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■雛祭りは女の子のもの!(2)

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土日は朝から晩まで女の子の服を着ているので、むしろ平日学校に行くのに学生服を着ている時のほうが、変な感じがした。学校では何度かうっかり女子トイレに入りそうになり、寸前で踏みとどまることもあった。また男子トイレに入っても小便器を使うのは変な気がして、個室の方を使っていた。
 
そんな僕に同じ英語部の木下さんと稲葉さんがこんなことを言い出した。
「最近、見てて女の子っぽい気がするんだけど」
「え?僕が?」「他に誰かいる?」
英語部は実際の部員は15人ほどいるはずなのだが、実際に部に出て来ているのは僕たち3人だけだ。
「うーん、カマっぽいかな?」「おかま、というより女の子だよね」
「うんうん。なんか一緒にいて男の子がこの場にいる感じがしないのよね」
「それはやはり雛祭りが近いからだよ」「意味分かんない」
 
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「そうだ、3月3日にうちで雛祭りやるからさ、ふたりとも来ない?」
「あれ?お姉さんか妹さんかいたっけ?」
「姉さん、いたけど死んじゃったんだよね、僕が5歳の時に。それ以来雛祭りなんてやってなかったんだけど、今年は久しぶりに雛祭りやろうよということになって。でも女の子いないと寂しいから、来てくれると嬉しいかな、とか」
「へー、何だかよく分からないけど、食い物あるなら行ってもいいよ」
「ケーキとか、チキンとか、用意しておくよ」
「私、スコッチエッグ食べたい」
「いいよ、用意しておく」僕は笑顔で答えた。
 
母はここの所、とても楽しそうだった。しばしば可愛い服を買ってきては「これ着てみて」などといって僕に着せてみる。ちょっと着せ替え人形にでもなった気分だ。「男の子じゃおしゃれさせても張り合いないからね。女の子はいいわあ」
などと言っていた。まあ、こんなことで母が日々張り合いが出るならいいことだ。どうせ3月3日までの期間限定のお遊びだし・・・・・たぶん。でも、時々こういう格好するのも悪くないかな、などと僕は思った。母はしばし途絶えていたお花のお稽古にもまた通い始めた。母はほんとに最近とても活動的になっていた。僕の「女の子ごっこ」は予想以上に効いているみたいだ。
 
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そしてひな祭りの前日。僕は学校から帰ると、いつも通り女の子の服に着替えて勉強をしていた。今日はグリーンのセーターに濃紺のジーンズの巻きスカートだ。母はお花のお稽古に寄ってくるからと言っていた。晩ご飯にシチューを作り、母が帰るのを待つ。そろそろかな?と思っていた時、玄関のベルが鳴った。
 
「お帰り早かったね」と僕はてっきり母と思ったので玄関を開けてしまった。
「あ、済みません。いらっしゃいませ。どちら様でしたでしょうか?」
玄関の前に居たのは知らない女の人だった。
「あ、えっと。沙織いる?」
何の前振りも無く初対面の相手に出す言葉としては不適切極まりない。誰だ?これ。
「母はただいま外出しておりますが」
「沙織の娘さん?えっと、私沙織の友達で・・・少し中で待たせてもらえない?」
「済みません。母の留守中に勝手に人を上げたら叱られるので」
「ただ、待たせてもらえればいいのよ。夕方で寒いし、駅まで戻るのも遠いし」
 
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確かに今日は吹雪いているし、外はもう暗い。
男の人なら絶対お帰り頂くところだが、女性だし、見た感じ、わりと華奢な雰囲気だ。何かあったら腕力で圧倒できるだろうと僕は踏んだ。
 
「じゃ、とりあえずどうぞ。母に連絡してみます」
僕はその女性を家の中に入れ、居間に案内した。そして部屋を出て居間の襖を閉めてから、携帯で母を呼び出した。コール音が2回、3回と鳴る。なかなか出ないな・・・と思っていた時、突然襖が開いて、僕は後ろからその携帯を奪われた。「え?」
 
僕はその女性を家に上げたことを完全に後悔していた。彼女はさっきまでとはまるで雰囲気が変わっていた。視線が逝ってしまっている。彼女は僕の携帯の電源を切ってしまった。「何するんですか?」
 
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「連絡しなくてもいいのよ」
「あなた、誰ですか?」僕は女性と少し距離を取った。
「沙織の友達・・・・いえ恋人だったの」
僕は頭の中が一瞬混乱した。
 
「でも先月、いろいろあって別れてしまって。私が浮気したのがいけなかったんだけど・・・・でも後悔して、やはり沙織と仲直りしたいと思って、話をしようと思って家を出たんだけど・・・・・でも途中で気が変わって」
そういうと、その女性はバッグから大きな包丁を取り出した。げ!?
 
「私、沙織に黙ってたけど乳癌なの。。。。来月手術しなきゃいけないのだけど、おっぱい失うのが哀しくて。。。あんたも女の子なら分かるでしょ?」
元々おっぱい無いので分かりませんと思ったが、ここは突っ込む所ではない。
「いっそ死んじゃおうかなと思ったんだけど、一人じゃ寂しくて。。。。でも来てみたら沙織いないし。。。。沙織の代わりにあんたでもいいわ。お願い一緒に死んでくれない?」
 
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そんな話、丁重にお断りしたいところだが、あの包丁はやっかいだ。飛びついて奪えるだろうか? 振り回されると、こちらもある程度の怪我は覚悟しないと。うまく相手の手首を掴めたらいいのだけど。こんな格闘したことはないけど、本気で行けば、相手はそんなに強そうには見えない。やるか?
 
女性は少しずつこちらに近づいてくる。僕は飛びかかるタイミングを計った。ある程度の距離まで来たところで、向こうの懐に飛び込めば・・・・・
 
その時だった。
居間の奥の襖がすっと開いた。え?
 
女性もびっくりしたように振り向いた。そこには背広を着た20歳くらいの男性が立っていた。誰だこれ?今日はいったいどういう日だ? しかしその男性は鋭い視線で、女性を見つめてから、一言、こう言った。
 
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「お帰り下さい」
 
「・・・わかった。。。。。。なんだ。彼氏を連れ込んでたの?すみにおけないわね、今時の女子中学生って。さよなら」
 
女性は包丁をバッグにしまうと、慌ただしく玄関に行き、靴を履きながらドアを開けようとした、ところで先にドアが開いて女性は前のめりになった。「あ!」「あ?」
 
玄関の外にいたのは母だった。一瞬の間があった。
「あんた!何しに来たの?」「何でもない。さよなら」
女性は駆け出して行った。母は一瞬追いかけようとしたが、その前に僕の方を見ると「何もされなかった?」と尋ねた。「僕は大丈夫」それを聞くと母は携帯を取り出し、掛けながら玄関の外に出ていったんドアを閉めた。
「どういうつもりなの?」母の大きな声が聞こえた。
 
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僕はハッとして、居間の奥の方を振り返った。背広の男性はこちらを見て、ニコリと笑うと、振り向いてそのまま奥の仏間の方に戻った。僕がそちらに行くと、雛段の前に、今の男性と、同じくらいの年の振袖姿の女性が並んで笑顔でこちらを見ていた。その女性が口を開いた。
 
「気をつけてね。油断したらダメよ」
「・・・・もしかして、お姉ちゃん?」
「雛人形出してくれてありがとう。でもその格好似合ってるよ。可愛い」
「ありがとう」
「いつも、助けてあげられるとは限らないから。じゃあね」
「あ、お母さんにも・・・・今来ると思うし」
「あなたがお母さんにとっては、たったひとりの子供よ。親孝行してあげて」
「うん」
「あ、そうそう。あの女の人はもう来ないから。それと手術も成功するから」
 
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姉がニコリと笑うとふたりは光の玉に化して、お雛様とお内裏様の中に吸い込まれていった。その時、玄関のドアが開いて、母が中に入ってきた。「お帰りなさい」ぼくは普通の笑顔で母に言った。
「ただいま。ほんとに何もされなかった?」
「うん。大丈夫。家にあげるつもりなかったんだけど、吹雪だからと
言われて。でも今度からは気をつける。知らない人を上げない」
「やはり何かしたのね?」
「大丈夫だよ。結局何もなかったんだから」
 
母はため息をつくと居間のソファに座り込んだ。僕はお茶を入れてきた。
「お母さん、あの人のことについては何も聞かないから」
「やはり何かしゃべったのか、あいつ・・・」
「でも、もう来ないよ、あの人」
「そう? あんたがそういうのなら、そうなのかもね」
母はまだ少し悩んでいるようだった。
 
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しかし、母はてっきり男の人の恋人と付き合っていると思っていたのに、女の人の恋人だったとは!僕だって恋愛というものが、男女間だけでは
なく、男の人同士とか女の人同士でも成立するくらいのことは知っている。でもこう身近にそういうことが起きていたとは思わなかった。
 
「そうだった!鯛焼き買ってきたんだけど食べる?」「うん」
僕の入れたお茶を飲みながら、鯛焼きを食べ始めると、母は少し落ち着いた感じだった。僕も鯛焼きを食べながら、体の緊張が解けていくのを感じた。(あ・・・けっこうビビってたんだな、自分・・・・)
「そうだ。シチューできてたんだ。少し暖めてくる」
僕は鯛焼きを食べ終わると言った。
 
ひな祭り当日。学校が終わってから木下さんと稲葉さんを家に案内した。学校から直接のつもりが、その前に買い物したいというので、それに付き合うことになった。サンリオショップに寄って、キャラクターものを漁っている。「これどっちがいいかな?」などと稲葉さんに訊かれる。「うーん、シナモエンジェルスのほうが可愛いかな」と答える。すると木下さんが「よく、これがシナモエンジェルスって知ってるね」と驚いたように言った。
「あはは、ちょっと訳があってね」と僕は適当に誤魔化した。元サンリオ・フリークの母にしっかり鍛えられたおかげだ。1ヶ月前ならシナモロールも怪しかったところだ。
 
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家まで来て、雛飾りのある仏間にふたりを案内すると、ふたりは「凄い。家庭で五段飾りって、今時あまり見ないよね」などと言っている。「うちは男雛・女雛だけ」「うち、雛人形無いや」「うちの家系で30年ぶりに生まれた女の子だったんで、おじいちゃんが張り切ってくれたらしい」「それでその女の子が中学生で死んじゃったら悲しすぎる」「僕はまだ小さかったからね」
 
僕がふたりを仏間に置いたまま台所で料理を作っていたら、二人も来て手伝ってくれた。二人は僕の手際の良さに驚いていた。「凄ーい。お嫁さんに行けるよ」
などと木下さんに言われた。ふたりとも揚げ物は自信ないというので、フライドチキンとスコッチエッグは僕が全部揚げた。ちらし寿司は木下さんがやってくれた。稲葉さんは調理は苦手と言って茶碗を並べてくれた。大体できた所で母が帰ってきた。
 
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「お帰り」「ただいま。あ、いらっしゃい。ケーキは6人分と言われて6個買ってきたけど、よかったのかな?」「うん、それでいい」と僕は言うと、「じゃ着替えてくる」といい、自分の部屋に行って、姉の制服を取り出すと身につけた。『お姉ちゃん、借りるね』
 
そして居間に行くと「じゃじゃじゃじゃーん」と言って、女子制服姿を友人2人の前で初披露した。「きゃー」「嘘!?」などと二人は驚いていたが、「でも可愛い」「似合ってる」「ちゃんと女の子に見える」「やはりお嫁さんに行くつもりなんだ?」などと言う。
 
「これ、姉ちゃんの制服なんだ。ケーキはお姉ちゃんの分、陰膳ね。きっと今もこの雛祭り、どこかで見てるだろうから」と僕は、お雛様を見ながら言った。「でもケーキ2個余分だよ」と母が言う。「お姉ちゃんが、お雛様だろうから、お内裏様の分でもうひとつ」と僕は説明しながらお内裏様を見る。気のせいか、お雛様とお内裏様が笑った気がした。
 
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「つまり私たちが2個ずつ食べていいのね」と稲葉さんがいう。
「うん、いいよ」と僕は笑顔で言った「雛段にお供えしてからね」
「よしよし」といって、木下さんが小皿に乗せたケーキを1個ずつ、お雛様とお内裏様の横に置く。記念写真撮ろうというので、女子制服姿の僕と、木下さん・稲葉さんが並び、母がうちのデジカメと木下さんの携帯で1枚ずつ写真を撮ったあと、母も入ってセルフタイマーでもう1枚撮影した。
僕は心霊写真になってなければいいけどなどと、ふと思ったりした。
 
ひな祭りの夜は楽しく過ぎていった。会話は弾み、内容も完全な女子トークの雰囲気になっていた。僕が女の子になっているので、木下さんも稲葉さんも、いつも学校で話している時とはネタの刺激度がまるで違う。それを母が更に煽っている感じだ。いつしか僕たちは苗字ではなく名前で呼び合うようになっていた。母が勝手に僕に「ひかり」という女の子名前を付けてしまったので、和美(木下さん)はその名前で僕の携帯番号を登録しなおしていた。
 
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「よし、来週はうちで雛祭りやるから、みんな来てよね。ひかりはちゃんと女の子の格好でね」「えー!?」「おひな祭りは4月3日が本番なんだよ、まだ1ヶ月あるから。いいですよね?お母さん」「OKOK。それまでに去勢して完全な女の子にしとくから」「なんなら私が取り押さえておきますから、その間に包丁ですぱっと」「よし今からやるか?」と母が嬉しそうな顔で言い、包丁を取ってきた。「ちょっと、和美もお母さんもそれ冗談に聞こえない」と僕は困ったような顔で言って、母にリンゴを渡した。「じゃ、このリンゴ剥いてからね」と母は鼻歌を歌いながら、リンゴを剥き始めた。
 
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