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■紙風船(2)

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ボクがミキちゃんのシュミーズを着せてあげようとしたら「看護婦さん、足の付け根の付近がちょっと痛むんです。見てもらえませんか?」とミキちゃんが言う。「え?」とボクが困った声を出すとミキちゃんは「横になりますから、スカートとパンツも降ろして、診てください」と言う。ボクはまたドキドキしながら、ミキちゃんのスカートを脱がせ、パンツを少しおろしたところで、驚きの声を上げた。「あっ」
 
「どうしたんですか?看護婦さん」「ミキちゃん、おちんちんが無いよ。どこかで落としてきちゃった?大変だ。それに傷口が。もしかして、おちんちんが切れちゃった跡?」「それだったら心配しないで。最初からおちんちんは無いし、そこは傷じゃなくてそうやって割れ目が元々あるんだから。女の子はこうなってるんだよ」「え?そうなの?でも、おちんちん無かったら、おしっこはどうするの?もしかしてうんちと一緒に?」「そんなこと無いよ。その割れ目の中におしっこが出てくる所があるの」「あ、じゃ、この中にミキちゃんのおちんちんは入ってるんだ」「おちんちんの形はしてないけどね」「ふーん」
 
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「で、どうですか?私の痛い所分かりました?」「あ、ミキちゃん足の付け根のところが少し擦れてるみたい。お薬付けてあげる」ボクは土蔵の中に置いてある薬箱から膏薬を取り出すと塗ってあげた。「ありがとうございます、看護婦さん。少し楽になりました」「よかった」「じゃ、今度は私がケイちゃんを診察してあげる」「え?どうして?」「そうね。ケイちゃんが看護婦さんになるんだったら、私お医者さんになっちゃおうかな」「えぇ?」
 
ミキちゃんは有無を言わさず、ボクの着ている女の子の服を脱がせる。上着もスカートも、シュミーズもパンツも脱がされて裸にされてしまった。「おや、ケイちゃんは女の子になると言っているのに、おちんちんが付いてますよ。女の子になるんだったら、これは取ってしまわないといけないですね」ミキちゃんはボクのおちんちんを触りながら言った。「取るのって痛いの?」ボクはおそるおそる聞く。「さぁ、私は元々付いてなくて、取ったことないから、分からないわね。でも、おちんちん付いてたら女の子になれないもの。ほら、私のを触ってみて」
 
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ミキちゃんはボクの手を取ると自分の割れ目のところに触らせてくれた。
「中も見せてあげるから、よく見るのよ。ケイちゃんも女の子になったら、こういう形になるんだから」ミキちゃんは足を大きく広げた。すると割れ目が開いて中が見える。でもよく分からない。「この付近からおしっこが出てくるんだよ」「あ、なんだかちいさなおちんちんがあるよ」「これはちんちんじゃなくて、おマメさんって言うの。確かに男の子のちんちんと同じ物かも知れないけど、ずっと小さいでしょ。でも、おしっこはそこから出てくるんじゃなくて、この付近なの」「ふーん」「ケイちゃん、女の子になるんだったら、ちんちんもその後ろの袋も取って、こういう形にならないといけないんだよ。それでもいい?」
 
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「男の子と女の子って、こういう所が違ってたんだ。ボク男の子と女の子の違いを今まで知らなかった。うん。でもボク女の子になれたらいいな、と思うから、そのためならおちんちん無くなってもいいよ。おちんちん無くても、おしっこできるんだったら、困らないだろうし」「そう。じゃそうなれるといいね」ミキちゃんは不思議な微笑みをする。
 
「そうだ。ケイちゃんが女の子になれるように、注射打ってあげるよ」ミキちゃんはタンスの奥をごそごそしていたが、やがて本物みたいな注射器を持ってきた。「なんだか本物みたい」「本物だよ。怖い?」「ううん。ミキちゃんにされるんだったら」「じゃ、注射しますね。やはりおちんちんにするのかな」
 
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ミキちゃんがボクのおちんちんをつかむ。ボクはなんだか変なドキドキ気分がして、おちんちんが大きくなってきた。「あら、おちんちんが大きくなってますよ。これはきっと病気だわ」「え?病気なの?これ、触ってたりすると大きくなるんだよ」「でも、女の子にはおちんちんはありませんから、こんな大きくなるものは、きっといけないものに違いありません。お注射して直してあげましょう」ミキちゃんはそう言うと、注射器に何か薬をセットし、指で押して針の先からちょっと液があふれたのを確認すると、ボクのおちんちんの先に突き立てた。痛い!でも我慢。ミキちゃんはそのまま指でピストンを押して、薬を注射し終わった。そして針を外すと「よくもんでくださいね」と言った。ボクはおちんちんをよくもむ。するとそれはもっと硬くなってしまった。
 
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するとミキちゃんは「あら、硬くなったらいけませんね。しばらくお布団の中で安静にしていてください。私も付いていてあげますから」そう言うとミキちゃんは裸のままのボクをうながして、お布団の中に入れる。ミキちゃんも裸のまま入ってきた。ミキちゃんと一緒にお昼寝は何度かしたことあるけど、裸のままというのは初めて。しかもミキちゃんは布団の中でボクに抱きついてきた。「こうやってだっこしてると気持ちいいでしょ」「うん」ボクは何だか不思議に気持ちいい感じがした。でも、困ったことにおちんちんはますます硬くなっているような気がする。
 
「少し寝るといいよ。そしたらもう全部良くなっているから」ミキちゃんがもう女医さんの口調じゃなくて、普段の口調で、そう言った。
 
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それがボクの耳に残っているミキちゃんの最後の言葉だ。
 
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「じゃ啓助が女の子の浴衣着て、お祭りに行ってたというのか?」「そうらしいのよ。近藤さんの奥さんが見たらしいの」「誰かと一緒だったのか?」
「ううん。一人だったらしいわ。一瞬誰かと一緒かと思ったのだけど、よく見たら一人だったって」
 
その男女は険しい顔で話をしながら土蔵の方に向かっていた。
 
「しかし啓助は何でいつも土蔵で遊んでんだ?」「子供って暗くて狭い所が好きなんじゃないかしら。子宮回帰願望よ」「しかし、あの中で一人で何して遊んでるんだろう」「あそこには、たくさん本があるから、それ読んでるんだと思うし、ほら美貴ちゃんの人形も置いてあるじゃない。それで遊んでいるのかも」「美貴か.....もう俺たちもミキのことは忘れなくちゃいけないのかも知れないな」「うん。もう美貴は帰って来ないのだし。あんな生きてたころにそっくりの人形なんか作って、それに合う服も色々買ったりして、やはりこういうことしてちゃ、いけないのよね。私たちには啓助がいるんだから」
 
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「そうだよ。啓助は幼稚園でも女の子とばかり遊んでいるというんだろう?それに女の子の浴衣って、それたぶん美貴の人形用のだろうな」「うん。多分。ただ、どうして一人で着られたのか分からないけど」「人形遊びとかばかりしていたら、啓助も男らしく育てないよ。残念だけど、あの人形は処分しよう。な、いいだろう?」「うん」妻は力無く返事した。
 
二人は土蔵を開けた。その時、何か一瞬キラキラしたものが土蔵の中にあふれそれから消えたような気がした。二人はしばらくその入口のところで立ちつくしていた。それからふと我に返ったように付近をキョロキョロ見回して、それから夫の方が先に言った。「あれ、俺達何しに来たんだったっけ?」「うーん。そうだ。もうすぐ御飯だからって、ケイちゃんを呼びに来たんじゃなかった?」
 
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「あ。そうか。啓子はいつも土蔵で遊んでるもんな」「うん。ここには亡くなった美貴お姉ちゃんの人形が置いてあるから、その人形に遊んでもらっているんだと思うわ」
 
「あはは。確かに人形で遊ぶじゃなくて、人形に遊んでもらっている感覚だろうな。でも良かったよな。あの人形。美貴が死んでしまって、何だか耐えられない気分で。俺もきつかったけど、お前があんまり沈み込んでるから、少し高かったけど、いい腕の職人さんに作ってもらったんだ」「うん。あのお人形たらちゃんと女の子の印まで作り込んであるのよ」「え、そうだったのか。それは見てないが」「父親が見ていいものではありません」「うん。まぁ。でもあの人形を作ってからしばらくして啓子が生まれて」「うん。なんだか生まれ変わりのような気がして大事に育てたわね」
 
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「啓子、幼稚園であまり友達と遊ばないとか言ってたっけ?」「でも由香ちゃんたちとだけは仲良くしてるみたい」「まぁ女の子だから、おとなくしてもいいか」
「うん」二人は軽く談笑しながら土蔵の階段を登っていく。
 
「ケイちゃん、御飯よ!あらあら、美貴ちゃんと一緒にお昼寝してるわ」「おいおい、裸だぞ」「お人形も裸にされてる。面白い子ね」二人は楽しそうに笑って寝ている啓子を起こし、その付近に散らばっていた女の子の服を着せた。
 
「あれ、男の子の服がひとつここに落ちてるぞ。どうしたんだろう」「さあ、誰か親戚の男の子が来た時に忘れていったのかしら?」夫婦は首をかしげた。
 
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今日は合格発表の日だ。私は高まる鼓動を押さえつつ、厚生労働省のサイトに接続した。看護師国家試験・合格者発表コーナー。受験地を選択して、自分の受験番号を探す。あった! 自信はあったけど、やはり確認するまでは少し不安があった。
 
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『ミキちゃん、私ちゃんと看護婦になれたよ。ありがとう』私は狭い寮の部屋の隅にちゃんときれいに椅子に腰掛けているミキちゃんのお人形に向かって、言った。それから引き出しをあけて、もう古くなった2個の紙風船を見る。
 
もう入る病院も決まっている。総合病院の内科だ。大変な仕事だけど
ほんとにやりがいのある仕事だ。私は研修を通してもそう感じていた。
 
携帯の着信が入る。「あ、ヒロシ?見てくれたの?うん。通ってたでしょ。あ、うん。きゃー、お祝いにおごってくれるの。嬉しい」
 
私はボーイフレンドからの電話を切ると、軽くシャワーを浴びて汗を流し、香水を肌に振る。そしてデート用の可愛い下着を身につけ、黄色い花柄のワンピースを着て、念入りにお化粧をし、ちゃんと彼が持っては来るだろうけど念のため避妊具も用意して、それからミキちゃんに「行ってきます」と言って部屋を出た。ドアを閉める時にミキちゃんがちょっと笑ったような気がした。
 
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あの優しい笑顔の仕草!あれだけは、自分がどうしても身につけられなかったものだ。悔しいなぁ。携帯がなった。きっと待ちくたびれたのだろう。うふふ。私は楽しい気分でボタンを押した。
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