【ジョイの診察室・新成人】(1)
カインドリー・ジョイはその日最初の患者を診察室に入れた。
ちょっとおどおどした感じの青年である。
「ボク、来年の1月に成人式なんです」
「それはおめでとう。大人になると色々大変なこともあるけど頑張ってね」
「それで成人式の服なんですけど、男子はみんなスーツとか紋付き袴とか着るみたいで」
「確かにそういう人が多いみたいですね」
「ボクは振袖を着たいんですけど、変でしょうか?」
「全然変ではありませんよ。成人式は好きな服で出ればいいんです」
「友人に言ったら、そんなの変態かオカマだと言われて」
「あなたは変態ですか?」
「少し変態かもと思うことはあります」
「あなたは女の子になりたいですか?」
「別になりたくないです」
「でも振袖着たいんでしょ?」
「はい」
「だったら着ていいですよ」
「よかった。でも振袖を着付けしてもらう時に、胸が無かったら、着付師さんが変に思うと思うんです。何か対策はないでしょうか?」
「プレストフォームというのがあるんです。まるで女の人のおっぱいみたいなのを胸に接着剤か両面テープで貼り付けておくんですよ」
「へー!そんなのがあるんですか」
「だからそれを買って貼り付けておけばいいですよ」
「どこで売っているか教えてもらえませんか?」
「いいですよ」
と言ってジョイはプレストフォームを取り扱っているお店のリストをプリントし、彼に渡してあげた。
「まあ、本当におっぱい大きくしちゃう手もありますけどね」
とジョイが言うと、彼は迷うような顔をしている。
「本当におっぱい大きくしちゃいます?」
「おっぱい大きくするなんて、変態ですかね?」
「そんなことはないと思います。大きくしたければ大きくしていいですよ」
「どうしよう?」
彼はその日は迷っていたようであった。後日、ブレストフォームを買ったという報告があったので、おっぱいを本当に大きくするのは諦めたのかと思っていたら、後日また来院して相談した。
「やはりおっぱい大きくしようかと思います。ブレストフォーム付けて歩いていたらかなり蒸れるんですよ」
「なるほど」
「どうやったらおっぱい大きくできますか?」
「女性ホルモンを飲んで大きくする手と、手術してシリコンバッグを挿入して大きくする方法がありますね」
「女性ホルモンで大きくするのって時間かかりますよね?」
「そうですね。やはり何も無い状態の胸から始めたら普通のおとなの女性のサイズになるには2〜3年掛かると思います。それと女性ホルモンを飲んでいたら、男性としての能力は消失します」
「じゃシリコン入れちゃおうかな。男はやめたくないから」
「その場合、乳首が小さいままなので、乳首は偽乳首を付けるといいですね」
「じゃその対応にします」
それで彼はシリコンバッグを挿入し、Cカップサイズのバストを獲得したが
「これ重たいですね」
と言っていた。
しかしその大きくなったバストで偽乳首も取り付けて振袖の着付けをしてもらい、成人式に出席したようである。その送って来てくれた写真を見てジョイは微笑んだ。
【ジョイの診察室・新成人】(1)