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カインドリー・ジョイはその日最初の患者を診察室に入れた。
入ってきたのは高校生くらいの男子だが、スカートを穿いている。
「ぼくスカート穿くのが好きで、いつもスカート穿いているし、学校にもスカート穿いて出て行っているんですよね」
「女子制服を着てるの?」
「いえ。男子制服です。男子だから、男子制服着てもらわなければ困ると言われるので。でもボトムはスカートにしています」
「なるほど」
「それでスカートはいたまま、お昼寝してたら、よくスカートにテントができていて、みっともなくて凄く困っているんですが、何とか対策は無いかと思って」
「要するに勃起するのが困るのね」
「そうなんです。勃起しないようにする方法ありませんか?」
「勃起は生理的な現象だから、完全に防止することはできないけど、例えば女性ホルモンを服用して、女性ホルモン優位の状態にしておくと勃起しにくくなるよ」
「なるほどですね」
「もっと徹底する場合は、睾丸を取ってしまえば、かなり勃起しにくくなる」
「そっかー。睾丸を取ってもらおうかなあ」
「それでも希に勃起することはあるけどね」
「絶対勃起しないようにすることはできません?」
「うーん。いっそのこと、ちんちんそのものを取ってしまえば勃起しようがないけど」
「あ、それいいですね!ぼくのちんちん取ってもらえませんか?睾丸も」
「ほんとに取っていいの?」
「いいです」
「いっそ、女の子の形にしてしまう」
「そんなことできるんですか?」
「割れ目ちゃんを作って、ヴァギナを作って、完全に見た目は女の子と同じにすることもできるけど」
「いっそ、そうしてもらおうかなあ。女の子の形になったら、性別を変更できたりしませんよね?」
「性転換証明書を書くから、それを役場に提出したら、君の市民登録証は女性に変更される」
「そしたら、女子制服を着ていっても文句言われませんよね?」
「女性が女子制服を着ているのに文句を言う訳が無い」
「だったら、それがいいです。ぼくいっそ女子制服で通学したいです」
「じゃ女の子になる手術しようか?」
「はい、お願いします」
それで、ジョイは少年を手術室に運び込み、テントを作る原因である睾丸を除去。テントになるペニス自体も切断した。その後、お股には大陰唇・小陰唇を形成。ペニスの皮膚を利用してヴァギナを作り、ペニスの先端を利用してクリトリスも作ってあげた。尿道は、クリトリスより少し後ろの位置に開口するように調整した。
手術後、自分のお股を見た元少年は
「すごーい。ほんとに女の子になっちゃった」
と言って、喜んで帰って行った。
少年はジョイが書いた性転換証明書を郡役場に提出。市民登録証が女性に変更されたので、新しい市民登録証を学校に提出。彼女は女子高校生になることができた。それで、女子制服を着て通学するようになり、とても幸せだそうである。
人を幸せにするのは良いことだ、とジョイは思った。
ジョイは彼女のiPS細胞から女性器を育てた。それで1年後に卵巣・卵管・子宮を埋め込み、膣もこの“養殖膣”に交換してあげた。それで落ち着いたら生理が始まるはずだが、妊娠は難しいと告げた。彼女の骨格が既に男性的に発達しており、妊娠が維持できないのである。
「まあそれは仕方無いですね」
と彼女も言っていた。でも生理があるだけでもかなり満足な様子だった。
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ジョイの診察室・テント(1)