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■栄光に向かって走れ(2)

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「でも男を女にするってどうやるんですか?」
「まあ男と女で形の違うところを調整するだけですね。簡単な手術ですよ」
「はあ」
 
「手術内容ですが、あなたの胸は平らですが女性の胸は膨らんでいますので、まずそこを膨らませます」
「へー」
「のど仏も女性には無いので、そこは削ります」
「なるほど」
 
「そしてあなたには今陰茎と陰嚢が付いていますが、女性にはこのようなものは無いので取り去って、代わりに女性特有の膣や陰核を作り、大陰唇・小陰唇も形成します」
 
「ペニスを取るんですか!?」
「ペニスの付いた女性はいませんからね」
「えーー!?」
 
そんなチンコ取っちゃうなんて、いやだ〜〜!!!
 
「ペニス付けたまま女湯に入ったら痴漢として通報されるし、そんなの付いていたら赤ちゃん産む時も困りますよ」
「赤ちゃん?」
「女性は子供を産まないといけませんからね」
 
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俺が赤ん坊を産む!??
 
「それ、チンコ取った後、後で元に戻せるんですか? たとえば冷凍保存しておくとかして」
「それは無理ですね。切断したペニスは世界ペニス機構に納めなければならないことになっていますから。いったん女になったら、ずっと女として生きていくしかないです」
 
やだ、やだ、やだ、やだよぉ!!! チンコ無くなったら、どうやっておしっこすればいいんだよ?オナニーするのにも困るじゃんか。チンコ付いてないなんてまるで女みたいだし、と思ってからレオンはそういえば女になる手術だったんだということをやっと思い起こした。
 
「それでは手術を始めます。あ、そろそろ眠くなってきたでしょ?」
 
レオンは何かを言おうとした。しかし睡魔の中に吸い込まれてしまった。
 
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手術後、全身がすさまじく痛かった。一週間ほどひたすら痛みと戦った末に包帯が取れる。
 
「立てますか?」
「たぶん」
 
何とかベッドから起き上がる。大きな鏡があるので裸体を映して見る。レオンは信じられない思いだった。
 
そこには友人と一緒にこっそり見に行った成人映画でしか見たことのないような美しい女性のヌードが写っていた。
 
豊かなバスト。くびれたウェスト。そして2本の足の間に何もぶらさがっておらず、縦に1本割れ目がある。こんなもの見たら、俺チンコ立っちゃうじゃんと思う。実際立つような感覚があるのに、視線を下に向けて自分の股間を見ると立つようなものがなく、そこにもすっきりした股間に縦の割れ目があるだけだ。
 
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「なんかちんちんが立つような感覚があるのに、立ちません」
「それは陰茎は無くなりましたからね。立ちようがないですね。でも陰茎を勃起させるシステムは残っているんですよ。代わりに濡れているはずですよ」
と医師は言う。
 
「濡れる?」
 
医師はレオンをベッドに寝せて、お股の割れ目の中に手を入れると、ビニールのようなものに包まれたかなり長い棒状のものを取り出した。
 
「そこにそんなものが入ってたんですか?」
「膣を作っていますから。男性の勃起した陰茎を受け入れられるサイズです」
「ひゃー」
 
確かにその棒状のものは大きくなったチンコサイズかもしれない。
 
「やはり性的に興奮したからでしょう。湿潤しています」
「そのビニールのようなものは?」
「コンドームですよ。ちょっと診察しますね」
 
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と言って医師は今度は何か透明な筒状のものを取り出すと、割れ目の中の奥の方にできている穴に挿入する。
 
挿入される時に「うっ」という感覚があった。これ・・・・
 
気持ちいいじゃん!
 
医師は細い棒の先にライトと鏡が付いたものを使ってその中を観察しているようである。
 
「もう傷は治ってますね。でも念のため3ヶ月くらいは性交はしないでください」
 
「性交ですか? でもチンコ無くなったし性交なんて」
 
レオンは1年ほど前、悪友に誘われて売春宿に行った時のことを思い出していた。あの甘美な感覚はもう味わえない、と思っていたら医師は思わぬことを言う。
 
「ヴァギナができたから、あなたが男性の陰茎を受け入れるんですよ」
 
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えーーー!? 男とセックスするのか!?
 
驚いたレオンのお股の穴の中に、医師はまたガーゼや脱脂綿を丸めたものを新しいコンドームに詰めて、挿入した。
 

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もう普通の下着を着けていいですよと言われるが、唐突に連行されてこの病院に来たので荷物の類いがない。それを言うと、では病院で用意しますと言われ、渡されたのは女の下着である。
 
「これ女物みたいなんですけど」
「だってあなた女になったんでしょ?」
と年配の婦長さんが言う。
 
そっかー。女になったら女の下着をつけないといけないのか!?
 
おそるおそるまずパンツを穿いてみる。最初どちらが前でどちらが後ろか分からなかった。戸惑っていると若い看護婦さんが教えてくれた。
 
「左右の端で持ってみて、細い方が前ですよ」
「へー。でもこんなに細かったら、こぼれませんかね?」
「あなた、こぼれるようなものないでしょ?」
 
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そっかー。チンコ取っちまったんだった。
 
ブラジャーの付け方なんて全然分からない。とりあえず両腕を通したら上下逆だったのでやり直す。しかしホックをとめきれない。
 
「どうやって留めるんですか?」
「練習するしかないと思います」
 
その日はどうしても留めきれなかったので看護婦さんが留めてくれた。しかしなんで後ろにホックがあるんだ? 見えなくて留めにくいじゃん。
 

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それまでは導尿していたのだが、トイレでしていいですよと言われ行ってみる。念のためと言って看護婦さんがついてきてくれた。最初男子トイレに入ろうとして看護婦さんに止められる。
 
「あなたはこっち」
と言われて女子トイレに連れ込まれたが、初めて見る女子トイレの風景は不思議な感じ。ただドアだけがたくさん並んでいる。
 
「小便器が無い」
「女は立っておしっこしないので」
「じゃおしっこする時も個室に入るんですか?」
「当然」
 
どうもレオンの言動に不安を感じたようで個室の中までつきあってくれる。
 
「座ってするんですよね?」
「そのほうがいいと思いますが」
 
それで座るものの、どうやったらおしっこできるのか分からない。
 
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「どうすれば出るんでしょう?」
「あの付近の筋肉を緩めたら自然と出るはずですよ。ただしお尻の方の筋肉は緩めないように。そちらも緩めると大も出ますから」
 
言われたように前の方だけ緩めようとするのだが、それがなかなか難しい。5分くらい悪戦苦闘してやっと出た時はホッとした。
 
「なんかおしっこの出る感覚が違う」
「男と女では、蛇口の形が全く違いますから」
「なんか袋の底が抜けて全部そのまま落下するような感じなんです」
「そのあたり、私は男になったことがないのでよく分かりませんけど、女の尿道口は下向きですからね」
 
そのまま立とうとしたら「拭いて」と言われる。女はおしっこした後、紙で拭くのだそうだ。全然知らなかった!
 
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「男の人だとペニスを振って残った汁を飛ばしたりするみたいですが女は振ることができませんから。それにけっこう周囲に付着してるでしょ?」
「確かに」
「今手術の直後で毛が生えてないですけど、毛が生えてきたら、毛にも付着しますから」
「そりゃ拭かないといけない訳だ」
 

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病院に入っている間は病院のパジャマを着ていればいいから服は不要だが下着は替えが必要だし、少し自分で選んでみてはと言われ、病院内のショップを訪れた。店頭にブラジャーとかスリップとか並んでいて、自分は中に入るのを拒絶されているような感覚になったが
 
「どうしたの?入りましょ」
と若い看護婦さんに促され、中に入る。ひぇー、こんな所に居たら、俺立っちまうと思ったものの、立つものが無かったことを思い出す。
 
「このあたり可愛いけど、どう?」
と言われて見せられるのは、イチゴ模様のパンティだ。これを俺が穿くのか?こんなもんを男が穿いたら変態じゃん!と思ってから、またまた自分は女になってしまったことを思い出す。
 
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「こんなのも可愛いよ」
と言われて見せられたのは、可愛い小熊の絵が描かれている。
 
「これ絵があるのは前だけなんですか?」
「違う違う。模様は後だよ。バックプリントというの」
「へー!」
 
結局、イチゴ模様、バナナ模様、リンゴ模様に、白と赤のチェック、黄色と緑のチェック、それに小熊・子猫・カンガルーがバックプリントされたショーツを買い、またブラジャーはなんだかレースたっぷりのものを5枚ほど買った。
 
「あなたCカップだから、結構可愛いのが選べるのよね。私Hカップだから、なかなか可愛いのがなくて」
などと看護婦さんは言う。確かに看護婦さんの胸はでかい。
 

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女は体毛が薄いからと言われて、手術の翌週から翌々週にかけて、レオナはずっと足やお腹、脇などの体毛や顔のひげなどの脱毛の施術を受けたが、針を毛穴に刺して1本ずつ焼き切るので朝から晩までずっとその施術をされていたし(施術する人は何人かで交代)、けっこう痛かった。しかしおかげで、お股の付近や胸の付近の痛みを少しでも忘れることができた。
 
でも脱毛が済んだ足とかを見ると、すべすべしていてさわり心地もいい。これ結構好きかなという気がした。女の子の足みたい、と思ってからまたまた自分が実際に女であることを思い出す。
 
でもこんなすべすべした足でいられるなら、女もそう悪くないかな、とレオンは初めて「女である喜び」を感じた。
 
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■栄光に向かって走れ(2)

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