝から)に“ゼロティス”のリズムセクションにより演奏され、この段階では花咲ロンドが監修してまとめる。
ゼロティス・リズムセクション
KB1 米本愛心(20)
KB2 原町カペラ(19) or 石川ポルカ(18)
Gt1 松元蘭(17)
Gt2 田倉友利恵(22)
Bass 花咲鈴美(16)
Dr 木原扇歌(17)
青葉はロンドに「少々の修正は自由に」と言っているが、大きく変更したい所は青葉と電話で協議している。変更された譜面は南田容子がまとめてオリジナルに反映させる。
この時点でスコアは確定し、管弦セクションは原則として翌日昼間にスコア通りに管楽器・弦楽器を入れる。
管弦セクション
Sax 日高久美子(23)
Tp/Tb/Horn 吉田邦生(24)
Vn 鈴木真知子(24), 大崎志乃舞(18), 生方芳雄(23)
Fl 田中世梨奈(24), 甲斐波津子(16), 安原祥子(19)
Cla 上野美津穂(24)
Cello 田中成美(20)
Vib/Mar 桜井真理子(20)
甲斐波津子が高校生なので、フルートセクションだけは、主として夕方以降に録音している(早朝に録音したこともある)。一部の曲には妹の甲斐絵代子(Ye-Yo 14)も参加している。
この段階ではほとんど修正要請は発生しなかったが、いくつか修正したものもある。この修正も南田容子がオリジナルに反映させる。
そういう訳で南田容子はかなり忙しい:結果的に食事や機材の調達などの雑用は全て立花紀子が引き受けたが紀子もかなり忙しくなった。紀子がテレビ番組の収録などで不在になる時は海浜ひるがおが臨時で対応してくれた。
(彼女が「大宮先生、私デビューできるようになるには何をすればいいでしょう?」などと訊き、歌を聴かせてくれたが、青葉は返答に困った!!)
アクアはどうしても時間の取れる時にまとめて録音する形になり、特に12月に入ってからはなかなか時間の取れないこともあったが、何とか12月中に歌唱録音を終えることができた。
アクアの歌唱が録音された後で、更に信濃町ガールズたちによる付加楽器やコーラスなどを収録して、1月上旬にマスターが完成した。
同時に制作するMVも楽曲の進行に少し遅れる形で進んでいた。§§ミュージックのタレントや信濃町ガールズたちが動員されている。一部は他の事務所のタレントさんにお願いして出てもらったものもある。このあたりは主として私のコネである。
『忘れられた座席』では、原町カペラが車を運転しているシーンが映るが、助手席に男性が座っているシーンがフラッシュパックのように挟み込まれる。この顔が映っていない男性の役をしてくれたのは、花咲ロンドである!(むしろ男性のタレントさんに演じてもらうと後が面倒くさい)
『虹色の首飾り』は花貝パール・恋珠ルビーが宮古島の伝統的な織物である宮古織りの浴衣を着て、七色の珠で作られたお揃いの首飾りを着け、夕方海に架かった虹を眺めて涼んでいる様子が映っている。
首飾り:真珠・アメジスト・ラピスラズリ・サファイア・エメラルド・トパーズ・ルビー
この撮影は忙しい所申し訳無かったのだが、宮古島までG450を飛ばして行ってもらい、撮影している。虹は偶然本当に架かったものである。1泊したので、ふたりは各々の実家に泊まった。
『夕暮れ時のスピカ』には姫路スピカに出演してもらい、夕暮れ時、小雨が降る中を可愛い花柄の傘を差しているスピカの映像が使用されている。顔の映っていない男女?は、実はフェイとヒロシである。むろんフェイが男役でヒロシが女役である!実は偶然スタジオのそばを通り掛かったので、川崎ゆりこが声を掛けたら出てくれたのである(友情出演としてクレジットした)。
『一杯の水』では、ボロボロの服を着て、砂漠を歩く男が、倒れそうになるのをひたすら我慢して歩き続け、ついにオアシスを見付けて水を飲むというシーンが映っている。出演してくれたのは、揚浜フラフラである。彼にこんなに演技力があるとはと評価されるきっかけにもなった。
「名前がフラフラだからフラフラになって歩くのは得意」
などと本人は言っていた。
『雪の恵み』は水谷姉妹と甲斐姉妹の競演になっている。雪解け水が流れる様、田んぼに水が満ちてゆく様とともに、水谷姉妹のビブラフォン連弾、甲斐姉妹のマリンバ連弾の映像が入っている。
『髪の長い少年』では、白鳥リズム!に出演してもらっている。実は信濃町ガールズには多数の男子メンバーもいるのだが、大半の子がヴィジュアル的には女の子に見えてしまう。それで中身は女の子なんだけと最も少年っぽいビジュアルであるリズムに(ロングヘアのウィグを着けて)出てもらったのである。
「少年役、全然OKです」
と言って、楽しそうに撮影されていた。
『キャット・ウォーク』は常滑舞音・水谷姉妹・地多めぐみ・宮地ライカの5人が猫に扮し、歩き回っている所を撮影している。舞音はもちろん黒猫だが、水谷妹が白猫で、水谷姉はごま色猫、地多めぐみは三毛猫で、宮地ライカはトラ猫である。
『背中に書いたラブ・レター』は、AYAのゆみが、夫の高橋和繁と一緒に出演してくれた。軽装の高橋が寝ている所の背中にLOVEの4文字をゆみが書く所を撮影している。Oはハート型に描いている。
『祭り太鼓』は演奏にも参加してもらった、花咲ロンド(篠笛)、西宮ネオン(太鼓)、夢島きらら(鉦鼓)が実際に楽器を演奏している所を撮影している。信濃町ガールズ関東のメンバーが、浴衣を着て、盆踊りのように輪を作って踊っている(撮影は屋外に見えるが実は春日部のスタジオ)。
全国各地の祭りの映像もストック映像から取り込んでいる。
『時間の忘却』は、極めて多忙なコスモス自身が出演した。§§プロの練習生だった中学生時代の映像、デビューしたての高校生の頃の映像(当時はスカートを穿かないのがコスモスのスタイルだったので、ジーンズのパンツなどで映っている映像が多い:初めてスカート姿でCDジャケットに映ったら「コスモスちゃんが性転換しちゃった」などと言われた)。
そして1年ごとの映像を5秒ずつ入れた上で、豪華なステージ衣装を着て、ステージ用の濃厚メイクをしたコスモスが、歩いていくにつれシンプルな服装になっていき、メイクも軽くなっていき、最後は麻製の貫頭衣だけを身につけてすっぴんの顔になった状態になって、彼女のお母さん(同じく貫頭衣を着ている)と一緒に歩いて行く姿が出ている。十牛図の“牛人倶忘”に沿ったMV作りをしている。
(日野ソナタが「よくスッピンで出られる」と感心していた)
公開後、コスモスちゃんのお母さんって、びじーん!という声が多数あって、お母さんが照れていた。(「それに比べて」以下についてはコスモスは聞かなかったことにした!)
『フィドルの妖精』は、アクア・葉月・大崎志乃舞の3人にヴァイオリンを弾いてもらっている所を撮影している。この撮影は実際にはこの曲をカノンに編曲したものを使用している。3人とも妖精のような白いシルクの衣裳である。つまりアクアは女性的な衣裳を着ているが、Fを徴用したので文句を言わずに着てくれた。この曲は本当はフィドルの先端のくるくるした所で妖精が遊んでいる、という曲であり、妖精がフィドルを弾いているという曲ではないのだが、まあいいだろう。
11月13日に播磨工務店の南田社長は高岡市伏木で青葉の新居を朋子に引き渡したのだが、その後、南田は、秘書の七瀬を伴い、かほく市宇ノ気に移動して、茜の実家を訪問した。(*9)(*10)
(*9) 宇ノ気(うのけ)町は日本初のオフコンとされるUSAC (Unoke Standard Automatic Computer) を町おこし事業!として作っちゃった町である。現在は市町村合併で“かほく市”になっている。
「最近はコンピュータとかいうものが流行ってるらしいぞ」
「じゃ1台作ってみるか」
という感じのノリで、酒場に集まった数人(ほとんどがコンピュータの素人)が中心になり、わいわいがやがや議論しながら組み立ててしまったもの。1961年初号機完成(よく動いたものである)。初代の社長は当地の医師!である。素人集団なので早々に行き詰まり内田洋行を経て現在は松下・富士通が共同で設立したパナファコム傘下の PFU (Panasonic - Fujitsu - Usac) が事業を引き継いでいる。2021年時点では富士通の完全子会社。河北縦断道路を走っていると、芝生を刈って作った文字でPFUという表示がされているのを見ることができる。
(*10) 七瀬が同行したのはコスモスの依頼である。七瀬か前橋が付いてないと、南田は計画図を無視した建築をしがちである。あまり勝手なことをされると、有り金はたいて家を買おうとしている茜が可哀想だ。
(岬は半分出そうかと言ったが、コスモスが「共同名義は絶対揉めるから友情を壊したくなければやめなさい」と忠告した。それで岬は茜に家賃を払うことにした)
茜の両親は恐縮していた。
「社長さんご自身がいらっしゃったんですか?」
「いや、ついでがありましたから」
それで東京で茜本人やコスモスと話し合ってきた内容をかいつまんで説明すると、両親は基本的に茜の考え方でよいということだった。
それで姉の翠も降りてきて、両親と翠に南田・七瀬で3時間ほど話し合い、このような方針が決まった。
・茜と岬は夜遅く一緒に帰ってくるが疲れているのでお風呂待ちさせたくない。また岬は便秘気味で長時間トイレに籠もりがち。
→お風呂とトイレが各部屋にあるアメリカンスタイルを採用する。
・茜・岬と翠は生活サイクルが多分3時間くらいずれる。
→フロアを分けた方がお互い気兼ねが無い。キッチンは共用。
・タレント活動していると洋服が物凄くたくさん必要なはず。
→衣裳部屋を作ってあげよう。
・練習部屋は翠用とラピス用が別々に必要。特に翠は広い部屋が必要。茜に電話で確認したが、ポップスの場合、どっちみちPAを通すので自然の音響は不要。ピアノも電子ピアノで充分。生ピアノを使う場合も(グランドピアノでさえあれば)小型のものでよい。
(アップライトピアノは問題外。アップライトなら、むしろクラビノーバが良い)
以上を踏まえて、お父さんと南田は、このような“計画図”を書いたのである。
地下に2つ練習室を作り、今実家にあるYamaha C3X を運んでいって大練習室(翠用)に入れ、小練習室(ラピス用)に、クラビノーバ CLP-785 あたりとエレクトーン ELS-02 あたりを買って設置する(この楽器の購入は岬が自分が買うと言うので、彼女に任せた。正直、今回茜は家だけで精一杯。翠も−正確には親も!−学費だけで精一杯:岬が楽器を買ってくれたので、翠の入学金は茜が出してあげた)。
地下の天井の高さは3階建て相当の7mとし、小練習室の上に“中地階”(MB)を作って、楽器倉庫にする(楽譜とかCDもここに置くかも)。これは小練習室の方は天井が7mあるのは、かえって使いにくいからである。
↑で茜の部屋のお風呂と岬の部屋のお風呂は隣接しているが、その間の線が普通の壁を表す黒ではなく、窓のある壁を表すグリーンになっている。これは岬がお風呂で眠ってしまっていないか、茜がチェックできるようにするためである!(岬は、この前科がたくさんあるので女子寮でも岬のお風呂にカメラを設置している!アイドルのお風呂にカメラが設置されているというのは凄い状況で、川崎ゆりこが「メディアに知られたらやばい」と言っていた)
なお3人は偶然にも全員西四命なので、南・南東・東・北が吉方位である。だから↑で赤字で記入した方位に家を建てることのできる土地を探すと“七瀬が”言っていた。
落合翠 2003.5.20 離
落合茜 2006.3.23 震
月乃岬 2006.1.14 震
朱美・はるこは、朱美がお姉さんに見られがちだが、慎重な山羊座と、考える前に行動する牡羊座の違いであり、実際は、はるこが2ヶ月ほどお姉さんである。
12月上旬、トリビュートアルバムの編曲作業のゴールが見えてきたところで、青葉にはラピスラズリと一緒に“作曲家アルバム”のインタビューをお願いした(この時期はアクアが超多忙でなかなか歌唱の時間が取れないので、編曲も多少遅れてもよかったのである)。
前回のインタビューは9月18-20日におこない、野潟四朗さん、鹿島信子、フェイとヒロシをインタビューしている。このフェイとヒロシの分が2月7日放送予定だが、この番組は3月で終了予定で、残りは3回である。3月21日の最終回には、青葉自身を取り上げることになっているので、それ以外に取り上げるのは残り2組である。
そういう訳で今回の取材日程はこのようになった。
12月7日(火) 丸山アイ
12月8日(水) 望坂拓美
12月9日(木) 大宮万葉
平日だが、ラピスラズリの日程が土日は完全に埋まっており、平日しか取材に行けないのである(実際2人は11月下旬から、かなり学校を休んでいる。この番組は最終回の大宮万葉を除いては、夕方からの取材にしてもらっていた)。
この番組は4月以降も続けるかもという意見もあるらしいが、その場合はラピスラズリは降板させて、誰か他の子でと、放送局側には申し入れている。
(水谷姉妹あたりが有力:甲斐姉妹ではYe-Yoの歌唱力に難があるし、更にYe-Yoはあまり機転が利かないので、インタビューアーとして使いにくい)
12月7日(火)は、丸山アイだったが、この日アイは
「重大な秘密を公開する」
と予告していたので私は何をするつもりだ?というので気が重かった(実際スポーツ新聞のトップで報道された)。
青葉、ラピスラズリ(町田朱美・東雲はるこ)、私、◇◇テレビのカメラマンと〒〒テレビの長江ディレクターという6人は夕方、東京・中野区のアイのマンション(正確には綾香のマンション)を訪れた。
奧さん(夫?)の城崎綾香(別名=久美浜映月/本名=宮田雅希)が迎えてくれる。
「今出てくると思いますので」
と綾香が言って、取材陣に紅茶を出してくれた。
「これはケニヤ産の紅茶ですか?」
と町田朱美が尋ねる。
「よく分かるね。これはケニヤのナンディの紅茶なのよ。向こうの友人が送って来てくれたの」
「へー」
やがてアイ(?)が出て来たのだが、男性用の和服を着ているので、私も青葉も頭を抱えた。そして“高倉竜”のヒット曲『島原情緒』をヴァイオリンの“弾き語り”で1コーラス(男声で)歌った。
「そのヴァイオリン、弾き語りできるように改造されてる」
「そうそう。手ぬぐいを縫い付けてる。昔の演歌師さんはこういう仕掛けでヴァイオリンの弾き語りをしてたんだよ」
と“高倉竜”は男声で説明した。
普通はヴァイオリンは顎と肩甲骨とで挟んで演奏するので口が動かせず弾き語りは困難である。ところが昔の演歌師はヴァイオリンの端に手ぬぐいを接着しておき、その手ぬぐいを通してヴァイオリンを身体に固定することで、口が自由に動くようにして、弾き語りをしていたのである。指は第1ポジション固定になってしまうので、いわゆる“フィドル”の弾き方と似た感じになる。
「まあそういう訳で、実は高倉竜の正体はボクだったのでーす」
と丸山アイは女声に戻して言った。
なるほど、この秘密をバラすということだったのかと私は納得した。
(この時は!!)
丸山アイと高倉竜は、ともに2014年12月にデビューした。丸山アイが女性のポップス歌手としてデビューしたのに対して、高倉竜は男性の演歌歌手としてデビューしている。しかし高倉竜はそのビジュアルが一切公開されず、年齢や出身地なども非公開であった。その正体をめぐっては、様々な説が出ていたが、恐らくはGReeeeNなどと同様、別の職業を持っている人で、そちらの仕事に差し支えるので、公開しないのではという見方が大勢になっていた。
丸山アイと高倉竜が同一人物であることを知っていたのは、★★レコードでもごく一部の人であるが、私や青葉は偶然にも制作に協力したことから最初から知っていた。
ラピスの2人や、テレビ局の2人も全然知らなかったようで、驚いていた。
アイが女物の服に着替えてきてから、インタビューは続く。
その後は、丸山アイに関する話、高倉竜に関する話が混じって対談は続いていった。丸山アイが“モードチェンジ”して、男性モードになったり、女性モードになったりすると、まるで雰囲気が変わって、同じ人物に見えないので、ラピスラズリの2人が驚いていた(放送されると視聴者も驚いていた)。
「本来の性別は女性ですよね?」
と町田朱美が尋ねるが
「内緒」
と彼女は答えていた。
ラピスラズリは丸山アイが書いてXANFUSが歌った『Orange Mirror』を歌ったがアイは
「やはりこの手の曲は朱美ちゃんがメインボーカルを取るんだね」
「そうしなさいとケイ先生から言われました」
「詠唱するような曲ははるこちゃんが上手いけどね」
「私はノリが悪いと言われました」
「2人は別のタイプのシンガーだから、そのあたりは曲によって各々の得意な分野を担当していけばいいと思うよ」
とアイも言っていた。
丸山アイは“非常識人”ではあるが、フェイほどではないので、インタビューは楽しく進んだ。そしてそろそろ終わりかなというので話をまとめかけていた時、突然、居間の奥のドアが開いたのである。
「あ、ごめん。まだインタビューしてた?ここカットしてね」
と“出て来た人物”は言うと、すぐ引っ込んだ。
“その人物”を見た(アイを除く)全員が唖然とした。
丸山アイが言った。
「ごめーん。昨夜から“水沢歌月さん”が来て、ちょっと名守チヅルちゃんのアルバムの件で打ち合わせてたんだよ」
東雲はるこが言った。
「あのぉ、水沢歌月さんって、ケイさんの別名だったのでは?」
「え?別人でしょ。水沢歌月はKARIONの“蘭子”で、ケイはローズ+リリーで2つのユニットを掛け持ちできる訳が無い。KARIONとローズ+リリーは同じ日に名古屋と金沢でライブやったこともあるからね」
などと丸山アイは言っている。
「KARIONの美空ちゃんや小風ちゃんに訊いてごらんよ。蘭子とケイは別人だと言うから」
あの2人は・・・そう言うだろうな!
「でも水沢歌月さん、ケイさんに凄く似ている気がするんですが」
と東雲はるこが言うと、ここまで沈黙を守っていた町田朱美が、やや投げ槍気味に
「もしかして双子ですか?」
と訊いた。
すると丸山アイは
「確か十つ子だったはずだよ」
と答えた。
「とつ?」
「2人なら双子(ふたご)、3人なら三つ子(みつご)、4人なら四つ子(よつご)、5人なら五つ子(いつつご)、6人なら六つ子(むつご)、7人なら七つ子(ななつご)、8人なら八つ子(やつご)、9人なら九つ子(ここのつご)、10人なら十つ子(とつご)」
「じゃ10人居るんですか!?」
と東雲はるこが驚いたように言う。
「ケイが10人居るって有名な話だと思ったけど」
とアイは言っている。
「ちなみに、醍醐春海ちゃんは5人で赤青黄緑菫、アクアは7人で日月火水木金土、東郷誠一先生は20人、上島雷太先生は40人、居たはず」
「アクアが7人という説はわりと昔からあるよね」
と、ここまで頭を抱えていた青葉まで言った。
それでこの日の話はまとめられた!?
そういう訳で、翌々日(12/9)のスポーツ新聞のトップには
「ケイは本当に10人居た!」
という見出しが大きく掲載されることになったのであった!
長坂さんと佐竹さんは
「今の場面はカットしますね」
と言ってくれたのだが、私は
「いや、ふつうに流していいですよ」
と言った。
報道しないでと言っても、じわっと噂は広まるので、スパッと報道してもらった方が笑い飛ばせる。それに報道しないでと要請することは、報道機関に貸しを作ることになってしまい、よくない。更には報道自粛を要請することで、かえって信憑性が高まる。それで《ケイがインタビューしている部屋にケイが顔を出す》というシーンも2月に放送されることになった(視聴率が凄かったらしい。即、動画サイトに無断転載された)。
そもそもその日(12/7)の内に丸山アイが自分のブログに書いたし!!(それでスポーツ新聞の報道に至る)
なお12月9日の記事には
「アクアもやはり7人いる」
という見出しが添えられていた。ある新聞など、§§ミュージックの関係者から得られた情報として、7人の“個別名”まで掲載していた。
Aqua Solis (太陽のアクア)
Aqua Lunae (月のアクア)
Aqua Martis (マルスのアクア)
Aqua Mercurii (メルクリウス(マーキュリー)のアクア)
Aqua Iovis (ユピテルのアクア)
Aqua Veneris (ウェヌス(ヴィーナス)のアクア)
Aqua Saturni (サトゥルヌスのアクア)
その関係者の話では、Solis, Maris, Iovis は男の子、Lunae, Veneris は女の子、Mercurii は性別不安定で、Saturni は無性なのだとか!?
こういうジョークを言ったのは、きっと川崎ゆりこか、花咲ロンドだ。
記事は、私の多人数説、アクアの多人数説で埋められていて、結果的に高倉竜=丸山アイという記事は小さな扱いに留まった(それが目的だったりして?)。
「ケイが複数居る」という話は、美空・小風・千里・花野子・マリ!なども証言していたし、“顔を隠したミュージシャン”が“人工的に変形した声”で
「ケイの名前で発表されている作曲作品は2017年150曲、2018年が700曲、2019年40曲、2020年100曲で、1人の人間が書ける量では無いです。それだけ見ても“作曲家・ケイ”はどう考えても4〜5人は居る。それ以外に水沢歌月、紅石恵子、秋穂夢久(あいお・むく)名義、更には蔵田孝治先生との共同名義だけどヨーコージ作品もあるから、どう考えても作曲家だけでケイは最低8人いますよ。それにサマーガールズ出版社長のケイは社長の仕事だけで、もう他のことはできない筈だし、ケイは最低9人は居ますね」
と答えていたが、口調から間違いなく和泉だ!
全くもう。
秋穂夢久が私だってのを、さりげなくバラしてるし!
アクア複数説も多数の証言があった。
「私がA局でドラマの撮影していた時間に同じ事務所の後輩がB局でクイズ番組の撮影してたんですけど、A局のドラマにも、B局のクイズ番組にもアクアちゃん出てたんです。だからアクアちゃんは確実に2人以上居ます」
「東京駅で新幹線から降りてくるアクアちゃんと会って挨拶してから新幹線に乗ったのに、新大阪で降りたら、そこでもまたアクアちゃんと会ったんだよ。別のマネージャーさんが付いてた」
という類いの証言も大量にあった!!(私に関してもこの手の証言は多い)
そしてここに来て、アクア双子説が再浮上する。
こんな証言(?)が飛び出してくる。
「アクアのパスポートは、性別:男になっているのをテレビで公開していたけど、性別:女になっているパスポートを見たという人もいるんだよね。たから、アクアは一部で噂があるように、男女の双子なんだと思う」
「アクアって男の子かもと思う時と間違い無く女の子だと思う時とがあるんだよね。だから、やはり男の子のアクアと女の子のアクアが居るんだと思う」
「アクアは高校時代、男子制服着てる時と女子制服着てる時があった。女子制服着てる時は、ドラマで女の子役するから、その役作りのためとか言ってたけど、本当は男の子アクアと女の子アクアが居て交替で登校していたんだと思う」
更にここんな話まで出てくる。
「ある関係者から聞いたんだけど、高岡さんと夕香さんの間に生まれた子供は実は双子だった。志水さんが2人も育てるのは大変なので、ひとりは高野さんという別のミュージシャンに託された。それでふたりは別々に育ったんだけど、アクアが凄まじく忙しくなったことから、最初そっくりさんとしてスカウトされて、遠景などを撮るのに使われていた。でもその後、ふたりが実は双子の姉妹だったことがDNA鑑定で確認されたらしい」
どういう関係者だ!?それに高野って誰??だいたいどちらも女の子ということになってるし。
更に三つ子説まで出てくる。
「アクアちゃんに『アクアちゃん、本当は双子なのでは?』と言ったら『違うよう』と言うんだよね。それで冗談で『だったら三つ子?』と訊いたら、一瞬答えに窮してた。だからもしかしたらアクアちゃんって実は三つ子なのかも」
などと言う人があったのである。
なお“東郷誠一20人、上島雷太40人”については
「まあ『中の人』はそのくらい居るよね」
と大半の読者が思ったようである。
東郷誠一さんは
「僕が20人いたら、女房が大変だ」
などと、大笑いしていたらしい。
(東郷先生の所に取材に行くとは、なかなか勇気のある記者だ)
“上島雷太40人”については、実は上島先生本人も知らなかったことで、その経緯については↓で述べる。
12月8日(水)は“望坂拓美”の取材に行った。
実際に訪問したのは、栃木県小山(おやま)市のオフィスビルの中にある小さな事務所である。インタビューに応じてくれた“望坂拓美”プロジェクトの主宰者・王絵美さんは
「ともかく余計な費用は掛けまいというので、安くオフィスを借りられる所を求めて、ここを借りたんです」
と話していた。
望坂拓美のオフィスが入居しているオフィスビルは小山駅に近い“裏通り”にある。駅に近いけど、裏通りなので家賃が安い。雑居ビルならもっと安いが、セキュリティを考えてオフィスビルにしたのだと言う。小山市を選んだのは都内よりは家賃相場が低いが、新幹線で東京にアクセスできるから、急ぎの仕事を手で持って行けるからである。
東京からすれば田舎かも知れないが、2018年に前後して起動した、夢紗蒼依が鹿児島県川内(せんだい)と福井県小浜(おばま)、松本花子が(恐らく)明確な本拠地を持たずに全国分散(窓口は沖縄:千里の口ぶりからすると、どうも、北海道・北陸・沖縄・台湾にブランチがある)で始めたのに比べると、まだまだ東京に近いところでスタートしている。
10m×5m(15坪)ほどの面積で、そこにアクリル板で仕切られた席にヘッドセットを付けた人が5人、パソコンを前に作業をしている。パソコンにはmidiキーボードなどは接続されていない。
「ここに居るのは、クォリティ・マネージャー(品質管理者)さんたちです。望坂拓美は50人ほどの作曲者と、20人ほどの作詞家からなる作曲集団です。作曲者は、音楽大学などの出身で、現在は主婦などをしている人が多いです」
「作詞者はniftyの創作系フォーラム, mixiの創作系コミュなどで活動していた人、そしてそこからの横のつながりでスカウトした人が多いです。作曲者が自分で詩を書くケースもあります。詩は毎日でも書けますが、曲を書くのは早い人でも一週間掛かるので、どうしても作曲者の方が多人数必要になります」
「それで納品された歌詞、納品された楽曲をここで検査して、修正して欲しい箇所があったら指摘します。簡単な文法ミスや漢字の読み違い、登録商標や商品名、あるいは差別語など、使ってはいけない言葉が無いか、また和音の勘違いや歌いにくいと思われる所があったらそれも指摘します。このやりとりを何度か繰り返すことによって、歌手さんたちに渡せる作品の品質になるんです」
とサリーを着た王さんは説明する。彼女は2018年の緊急帰国以来、一貫して、サリー姿で報道機関の前には姿を見せている。
王さんの両親は台湾籍だったが、2人とも日本生まれで、お祖父さん・お祖母さんの代から日本に住んでいた(絵美さんもその両親も台湾に行ったことがない)。それで王絵美さんも日本生まれだが、生まれた時は(血統主義により)台湾国籍になっていた。しかし日本の小学校・中学校に通っているので、スポーツ界では日本人扱いになり、中体連の卓球では全国大会まで行ったことがあるし、インターハイでも県予選BEST4まで行ったことがある。高校卒業後は卓球を選手としては引退し(指導者や審判の資格は持っていて卓球連盟には所属している)、タレント活動をしていて、20歳を過ぎた所で日本国籍を取得した。
タレント活動時代にCDを出したこともある(後述)が、その後、むしろ作曲家に転向し、"Magic Emi"のペンネームで年に5-6曲の作品を書いていた。でもそれほど売れていないので、2012年頃までは、やはりタレントがメインだった。
元卓球選手ということで、テレビ番組で当時まだ小学生だった福原愛と対戦したこともあるが、全く歯が立たなかったので「愛ちゃん、ほんとに凄い!」と完敗の弁を語った(でもその後、彼女とはずっと交流が続いている)。
タレント時代も最初はそんなに目立つタレントでは無かった。ワンギャルなどにもなっているが(釈由美子などと同期)、当時はファンレターをもらったことも無いと言う。写真集も出したが500部も売れなかったらしい。幼児番組に出演していた時代に知名度があがり、2002-2004年に、ゲームバラエティでベテラン・コメディアンの山田次郎さんに鍛えられた。2006年から2009年まで本坂伸輔さんがメインの司会をする音楽番組のアシスタントというよりも事実上の共同司会を務め、この時、本坂さんと個人的にも交友を深めた。当時は、何度か本坂邸にも招かれて、奧さんの里山美祢子とも仲良くしていた。今でも彼女は美祢子のことを“姉御(あねご)”と呼んでいる。
2013年、王はインドに渡り、向こうで女性の教育活動に従事し、同じく慈善運動をしていたイギリス人男性と結婚した。
本坂伸輔は多数のゴーストライターを使っていたが、2014年に本坂が急死した後、そのゴーストライターさんたちは仕事ができなくなって困った。美祢子から相談を受けた王は、その代作者たちを下川工房に紹介して、彼らに“上島雷太”の名前で作品を書かせるようにした。これは上島本人も知らないことだった。当時は上島雷太作品の需要が凄まじかった一方で、上島自身の制作ペースが落ちてきていたので、上島本人の真筆だけではとても足りなかったからである。
これは実は王絵美が下川圭次と高校の同級生だったという縁もあったのである。その縁で王は下川が編曲した歌でCDを出したこともあるが前述のように全く売れなかった!(メジャーレーベルから出したのに1000枚も売れていない)
一方、上島と本坂の関係というのは2001-2003年のワンティス時代に遡る。本坂は実はワンティスのメインキーボード奏者だった。ワンティスの初期には、キーボードとギターはドリームボーイズの原埜良雄・滝口将人が弾いていた。しかし彼らはドリームボーイズの活動が盛んになって来たことから離脱し、代わりにスカウトされたのが、キーボードの本坂伸輔、ギターの志水英世であった。当時は、本坂の報酬は上島が、志水の報酬は高岡が個人的に払っていた。それで本坂と上島は元々盟友関係にあったのである。
要するにこの4人は“四角関連”である。
2018年には今度は上島自身が土地不正取引で逮捕され、起訴猶予にはなったものの音楽活動を自粛したため、再び代作者たちは困った。
それで再度彼らに泣き付かれた王は、これはインドからのリモートでは無理だと判断。イギリス人の夫をインドに置いたまま日本に戻り、望坂拓美プロジェクトを立ち上げたのである。代作者たちを再編して、彼らの作品を望坂拓美の名前で発表するようにした。そういう訳で望坂拓美の“坂”は本坂伸輔に由来する。motosaka→motisaka なのである。(oをiに変えたのはイタリア語の複数形を作る規則からの連想らしい。拓美は“匠”に由来する)
このあたりの経緯は、私は小山市に向かう道々ラピスラズリの2人には説明したが、上島雷太の代作時代以前のことはインタビューでは触れないように2人には頼んだ。
多くの歌手が歌うべき曲が無くて困っていると聞き、音楽番組をしていた関係で“ほぼプロ”レベルの作曲者とのコネが多いので、それを組織化して、集団で楽曲を生産することにしたという、建前的な説明が番組内ではされることになる。
この作曲グループは実は2005年頃から16年ほど活動していたが、2018年になって初めて表舞台に出てきたのである。現在、品質管理者としてオフィスに出てきているのは実は初期の頃このグループに参加していた作曲者たちである。
2019年春にUDP(上島代替プロジェクト)が終了すると、それに参加していたセミプロ作曲家さんたちの大半が、望坂拓美に移籍したので、参加する作曲者はほぼ倍増した。移籍してきた作曲家さんたちは、しっかり校正してもらえるし、助言ももらえる上に、基本が買取りで支払いも良くて生活設計を立てられるしで感激していた。
望坂拓美は月末締めの翌月10日払いなので“日銭(ひぜに)”に近い感覚で報酬がもらえる。これがUDPだと通常の著作権処理だったから、最悪7ヶ月後の支払いだったし、曲がヒットしないと雀の涙程度の報酬しか得られなかった。
すぐ払うことができるのは、里山美祢子の弟で大俳優の片原元祐が初期の運営資金を提供してくれたお陰である。なお片原姉弟が表に出ない(運営会社の株主にもなっていない)のは、その2人の名前を出すと、このプロジェクトは2人の母である作曲家の松居夜詩子が実質統括しているのではと誤解されるからである。
なお私たちは、小山市への移動に2台の車を使用した。
◇◇放送の車:佐竹カメラマン(◇◇放送)・長江ディレクター(〒〒テレビ)
私のエルグランド:佐良ドライバー、ラピスラズリ(2列目)、青葉と私(3列目)
私たちは現地で、まずはオフィスでクォリティ・マネージャーさんたちの作業の様子を見せて頂いた後で、応接室に入り、そこでインタビューをした。
今日は個人宅ではないので、ラピスの2人も少し勝手が違うようだが、町田朱美が中心になって、プロジェクトを始めた経緯や、このプロジェクトに参加したい作曲家の志願方法などについても尋ねていく。
「作品を見せて頂きますが、一般的なコンペとは採用基準が全く違いますので注意して下さい。うちでは、コンペに通りやすいような派手派手しいアレンジはむしろお断りしています。継続して活動して頂くことが大事なので、個性を求めますし、盗作まがいの曲を書く方はお断りです。また、人間の演奏者が演奏して、人間の歌手が歌う前提なので、人間が演奏できないようなスコアも困ります」
と王さんは説明する。
「コンペに通るのは、派手な作品ですからね〜」
「目立たないと採用してもらえないし」
「最近は人間には絶対無理って伴奏が結構ありますよね」
「それと各々の楽器の特性を無視したものも多いんですよ」
「トランペット吹いたことの無い人がトランペットの音を打ち込みで作ってますからね」
「私も高校を出た後、10年ほどアレンジの仕事をしてたんですが、管楽器の経験が無かったので、初期の頃、そのあたりをかなり注意されたんですよ」
と王さんは言っている。
「それCDを出される前ですか?」
「むしろその後ですね。でもあのCDは恥ずかしいので黒歴史にさせて下さい」
「ある人からお借りして来ているのですが」
と言って、私がそのCDを見せると
「きゃー、恥ずかしい!」
などと言っている。
「でも懐かし〜。それ私も持ってないのに」
などと王さんは言っていた。
このCDは上島先生が持っていたもので、2018年の事件で上島先生が破産した後は、アクアが丸ごと先生が所有していたCD群を買い取った。それで現在は八王子の家にあった。今日はアクアから借りて来たのである。
(放送時にはこのCDの音源が流され、視聴者は若い頃の王さんの歌を聴くことになり「結構うまいのに」と言われていた)
ラピスラズリには、王さん自身が書いて望坂拓美の名前で発表し、トライン・バブルが歌った『愛のゆりかご』を歌ったが、
「あんたたち、本当にうまいね」
と褒めてくれた。
「そういえば、王絵美さんの夫さんの名前はジョージ・キングというんだよ」
と私は言った。
「王さんとキングさんが結婚したんですか!?」
と東雲はるこが驚いている。
「そうそう。王様と王様が結婚したって、日本のマスコミは書いた」
と本人は楽しそうに言う。
「そのパートナーさんは、ずっとインドですか?」
と朱美は尋ねた。
「うん。放置」
「浮気大丈夫ですか?」
「浮気したら去勢と言ってますから」
「ああ、それは恐い」
「でも2018年と2019年は1回ずつ日本に来たよ」
「じゃ1年に1回のデートですか」
「そうそう。七夕夫婦。でも2020年,2021年はコロナで来日できなかったんだよ」
「ああ」
「会いたい会いたいと言うから、私のヌード写真と、テンガ100個送ってあげたけどね」
「凄いもの送りますね!」
「“会いたい”というより“セックスしたい”だろうしね」
「まあ男の人はそんなものでしょう」
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【夏の日の想い出・虹の願い】(3)