【ジョイの診察室・よく間違われる】(1)

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カインドリー・ジョイはその日最初の患者を診察室に入れた。
 
40代の女性とその娘だろうか。12-13歳くらいの少女である。少女は白いトレーナーと青いジーンズを穿いていた。
 
「どうなさいました?」
 
「息子のことで相談がありまして」
と女性は言った。
 
「今日はその息子さんは来ておられないのですか?」
「あ、いえ、この子なんですけど」
「え?そちら娘さんじゃないんですか?」
とジョイが言うと、連れの少女(?)は、かぁと顔を赤くした。
 
「よく間違えられるんですが、男の子なんです」
「そうでしたか。失礼しました」
 
「いえ、実はその息子の性別のことなんですが」
「はい」
 
「この子、優しい性格で色白ですし。スポーツなどするより本などを読んでいるほうが好きなんです。友人も男の友だちは少なくて、ほとんど女性の友人ばかり。しばしば教室で同級生から学生服を無理矢理脱がされてセーラー服を着せられたりしているらしくて。どうしたらもっと男らしくなれるかと思いまして」
 
「君はもっと男らしくなりたいの?」
とジョイが聞くと、少年は俯いて恥ずかしそうにしている。
 
「もしかして女の子になりたいとか?」
とジョイが聞くと、驚いたような顔をして、手を口に当てた。その仕草は少女の仕草にしか見えなかった。
 

ジョイはその子に性別検査を受けることを勧めた。
 
まず身体的な特徴を調べると、染色体はふつうのXYで、染色体的には男子である。しかし睾丸は小学2−3年生並みのサイズで、性的な発達が遅れていることがうかがえた。実際彼はまだ声変わりも来ていないし、性器付近の発毛もしていない。
 
心理的なテストをしてみると、90%女性という結果が出る。それで両親もまじえて話し合った結果、いっそ女性になった方がよいという結論に達した。
 
そこで、まずは男性化を停めるために去勢し、男性ホルモンが生産されないようにするとともに、女性ホルモンの投与をおこなった。とりあえず家の中で女装するようにし、下着は全部女性用に変更した。
 
少しずつ女装外出の練習をさせ、親しい友人の家に女装で遊びに行くようにもする。女子制服を購入して、まずはそういう友人の前に女子制服姿をさらすようにした。
 
1年後女性ホルモンの影響でバストが膨らんで来たので、ここで陰茎を切断し、大陰唇・小陰唇・陰核を形成して、股間は完全に女性型になった。それで女性としての新たな名前をつけて、学校にもその名前を届け、女子制服での通学を申請。学校側は既に女性の身体になっているという医師の診断書をもとにそれを認め、彼は女子中学生になることができて、友人たちにも「良かったね」と祝福された。
 
そして彼は中学校の書類が女子になっていたので、高校受験も女子として受験し、無事女子高生になることができた。
 
その後更に1年以上観察を続けた結果、彼女は普通の女生徒として完全に適応している。男生徒時代より確実に友人が増え、最近では男子からラブレターをもらうこともあるとのことである。法的な名前も新しい女性的な名前を2年以上使用しているという実績からその名前に改名することが認められた。
 
 
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【ジョイの診察室・よく間違われる】(1)