【夏の日の想い出・点と線】(2)
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(C) Eriki Kawaguchi 2020-01-17
今年も恒例の年末年始の§§ミュージックのタレント総出演による挨拶CFを12月上旬の深夜に撮影した。このビデオは全員が揃わないと撮影できないが、みんな忙しいので、どうしても深夜になってしまうのである。
1年前の「明けましておめでとうございます」ビデオに出演したのは下記である。
アクア、品川ありさ、高崎ひろか、西宮ネオン、姫路スピカ、花咲ロンド、石川ポルカ、白鳥リズム、原町カペラ、桜木ワルツ、山下ルンバ、桜野レイア、今井葉月、川崎ゆりこ、秋風コスモス
今年の「お世話になりました」の映像はこれと同じメンバーだが、「明けましておめでとうございます」には、これに東雲はるこ・町田朱美が加わる。例によって年末バージョンは白地の振袖、年始バージョンは青い振袖だが、全員模様は異なる。
このメンツで、コスモスの指揮、ゆりこのピアノで全員ご挨拶する。ロングバージョンのCMでは、1人1秒ずつのメッセージ又はポーズが撮影される。アクアは笑顔で両手を振っていた。なおこの1秒ずつのメッセージにのみ、別撮りした、リセエンヌ・ドオ4人まとめて1秒のカットが加えられている。4人も振袖を着て撮影している。
使用するピアノは年末版は1年前の年始版と同じA-188 Steinway Parlor Grand Pianoだが、年始版はベーゼンドルファーの170VCを使用した。またコスモスが持つ指揮棒は年末版では桜色だったが、年始版ではグリーンにした。
ちなみに出演者の中で西宮ネオンだけが羽織袴である。つまり、アクアも葉月も振袖を着ている。特にアクアのは加賀友禅のひときわ豪華な振袖である。
例によってアクアは撮影してから
「ネオン君は振袖じゃなくて羽織袴なんだ?ボクは振袖なのに」
と発言して
「何を今更」
「毎年振袖着ているくせに」
「去年も一昨年もその台詞聞いた」
「振袖着て喜んでるじゃん」
とありさ・ひろか・スピカなどから非難囂々であった。もちろんアクアに羽織袴など着せたら、視聴者から非難囂々になることは想像に難くない。ちなみに葉月が振袖を着ていることは、本人も含めて誰も気にしていない。
統合型リゾート(Integrated Resort, IR)とは、下記のような機能を備えた総合的なリゾートを意味する。
・ホテル・レストラン
・カジノ
・コンベンションホール
・エンタテイメント・ショー
・テーマパーク
世界的な例としては、2011年にオープンしたシンガポールのMarina Bay Sandsが有名である。日本でもこのような外国人観光客の集客力が高い施設を作ろうという声があったが、カジノが日本では違法なので、それをどうするかという問題があった。推進派は政府を動かし、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」を2016年12月に成立させ、カジノを含む統合型リゾートが国内3ヶ所限定の特区に限り認められることとなった。
そしてその候補地として、いくつかの自治体が名乗りをあげた。
北海道(苫小牧)
東京(お台場)
千葉(幕張新都心)
神奈川(横浜・山下ふ頭)
静岡(牧之原市)
大阪(夢洲)
和歌山(マリーナシティ)
長崎(ハウステンボス)
沖縄(海洋博公園・美ら海)
この中で沖縄が早々に撤退。北海道も今年11月末に知事が誘致から撤退する方針を表明、また大阪は誘致を受ける側の外国資本が次々と横浜に鞍替えしており当初は最有力地と言われていたのが揺らいできている状況である。
そんな中、これまで名前の出ていなかった自治体、宮城県で熱心に誘致活動をしていた人がいた。仙台市議のQ議員である。彼は積極的に市議会でもIRの効用を説き、若林区に様々な施設を建築するとして“予想図”まで作成して、市長、更には県知事にも売り込んでいた。実は彼がイオンタウンの若林区への誘致に積極的だったのも、この絡みであった。イオンにショッピングモールと映画館を作らせ、国内の大手ホテルチェーンにリゾート・ホテルを作らせ、遊園地や屋内レジャープール、温泉を造り、コンベンションホールも市あるいは県の主導で建築させようというのが彼の構想であった。
さて、2019年12月25日、国会議員の秋元司(内閣府副大臣)がIR誘致に絡んで中国系企業から多額の現金や高級品を受け取っていたとして逮捕された。
そしてその関わりで仙台市議のQまで逮捕されてしまったのである。もらった金額は秋元代議士の10分の1に過ぎなかったが、賄賂はたとえ1円もらっても賄賂である。
そのため仙台ではこれで仙台へのIR誘致の線は消えたと考える人が多かったようで、誘致に反対していた市民団体なども声明を出したが、翌1月26日、イオンも異例のメッセージを出した。
・当社は仙台市若林区の噂されている地区に大型出店をする予定は無い。
・当面近隣のイオンモール名取の運営に力を尽くすつもりである。
これで和美が心労を重ねていた“隣にイオンタウンができて飲み込まれる”恐れは無くなったのである。
それで和美は12月30日お店をマキコと梓・照葉に任せてクレールのメイド、ルシア、モナミと一緒に安心して小浜に向かったのであった。
2019年のRC大賞は12月29日に17時から23時までの6時間生放送で行われ、ウィンドベルの『花が咲いたら』が大賞を受賞した。今年の金賞受賞曲は下記である。
アクア『ラブ・キャンディ』
ローズ+リリー『Atoll-愛の調べ』
津島瑤子『北の桟橋』
松浦紗雪『サウス・スコール』
松原珠妃『赤い雪の狂詩曲』
ハイライトセブンスターズ『小鹿に乗った少女』
ゴールデン・シックス『夢見る少女のように』
トライン・バブル『ダイヤモンド千里浜』
三つ葉『30分』
トマムネ32『ファースト・インパクト』
カラー・ボックス『ビッグパーティー』
ウィンドベル『花が咲いたら』(RC大賞)
アクアの『ラブ・キャンディ』は岡崎天音・大宮万葉の曲で、テーブルにはアクアの他、コスモス社長・三田原部長・大宮万葉(青葉)・和泉が座った。美空は千里などと一緒にゴールデンシックスの所に座っているので今年もKARIONの中で小風以外が授賞式に出てきている。
私たちのテーブルには、風花と氷川課長が座っている。トラインバブルの所には事務所社長と★★レコードの栗橋さん、三つ葉の所はプロデューサーの毛利五郎と★★レコードの明智係長、また松原珠妃の所は事務所の観世社長と作曲者の蔵田さん、松浦紗雪の所は事務所社長と作曲者の上島先生!が座り、蔵田さんと握手をしていた。
上島先生が謹慎明けに書いた曲(実際には謹慎中に書いてもし可能だったら松浦紗雪に渡したいと思っていた曲らしい)がヒットしてRC大賞にノミネートもされたのは私は本当に嬉しかった。これで来年はもっと先生に作曲を依頼する人も増えるかな?
様々な企画、また過去の受賞曲の紹介などが行われている間は結構席を移動して談笑する姿なども見られる。上島先生と蔵田さんも随分話していたし、千里とハイライトセブンスターズのヒロシもかなり長時間話していた。“金沢コイル”という固有名詞を聞いたので何それ?と尋ねたら、青葉が北陸のローカル番組で“金沢ドイル”と命名されてしまった関連で、千里は“ドイルの姉のコイル”と名付けられてしまったらしい。
「ドイルってコナン・ドイルのドイルなんでしょ?ホームズかワトソンならよかったのに」
とヒロシが言うと
「ホームズもワトソンも男じゃん」
と千里は言っていた。でもコナン・ドイルも男だという気がするが!?
私はゴールデンシックスの梨乃たちと結構話していた。
「そういえば唐突に思ったけど、三つ葉のプロデュースしている毛利さんの奥さんってどういう人なんだっけ?あまり表に出てこないよね?」
と梨乃は尋ねた。
「え?毛利さん結婚していたんだっけ?」
と私は逆に聞き返した。
「夏頃、2歳くらいの男の子連れてるの見たんだよね。『お子さんですか?』と訊いたら『うん』と言うから、いつの間に結婚したんだろうと思ってた」
「毛利さんが結婚したなんて知らなかった」
と私は言う。彼が結婚するなら、雨宮先生が音頭を取って盛大な結婚式とかしそうなのにと思う。
「ケイさんも知らないのか。千里も知らないと言うからさ」
「今度雨宮先生に聞いてみようかなあ」
と私が言うと、マリが
「本人に訊いてみたら?」
と言うが
「それはそうだけど、状況を知っておかないと、何か変なこと言ってしまいそうで」
と花野子。
すると、今日のゴールデンシックスに参加している長尾泰華が
「実はシングルファザーだったりして」
などと言う。
「それありそうな気もしてきた。『あなたの子供よ』とかいって、どこかの女に押しつけられていたりして」
「確かにあの人、その付近がややだらしなさそうな感じはある」
「風俗とかソープとかも行ってそうだよね」
するとマリが言った。
「毛利さんは実は男の娘で、自分で産んだんだったりして」
「いや、それだけはあり得ない」
と私も梨乃も言った。
そもそも男の娘が子供を産める原理が良く分からない(和実みたいなのは例外として)。
今年は東京パティオでの恒例の12/31 12:00から1/1 12:00まで24時間ぶっ通しのオールスター・カウントダウン&ニューイヤーライブにも出ないので、私と政子は12月30日の朝東京を出て小浜に向かった。あやめは政子のお母さんと一緒に「混み出す前に」と言って12月27日に既に小浜に移動している。
私と政子は30日朝の新幹線で京都まで行く。
アクアのことなどでおしゃべりしていたのだが、近くの席に座っていた力士が3人名古屋駅で降りた。それを見送って政子が言う。
「お相撲さん、身体が大きいから普通席じゃ辛いよね」
「うん。グリーン席でも結構きついと思うよ。いっそ普通席2つ使ったらいいかもね」
「だと運賃が2倍必要か」
「自由席が空いている時なら、特に文句言われないかも」
「あ、そうか。でも年末年始は混んでるから、そういう訳にもいかないな」
「うん。こういう混む時は色々大変だと思うよ」
「そういえば稀勢の里は最近あまり活躍してないね。休場も多いみたいだし」
「稀勢の里は引退したけど」
「嘘!?いつの間に」
「たしか初場所に引退して、9月に断髪式したと思ったよ」
「うっそー!?だったらまた日本人横綱はゼロ?」
「稀勢の里はどうせ横綱にするならもっと若い内にしたかったね」
「そうか・・・引退しちゃったのか」
と言ったまま政子は何か考えている様子。変なこと考えてるんじゃ?と思ったら案の定だった。
「ね、ね、お相撲さんは引退する時断髪式ってするけど、男の娘は断茎式ってしたらどうかな?」
「何それ?」
と、訊いてあげる。
「大銀杏をたくさんの人に少しずつ切ってもらうように、おちんちんをたくさんの人に少しずつ切ってもらうのよ」
「はあ!?」
「お相撲さんの断髪式って誰から始めて誰で終わるの?」
「さあ。たぶん最初は後援会長あたりから始めて、横綱や大関とかの上位の力士、同じ一門の先輩・主な後輩、交流のあった文化人や芸能人、途中でお父さんとかもハサミを入れて最後は親方でしょ」
「お父さんだけ?お母さんは?」
「女性は土俵にあがれないから」
「あ、そうか。めんどくさいね」
(千代大海は母親にハサミを入れてもらうため、わざわざ一度土俵の下に降りた。実は稀勢の里の前日に断髪式をした里山もこの方式を踏襲した)
「アクアは来年の3月で高校卒業でしょ?そしたら断茎式をしようよ」
「それどうする訳?」
「東京ドームとかにお客さんたくさん入れてさ、テレビ中継もして、グラウンドの中央にベッドを置いてアクアに横になってもらって、まあお医者さんに麻酔を打ってもらったほうがいいかな。それで最初はファンクラブ会長の松浦紗雪さんから始めて、私とか光帆とか小風とかのファンクラブ代表、テレビ局やレコード会社の人、同じ事務所のタレントさん、とかに少しずつハサミを入れてもらって、お父さんとお母さんには左右の睾丸を1個ずつ切り離してもらって、最後はコスモス社長に、おちんちんを完全に切り落としてもらう」
「そんなの放送できる訳無い。そもそも性器をテレビには映せない」
「そっかー。視聴率凄いと思うのに。だったら、オーロラビジョンに大きく映して観客だけで楽しむ」
「大半の人は性器切断の場面なんて直視できないと思う。グロじゃん」
「じゃ見ても平気な人だけで」
「そもそもアクア本人は、ちんちん切られたくない」
「そこを何とか説得して。高校卒業と共に男の娘はやめて、女性のタレントとして再出発」
「そもそもアクアは男の娘ではないし」
「あれ?もう女の子になってたんだっけ?」
「普通の男の子だよ」
「いや、それは違う」
京都駅には、鱒渕マネージャーが迎えに来てくれていたので、彼女が運転する水色のアクアで小浜のミューズパークまで行った。
「あれ?もしかしてこの車、以前アクアの送迎に使っていた車だっけ?」
と私は尋ねた。
「よくお分かりですね」
と鱒渕さん。
「アクアの送迎に使っていたのは白いアクアじゃないの?」
と政子が尋ねる。
「そのアクアはナンバーまでファンの間で知られていたね。でも実は2台のアクアを使っていたんだよ」
と私は言う。
「そうなんだ?」
「通っていた中学から熊谷駅まで運ぶのに白いアクアを使って、新幹線で東京に移動して、東京駅から仕事場までは水色のアクアを使っていたんだよ」
と私が説明すると
「そうだったのか!」
と言って納得していた。
「だけど東京駅より上野駅の方が便利な時もあるんじゃないの?」
「それで鱒渕さんは毎日午前中にこの車を仕事のある場所の最寄り駅の駐車場に移動していたんだよ」
「大変そう!」
と政子。
「まあ確かに大変でしたね。水色のアクアでそのまま深夜自宅まで送り届けることもあったし、学校から白いアクアでそのまま撮影現場まで行くこともあるから、たまに白と水色が入れ替わったりすることもあって、結構パズルでした」
と鱒渕さん。
「今は数人で対応しているから何とかなっているけど、鱒渕さん1人でやってた時はほんとに大変だったと思うよ」
「今となってはちょっと懐かしいですね」
「まあアクア本人が東京に引っ越してくれたので、かなり話が単純になったはず」
「えええ。熊谷にいるというだけで大変でした」
「それなんでデビューする時に東京に引っ越さなかったの?」
「上島先生と紅川会長の話し合いでそう決まったみたいだよ、上島先生としては仕事に便利な東京に住んでいたら、済し崩しにハードスケジュール入れられるのではないという懸念があった。熊谷に住んでいて東京に出てくるのは早くても18時になるというのがあるから、スケジュールはその後だけにしてもらえる」
「それは結構防衛線になっていたかもね。でも熊谷と東京の往復で疲れない?」
「それはあるけど仕事してるのと新幹線の座席で寝ているのとでは、疲労が違うよ」
「確かにそうかもね」
「学校の無い夏休み中はたいてい足立区の寮に泊まり込んでいたから、早朝から深夜まで仕事していたみたい」
「ああ」
と言ってからマリは
「あれ?」
と言った。
「あの寮って、女子専用で男子禁制だよね」
「そうだけど。だから西宮ネオンとか大崎志乃舞とかは寮に入らず、都内のマンションに住んでる。家賃は事務所で負担しているけど」
「じゃ、なんでアクアは女子しか入れない寮に入っていた訳?やはりアクアは当時既に性転換済みだったの?」
「まさか。それはアクアの四大謎のひとつと言われている。でも実際問題として女子寮に居ても、あの子の場合は何も問題が起きないからね。お風呂も個室についてるし」
「そうか。裸にでもならない限り問題は起きないかもね」
(以前は共同の浴場だったことは取り敢えず黙っておく。それでアクアの“あそこに何も付いていない”裸を品川ありさも高崎ひろかも山下ルンバも米本愛心も月嶋優羽も、むろん川崎ゆりこや秋風コスモス、更に秋風メロディーまで目撃している)
小浜には昼頃に着いたのだが、午後からはスターキッズ、および、この時点で来ている伴奏者、照明やPAの人たち、レコード会社やイベンターの人たちまで入れて会議をする。その上で午後4時から明日のイベントのリハーサルを行った。ここで不足している演奏者は信濃町ガールズの子たちに代替させながら実行した(その楽器を演奏できない場合は楽器を持って立っているだけでいい)。
この日の夜は§§ミュージックの『The 源平記』が放送されるので、マリは私たちに割り当ててもらった個室のテレビを点けて熱心に見ていた。この番組の視聴率は物凄かったようである。もっとも、誰が義経を演じたのか、最後まで分からなかった視聴者もかなりあった模様である。
「え?葉月ちゃんだったんでしょ?」
「義経はスピカちゃんだったよね?」
などと様々な説が出て、録画したものを再生し、2度見してやっと義経はアクアだったんだということに気づいた人も多かったようである。そして義経はアクアが演じていたんだという認識で3度目見ると、色々な仕掛けが見えてきて結局3度楽しめるということになったようである。1月10日(金)発売のDVD/Blurayもかなり予約が入った(予約特典はアクアの静御前・ひろかの北条政子・ありさの弁慶・生写真3枚セット)。月末発売予定の写真集にもどんどん予約が入っていてどうも制作費はゆうゆう回収できそうな雰囲気である。
今回は§§ミュージックが主体となって(つまりお金を出して)制作したのだが、赤が出なくてホッとしたのが正直な所である。
(石原プロの『西部警察』などと同じ方式−松芝電機からのスポンサー料は直接§§ミュージックが受けとっているので潤沢な予算が執行できたがリスクもこちらが抱えた)
(リスクなしで視聴率を取れて)気を良くしたテレビ局からはお正月に挨拶回りに行った時
「今年の年末は今度は秀吉か家康やりましょうよ」
などという声が出ていた。もっともコスモスは
「聖徳太子もいいなあ」
などと言っていた。どうも『日出処の天子』のイメージがあるようで、要するにアクアに女装させたいのだろう。蘇我蝦夷が葉月か?スピカか?ひろかが推古天皇、蘇我馬子がありさだろうか。白鳥リズムは物部守屋か。あるいは厩戸皇子の腹心・淡水あたりか。はかなげな刀自古郎女(とじこのいらつめ)はやはり東雲はるこだろう、などと私はついついキャストを考えてしまった。
今回のライブの前座に出演する§§ミュージックの子たちはおおむね12月31日の朝に東京を出てお昼頃に小浜入りした。信濃町ガールズの九州や四国在住のメンバーの中には12月30日の内に小浜入りした子もいた(それでリハーサルに徴用した)。例によって信濃町ガールズは2班編制しており、東京組は紅白に出場するアクアたちのバックで踊り、小浜組はカウントダウンに出演する。
紅白に出るのも7万人の前で踊るのも魅力的なので、どちらを志願するか悩んだ子もいたようである。西日本在住のメンバーは強制的に小浜班、東北・北海道在住のメンバーは強制的に東京班である。関東・東海の子に
限って希望を訊いたが最終的には人数の都合で希望に添えなかった子もある。§§ミュージックのマネージングチームも東京班と小浜班に別れて動いているが、桜野みちるのラストコンサート(関東ドーム)まであった昨年よりは少し楽だったようである。
今年のカウントダウン(本編)の出演者は下記27名+6名(Havai'i99)+αである(αは後述)。
■ローズ+リリー(2)
マリ・ケイ
■スターキッズ&フレンズ(7)
近藤嶺児・近藤七星・鷹野繁樹・酒向芳知・月丘晃靖・宮本越雄・香月康宏
■若山一門鶴派(4)
若山鶴風(田淵風帆)・若山鶴花(今田三千花/槇原愛) ・若山鶴琴(今田小都花/篠崎マイ)・若山鶴海(今田七美花)
■知り合い(6)
鮎川ゆま・村山千里・川上青葉・近藤詩津紅・田中世梨奈・上野美津穂
■ヴァイオリン(アスカ推薦)(6)
生方芳雄・富永英美・荒井路代・大野恵美・桜沢玲美・中森弘恵
■Dancer(2)
桜木ワルツ・山下ルンバ
■トロピカル・ホリデイ専任 Havai'i99(6)
中橋春光・中橋美雪・酒田文泰・酒田鈴花・村原宏紀・村原月
■愛のデュエット(後述)
青葉は卒論は年内に提出できると思うということだったのでお願いした。千里は全日本が1月10-12日なので、年末年始はこちらに来られることになった(という建前。実際には全日本に出るのは3番で、こちらに来てくれるのは2番である。ついでに2番はヴァイオリンが上手い)。千里も来てくれることが確定した段階で、龍笛は全部千里に吹いてもらうことにした。青葉が龍笛を吹くと、色々物が壊れる!千里も『怖そうと思えば壊せる』らしいが、青葉の場合は、“控えめに”吹いても共演者のギターやヴァイオリンの弦が切れたりする。公演中に録音しようとしていた人やスマホの電源を入れたままにしていた人はその録音機器やスマホが壊れるので、そういう警告をするのにはいいのだが、スピーカーとかが壊れると面倒である。ついでに後でDVDを発売するために録画しているレコード会社の人の機材まで壊れる可能性がある。
田中世梨奈と上野美津穂は青葉の友人である。
毎度お金に困っているっぽい田中さんには10月の段階で、私の方から電話を掛けた。
「今回も来てくれるということでありがとう。ギャラは早めに払わなくてもいい?」
「それなんですけど、本当に申し訳無いのですが、授業料を貸してもらえたりしません?」
「いいよ。いくら?」
「実は48万円7600円なんですけど。後期は卒論書かないといけなくて、就活もあるし、全然バイトができなくて」
「いいけど、だったらさ、田中さん2月・3月の土日とかは時間取れない?」
「多分取れます。卒論出した後だし、まだ入社前だし」
「だったら2−3月のツアーとか震災イベントにも参加してもらえないかな?そのギャラで11ヶ所分55万円払うよ。日程がまだ確定していないけど、決まったところで再調整。交通費とかで確実に追加払いが出る」
「やります!」
ということで彼女には今回のギャラ+交通費(63280円)に加えて55万円振り込んであげたのである(小浜での宿泊費はこちらでまとめて払うので個人払いは不要)。
和楽器奏者は、いつも出てくれる風帆伯母と、あとは従姪にあたる今田三姉妹にお願いすることにした。特に笙を吹かせたら、七美花を超える人はそうそういない(青葉の龍笛と同様に“破壊力”まであるのは困ったものだが)。
会場は朝9時に開けたが、ミューズタウン(藍小浜と小浜ラボ)に前泊した人は前日から入っている。なおミューズアリーナを後泊のみに使い前泊に使わないのは、保安上の理由に加えて、前泊で簡易ベッドを並べた場合、ライブする間、そのベッドをどこに置いておくかという問題が生じるからである。更に回収して再度並べようとすると、確実に前夜と同じ位置にベッドを置けるかという問題が生じる。衛生上、同じベッドに別の人を寝せるわけにはいかない。
さてお昼前から地元の人たちのパフォーマンスが始まる。実際にはわざわざ大阪から来てくれた民謡団体や徳島から来てくれた阿波踊りのグループまであって、かなりうけていた。はるばるお疲れ様である。
■入場&ウェルカム・パフォーマンス
8:00 出店関係者入場開始
9:00 観客入場開始
11:00-16:30 地元の小学校や民謡団体のパフォーマンス
夕方からは主として§§ミュージックのタレントたちのパフォーマンスが始まる。
■イブニング・パフォーマンス(司会山下ルンバ)
18:00-18:20 今井葉月
18:20-18:50 §§Junior Stars 東雲はるこ・町田朱美・石川ポルカ
18:50-19:20 小浜JH合唱団(市内の中高生有志による合唱団)
19:20-19:40 阿東梨鈴(○○プロ所属 2019.11debut)
19:40-20:00 花咲ロンド
20:00-20:40 §§Young Stars 西宮ネオン・原町カペラ・石川ポルカ
20:40-21:20 §§Senior Stars 桜野レイア・桜木ワルツ・山下ルンバ
21:20-21:40 姫路スピカ
花咲ロンドと姫路スピカは自分たちの持ち歌を歌ったが、トップバッターで出てきた今井葉月はCDを出していないので、東雲はるこ(ピアノ)と大崎志乃舞(ヴァイオリン)に伴奏してもらって、カーペンターズのナンバーを歌った。最初は夏のアクアのライブの時の前座でも歌った北里ナナの曲を歌おうかとも言っていたらしいが、あまり女の子の歌ばかり歌っていたら性別を忘れられると桜木ワルツに言われて、色々考えていたらカーペンターズになったらしい。
「結局女性ボーカルじゃん」
と私は言った。本人は
「最近男声が出にくくて」
などと言っていたので、どうも男の子に戻れなくなりつつあるのではという気もする。
しかしワルツは「性別を忘れられる」と言ったものの、そもそも彼を男子と思っているファンは全く存在しない気もする。スタッフからもほぼ女子扱いで、コスモスでさえ最近は怪しい。きっと彼を男の子として扱っているのはたぶん桜木ワルツや山下ルンバなど古株のメンバーくらいだろう。
今回、前座に○○プロの新人・阿東梨鈴が入ったのは、最近私が§§ミュージックとの関わりが強くなり、ローズ+リリーを(§§ミュージックの元締め的存在の)∞∞プロに取られるのでは?と危惧した○○プロの浦中副社長が送り込んで来たものである。ついでに経費負担代わりに大型免許を持ち腕力もある男性スタッフを5人も派遣してくれて、これは大いに助かった。実は最初は1人派遣してきたのだが、その人が現地で$$アーツから2人、ζζプロからは3人来ていると知り、報告したら、負けられんと言って、追加で更に4人派遣してくれたらしい。
ちなみにサマーガールズ出版の主要株主は下記である。
唐本冬子
中田政子
山吹若葉
秋風コスモス
ζζパイン(ζζプロ+松原珠妃)
○○△△(○○プロ・△△社・津田民謡教室)
$$ストレジ($$アーツ+蔵田)
アクアDP(雨宮・三宅・千里)
★★レコード
元々§§ミュージックが持っていた株をコスモスが個人で全部買い取ったので実は∞∞プロの影響力は逆にほぼ消えているのだが、浦中さんとしてはやはり気になるのであろう。『十二月』の製作でも色々協力してくれている。
Junior Starsの3人はももクロの歌、Young Starsの3人は品川ありさと高崎ひろかの歌を歌った。Young Starsの1人として登場した西宮ネオンは「用意されていた衣装がスカートだったからズボンに変えてもらった」と言っていたが、姫路スピカから「ネオン君、スカート姿も可愛いのに」などと言われていた。女子がほとんどの事務所なので、ネオンもノリで随分女の子の服を着せられている。彼の契約書には「女役はさせない」という条項があるが、だいたい無視して色々やらされている。「女装男子の役だから女役ではないよ」とか「男の子だけどコスプレで女の子の服着るんたよ」などと川崎ゆりこから言われたりしている。
ネオンはファンレターで「こないだのお姫様役かわいくて良かったです」などと書かれてくると、本人も悪い気はしないと言っている。
またファンの間では
「アクアちゃんは男の子ではあっても、ちんちん付いてなさそうだけど、ネオン君はちゃんとちんちんもありそうだから良い」
などという意見である。
Senior Starsの3人はリセエンヌ・ドオの4人と一緒に登場し、彼女たちがピアノ・ウッドベース・サックス・トランペットで伴奏をしてくれたのに合わせてジャズのスタンダードナンバーを歌った。
Senior Sarsのジャズ演奏で、まさに雰囲気は夜という感じである。最後はスピカが締めた後、20分の休憩となり、みんなトイレに行く。ついでに出店で色々飲食物も買う。他に場内にはお弁当売り・ホットコーヒー売り・カップヌードル売りも巡回している。
マベルは和実たちが宮城県M市でのカウントダウンの時にしたように、狭い出店スペースにメイドを20人以上も入れて、流れ作業でカアフェラテとオムライスを提供していたが、飛ぶように売れていた。ラテアート(模様はランダム)に歓声があがる。オムライスには今日はRMまたは2020という文字を入れていた(さすがに入れる文字のオーダーまでは受ける余裕が無い)。RMはローズ+リリーの意味である。前座の間に顔を出したのだが、和実自身も来ているのに驚いた。クレールはM市でのカウントダウンから営業開始したので、原点に還るのに、自分で来たのだと言っていた。彼女に
「イオンの件、話が消えたみたいで良かったね」
と言ったら
「ほんとに助かった。このイベントが終わったら、新年からまた頑張るよ。出産でもみんなに迷惑掛けたしね」
と明るい声で答えていた。
ちなみに、ここはコンサートホールではなくイベントスペースという扱いなので、会場内での飲食もOKである。むしろこの人数を収容できるような飲食スペースは作りようが無い。例によってゴミ回収班がライブ中会場内を巡回して、どんどんゴミを回収していく。
22時の時報が響く。司会役の川崎ゆりこが振袖姿で登場し
「これよりローズ+リリーカウントダウン&ニューイヤーフラッシュ 2019-2020を始めます」
と宣言した。
そのアナウンスが終わると同時に強烈なトエレのビートが打ち始められ、ステージ前後の緞帳が2枚同時に巻き上げられる。
Havai'i99メンバーがタヒチアンミュージックを演奏している。スポットライトがミューズアリーナの最後部に当たる。そこに私とマリがいる。私たちは、ミューズアリーナの1番端とステージの間に張られたワイヤーに取り付けられたゴンドラに乗り込むと140mを滑走(ゴンドラは自走式である:重力で滑走したらスピードが上がりすぎて危険)。ステージに降り立った。物凄い歓声である。私たちは手を振って『トロピカル・ホリデイ』を歌い始める。
前後に客を入れているので、トエレを打つ中橋さんと月はステージの左右に配置し、向かい合っている。ウクレレの美雪とギターの鈴花は背中会わせに立って両面を向いている。ついでに時々立ち位置を交替する。大太鼓の村原さんと小太鼓の酒田さんも背中合わせの立ち位置だが、こちらは位置交替はできない。
私たちは最初アリーナ側を向いて歌い出したが、途中でシアター側を向いたりもして、円形に移動しながら歌った。回る時は私が右回り、マリが左回りに移動して、反対側でランデブーとなる。
やがて歌が終わる。
「こんばんは!ローズ+リリーです!」
と挨拶する。
「最初の曲は本邦初のタヒチアン・バンド、Havai'i99の伴奏による『トロピカル・ホリデー』でした。この曲は彼らのアルバムには『Plage noire(プラージュ・ノワール)』というタイトルで収録されています」
「演奏者を紹介ます」
と言って私はひとりずつ紹介していく
「ル・プルミエ・トエレ(le premier to'ere)およびル・イハラ(le 'ihara)、中橋春光」
「ル・ファアテテ(le fa'atete)、酒田文泰」
「ル・タリパラウ(le tariparau)、村原宏紀」
「ル・ウクレレ(le ukulele)、中橋美雪」
「ラ・ギター(la guitare)、酒田鈴花」
「そしてル・スコン・トエレ(le second to'ere)およびル・ヴィーヴォ(le vivo)村原月(るな)でした」
「今一度拍手を」
と私が言って拍手をもらってから。女性3人は月の所に、男性3人はリーダー中橋の所に各々楽器を持って集まり、それぞれセリで下に降りて行く。観客に向かって手を振る彼らに再度拍手が送られた。
代わって中央の丸いセリでドラムスと酒向さんがセリあがってくる。別のセリを使うのはドラムスのセッティングの都合である。中央部分は歌が終わった頃下に降ろされて、地下で楽器を並べていた。
そしてドラムスがステージより更に50mほど高い位置で停まったところで、左右のステージサイドから、大勢の!演奏者が出てきた。スタッフも多数出てきて楽器のケーブル接続などをしている。その間に私とマリは観客に向かっておしゃべりをする。
「小浜は海の幸も山の幸も豊富でいいですね。昨年に続いて2度目の小浜でのカウントとダウンができました」
と私が言うと
「来年も来てね」
という声がかかる。地元のファンだろうが、実際には来年は難しいだろうなと私は思っていた。マリの結婚を発表したらたぶんファンは激減する。誰かシアターだけ使ってでも引き継いでくれないかな?などとも考える。2万人なら集められるアーティストは何組かいそうである。私はゴールデンシックスの花野子たちに打診してみようかとも思っていた。公開カラオケ対決でぶんどるような演出をしてもいい。
「マリちゃん、何食べた?」
という質問が飛んでくる。
「昨日のお昼は焼き鯖寿司食べて、夜は蟹尽くし、今朝は但馬牛のステーキ食べて、お昼はわらじカツ丼食べて、おやつはサバ玉(たこ焼きの中身がサバになっているもの)食べたよ」
「朝からステーキ行けちゃうのがさすがマリですね。私は普通の焼き鮭の朝食でした」
と私は補足する。
その他、グルメの話題を話している内にセッティングはできたようである。
「それでは『青女の慟哭』をいきます。青女“青い女”というのは、中国の言葉で雪女みたいなものらしいです」
と私は説明した。
酒向さんのドラムスに続いて多数の楽器が一斉に鳴り出す。多くの楽器が生み出す重厚な音はここ数年のローズ+リリーの音楽の特徴でもあったのだが、今年は楽器を減らして和音を回復させようという方針転換をしている。今回のアルバムでこういう音作りになったのは、これ1曲なのだが、ファンにとっては「いつものローズ+リリーの音だ」という感じかも
知れない。
ところで、演奏者は、一段高い所の丸いセリに陣取っている酒向さんのドラムスの周囲にスターキッズ&フレンズが円形に配置されているのだが、そのセリ自体と周囲のスターキッズ&フレンズが立っている所が音楽と共にゆっくりと回転するので観客からどよめきが起きていた。スターキッズ以外の演奏者や私とマリが立っている所の床は回転しない。以前大宮アリーナでやった時はドラムスの周囲をたくさん歩き回って疲れたなどと鷹野さんが言っているのを聞いた若葉が「歩かなくてもいいように自動回転させよう」と言って、こういう機構を造ってしまったのである。回転のスイッチは七星さんが持っているのだが、歩き疲れないかも知れないけど目が回らないか?と私は心配している。この回転機構は七星さんの意見によりぶっつけ本番である。
(リハで使ってみて「これ嫌だ」という意見が出た場合、本番で使わなかったらせっかく造ってくれた若葉に悪いから、という七星さんの心遣い)
曲が終わった所で演奏者を紹介する。
「ギター近藤嶺児、ベース鷹野繁樹、ドラムス酒向芳知、マリンバ月丘晃靖、アルトサックス近藤七星、トランペット香月康宏、トロンボーン宮本越雄、以上スターキッズ&フレンズ」
「箏.若山鶴風、三味線.若山鶴花こと槇原愛、琵琶.若山鶴琴こと篠崎マイ、笙.若山鶴海、以上若山流鶴派社中」
「テナーサックス鮎川ゆま、龍笛醍醐春海、篠笛大宮万葉、ピアノ近藤詩津紅、フルート田中世梨奈、クラリネット上野美津穂 、以上お友だち」
「ヴァイオリン、生方芳雄・富永英美・荒井路代・大野恵美・桜沢玲美・中森弘恵、以上蘭若アスカ教室」
「そしてボーカルは、私ケイと」
「私マリ」
「2人あわせてローズ+リリー」
「今日は以上25名の演奏者でやって参ります。実はあと6人いるのですが、それはその時点でまたご紹介します」
「次の曲『うぐいす』」
最初の曲から『うぐいす』『振袖』『門出』まではこの全員がステージ上に居るままで演奏した。パートの無い人は身体でリズムを取ったり、手拍子を打ったりしていてくださいと言ってある。
『門出』が終わった所で和楽器の4人は出番が終了である。私は
「若山流鶴派社中でした」
と改めて紹介して送り出した。またヴァイオリン奏者も4人退場して2人になって次の『紅葉の道』に行く。ここからはいくつかの曲を除いてヴァイオリン奏者は交替で2人ずつ出でくる。
洋楽器主体になって『紅葉の道』『Heart of Orpheus』『Atoll-愛の調べ』、『Cat People』と演奏して行き、前半の最後は『H教授』で締める。8分間もある長い曲だが、多くの観客がこの曲のストーリーの結末を知っているので、安心して聴いていたようである。ステージ中央の上に垂らした2枚のスクリーンに、大林亮平がH教授、マリが迷い込んだ女を演じたPVを流したのだが(場内あちこちに設置したモニタースクリーンは上半分がPVで下半分が演奏者の様子)、これは春に予定している2人の結婚発表の密かな予告になっていることは、私・鱒渕・風花・七星・氷川の5人しか知らない。スターキッズの他のメンバーや加藤部長も知らない。これは情報漏れを防ぐため最少人数にしか知らせてないからである。鷹野さんなど絶対危ないし、加藤部長も結構危ない。
『H教授』の演奏が終わった後は、私とマリ、更には伴奏者も全員退場して代わりに司会役の川崎ゆりこが登場し
「ローズ+リリーは15分ほどのお休みを頂きます。その間にステージを務めてくれるのは、1曲目の伴奏もしてくれましたHavai'99の人たちです」
と紹介すると、トエレを演奏する2人が楽器とともにせり上がってきて、他の4人は楽器を持ってステージサイドから出てくる。
Havai'i99のアルバム『Havai'i』からアクアにも提供した曲『Hei Tiare』
(但しオリジナル歌詞)、『Noces Polynesiens』『La mer vert』の3曲を演奏した。彼らの演奏中には、桜野レイア・桜木ワルツ・山下ルンバ・花咲ロンドの4人が出て、タヒチアン・ダンスを披露してくれた。
タヒチアンダンスはリセエンヌ・ドオも練習したのだが、高校生なのでこの時間帯は使えない。それでシニア・メンバーの彼女たちが一週間特訓してやってくれたのである。山下ルンバと桜木レイアは特に器用なのですぐ覚えてしまった。それでこの2人が中央である。
(実はルンバはトエレの類似楽器である“割れ目もっこ”(木鼓)の演奏者でもある。以前アクアの楽曲の伴奏に入れたことがあった。ルンバは東京でも月(るな)とお互いに演奏を教え合っていたようである。ルンバのお父さんが木鼓の制作者で、月(るな)にも1個自作の木鼓をプレゼントしたらしい)。
彼らの演奏が終わって退場した所に、前半PVを流していたステージ頭上のスクリーン(シアター向きとアリーナ向きの2面)が明るくなる。そこに秋風コスモスが映ると歓声があがる。
「小浜の皆さん、こんにちは。私は今名古屋に居ます。次の曲は『愛のデュエット』なのですが、その伴奏者を紹介します。まずヴァイオリンは蘭若アスカ音楽教室の真坂花代さんと田沼須美さん」
と言うと、2人の女性ヴァイオリニストにスポットライトが当たり、それがスクリーンに映される。
「そしてこれから9つの楽器を演奏する人、アクア」
とコスモスが言ってアクアにスポットライトが当たる。
小浜の会場は物凄い歓声である。
「そして今井葉月(はづき)」
とコスモスが言ってアクアの隣に立っている葉月にスポットライトが当たるが様子がおかしい。実はそこに立っているのは“葉月人形”なのである(顔だけ3Dプリンタで作った。ボディは適当な女性のマネキン人形を流用)。
コスモスが説明する。
「これは名古屋でアクアと葉月が9つの楽器を演奏し、それに会わせて小浜でローズ+リリーの2人が歌うという趣旨なのですが、葉月はまだ17歳なので、この時間に出演することができません。それで大変申し訳ないのですが、伴奏は1時間前に収録した録画でお届けします」
アクアが補足する。
「来年のローズ+リリーのカウントダウンにも呼んでもらったら、是非2人で生出演したいです。今年は録画でごめんなさい」
それでこちらの川崎ゆりこが
「それでは1時間前の録画スタート」
と言うと、その映像に切り替わる。
映像には秋風コスモスとアクア・葉月が並んでいる。コスモスが説明する。
「アクアは東京で紅白に出た後、新幹線で名古屋に移動してきました。葉月(はづき)は小浜での前座に出たあと、しらさぎと新幹線で名古屋に移動してきました」
実は葉月が前座の中でトップで出演したのはこういう事情があったのである。コスモスはフリップボードで2人の行程を示す。
(葉月の行動)
18:20に出番終了→河合マネージャーが運転する車で敦賀駅に移動
敦賀20:16(しらさぎ16)20:50米原21:04(ひかり536)21:23名古屋
(アクア・コスモスの行動)
19:30に出番終了→山村マネージャーが運転する車で品川駅に移動
品川20:00(のぞみ419)21:36名古屋
「ここは名古屋駅そばのスタジオで、現在は21:53です」
と言ってコスモスが自分のBaby-Gの腕時計を示す。時計は21:53だったが、カメラが映してすぐに21:54になってしまった。
「本当に今日撮影している証拠に、2人には東京と敦賀で駅弁を買ってきてもらいました」
それでアクアは崎陽軒の「シウマイ弁当」、葉月は塩荘の「越前かにずし」を手に持って示す。カメラが寄って製造日が12.31になっているのを映す。それで今日販売されたものであることが分かる。
「なお実際には2人が駅に到着したのはもう販売終了した時刻だったのであらかじめスタッフに買ってもらっておいたのですが、確かに今日の録画ということがおわかりになったかと思います。それでは演奏してもらいます」
とコスモスが言うと、ヴァイオリン奏者の前奏が始まる。
アクアと葉月はピアノの前に並んで座っているが、まずは連弾でAメロを演奏し始める。私とマリの歌も始まる。Aメロに続いてBメロまで演奏したところで、アクアと葉月は脇に置いているリコーダー(アクアがソプラノリコーダー、葉月はアルトリコーダー)を取ってサビを吹く。次はフルートに替えてAメロ・Bメロを吹く。これはどちらも普通のフルート(コンサートフルート *1)である。更にクラリネット(B♭管)を持ってサビを吹く。フルートやクラリネットは基本的に三度奏になっている。
クラリネットの次は今度は“水色の”Ewi5000を持ちCメロ・Aメロを吹く。
ここで水色のEwiを用意したのは、リコーダー・フルート・クラリネットまでは縦笛・横笛・縦笛と変わるので違いが明確だが、クラリネットとEwiはどちらも黒い縦笛で違いが分かりにくいのではという意見が出たところで川崎ゆりこが「色塗っちゃいましょう」という意見を出したためである。それで新しいEWi5000を2本買って、ウィンドシンセに詳しい工房に頼み操作性や回路に影響が出ないように着色してもらったのである。水色を選んだのは“アクア”のイメージカラーだからである。なお、Ewi5000はネックストラップを使わずに手だけで支えて演奏している(そうしないとネックストラップの着脱が大変)。ちなみにクラリネットが黒いのでリコーダーは象牙色の物を使用した。
Ewi5000の後は1小節のブリッジの間に立ち上がり、ヴァイオリンを持つ。
ヴァイオリンでサビ8小節を演奏し、続いて近くの別の椅子に座ってチェロでサビのバリエーション8小節を弾く。ギターに持ち替えてAメロBメロを再現し、最後は2小節のブリッジの間にドラムスの所に移動して、ひとつのドラムスを2人で一緒に叩く。
終わった所でミューズシアター・アリーナから物凄い拍手があった。私は再度紹介する。名古屋はもう生映像に切り替わっている。私は演奏者を再度紹介する。
「ヴァイオリン、真坂花代、田沼須美」
名古屋にいる2人がお辞儀する。
「そしてピアノ、リコーダー、フルート、クラリネット、ウィンドシンセ、ヴァイオリン、チェロ、ギター、ドラムスと9つの楽器を演奏してくれた人、アクア、今井葉月(ようげつ)」
葉月の名前はコスモスは「はづき」と発音したが、私は敢えて「ようげつ」と発音した。彼には時々でも自分が男の子であることを思い出させたほうがよい。(どうも本人も自分の性別を忘れているようなので)
アクアがお辞儀するが葉月人形はお辞儀しないので、アクアが人形を傾けてお辞儀するかのようにした。この仕草に会場では笑い声が起きる。
「アクアちゃん、名古屋で何か食べた?」
という声がこちらの会場で起きる。すると向こうにいるアクアから
「今流した収録が終わった後で、葉月ちゃん、コスモス社長、ヴァイオリニストさんたちと一緒に、ひつまぶし食べたよ。コスモス社長のおごり」
とお返事がある。
それでこちちらの声が向こうに伝わっていることが確かめられると、また歓声が起きていた。
川崎ゆりこが
「名古屋の皆さん、ありがとうございました。ゆっくりお休み下さい」
と言い、中継は終了した。
(*1)他の楽器からの類推で、つい“ソプラノフルート”と言いたくなるが、ソプラノフルートというと普通のフルートより高いピッチの楽器なので注意。普通のフルートはコンサートフルート、グランドフルート・ベームフルートなどと言う。ベームはフルートという楽器を完成させたテオバルト・ベーム(Theobald Boehm)にちなむ。Cフルート(C flute)ともいうが、C管という意味とコンサートフルートの略を兼ねているかも。
フルートの同属楽器の名称
ピッコロ Piccolo (C5)
トレブルフルート Treble flute (G4)
ソプラノフルート Soprano flute (F4)
コンサート・フルート Concert flute (C4) ★★
フルート・ダモール Flute d'amour (B♭3 or A3) アルトフルート alto flute (G3)
バスフルート bass flute (C3)
コントラアルトフルート Contra-alto flute (G2)
コントラバスフルート Contrabass flute (C2) サブコントラバスフルート Subcontrabass flute (G1)
ダブルコントラバスフルート Double contrabass flute (C1)
ハイパーバスフルート Hyperbass flute (C0)
『愛のデュエット』が終わった所でスターキッズやその他の伴奏者が入ってくる。
「今年はマリがあやめを産んだ時に『天使の歌声』を書いたのですが、この曲は高校時代に書いて2012年にアニメの主題歌として発表した『天使に逢えたら』の続編のようにもなっています。それで2曲を続けて演奏したいと思います」
どちらも近藤さんのアコスティックギター、詩津紅のグランドピアノ、それにヴァイオリンとチェロ、フルートにクラリネットをフィーチャーしたアコスティックな楽器構成での演奏である。7万人を収容した会場に優しい生楽器の音が染み込むように広がっていく。
やはり生楽器の音を使うのがローズ+リリーの魅力のひとつなんじゃないかなと私は思っている。それで最近は月岡さんには本来の担当楽器であるマリンバやヴィブラフォンを弾いてもらい、ピアノは美野里や詩津紅などに弾いてもらうことが多くなっている。美野里はピアニストとして多忙なので、ツアーでは詩津紅に弾いてもらうことが多く、月岡さん自身は「詩津紅ちゃんはもうスターキッズのメンバーということでもいいよ」などと言っている。それはツアーメンバーとして定着している青葉のお友達の田中世梨奈・上野美津穂も同様だが、この2人は就職したら参加は困難になるかも知れない。
2曲の演奏が終わった後、次の曲を紹介する。
「次の曲は、トラインバブルが『愛の八高線』のタイトルでカバーしてヒットした曲の元歌、『東へ西へ』です。元々は北海道の忍路(おしょろ)港で行き交う船の群れを見て書いた曲です。その忍路港で撮影したPVと一緒にお届けします」
と言って、演奏を始める。あれはXANFUS解体騒動の時、解雇のショックで呆然としていた音羽を北海道に連れて行き、マリが彼女を伴ってドライブに行った時に見た光景を元にしている。PVは後日撮影したものだが、地元の漁協に撮影許可を取ったら「それなら」といってたくさんの漁船に大漁旗や急遽作った「Rose+Lily」と書いた旗(文字を書いたのはマリ)などまで付けて漁港を行き来してくれ、賑やかな映像になったものである。美しさで定評のある忍路の夕日も、ベストビューポイント(陸上から行くと結構怖い場所にある)から撮影させてもらえている。今日の観客もその美しい夕日の映像を堪能していたようである。ちなみに実は若狭湾の夕日もものすごく美しく『やまと』を制作した時に撮影したのだが、使えないままになっている。
続いて『雪原を行く』を演奏し、私が千里の運転するスノーモービルに乗って雪原に消えて行く様子なども映像で流れると、結構な笑い声が起きていた。
次の曲は『青い豚の伝説』である。ここからダンサーが入る。今回はダンサーは桜木ワルツと山下ルンバの2人にお願いした。この2人は元々同じ九州出身ということで仲が良い(ルンバは佐賀の多久(たく)、ワルツは鹿児島の川内(せんだい)。それで息の合ったダンスパフォーマンスをしてくれた。
むろんストリップは無しである!
2人は“簡易振袖”(2ピースになっていて洋服と同様に簡単に着られるもの)で踊ってくれたのだが、演奏が変わるとルンバの振袖の袖からお玉が出てくる。それを私とマリに渡す。すると客席から「ピンザンティン!」という声が掛かる。ライブもいよいよクライマックスである。
短い前奏に続いて
「サラダを作ろうピンザンティン、素敵なサラダを」
「サラダを食べようピンザンティン、美味しいサラダを」
とサビを歌う。このやや中毒性のあるサビが客席も大合唱になる。それとともに多数のお玉が客席で振られる。
「太陽の力だよ、アスパラ、トマト」
「土の中から、ニンジン・タマネギ」
「葉物も素敵ね、キャベツにレタス」
「ドレッシングはフレンチ?シーザーズ?」
この曲で大いに盛り上がってから私は会場の時計を見ながら軽くおしゃべりをする。そして「次は『雪を割る鈴』。カウントダウンには恒例の歌となりました」
と紹介する。やや時間が余っているので少し長めの語りを入れる。
「この曲には必須の楽器となりましたバラライカ、三角形のギターみたいな楽器を弾いてくれるのはスターキッズフレンズの宮本越雄。彼はロシア人のバラライカ奏者に弟子入りしてこの楽器をマスターしてくれました。そしてバヤン、アコーディオンに似た楽器を弾いてくれるのは私の長年のお友達、醍醐春海。ご存じのように彼女はバスケット選手で1月10日から12日に行われます全日本バスケット選手権・皇后杯にも出場します。実はバヤンというのはアコーディオンに似ているのに重さはアコーディオンと違って物凄く重いんです。でもスポーツ選手の彼女なのでこの重い楽器を抱えたまま演奏してくれます。彼女はバヤンと似たキー配列のドイツ式アコーディオンの経験があったので、この楽器を弾きこなしてくれました」
「それでは始めましょう。『雪を割る鈴』」
私がおしゃべりをしている間にステージには鈴割りの鈴が運び込まれてきている。そして登場した今日の鈴割り役はわざわざ○○プロから派遣されてきた阿東梨鈴ちゃんにお願いした。彼女は今年(2019年)3月に高校を卒業しているので、この時間帯に使うことができる。
「りりんちゃーん!」
という声が掛かると、彼女は嬉しそうに客席に手を振っていた。
演奏が始まる。最初は緩いテンポである。酒向さんのハイハットとタムがゆっくりとした3拍子を刻み、ルンバとワルツのダンスもスローである。宮本さんのバラライカと千里のバヤンもゆったりとした動きである。そして私は11:59少し前で酒向さんに合図して演奏を停めた。
「さあ、いよいよですよ。今年も色々なことがあった年でしたね。天皇が交代して令和が始まり、タイでも新国王の戴冠式が行われ、GPSの時計はスタートに戻り、ノートルダム寺院が焼け、首里城が焼け、京アニが放火され、香港で民主化運動が起き、台風15号や19号で大きな被害が出て千葉では停電が続き、稀勢の里が引退しイチローが引退して池江璃花子が入院するも、バンクシーは神出鬼没で、ゴーン has goneで、ローマ教皇が来日なさい、リチウムイオン電池を開発した吉野彰さんがノーベル賞をもらい、某演歌歌手は本来の自分に戻り、消費税が上がってキャッシュレス還元がスタート。何とかペイが乱立した1年でした」
「それではカウントダウン行きますよ。みなさんご一緒に」
「10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 Happy New Year!!!」
「0」の声と同時に阿東梨鈴がRPGの伝説の剣のように装飾された剣を振るい、鈴の形をした、くす玉が割れる。大量の小鈴が飛び出す。一部は客席にも飛んで行くが、拾った人は返してくださいということにして回収箱も設置している。初期の頃は持ち帰ってよいことにしていたのだが、それだと客席で暗い中取り合いが発生するので危険だということになったのである。代わりにこの鈴はグッズとしても会場で販売しており、鈴そのものは3個セット100円、ストラップ200円、キーホルダー300円(+消費税)である。
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【夏の日の想い出・点と線】(2)