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(C) Eriko Kawaguchi 2022.01.10
その日、ぼくは中学に入学するので、学生服を着て、入学予定の中学校に行った。それで入学式のあと
「みなさんにはテストを受けてもらいます」
と言われた。
そんな話は聞いてなかったので、みんな
「え〜!?」
と言っている。
試験は2日掛かりたった。
初日は入学式の後で、まずは身体測定があり、身長・体重、そして胸囲・腹囲・腰囲を計られ、また肩幅、腕の長さ、腰の上から膝の所までの長さ・足首の所までの長さ、足のサイズなどを計られた。
その後筆記試験があり、国語・算数・理科・社会の基本的な問題が出される。ぼくはあまりいい点数を取れた自信は無かった。2日目は音楽・美術・体育・家庭・技術のテストがあった。
音楽では音域を調べられてから歌を歌い、またリコーダーを演奏するという話だった。でも楽器は自分の得意な楽器に変えてもいいと言われ、ジョン君などはピアノを弾いていたし、リランちゃんなどはギターを弾いていた。ぼくもリコーダーはあまり得意ではないので、代わりに小さい頃から習っているフルートを吹いた。
体育では運動能力の測定が行われ、50m走、ソフトボール投げ、シャトルラン、垂直跳び、左右の握力測定、背筋力測定などが行われた。家庭科ではスカートを縫う課題が与えられた。自分の体型に合わせて作ってと言われて縫ったけど、よくできてると言われた。試着もして写真も撮られたけどスカートなんて穿いて写真撮られるのは恥ずかしかった。でもスカートなんか作っても穿かないのにと思った。技術では小型の本棚を作る課題だったけど、ぼくはこれが苦手で、ぼくの作った本棚は文庫本を1冊置いただけで崩壊しちゃった。
2日目の最後に心理テストみたいなのを受けた。色の付いた窓のどれを開けてみたいですかという問題(ぼくは赤を選んだ)とか、細い道で人と相対したら道を譲る方ですか?自分が先に通ろうとする方ですかという問題(ぼくは相手に譲る)とか、好きなアイドル歌手はという問題(ぼくはジャック・バルディ君と答えた)とか、100問くらいの問題に答えていった。いったい何を調べてるんだろうと思った。
3日目の午前中、ぼくたちは1人ずつ面談を受けた。赤い扉の部屋と青い扉の部屋があり、ぼくは赤い扉のほうに並んで下さいと言われた。やがて順番が来て赤い扉を開け、中に入ると、女性の先生?が5人並んでいる。
そして言われた。
「あなた理数系がやや苦手みたいですね」
「そうですね。理科とか算数はあまり点数がよくなかったです」
「体力はあまり無いほうみたい」
「いつも男子の中でビリ争いをしてました」
「フルート凄くうまかつたですね」
「好きなので、よく練習してましたから」
「声はハイトーンですよね」
「そうですね。高い方は結構出るのですが、低い声はあまり出ません」
「あなたの声域はアルトですよ」
「へー!」
「テノールの声域の下の方は出てないですが、アルト声域はいちばん上までしっかり出ています」
「確かに電話とかで女の子と間違えられることもあるんですよ」
「技術家庭とかでも、工作はあまり得意ではないみたいですが、裁縫は美事でした」
「ああ、ぼく腕力が無いから、金鎚とかが苦手なんですよ。でも裁縫はよく母の手伝いして縫ってたし、学校に持って行く雑巾(ぞうきん)とかも自分で縫ってたし」
「体型も女性的な体型ですね」
「ああ、ぼくボーイズの服が着られなくて。それで結構ガールズの服を着てました。トイレに困るんですけど」
「そういう時はどうするんですか?」
「個室でしてましたよ、いつも個室でしてるから、お前チンコ付いてないのではって、よく友だちから言われてました」
「あなたは性格も女性的な性格ですね」
と言われる。
「そうですかね。あまり男らしくないとは言われますけど」
「心理テストでは、女性性80%、男性性40%と出ています」
「へー」
と答えながら、どうして足して100にならないのだろうと思った。
「以上をもちまして、あなたは男子中学生より女子中学生にふさわしいと判定されました」
「そうなんですか!?」
「つきましては、あなたはは女子生徒として登録することにします」
「うっそー!?」
「女子生徒は学生服は着られないので、今すぐ脱いで下さい」
と言われ、ぼくは学生服・学生ズボン、その下のワイシャツを脱がされ、更にその下に着ていたアンダーシャツとブリーフまで脱がされた。
「あなたにはこれを着てもらいます」
と言われて、まずは女の子用のショーツを渡されるので、
「うっそー」
と思いながら穿く。ちんちんが飛び出してしまうが、
「ちんちんは後ろ向きに収納してね」
と言われるので、後ろ向きにしたら、何とか穿くことができた。
「次はこれを着けて」
と言われてブラジャーを渡される。
こんなの着けるの〜?
と思いながら、肩紐に腕を通すが、ボタンが留められない。これは先生が留めてくれたが
「これ自分で留められるように練習してね」
と言われる。
「はい、分かりました」
それからキャミソールを渡されるが、これはランニングシャツと似ているのでふつうに着られる。ブラウスを渡されたが、ボタンの付き方がワイシャツとは逆なので、留めるのにかなり苦労した。しかもボタンが小さくて、うまく指ではさめない。これも練習してねと言われた。
そしてセーラー服のスカートを渡される。
え〜?ぼくスカート穿いて通学するの?と思うが、仕方ないので穿く。なんかすごく変な気分というか、下半身に何も着けてないような気分だ。
そしてセーラー服の上衣を渡される。これは普通にかぷって着られた。最後にリボンを渡されるが、これはどうやったらいいのか全く見当もつかない。先生に結んでもらったが、これも練習してねと言われる。リボンの結び方の解説ビデオの入ったCDをもらった。
鏡に映してみると、なんか可愛いかもという気がした。それで写真撮影される。ぼくがセーラー服で部屋の奥側のドアを通って、待合室に出て行くと、ぼくと同様、セーラー服を着たジョン君が手を振っていた。
「ジョン君も女子中学生になるの?」
「ぼくは100%女の子だと言われた」
「すごーい。ぼくは心理テスト80%だったのに」
ぼくたちとは逆に、リランちゃんは学生服を着てたけど、すごく格好良かった。
「男子中学生になれて嬉しい!」
などと彼女は言ってたけど、リランちゃんは男子中学生でも行けるかもねと思った。
やがて生徒手帳ができてきて配られたが、ぼくの生徒手帳には
《エメリー・マルガン 2009年9月9日生・女》
と記載され、セーラー服を着たぼくの写真がプリントされていた。
小学校の同級生だったリサちゃん(彼女は元々女の子だし、ちゃんとセーラー服を着ている)が覗き込んで
「可愛いじゃん」
と言ってくれた。
「ジャンもエメリーもきっと女子と判定されるよね、と噂してたよ」
「そうなの?」
「ふたりとも女子中学生になったんだから、今まで以上に仲良くしようね」
「うん」
とぼくは少し不安な気持ちを持ちながらもリサに返事した。
「女子トイレに入るの最初恥ずかしいだろうから、一緒に行ってあげるよ」
「助かる。ぼく絶対1人では入れない」
とぼくは言ったが
「エメリーは1人で女子トイレに入っても誰も騒がないよ」
とジャンは言っていた。
でもぼくがセーラー服で家に帰ったら、お母さん、びっくりするかなあ、などとぼくは考えていた。
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新しい性活・女子中学生になる男の子たち(1)